喫茶鉄血   作:いろいろ

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どんな高カロリー食でも潰せば0カロリーというあの理論が大好きです。


第百三十話:自給自足

カランカラン

「「「こんにちはー!」」」

 

「いらっしゃい・・・・・・ませ」

 

 

元気の良い挨拶とともにやってきた客を見て、代理人は一瞬固まった。にこやかな笑みを浮かべてやってきたのは銃種もバラバラな、それでいて共通の特徴を持つ三人の戦術人形・・・・・腹ペコ人形FF FNC・アストラ・SPAS-12だった。

言うまでもなく彼女たちはよく食べる。肉も魚も甘味も、それはもう清々しい勢いで食べていくことで有名であり、給料の多くもそれに消えているという。一人一人ならまぁたくさん食べるなぁで済むが、これがまとめて来られると話は変わる。注文分の料金は払ってもらえるので問題ないが、数日分の在庫がなくなるのは覚悟せねばならないからだ。

 

 

「今日はなんとも・・・珍しいですね、三人で来られるなんて」

 

「はい! 代理人さんにお願いがあって来ました」

 

 

来るまでに何か買って食べ歩いて来たのか、口をモグモグさせながら喋るFNC。

 

 

「実は私たち、気づいたんです!」

 

 

と意気込みつつもショーケースをガン見しよだれを垂らすアストラ。

 

 

「お店で食べすぎるとご迷惑がかかる、なら自分たちで作ってしまえば問題ないと!」グゥ〜〜〜

 

 

言いながらお腹を鳴らすSPAS。

 

 

「「「というわけで! ケーキの作り方を教えてください!!!」」」

 

「は、はぁ・・・・・なるほ、ど?」

 

 

とりあえず入り口で突っ立っているのもなんなので、店の奥へと案内する。さもないと、気が変わった彼女らがショーケースのケーキを食べ尽くしてしまうかもしれないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、皆さんが作りたいのはケーキということでよろしいですか?」

 

「「「・・・・・・・・・ジュルッ」」」

 

「み・な・さ・ん?」

 

「「「だ、大丈夫です!!!」」」

 

 

店の厨房へとやってきた代理人と食いしん坊三人組。さて早速臨時お料理教室(ケーキ編)を始めようかという矢先、厨房に保存してあるケーキに釘付けになる。すでに表に並んでいるものから、これから並ぶであろう新作、ホールやロールケーキなどなど・・・・・そんなのが並んでいれば目移りするのも無理はない。

このまま放っておけば目を離した隙に片っ端から食われてしまうかもしれないので、早速始めることにした。

 

 

「では始めたいと思いますが、皆さんはどんなケーキを作りたいんですか?」

 

「フルーツ盛り盛り!」

 

「濃厚なチョコ!」

 

「シンプルなロールケーキ!」

 

「お願いですから方向性くらいは合わせてください」

 

 

それぞれの好み全開な三人に頭を抱える代理人。とはいえせっかく頼ってくれたのに無下にするわけにもいかず、とりあえず簡単な基礎を中心に教えることにした。

少なくともこの三人なら、ムチャな素人アレンジはしないだろうからだ。

 

 

「それでは、まずホールのケーキを作っていきましょう。 基本的にはこれの応用と派生ですからね」

 

「「「はぁ〜い!」」」

 

 

こうして代理人と腹ペコ三人娘によるケーキ教室が幕を開けたのだが、いざ始まってみると三人とも結構まともに料理できるようだった。少なくとも代理人がつきっきりで見ていないといけないような場面はほとんどなく、()()()()()終始順調に進んでいった。

 

問題はそれとは全く別のこと。この三人にとってある意味苦行ともいえる環境だからこそのことだった。

 

 

「Oちゃん、新しいケーキ出していい?」

 

「えっ!? ケーキ!?」

 

「集中してください」

 

「代理人、パフェに使う苺はこれでよかったか?」

 

「わぁ! 美味しそ〜!!!」

 

「よそ見しない!」

 

「アップルパイ焼けたよ〜」

 

「全部くださーい!!!」ガタッ

 

「座ってなさい!!!」

 

 

厨房にあるのは何も試作ケーキとかだけではない。冷蔵庫から出てくる食材やオーブンで焼かれたデザートが横切るたびに作業の手が止まり、目を見開いて匂いに釣られていこうとする。代理人もなんとか留めているが、もし三人が本気でそっちに向かえば止められる自信はない。

 

 

「皆さん、終わったら食べられますから頑張ってください」

 

「そ、そうよね!」チラッ

 

「うぅ〜・・・焼き立て〜・・・」チラッ

 

「ひ、一口くらい・・・・」チラッ

 

「 」(無言で銃を構える音)

 

「「「ごめんなさい!」」」

 

 

そんなこんなで予定の時間を大幅に超えながらもなんとか一通り教えることができた代理人。あとはレシピ本なんかを見ながら作ればできるはずなので、一応はこれで終わりにしておいた。

完成したケーキをご満悦で眺める三人の横で、代理人はグッタリと机に突っ伏している。

 

 

「代理人ありがとう!」

 

「これで今年のクリスマスケーキには困らないわ!」

 

「夢のケーキバイキング(一名様)ができます!」

 

「よ、喜んでもらえて何よりです・・・・・」

 

 

そう言って三人のケーキをそれぞれ箱に詰め、保冷剤を入れて手渡す。渡された三人は厨房を出て出口へと向か・・・・・わずにそのまま空いている席に座った。

 

 

「いやぁガンバったらお腹すいちゃった!」

 

「焼き立て♪ 焼き立て♪」

 

「とりあえず全種類ください!」

 

 

あれだけ甘ったるい空間にいたのにまだ食べられるのか。

もはや尊敬の域にまでいきそうな三人にそう思いながら、代理人は注文の品と、食べ過ぎ厳禁のカードを取りに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

その数日後。

喫茶 鉄血宛に何やら厳重に梱包されたものが届く。『揺らすな』とか『傾けるな』とか『要冷蔵』とかやたらと書かれており、これを運んできた宅配の苦労が窺える。

 

 

「差出人は・・・あら、この前の三人ですね」

 

「あぁ・・・在庫がガッツリ減ったあの三人か」

 

「ね、開けてみたら?」

 

「それもそうですね・・・・・・・あら、これは」

 

 

箱に入っていたのはちょっと小ぶりのケーキが一つ。そのケーキに乗っかっていた板チョコには、『いつもありがとう!』というメッセージが書かれていたのだった。

 

 

end




百貨店やケーキ屋に並ぶケーキを見て思いついた話。この三人を足してもきっと幽々子とかペコリーヌには及ばないんだと思う。

というわけで今回のキャラ紹介!

FF FNC
腹ペコもぐもぐ娘。立ち絵からして伝わる腹ペコキャラで甘党。ハロウィンで書けなかった分ここで食べてもらおう。

アストラ
腹ペコ2号。ご飯十杯はきっと丼なんだと思う。食べた分は腹や二の腕ではなく胸に行く。

SPAS-12
腹ペコV3。ショットガン実装前からロード画面に出てきてた。こんなのが編成拡大でこられたら在庫がなくなってしまう。

代理人
S09地区の頼れるお姉さん。なんだかんだ人形たちの胃袋を掴んでいる。日頃の業務の傍らで新作を作り、時々試供品として出している。

食べ過ぎ厳禁カード
一部の人形用に作ったもので、これをテーブルに置いておくとある一定ラインを超えての注文ができなくなる。何気にGPSやらセンサーやらが盛り込まれており、隠してもバレてしまう。


投稿ペース不安定・・・・なのはいつものことなのでご容赦ください。今年はできればあと四話くらいは上げたいところですね。

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