喫茶鉄血   作:いろいろ

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指揮官のアバターの性別で悩むこと約一時間、とりあえず男にしたけどそのうち変えるかも笑

というわけで今回は番外編!
・ちっちゃくないよ!(一部)
・喧騒の外側で
・服飾教室 夜の部
・ノインの旅路3rd


番外編30

番外30-1:ちっちゃくないよ!(一部)

 

 

マヌスクリプトは言葉を失った。目の前にあるそれが一体なんなのかという疑問が常に頭に浮かび、消えることなく累積されていく。メモリ付きのテープを持った両手は止まり、目は瞬きすることを忘れたかのように見開かれている。まるでこの世のものとは思えない光景に、マヌスクリプトはのちにこう語った。

 

『脱いだらもっと凄かった』

 

そんな思いがこもった目で凝視されている彼女・・・フォートレスはこっちはこっちでマヌスクリプトから目を離せないでいた。何せ「採寸するから脱いで欲しい」と言われて脱げば突然固まったのだ。しかも視線は自分に、もっと言えば両手でも隠しきれないほどのボリュームを誇る胸部装甲に突き刺さったままだ。もはや貞操の危機すら覚える空気である。

 

 

「・・・・・・・あ、あのぉ」

 

「ハッ!? な、何かな?」

 

「さ、採寸しないんですか?」

 

 

上目遣い、やや怯えた声色、ちょっとだけ潤んだ瞳、そして小柄なのに出るとこは出過ぎているシルエット・・・・・・マヌスクリプトは自身の理性がゴリゴリと削られていくのを感じ取った。が、そこは代理人に釘を刺されているマヌスクリプト、流石に地雷原に突っ込むようなことはしない。

 

 

「んんっ! じゃあ早速測っていくから手を横にして、まっすぐ立ってね」

 

「は、はい・・・」

 

 

恐る恐るといった感じで両手を横に伸ばし(ここでも理性が削られる)、背中からロープを通してサイズを測っていく・・・・・目の前の緩衝材を鷲掴みにしたくなる衝動を必至に堪えながら。

 

 

「じゃ、ちょっと締めるよ・・・・・痛かったら言ってね」

 

「はい・・・・・・・んっ」

 

 

プツンッ

フォートレスの漏らした声に、限界まで張り詰めていた理性の糸が音を立てて切れる。マヌスクリプト自身がやばいと思ったときには、すでに体は動いていた。

 

 

「やっぱもう限界! 頂きまぁあああああす!!!」

 

「えっ? きゃああああああああああ!!!!???」

 

 

突然のことに反応し切れなかったフォートレスの背中に腕を回し、その柔らかな双丘に顔を埋める。まるで最高級の枕のような心地よさに捕らえられたが最後、マヌスクリプトは自力ではもう抜け出すことはできなかった。

 

 

「や、やめ・・・離して・・・・・」

 

「えへへ〜、もうちょっt「何をしているのですか?」・・・・・あ」

 

 

自力では抜け出せない、そしてフォートレスでは引き剥がせない。そんな状況をいち早く打開できるとすればそれは・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マヌスクリプト・・・・・・正座」

 

「ハイ」

 

 

この後、完全に陽が落ちるまでみっちり説教が続いたという。

 

 

end

 

 

 

番外30-2:喧騒の外側で

 

 

おっさんたちによるペルシカへの質問責めが続く頃、そこからちょっと離れた席で嗜む程度に酒を飲む大尉の元に、ふわりと髪を揺らした少女が近寄る。

 

 

「お隣、よろしいですか?」

 

「ん? えぇ、構いませんよ」

 

「ありがとうございます! 代理人、これをもう一杯」

 

「かしこまりました」

 

 

そう言って大尉の横に座ったカリーナを、大尉は不思議そうな目で見ていた。自他共に認める堅物でこういった騒がしい空気はやや苦手な大尉と、明るく快活で場のムードメーカー的な存在であるカリーナ。ほとんど真逆と言っていいほどの違いがあるにもかかわらず、なぜこちらに来たのだろうか?

 

 

「あれ、止めないんですか?」

 

「・・・・お酒が入ると止められませんので。 博士には悪いですが」

 

「ふふっ、確かに止まりそうにありませんわね」

 

「・・・・・・カリーナさんは、なぜこちらに?」

 

 

気になったので、素直に聞いてみることにした。寡黙ではあるが腹芸が得意というわけでもないし気の利いたジョークの一つも言えない以上、大人しく聞く方がいいだろう。

 

 

「そうですね・・・・たまにはゆっくりと話してみたかったから、ではダメですか?」

 

 

クスッと笑いながらそう言った。勘違いされそうなことを言っているがカリーナにはその気などなく、また大尉の方も理解している。というよりもこの二人で話すこと自体は初めてでもなんでもなく、グリフィンと軍の集まりがあるたびに出席しては、上司が話している間に二人でお茶をするくらいよくあることだ。

 

 

「? いつも割と話してはいるとは思いますが?」

 

「それはお取引のお話ですわ。 それも楽しいですが、今日はただお話がしたかっただけです」

 

 

取引、とはいうが実際に取引しているわけではない。互いの情報や交渉材料などを元に相手から情報を買い取り合う、その駆け引きだけを行うゲームのようなものである。片や守銭奴とも言われてしまうほどお金に厳しく、片や適正価格やら予算やらにうるさい軍人、その駆け引きはなかなかのものだ。

そんなわけで意外にも互いのことを話したことのない二人なので、これを機に少し話してみようと考えたのだった。

 

 

「そうですか・・・・・では、まず何から話しましょうか?」

 

「そう言われると少し困りますね・・・・・ではまず互いの自己紹介にしましょう」

 

「改めて、ですか。 少し気恥ずかしくありますが・・・・いいでしょう、まず私からですね」

 

 

そんなこんなで、会の終わりまでゆったりと話した二人。そこにあるのはなんの邪念もない友情なのだが、無粋なおっさんたちが二人をくっつけようとする未来が訪れるのは、ある意味当然の流れであった。

 

 

end

 

 

 

番外30-3:服飾教室 夜の部

 

 

「・・・・・・・・」

 

「どうかされましたか?」

 

「あーいや、うん・・・・ある意味予想通りのメンツだからね」

 

 

喫茶 鉄血の営業時間を終えて、Bar 鉄血へとシフトした頃。日中に行われた服飾教室を満足のいく形で終わらせたマヌスクリプトは勢いそのままに『夜の部』へと進んだ。こちらは前二つとは違い先着順ではなく抽選式、そして例によってマヌスクリプトは応募者も当選者も知らされていなかった。

抽選式だから知った顔に会う確率もそんなに高くない、そう思っていた過去の自分を殴りたい気分だ。

 

 

「ていうかスプリング、あんた裁縫とかできるでしょ?」

 

「ええ、一通りは・・・・・なので今日は、あなたのアイデアをいただきたいなと」

 

「アイデア、ねぇ・・・・・で、そっちは?」

 

「右に同じだ」

 

「わ、私はこの時間しか空いてなくて・・・・ていうかこれってそういう回なの!?」

 

「た、隊長にアピールできるものが作れれば、と・・・・・」

 

「一人で抜け駆けなど許しませんわよ」

 

 

集まったメンツは以下の通り。

・明らかにソッチ系のもの(下着等)を作る気満々の春田

・まだましだが代理人を魅了したいと考えるダネル

・夜の部の意味を全く理解していなかったWAちゃん

・なけなしの勇気を絞り出してやってきたPK

・春田を出し抜こうとしたら鉢合わせたKar

 

・・・・・いろんな意味でひどいメンツである。

 

 

(おかしいなぁ、一般からの応募も結構あったはずなのに)

 

 

一応言っておくと、彼女たちは至極真っ当な抽選で選ばれたものであって、決して裏工作とかそんなものはなかった。これが執念というものなのだろう。

 

 

「まぁいっか。 じゃあ気を取り直して早速始めよう! 何が作りたいとかの要望はあるかな?」

 

 

ぶっちゃけ夜の部にふさわしい代物を教える気満々だったマヌスクリプトだが、少なくともWAとPKはまともなものを御所望の様子、ここは大して問題にはならないだろう。

残るは暴走確定の春田、便乗して暴走するKar、そして代理人がらみになると歯止めが効かなくなるダネルの三名・・・・・面白さ半分、不安半分といったところか。

 

 

「今日のためにいくつかお店を回ってみたのですが、やはりこうピンとくるものがなく・・・・・何かオススメのものとかはありますか?」

 

「(正直あんたは服以前の問題だろうけど・・・)まぁなくはないわよ。 けどあんたなら裸にリボン巻いて『私がプレゼントです♡』くらい言うと思ったんだけど」

 

「はだっ!? そ、そんなのハレンチすぎるわよ!」

 

「そ、そうです! 女性としての慎みを持たないと・・・」

 

 

春田への疑問のつもりが何故か他二名に直撃するしかもそれを自分がやるところまで想像してしまったのか、シュ〜っと頭から湯気までで始めるくらいだ。

逆に三人は特に慌てる様子もなく、しかも春田に至っては笑顔のまま・・・・こいつやる気だ。

 

 

「ま、こっちはほっといて・・・・・Karは?」

 

「私も彼女と同じ理由ですわ」

 

「あら? その貧相な身体に合う下着がはたしていくつあるでしょうか?」

 

「あ゛ぁ゛!?」

 

 

喧嘩勃発。しかしそれもいつものことなので、最後に一番読めないダネルの要望を聞いておく。

 

 

「そういえばダネルはスキンあったよね、サンタの」

 

「あぁ、だから私が着るものは間に合っている・・・・・実はこういうものを作りたいのだが、私でもできそうか?」

 

「どれどれ・・・・・・・・へぇ、これはまた凝ったものを・・・・・いいよ、私も手伝ってあげる」

 

「ほ、本当か!? 助かる!」

 

「いえいえ。 じゃ、さっそくスタート!」

 

 

そんなわけで始まった夜の部。比較的安全かつまともなWA(手袋)とPK(自分用の露出多めなサンタ服)、そしてダネルのものを手伝いつつ、残る二人には資料として大量の薄い本を渡しておいた。二人の望む一着が見つかるといいのだが、まぁきっと何を着てもヘタれるのだろう。

 

 

「こ、これをセーターというのですか? 背中なんてお尻の方まで見えちゃってて・・・・」

 

「ほ、本当に下着をつけないのが正しいんですか?」

 

「まぁ、文献にはそう書いてるよ」

 

「「文献!?」」

 

「二人とも何を読んで・・・・・・ひゃああああああ!!!!???」

 

「あ、WAちゃんは見ない方がいいよ」

 

「遅いわよ!!」

 

 

純情ツンデレ娘にはなかなか刺激の強い世界だったようだ。だが興味自体はあるらしく、PKと共にチラチラと中身を読んでは顔を真っ赤にして目を背けるというのを繰り返す。ダネルはダネルで自分のことに精一杯で、周りのことなど眼中にもなさそうだった。

 

結局蓋を開けてみれば、意外と手間も時間もかからずに作り終え、もっとドロドロの展開になるかと思った夜の部はあっさりと終わりを迎えた。PKは当日にそれを着る勇気があるかどうかで、WAは今日作り方を覚えた手袋を司令部の全員に作るらしい。春田とKarはもはや下着ともいえない一着に辿り着き、クリスマス当日にはさぞ面白いことをしでかしてくれるのだろうと期待が持てる。

そしてなんとか完成に漕ぎ着けたダネルは・・・・・

 

 

「・・・・・・・・」

 

「あれ? どしたの?」

 

「い、いや・・・・気に入ってくれるかと心配でな」

 

「代理人が絡むとホント不安定よねあんた・・・・・大丈夫よ、頑張って作ったんだから」

 

「そ、そうだな!」

 

 

コロコロと表情の変わるダネルを微笑ましく眺めつつ、全員を見送るマヌスクリプト。大きく背伸びをすると、清々しい笑顔で店へと戻るのだった。

 

 

end

 

 

 

番外30-4:ノインの旅路3rd

 

 

「海だーーー!!!」

 

「楽しそうだな、我が主」

 

 

世界を旅する一人と一匹、ノインとダイナゲートは今、大陸から遥々海を渡って南半球を訪れていた。今頃冬の寒さが近づいてきているであろうS09地区の光景を思い浮かべつつ、季節の逆転したこの国で最初にすべきことは、とりあえず海に入ることだった。

 

 

「海ならば飛行機からでも見ただろう?」

 

「でもでも、海だよ!? しかもめちゃくちゃ綺麗で泳げるんだよ!? まさか生きてる間にこんな日が来るなんて!」

 

 

テンションが上がりきったノインは猛ダッシュで海の家に突っ込み、レンタルの水着を借りて更衣室に駆け込む。ダイナゲートはノインの過去を話だけだが知っており、それ故に海を含めた自然の全てに感動する気持ちも理解できる。だからこそ、水着に着替えて駆け寄ってきたノインが嬉しそうにしている姿を、きっちりカメラに収めることにした。

 

 

「お待たせー! どう、似合う?」

 

「うむ、よく似合っている。 流石は我が主だ」

 

 

ちなみにだがノインはあちらの世界での『UMP9』である。正確にはあっちにUMP9という人形は存在しないのだが、何故か世界が違ってもUMP9と言えばこの見た目である。

まぁ要するに、デカいのだ。加えて彼女は片腕こそ義手だが人間であり、絶賛成長中でもある。ダイナゲートの隠し機能を使って測定したところ初めて会った時よりもわずかに数値が上がっており、今後の成長に期待がもてよう。

 

 

「じゃ、行こうか!」

 

「・・・・・・ん? まさか私もか?」

 

「当然でしょ! そのためにこれもあるんだから!」

 

 

そう言うとノインはダイナゲートを抱え、海へと走り出した。波打ち際まで来るとどこで拾ってきたのかタライに重石をくくりつけ、そこにダイナゲートを乗っけるとどんどん海の方へと進んでいく。暑い日差しと冷たい海水にキャッキャと騒ぐノインだが、海の上まで連れてこられたダイナゲートは正直気が気でない。ある程度防水機能があるとは言え、水没すれば一貫の終わりである。メインブースターがあろうとなかろうと、そこは変わりない。

そんなダイナゲートの心情など全く気にせず、ノインはその横で仰向けにって浮かんでいる。

 

 

「あ〜気持ちいい〜・・・・・」

 

「・・・・今更だが泳げたのだな主よ。 というよりもその義手は大丈夫なのか?」

 

「へ? 大丈夫らしいよこれ。 理屈は知らないけど」

 

 

そう言うと目を閉じ、ひたすら海を漂うノイン。重石付きのタライに自身もくくりつけているので流される心配はないが、にしても油断しすぎではないだろうかとダイナゲートは心配する。片腕義手とは言えスタイル抜群の美少女が一人でいるのだ、襲われる可能性だってあるだろうに。

 

 

(・・・・・・まぁ、本人が楽しければそれでいいか)

 

 

いざとなれば自分が叩き起こせばいいだけのことだ。そう思考し、ダイナゲートは不安定なタライの上でノインを見守り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ〜・・・ヒリヒリするぅ〜・・・・・」

 

「日焼け止めを塗らないからだぞ我が主、それにしてもこんがりだな」

 

「み、見ないでよ! エッチ!!!」

 

 

その日、ダイナゲートは宿の外で一晩過ごしたという。

 

 

 

end




ここまでひどい番外編もそうないだろう。だが後悔はない!
ということで各話の補足とか。

番外30-1
採寸してるだけダヨー、いかがわしくないヨー
きっと人のS心をくすぐるフォートレスちゃんが悪いんだね!

番外30-2
最初期の案ではカリーナと大尉はくっつく予定だった。
この二人は恋人とかよりも親しい友人くらいがちょうどいいと思う。

番外30-3
春田さんが大人しい?まだ助走期間だからね。
Karも大人しい?暴れたらカラビーナが怖いからね。
ダネルも大人しい?代理人が目の前にいなかったら普通だよ。
PKが初々しい?初恋で最初のクリスマスの準備だからね。
WAちゃんが可愛い?WAちゃんだからね!

番外30-4
ノインちゃんに水着を着せたかった、ただそれだけ。
ちなみに番外編で唯一シリーズ化しているこのコーナー、理由は作者が9好きなのと、ノインちゃんには特に幸せになってもらいたいから。
あとダイナゲート(CV.中田ry)を書くのが楽しいから。

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