「諸君、今日集まってもらったのは他でもない・・・新たなスキンについてだ」
グリフィン本社の社長室・・・・から扉一つで繋がっている完全防音の会議室。そこに集まった技術者たちを前に、グリフィン社社長のクルーガーはそう言った。
今日集められたのはグリフィンの取引先であるIoPからペルシカと17labの主任、そして鉄血工造からはゲーガーとユウトである。前者はともかく後者がこのメンツなのは、アーキテクトは言うまでもなくサクヤもこの手の話題では暴走しがちだからだ。結果、まとも枠でこの二人が出向いたと言うわけだ。
「この時期、ということはまたクリスマススキンか新年スキンか?」
開始早々、ゲーガーがそう言う。もうハロウィンも終わってクリスマスを待つばかりとなったこの時期、考えられるのはそれくらいだった。まさかこの時期にもう水着とは言い出さないだろう。
だが、返ってきたのは別の答えだった。
「うむ、そう考えるのが妥当ではあるが、今回は違う」
「と、言うと?」
「君たち、『スキン』のイメージとはなんだ?」
スキン、それは基本的に同じ服装で任務に就く人形たちにさらなる彩りを加えるものである。見た目と実用を兼ね備えた、いわば普段とは違う煌びやかな鎧、とも言える。
また、そんな特別感をより出すために季節やイベントにちなんだスキンが用意されることが多い。別にその時期だけしか使えないというわけではないが、真冬に水着を着せる指揮官はそんなにいない・・・・・・多分。
「そう、スキンにはそれぞれに合う時期があり、つまり合わない時期もある・・・・・それはもったいなくはないだろうか?」
クルーガーが大真面目にそう言う。
ちなみにスキンと普通の服の一番の違いは、修復ポッドで治るか否かである。どれだけ丈夫で重厚な素材で作ったとしても服は作り直さなければならず、逆にスキンであればどれだけ豪華であろうともたとえ布切れ一枚であろうとも、修復ポッドに行けば直るのだ。
後方支援がメインの部隊はともかく、前線で体を張る部隊はお洒落をしたければスキンに頼るしかない。
「そこで、君たちにはシーズンを問わないスキンを開発してもらいたい」
「ほぉ・・・・・」
「面白そうじゃない・・・」
「いやいやちょっと待て」
なんの疑いもなく乗っかろうとする16、17labの主任二人に、まとも枠のゲーガーがストップをかける。これがアーキテクトだったらもう誰も止まらないのだろうがそうはいかない、また変なスキンが出回って巡り巡って自分たちに迷惑を被るなら止めるしかない。
「なんだ同志ゲーガー、不満でもあるのか?」
「誰が同志だ。 そもそもIoP製の人形のスキンだろう? 我々のメリットが薄いぞ」
「ん? 別に鉄血のスキンでも構わんぞ?」
「むしろ彼女らの服をグリフィンの娘たちが着る・・・・なかなか良いではありませんか」
どうやらスキンを作れればなんでもいいらしい。ちなみにここまで社長が気合を入れている理由は、単純に目の保養のためである。
尚も納得しないゲーガーだが、その隣のユウトがなんと賛成側に回った。
「では、『鉄血工造スキン』というのはどうでしょうか」
「おいユウト!?」
「大丈夫ですよゲーガー姉さん、それにここでグリフィンやIoPとより強いパイプを持つ方が重要です」
「いや、それはそうだが・・・・・・」
ユウトもまとも枠だ。まとも枠なのだが真面目に物事を見すぎて、目の前にいるのが変態どもであることを一切考えていない。ゲーガーの心配は、どうやら伝わらなさそうだ。
「それにゲーガー姉さんもスキンを作って貰えばいいんじゃないですか? いつまでもその格好のままっていうのも」
「出かける時はちゃんとした服を着ているぞ」
「でも普段はそれですよね? ちゃんと服もあるのに」
「汚れてしまってはもったいないだろ?」
「スキンなら気にしなくていいですよ」
「・・・・・・・・」
ちょっと揺らぎ始めるゲーガー。まぁ確かにサクヤからプレゼントしてもらった服も出かける時にしか着ず、正直ちょっと申し訳ない気持ちはあったのだ。
「まぁ実はもうサクヤからはスキンの案をもらってるんだけどね」
「えっ!?」
「そしてもう作ってるんだよね・・・・・アーキテクト協力のもとで」
「なら断る」
絶対ろくなものじゃない、サクヤの案であれば少しは安心できるが作ったのが
しかしそんなゲーガーの意思などはなから聞くつもりもなく、部屋の扉を空けて給仕用の人形がハンガーを持ってくる。
「ってなんで三着もあるんだ!」
「なんでって・・・・サクヤが三枚送ってきたからだよ。 これがそれ」
「『見た目重視』に『機能性重視』・・・・・・もう一枚が「おぉっとそれは君が見ちゃいけないやつだよ!」
ハンガーにかかっているスキンは三つ、うち一つは何故か真っ黒な布をかぶせられており、今の反応を見るにソッチ用なのだろう・・・・・遠回しなお誘いだろうか?
それはともかく、二人は残り二つを手に取ってみる。一つはラフなインナーにタイトスカート、そして鉄血工造のマークが描かれた白衣だ。見た目重視というのは対外的なものなのだろう。
一方の機能性の方は、メンテナンスなどを担当するゲーガーに合わせた作業着。ポケットなどがいくつもついており、なるほどこれは便利そうだ。
「よかったら着てみなよ、隣の部屋にスキン適合用の装置もあるから」
「・・・・・無駄に準備がいいな。 ならとりあえずこれを」
「うむ、ではユウト君だったかな? 君と話したいことがあるからその間に話そうか」
「わかりました」
そう言ってゲーガーは作業着の方を手に取り隣の部屋へ、その間にクルーガーはユウトを交え、スキンの話を進めるのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バンッ
「おいっ! なんだこれはっ!!!」
数分後、そこそこ重い扉を物凄い勢いで開けたゲーガーの額には青筋がくっきり浮かんでいた。今の彼女はスキンを適用した姿なのだが、何故か胸元のファスナーが上まで上がっていなかった。そのためそれなりのでかい二つの実りが上半分くらい見えている。
「ゲ、ゲーガー姉さんなんて格好してるんですか!?」
「そんなの私が聞きたい! おいペルシカっ、
「え? そういう注文だったからだよ?」
そう言われて、バッとサクヤの指示書を見る。そこにはポケットのサイズやら配置やらが事細かに書かれており、その一つとしてファスナーのストッパーの位置と、なんか言い訳みたいに長い説明書きが添えられていた。要約すれば通気性重視らしいが、たぶん描いてる途中で魔が刺したのだろう。
「まぁ使い勝手良さそうだからいいんじゃない?」
「んなわけあるか!」
「あまり暴ればいほうがいいぞ、今にも溢れそうだ」
「ぐぬぬぬぬ・・・・・・!」
あと一言二言ぐらい文句を言ってやろうとゲーガーは席に戻り、そこでさっきよりも書類が増えていることに気がつく。というか手元に置かれていた案を書くための白紙が減っている。
しかも増えた書類にはどれも、鉄血工造のハイエンドとそのスキンが描かれていた。
「ってユウト! なんだこれは!?」
「ち、違うんですゲーガー姉さん! その、日頃の感謝に何かを送れないかなと思って相談して・・・・・」
「そう、これは彼の純粋な好意だぞゲーガー君」
「それを無碍にするとは、彼も報われませんねぇ」
「・・・・・・何が目的だ?」
ここまで来れば、彼らが何かを企んでいるのは目に見えている。というよりもすでに手元に書類の束ができているのでバレバレである。
そして17labの主任は、その束をゲーガーの前に差し出した。
「せっかくですので、彼の案である鉄血工造スキンを採用することにしました。 ですのでここにサインをいただければと」
「まぁ書いてるのは『データの一部を使います』とか『情報は公開しません』とかのありきたりなやつだよ」
「ちなみに断ることもできるが・・・・・そのスキンは無かったことにしてもらうしかないな」
脅迫じゃねぇか。
というツッコミを入れつつ、隣のユウトを見る。まぁ彼の気持ちもわかるし、今回のこれも別に怪しいものはなかった。強いていうならばこれがどの人形のスキンになるのかぐらいだが・・・・・まぁ誰でも結果は変わらないだろう。
そんなわけで、若干納得はいかないもののサインだけ書いて渡す。
「これでめでたく同志だね、ゲーガー」
「喜びよりも悲しみが大きいのはなんでだろうな?」
「大丈夫だゲーガー君、じきに染まる」
「全然大丈夫じゃない!」
後日、鉄血工造スキンの予約が始まった際にはサーバーがパンクするほど予約が殺到したらしい。
「なるほど、それがこのスキンですか」
「えへへ〜、お母さんとお揃いですね」
「ふふ、似合ってますよM4」
喫茶 鉄血は今日も平和です。
end
鉄血スキン、出してくれませんかねぇ(チラッ)
まぁいつものスキンガチャ風に考えるなら5、6体分くらいでしょう。ちなみに私が考えるスキンはこんな感じ
↓
代理人:M4
スケアクロウ:AUG
処刑人:トンプソン
ハンター:IWS2000
イントゥルーダー:DSR-50もしくはMk48
デストロイヤー:P7
下級モデルなら↓
リッパー:Vector
イェーガー:スプリングフィールド
ガード:SPAS-12
ヴェスピド:AK-47
アイギス:45姉
では今回のキャラ紹介!
クルーガー
部下である指揮官たちのモチベーションのためにスキンを考案する有能な社長。
ペルシカ
彼女の手にかかれば大概のスキンは作れる。
ちなみに持ち込んだ案はナーススキン。
17lab主任
世の男の希望。
持ち込んだ案はスポーツスキン。
ゲーガー
抑止力には力不足だった。
完全に忘れているがスキンはもう一着ある。
ユウト
ユウト君、大人の世界とはこういうものなのだよ。