散った命がこの世界に流れ着くのもまた、運命なのかもしれない。
*救済依頼によるコラボ回です。苦手な方はご注意ください。
*今回は特に長いので、時間のない方は後でご覧になられることをオススメします。
「———————-っ!!! はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・」
とある日の夜、田舎の小さな街の自警団程度の小さな司令部の寝室で、指揮官のアウストは息を荒げながら飛び起きた。顔に手を当ててゆっくりと息を整えようとするが、しかし先ほど見た夢が脳裏をよぎり、心臓を締め付けるような感覚に陥る。
「ア、アウスト、大丈夫か!?」
「あ、あぁ・・・・ありがとうリベンジャー」
隣で寝ていたリベンジャーも彼のただならぬ雰囲気に目を覚まし、心配そうに声をかける。
夢は所詮、夢。だがアウストにはそれがどうしてもただの夢だとは割り切れなかった。かつて長く自身の副官を務め、そして自身を殺しにきたあの人形の夢を・・・・・
「・・・・・・Kar98k」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここは、どこだろうか。ゆっくりと目を開けた
「私は・・・・確か・・・・・」
はっきりし始める意識とともに、直前の記憶を思い返す。人気のない通りを歩き、目の前にコートを羽織った女が現れ・・・・・・
そこまで思い出して、自身の腹部を見る。
まるでなにかに引き寄せられるように・・・・・S09地区へと、まっすぐと。
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「どうぞ、ご注文のホットコーヒーです」
「ありがとう代理人」
「ありがとうございます!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・アウストさん?」
どこかぼぉっとしているアウストに、代理人が声をかける。するとようやく目の前にコーヒーがあることに気がついたのか、慌ててお礼を言って口に含み、しかし熱さで舌を火傷する。どこか彼らしくないと思いつつ隣のリベンジャーやリーを見るが、どうやら彼女たちもそう思っているようだ。
「・・・・・アウストさん、なにかお悩みなら話していただけませんか? 直接解決にはならないかもしれませんが、お力にはなれるはずです」
「そうだぞアウスト、いつまでも『大丈夫だ』では済まないんだ」
「それにどう見ても大丈夫だとは思えません。 しかも日に日に悪くなっていますよ」
言うのを渋っていたアウストだったが、そこまで言われてようやくポツリポツリと溢し始める。
発端は数日前、ここ最近では見ることがなかった
「彼女・・・・・Kar98kと一対一で部屋にいるんだ。 薄暗い部屋であいつの表情はわからないが・・・・・手には銃剣が握られてた。 それが夢を見るたびに、ゆっくり近づいてくるんだ」
初めてその夢を見たときは、互いの距離は10メートルくらいは離れていたように思う。ところが直近の夢では2メートルもなく、いつ刺されてもおかしくはない距離になっている。
まるで、本当に彼女がもう一度殺しに来ているかのように。
「アウスト・・・・・・」
「ただの夢さ・・・俺の心が弱いだけだ」
「・・・・いえ、そうとも限りません。 それが予知夢と呼ばれるものである可能性もあります」
「・・・・・人形なのに随分と非科学的なことを言うんだな」
「ここでは日常茶飯事ですよ」
そう言うと彼女は電話に元に向かい、何処かにかけてはまた別のところにもかけていく。
残される形となった三人だが、アウストの手をリベンジャーがそっと包み込むと、静かに、しかし力強く言った。
「大丈夫だ、もしものことがあれば私が守るさ」
「そうですよ、あなたは私たちの指揮官なのですから!」
「・・・・・すまない、ありがとう二人とも」
「・・・・・ということなのです。 サクヤさん、なにか思い当たることはありませんか?」
受話器の先、代理人の友人にしてかつて別の世界で命を落とした人間であるサクヤが悩むような声を出す。代理人の記憶では、彼女は時々向こうの世界の状況を見る、ないしは向こうから何かが流れてくるということがあり、近しい夢を見ている可能性もあったのだ。
「予知夢・・・・ではないけど、そういうのは案外間違ってないかも。 私も変な夢を見たことがあるし、用心するに越したことはないよ。 ただ・・・・・」
代理人の予想通り、やはり彼女も夢という形で何かを感じ取ることがあったようだ。もちろんこれが直接的な解決にはならないが、何かが訪れるのであれば網を張っておくこともできる。
だが、彼女は少し声色を落として続けた。
「ただ?」
「・・・・・その、Kar98kだっけ? その子の顔は見えなかったんだよね?」
「えぇ、そう聞いています」
「そう・・・・ならまだ彼女が彼の命を狙っているとは限らないと思う。 むしろそれが、彼女の何らかのメッセージとも考えられるし、あるいは・・・・・」
「・・・・・彼女も、こちらに来ている」
そう、これが代理人が考える中で最も可能性の高い現象だった。これまでサクヤを含め、ノインやS08地区のダズ・プティ夫婦、カラビーナなどなどあらゆる世界、場所から流れてきた者たちがいる。この世界がそういう世界だからなのかはわからないが、もうこれ以上ないと考える方が無理があるだろう。
「そうなると、彼と鉢合わせたときに本当に殺傷沙汰になる可能性もある。 まして聞いた話ではリベンジャーとKar98kは互いに殺意を抱いていた者同士、可能性は十分あるよ」
「えぇ、私たちも気をつけてはみます。 少なくともこの街に滞在する数日間だけでも」
「こっちも、動かせる娘は出しておくよ。 また何かあったら連絡してね」
通話を終え、受話器を置く。チラッと三人を見るとどうやら先ほどよりはマシにはなったようだが、まだその表情は優れないようだ。
せっかく得た幸せを失わせたくない。そう強い覚悟を持ち、代理人はまた受話器を手に取った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日、思わぬ形で結果が現れる。なんと鉄血工造の輸送部隊が襲撃されたのだ。
場所はS09地区近郊の草原地帯、ちょうど鉄血工造からはS09地区を挟んで反対側に位置するところで、すでに司令部から一部隊が出動している。編成はKarにカラビーナ、そしてこういう事態に即応可能な404小隊の初期メンバー、オペレーターにUMP40。
だがそれとは別に・・・・・何かを感じ取ったのかアウストたちがそこに向かった。
「増援はまだか!?」
「グリフィンの部隊がもうすぐで到着する!」
「じゃあそれまで耐え凌げばいいな!」
そう怒鳴りあいつつ、鉄血工造輸送部隊のAigisたちは盾を構えて守りを固める。襲撃された際に輸送トラックの車輪をやられはしたが、幸いなことに相手はたった一人。流石に足の遅いAigisでは捕まえることは難しいが、増援が来るまで耐えること自体は難しくない。
「レーダーに感! 来たか!?」
「だが反応が少ない・・・・まさか民間人か!?」
「嘘だろオイ!? 流石にそっちまでは手が回らんぞ!」
せわしなくセンサーカメラを動かし、襲撃者と新たに現れた反応を探す。反応があるのは鉄血の信号が二つに人間の反応が一つ、それがすぐそばまで来ると、襲撃者である人形の動きも止まった。
「な、なんだ・・・・?」
「おい、あれって前に聞いた
「マジで!? ・・・・・・すまん、ちょっとトイレに「抜け駆けは許さん!」は、離せっ! もっと間近でみたいんだ!」
ごちゃごちゃと揉めるAigisたちを他所に、襲撃者・・・・・Kar98kは信じられないものを見たかのような顔で立ち尽くし、フラフラと歩き出した。
グリフィンの制服ではないため一瞬判断が遅れたが、その顔を忘れたことなど一度もない。彼のもとで戦い、彼に裏切られ、彼を殺し、しかし彼への未練を立ちきれなかった彼女が待ち望んだ相手。
彼女の指揮官、アウストがそこにいた。
「あぁ・・・・アウスト・・・・・」
まるで夢を見ているような、そんな気分だった。一刻もはやく彼と触れ合いたい、彼を抱きしめたい、そんな思いで進めた歩みは、しかし彼の前に立ち塞がる存在にかき消された。
「っ!? リベンジャー・・・・・」
「Kar98k・・・・・アウスト、知っていたのか?」
「いや・・・・ただ、なんとなく呼ばれたような気がしただけだ」
行手を阻む存在・・・SO10地区での血みどろの地獄の元凶、アベンジャー。かつて殺したはずのソレが、再び目の前に現れた瞬間、彼女の視界は真っ赤に染まった。
なぜ、あなたがそこにいる?彼の隣は私のはずだ、私のアウストを返せ、返せ返せ返せかえせかえせカエセカエセカエセカエセ!!!!!
「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
「っ!? 待てKar98k! こちらはお前と戦う意思はない!!」
「ダメですリベンジャー様! 聞こえてません!」
「チッ・・・・仕方ない、手足をつぶしてでも止める!」
リベンジャーが地を蹴り、Kar98kとぶつかる。長らく戦場から離れてはいたがそこはハイエンド、ブランクを感じさせずにKar98kと渡り合う。
だがかつての冷静さを欠いたKar98kの猛攻は常識を逸脱していた。自身の半身とも言える銃をまるで鈍器のように振り回し、隙あらば銃剣を突き出し、僅かでも距離が開けば狙いもそこそこに引き金を引く。全く先の読めない戦い方に、リベンジャーは徐々に追い詰められていった。
「リベンジャー・・・・リベンジャーっ!!!!」
「ぐっ!? この・・・・」
「リベンジャー様、ダメです!」
振り下ろされる銃を受け止めると同時にリーが叫び、直後に右肩に鋭い痛みが走る。よく見れば彼女が受け止めた銃からは銃剣がなく、それが右肩に深々と突き立てられていた。
「捕まえましたわよ」
「ぎっ!? があああああああ!!!!!????」
銃剣を握る手に力を込め、グリグリと回して傷口を抉る。さらに愛銃までも手放し、右手でアベンジャーの首を掴むとフルパワーで絞め始めた。
「死ね・・・・・死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネシネシネェ!!!!!!」
「離せ! 離せぇ!!!」
リーが引き剥がそうと体を引っ張るも、どこからそんな力が出ているのかというほど微動だにせず首を絞め続ける。ただただ一心不乱に、目の前に女を殺そうとする。
だが、突如横合から何かが思いっきりぶつかり、耐えきれず転がる。ガバッと体を起こし邪魔者を見据え、それがアウストであると分かると戸惑いと憎悪を瞳に宿す。
「あなたは・・・・・そうやってまた「Kar98k!!!」っ!?」
「もう止めてくれ・・・・・頼む」
苦しげにそう言うと、アウストは彼女のもとに歩み寄る。そしてその両手をとり、ゆっくりと自身の首に持っていった。
「お前が本当に許せないのは、俺だ。 殺すなら俺を殺せ・・・・・その代わり、もう戦わないでくれ」
「アウ・・・スト・・・・・」
首に当てられた手に、ゆっくりと力が入る。初めはやや息苦しいだけだったそれが、やがて殺意を持って絞めあげる。リベンジャーたちの声が遠く聞こえ、目が霞み始め・・・・・・・
「そうはさせませんわっ!!!!」
「ゴハッ!?」
「フギュッ!?」
妙に甲高い声と同時に、二人がなんとも情けない声を上げて転がる。絶賛人生の清算中だった二人に飛び蹴りをかましたのは、S09地区のおてんばライフルであるKarだった。しかもさっきの会話が聞こえていたようで、加害者側であるKa98kを放ってアウストの元に行くと、胸ぐらを掴んで激しい往復ビンタをし始める。
「まったく誰も彼も・・・・・なんでっ! そんなにっ!! 死にたがるんですかっ!!!」
「ブッ!? ちょ、ちょっとmヘブっ! 話をkフゴッ!!」
「言い訳無用ですわ!!!」
そんな目の前で繰り広げられる制裁行為に唖然とするKar98k。その情け容赦のかけらもない姿に痛みすら忘れてビビるリベンジャー。それをご褒美だと思い羨ましがるAigis・・・・・取り残されたリーは何もできずに突っ立った。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・・」
「やりすぎですよKar」
「ふんっ、命を粗末に扱う輩には軽すぎるくらいですわ!」
「・・・・・まぁいいでしょう。 さて、ではあとはわたくしの番ですわね」
呆れた様子でカラビーナは転がっている彼女の銃を取り、Kar98kへ渡す。戸惑いながら受け取るのを確認すると、カラビーナは手を差し出して言った。
「Kar98kさん、でよろしいですね? 我々はあなたを
自身と同じ顔の女がそう言い、Kar98kは黙ってその手をとった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いいですかアウストさん、お気持ちは分かりますが勝手に出ていくからこういうことになるんですよ?」
「わ、わかった、わかったからそろそろ・・・・・」
「それに、グリフィンの部隊と共に行っていればリベンジャーが深傷を負うこともなかったかもしれません。 最悪の場合犠牲者が出てしまっていたかもしれないことを自覚してください」
「はい・・・・・・」
「あー、代理人、私は大丈夫だからもうそのくらいで」
「何を言っているんですか? あなたも彼を止めなかったという意味ではお説教ですよ」
「 」
場所を変えて喫茶 鉄血、の三階従業員用フロア。急遽コタツを撤去して置かれた四角いテーブルを囲むようにして代理人とサクヤ、アウスト、リベンジャー、リー、Kar、カラビーナ、そしてKar98kが座っていた。
リベンジャーは応急処置を済ませ、右腕を吊ってはいるが他は異常はない。だがアウストと並んで長々と説教中であり、だんだん顔から生気が抜けてきている。
「・・・・・ふぅ。 さて、
「Kar98kちゃん・・・・さっき話した通り、ここはあなたがいた世界とは別の世界よ」
「えぇ・・・・いまだに信じられませんが、そうなのでしょう」
先ほどまでの鬼気迫る雰囲気はどこへやら、今にも消えそうなほど儚い空気を醸しだすKar98k。一度冷静になり、またあの戦場とは程遠いここの空気に当てられて、会いたいと願っていたアウストを殺しかけたことに対する自責の念が襲ってきたようだ。
一方のアウストは・・・・・もともと彼が逃亡したのが発端であるため気まずいようで、リベンジャーも出来るだけ水に流そうとはしていうがやはりそうもいかないようだ。
「そちらの世界のこと、そしてあなた方のことは聞いています。 それぞれに蟠りがあることも・・・・・事情が事情ですので、部外者である我々がどうこう言うことはできません」
「でも、せっかくこうして話せる場になったんだし、ゆっくりでいいから話してみよう、ね?」
代理人とサクヤがそう勧めるも、四人は互いに気まずそうに顔を見るだけ。
そのまま数分が経った頃、リベンジャーが意を決してこう言った。
「・・・・・・・Kar98k、お前と・・・二人で話がしたい」
「リベンジャー!?」
「そんな、危険すぎます!!」
「・・・・・・・わかりました。 では、隣の部屋をお使いください」
代理人に案内され、リベンジャーとKar98kは二人でマヌスクリプトの部屋に入る。防音なのでそれっきり何も聞こえなくなるが、代理人とサクヤはただジッと待つことにした。
「二人とも不安なのはわかるよ、でも今は信じてあげよう」
「それに、彼女が自ら提案したことです。 任せましょう」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一方の、マヌスクリプトの部屋に案内された二人は互いに気まずいままの空気・・・・・・にはなっていなかった。
いや、気まずいことには気まずいのだがそれ以上にこの部屋の方が気になって仕方がない。
「お、落ち着きませんわね・・・・・」
「そ、そうだな・・・・・」
防音なのでゆっくりと話ができる、そういう配慮なのだろうが代理人も色々毒されているようで、もうこの部屋を見てもどうとも思わなくたっていた。だが今日初めて見た彼女らには少々刺激が強すぎたようだ。
(まずい・・・何か話さないと頭がおかしくなりそうだ・・・)
(この部屋にずっといるくらいなら話していたほうがマシですわ・・・・)
「「・・・・・あの!」」
「「・・・・・・・・」」
「・・・そちらからどうぞ」
「・・・そっちからいいぞ」
「「・・・・・・・・」」
沈黙。
互いに戦場ではあれだけ雑言罵倒をぶつけ合ったというのに、面と向かうとこうも話せなくなるものかと頭を抱えたくなる。
が、流石にそうも言っていられないので、Ka98kはとりあえず聞きやすい内容から聞くことにした。
「あなたは・・・いつからこちらに?」
「・・・もう何ヶ月も前だ。 メンテナンスに向かう途中で襲われてな」
「・・・・・・・え? メンテナンス?」
「ん? あぁ、そうだ。 というか聞いていないのか?」
「え、だって、あなたはあの時私が殺したはずでは?」
「え?」
「え?」
再び沈黙。
しかしそれは気まずいというよりも、互いの話が噛み合わないというところが大きかった。それもそのはずで、リベンジャーとKar98kがいた世界もまた微妙にズレた並行世界の一つであるからだ。なので厳密には、この二人が殺し合っていたわけではないということになる。
「・・・・・そうか、そっちではそういうことになっているのか」
「私もですよ・・・・はぁ、全く何がなんだか・・・・・」
「まぁ、なってしまったものは仕方ないんじゃないか?」
すでにこの世界にいて長いリベンジャーの余裕のある態度が気に触るが、実際来てしまったものはどうしようも無い。聞けば自分や彼女を含めてここに流れ着いてきた者は割といるそうだが、元の世界に帰ることができたという話は聞かなかったらしい。
ではこれからどうするべきか・・・・・そう思い悩むKar98kに、リベンジャーはそっと手を差し出した。
「その・・・・よかったら、うちに来るっていうのはどうだ?」
「え?」
「こう言っちゃなんだが、もう私たちは戦う必要がない。 なら、私たちはもう敵同士じゃない。 和解、とまではいかないかもしれないが・・・・どうだ?」
キッパリと言うリベンジャーだが、差し出したその手はわずかに震えていた。それがなんとなく可笑しく思い、Kar98kはプッと吹き出してしまう。
「な、なんだいきなり?」
「ふふふっ・・・・いえ、戦場では鬼神の如きだったあなたとは似ても似つかない雰囲気なので、つい・・・・ふふっ」
「そう言うお前だって、そんなふうに笑う人形じゃなかっただろ」
「えぇ、そうですね・・・ここまで笑ったのはいつ以来でしょうか」
気がつけば、互いの警戒心はほとんどなくなっていた。それを皮切りに出るのは、やれ尋問が趣味の性悪女だの、やれ真正面から突っ込む突撃脳だの、かねてより言いたかったことを遠慮なしにぶつけ合う。しかもそれはどんどん遡り始め、最終的には根本の原因であろうアウストの話になり・・・・・
「・・・・思い出したらちょっと腹が立ってきましたわ、あとでしっかり言いませんと」
「いいんじゃないか。 どのみち今度は逃げられんだろうし・・・・一日くらいなら貸すぞ?」
「あら、では遠慮無くそうさせていただきましょう」
二人でニヤニヤと笑いながら、気がつけば時計の長針が一周ちょっとも回っていることに気がつく。流石にこれ以上心配かけさせるのも良くないので、二人はどちらからとは言わずに立ち上がった。
そして部屋を出る直前、リベンジャーは振り返ってもう一度尋ねる。
「・・・・・さっきの、うちに来ないかって話だが」
「そうね・・・・・考えておくわ。 それよりも先にやることがあるから」
「・・・・・そっか。 まぁ決まったら教えてくれ」
「ええ」
最後にそう言って、二人は部屋から出た。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ガチャ
「お待たせ〜ってうわっ!?」
「リベンジャー様、大丈夫ですか!? あの女に何かせれてませんか!?」
扉が開くと同時に、涙と鼻水で顔をクシャクシャにしたリーが抱きつく。その後ろでほっとしたような表情のアウストとサクヤ、相変わらずの表情の代理人が座っており、テーブルには何か美味しそうなケーキが乗っかっていた。
「・・・・・リー? 私たちが話している間にお前はあんな美味しそうなケーキを食べてたのかぁ?」
「ふぇ〜ごひぇんなひゃい〜!」
「その様子ですと、問題なかったようですね」
代理人の言葉に、リベンジャーとKar98kは顔を見合わせてクスッと笑う。その様子に代理人も安心したようで、二人分のケーキを切り分けて皿に乗せた。
「お二人もどうぞ。 お二人には私からサービスさせていただきます」
「え? 俺たちは?」
「後でお代をいただきます」
「「えぇ〜〜・・・・・」」
「ありがとうございます代理人・・・・ですが、それは後で食べることになりそうですわ」
Kar98kは困ったように笑うと、自腹と言われて落ち込むアウストの首根っこをガッと掴んだ。
「・・・・・・・え?」
「アウスト、この機会に少し
「え、ちょ、リベンジャー?」
「アウスト、お前もいつまでも過去を引きずってはいられないだろ? 邪魔はしないから
「リベンジャー!?」
「ではリベンジャー、また後ほど」
オホホホという変な笑い声とアウストの悲痛な声は、再びマヌスクリプトの部屋へと消えていった。
その時の彼女の顔は、余計な重荷を捨てたように晴れやかなものに感じた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここは田舎の小さな町。そこに自警団程度の役割で置かれている司令部がある。
そんな司令部の正面玄関で、ちょっと慌ただしく支度する人形たちがいた。
「全く、お前は何回寝坊すれば気が済むんだ!?」
「し、仕方ありませんわ! あんな上質なベッドで寝たことなんて、あっちではなかったんですのよ!?」
「お二人とも、急がないと電車が出ちゃいますよ!」
「おーい三人とも! 弁当忘れてるぞ!」
そんな三人の後ろから、グリフィンの制服を纏った男が駆け寄る。三人は慌てて受け取り、急いで玄関の扉を開いた。
「じゃ、くれぐれも怪我のないように。 第一部隊、行ってこい!」
「あぁ、行ってくる!」
「行ってきますわ、アウスト!」
「行ってきます、指揮官!」
辺境の司令部の、そんな日常。
end
シリアスが続かない病、そして戦闘描写がうまく書けない病・・・・・書けるようになりたいなぁ泣
というわけで今回はムリーヌ様の作品『黒鷲の黙示録』よりKar98kちゃんです!同作者様の別作品『とある復讐者の追憶』の鉄血エンドの後になります。
ちなみにすでにここにいるリベンジャー、リーとは辿った世界が少し違うので、両者の認識に違いがあります。
ではではキャラ紹介
Kar98k
今回流れてきた娘。リベンジャーらと同じ(厳密にはちょっと違う)世界からやってきた。
詳しい事はあちらの作品を参照。
リベンジャーと互角に戦えるため、戦闘力はかなり高い。
リベンジャー&リー
以前こちらに流れてきたハイエンドとリッパー。
現在は辺境の司令部に所属している。
アウスト
時期的にはリベンジャーたちよりちょっと前に流れ着いた。
現在は辺境の司令部で指揮官を務める。
Kar&カラビーナ
せっかくだから出そうかなと思って。
その結果名前がやたらとややこしいことになってしまった。
代理人&サクヤ
片やこんな事態に慣れきった人形、片やこういう事態に陥った人間。
流れ着いてきた者たちにアドバイスしたりする際にはよく呼ばれる。
404
カラビーナたちと共に出撃したけど一切出番がなかった。
正直ここは誰でもよかった