喫茶鉄血   作:いろいろ

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寒くなってきたので、そろそろね。


第百二十四話:人形ホイホイ

いよいよ冬の寒さが近づいてきた頃。

人間よりはマシとはいえやはり体の底から冷える寒さは耐え難いという人形たちも一定数おり、そんな人形たちのためにグリフィンや指揮官は新たな暖房設備や防寒具を用意することになる。とはいえヒーターやストーブは場所を取るし、何より離れてしまえばさして暖かくもないということで不評。そんな中、人形たちからも厚い支持を受けている暖房器具がある。

 

 

「はい、というわけで『炬燵』買っちゃいました!」

 

「また変わったものを・・・・・」

 

「なにこれ? 机?」

 

「む、裏に何かあるな。 ここから熱が出るのか?」

 

 

若干悴む手で閉店作業を終えた喫茶 鉄血一同、その直後に裏口の呼び鈴が鳴り、宅配業者が大きな荷物を届けにきたのだ。マヌスクリプトが受け取ると三階の共有スペースに持っていき、あっという間に組み立てたのがこの炬燵である。コードを接続して上から一緒に買った布団を乗せ、その上に天板を乗せれば完成となる。

 

 

「で? これも何かの資料?」

 

「いや、最近寒くなってきたからね。 机に向かってても足元が冷えて困ってたんだよ」

 

「つまり、ズボラがしたかっただけということだな?」

 

「ズボラじゃない、効率的な手段なだけだよ」

 

 

そう言ってマヌスクリプトが炬燵の中に下半身を埋める。喋っている間に充分暖かくなっていたようで、足を入れた瞬間マヌスクリプトの表情が蕩けた。

 

 

「んぁあああぁぁぁぁ・・・・・これ最高ぉ〜〜〜〜」

 

「二割増しでだらしないなマヌスクリプト。 しかし、そんなにいいものなのか?」

 

「入ってみればわかるよ〜、そのためにここ(共有スペース)に置いたんだしね」

 

「む、では失礼するぞ・・・・」

 

 

マヌスクリプトにつられる形で、恐る恐る足を踏み入れるゲッコー。そして大した間もおかずにその虜になってしまった。

 

 

「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・」

 

「どう? いいっしょ!?」

 

「こ、これはダメだ・・・・ダメになるに決まってる・・・・・」

 

 

あっという間にハイエンド二体を陥落させた炬燵、恐るべし。しかもいつの間にかしれっとダイナゲートも中に潜り込んでおり、さながら炬燵の猫と化している。

 

 

「まったく・・・・・まぁ今日はもう終わりましたからあまり煩くは言いませんが、程々にしてくださいね?」

 

「「はぁ〜〜〜い」」

 

「はぁ・・・・・ではD、夕食の支度をしますので手伝ってもらえませんか?」

 

「了解!」

 

 

元気よく返事するDを連れて、代理人は一階へと降りていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

一時間後。

一通りの支度を終え、後は出来上がるのを待つだけとなったところで再び戻ってきた代理人は一瞬言葉を失った。

まずマヌスクリプト、もう完全にそこから動く気がないと言わんばかりにPCやら液タブやらを持ち込んで居座っている。次にゲッコー、炬燵に突っ伏すようにしてぐでぇっと座り、これまたどこから持ってきたのかスナック菓子をポリポリと食べている。

二人揃ってもう手遅れな感じがするが、それに加えてなんとリッパーとイェーガー、それとフォートレスも混ざっていた。腰から下を炬燵の中に埋めたまま、フォートレスを真ん中に二人で抱き合うようにしてすやすやと眠っており、彼女たちのお腹の上でダイナゲートもスリープモードに入っている。

搬入、そして組み立てからわずか一時間ちょっとで、喫茶 鉄血の戦力の3/4が炬燵によって陥落してしまった。

 

 

「あらら、みんな仲良しだね!」

 

「これから夕食だというのに・・・・・・ゲッコー、夕食前のお菓子は控えてください」

 

「ん゛っ!? す、すまない・・・・」

 

「マヌスクリプトはそれを片付けてもらいます。 どのみちここから動く気もないようですから夕食はここで食べましょう」

 

「え、マジで? やったぁ!」

 

「それとD、ブランケットを持ってきてください。 夕食までは眠らせてあげましょう」

 

「はぁ〜い。 あ、それ持ってきたら私も入ってていい?」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

「「私らと対応違いすぎない?」」

 

「日頃の行いですよ」

 

 

ぶぅ〜っと膨れる二人に冷たい視線を向けていると、ブランケットを持ってきたDが戻ってくる。そして寝ている三人にふわりと掛けると、自身もブーツを脱いでそろっと足を入れる。

 

「わ、わわっ・・・・・Oちゃん、これすごいよ!」

 

「でしょでしょ!? ほら、代理人も入りなって!」

 

「分かりましたからじっとしていてください。 もうすぐ夕飯もできますからね」

 

 

まるで子供のようにはしゃぐDの様子に、ちょっとだけ興味をそそられる代理人。もはや別人格と言ってもいいDと代理人だが、根っこの部分はやはりオリジナルとそのダミーであり、要するに感性やら好みやらが似通った部分も多くあるのだ。そのDが絶賛するのだから、きっと悪いものではないのだろう。

そんなことを思いながら、代理人はそろそろ出来上がるであろう夕食の様子を見に行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、起きたのですね三人とも」

 

「だ、代理人。 すみません、手伝いもせずに寝てしまっていて」

 

「ご、ごめんなさい・・・・」

 

 

蓋の閉じた鍋と人数分の食器をサブアームも使って器用に運ぶ代理人。上に戻ると寝ていた三人も起きたようで、申し訳なさそうにして座っていた。これがゲッコーとマヌスクリプトならともかく、普段から真面目に働いてくれている(フォートレスは研修中だが)彼女たちが寝ていたくらいではなにも言ったりしない。が、ちょっとだけ嗜虐心をそそる三人に、代理人も乗っかってみた。

 

 

「そうですか・・・・・その割には起きても手伝いにはこなかったですね?」

 

「そ、それは・・・・」

 

「あぅあぅ・・・・・」

 

「・・・・・・ふふ、冗談ですよ三人とも。 さ、ご飯にしましょうか」

 

 

悪戯っぽくクスクス笑うと、鍋と食器を並べていく代理人。蓋を開けると、中からいい香りが広がりとろりとよく煮込まれたシチューが姿を現す。おぉっ!と歓声が上がる中で代理人が人数分の器によそい、それぞれに配るとその場に座り込む。

 

 

「全員行き渡りましたね? では、いただきます」

 

『いただきます!』

 

 

全員で合唱し、熱々のシチューを頬張っていく。その様子に満足した代理人は、そこでようやく目の前の炬燵に意識を向けた。邪魔なブーツを脱ぎ去り、少々はしたないがスカートをめくって足だけを中にゆっくり入れていく。

 

 

「はふぅ〜〜〜・・・・・・・・・・ん?」

 

 

思わず、それこそ代理人が意識すらしていないため息が溢れ、ふと顔を上げると全員が食事の手を止めてこちらを見ていた。主に微笑ましいものを見たという表情とニヤニヤという笑みの二種類に分かれ、後者筆頭のマヌスクリプトなんかはそれはそれはいい笑みだった。

 

 

「・・・・・・・なんですか?」

 

「いやぁ〜〜〜別にぃ〜〜〜〜〜?」

 

 

食事の席でなければとっくにぶん殴っているがそうもいかない、そしてマヌスクリプトもそれが分かっているようでニヤけたままシチューを頬張る。

なんとも言えない敗北感と羞恥心に苛まれながら、代理人はそれを紛らわせるように食事に手をつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ゲッコー」ボソボソ

 

「なんだ?」ボソボソ

 

 

そんな代理人の正面で、マヌスクリプトは隣に座るゲッコーに耳打ちする。先ほどからずっと悪い笑みを浮かべているが、どうやらゲッコーも巻き込んで何かやらかすつもりらしい。

 

 

「ちょ〜っと手伝って欲しいことがあるんだけど、いいかな?」

 

「それは代理人に何かやるということか? 悪いがリスクに見合わない事はやらんぞ」

 

「前に君が欲しがってた服を作ってあげるから・・・・・ね?」

 

「乗った。 で、何をすればいい?」

 

 

リスクに見合ったリターン、そう判断したゲッコーは呆気なくマヌスクリプトの提案に乗ってしまった。

 

ところで炬燵というものはその構造上、足を伸ばしていなければならない状態になる。世に言う『女の子座り』でも一応入れはするが、炬燵の暖かさは半減するだろう。加えて素足で入ることが望ましく、さらに言えばこの炬燵の下で何が起きているかは誰にも見えないのだ。

例えば・・・・・・無防備な足の裏をくすぐられる、とか。

 

 

「・・・・・・・ひゃんっ!?」

 

 

そんな素っ頓狂な声をあげて身を硬らせる代理人に、喫茶 鉄血の面々の視線が突き刺さる。声をあげた当人は顔を真っ赤にしながらコホンと液払いし、一応犯人の目星はついているが後できっちり怒ろうと思い炬燵から足を引き抜く・・・・・・事はできなかった。

 

 

「え、ちょっ・・・・待っ!?」

 

 

突然足に何かが巻きつき、グイッと炬燵の中に連れ戻す。この形状とこんなことができる人物は、この中に一人しかいない。

 

 

(ぐ、グルというわけですか・・・・ゲッコー!)

 

(すまんな代理人、だがちょっと楽しいぞコレ)

 

 

顔だけは周りと同じく心配したような、しかしよく見れば口元がヒクヒクと笑いを堪えているゲッコーとマヌスクリプトに恨めしげな視線を向ける代理人。

だが、調子に乗ったマヌスクリプトがこの程度で終わらせることなどあり得なかった。

 

 

「んっ! く・・・・ふっ、ふふっ・・・くふっ・・・・・・」

 

「だ、代理人、大丈夫!?」

 

((あ〜・・・・これはあの二人の仕業かなぁ))

 

 

フォートレスが割と本気で心配する横で、リッパーとイェーガーは何が起きているのかを察していた。二人の想像通り、炬燵の下では代理人の生足をゲッコーの尻尾型ユニットが拘束し、その足裏をマヌスクリプトと二人がかりでくすぐっているのだ。代理人もなんとか自前のサブアームで応戦するも、中の様子が見えないことに加えてやたらと高性能な尻尾にそれも阻まれてしまい、一向に脱出の糸口が見えないまま悶えるしかないのだ。

 

 

(いいっ、いいよこれ! 妄想が捗るよ!)

 

(あぁ、あの代理人がこんなにアッサリと・・・・・いかん、何かイケナイ気分になってきた)

 

 

圧倒的有利な状況で徐々に気分が高まっていく二人。もう二人の頭からはこの後遅かれ早かれ訪れるお説教のことなど一切抜け落ちており、ただただ今を楽しむばかりであった。

 

・・・・・が、それもそんなに長く続かないのが世の常である。

 

 

「ひゃひっ!?」ビクンッ

 

 

ちょっと調子に乗ったゲッコーが、尻尾の先で代理人の太腿を撫でた。それが今の代理人には少々刺激が強すぎたようで、思わず足が持ち上がってしまう。

そしてその真上・・・・・炬燵の炬燵たりえる部分である発熱機に、巻きついていた尻尾が直撃した。

 

 

「あっっっっっっっっっつ!?」

 

「へ? フゴッ!?」

 

 

ジュッという音と共に飛び上がったゲッコーの肘が、運悪くマヌスクリプトの脇腹を直撃する。そのまま二人揃って転げ回っているうちに代理人は炬燵から抜け出し、荒い息を整えると二人の首根っこをガシッと掴んだ。

 

 

「二人とも少しのぼせてしまったようですね・・・・・ちょっっっっと涼みに行きましょうか?」

 

「「ごめんなさいぃいいいいいいいいい!!!!」」

 

 

ずるずると引きずられていく二人を、残った人形たちは可哀想なものを見る目で見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃぃぃぃ!!! 冷たいぃいいいいいい!!!」

 

「代理人! やりすぎたのは謝るからせめて靴だけでも返してくれ!!!」

 

 

その晩、気温と共に一気に冷えた石畳の上で、裸足のまま二時間ほど放置された二人だったとさ。

 

 

 

end




どこからどう見てもKENZENな話でしたね!
ちなみにこれをリアルでやると嫌われるか喧嘩になるので覚悟と責任を持ってやりましょう。

それでは今回のキャラ紹介!


代理人
普段ブーツで外気にも触れてないんだからきっと敏感なんだろうという思いつきでこんな話になりましたごめんなs待って許してなんでもしまs(銃声)

マヌスクリプト
諸悪の根源。だが炬燵の導入自体は喜ばれた模様。
半纏を羽織り、みかんを摘みながら同人活動に勤しむ光景の違和感のなさにビックリ。

ゲッコー
かっこいい感じの服欲しさに加担した共犯者。ちょっとSが芽生えた。
ちなみに彼女の尻尾は自身の体重を楽々支えられるくらいに強いので、たとえ代理人であろうとも勝負にならない。

D
オリジナルがやられているのに助けてくれない。
ちなみに感覚共有はオフにしてあるが、オンにしていなくて本当に良かったと語っている。

フォートレス
二人に制裁を加える代理人の姿はいつものことなのだが、新参である彼女には恐怖映像として映ったようだ。
乳オンザ炬燵。

リッパー&イェーガー
上司かつ店長がやられていても助けない。
ちなみにこの喫茶 鉄血でのヒエラルキーでいえばマヌスクリプトやゲッコーよりも高い。


最近リクエストが大人しいなと思ってたらリンクを張っていなかったというチョンボ。そりゃそうだよね。
ということで久しぶりに載っけました!質問とか気軽にしてくれても構わないよ!(周りに見られたくないという方はメッセージでも可能です)
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=204672&uid=92543
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