喫茶鉄血   作:いろいろ

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靴下は飾ったか?
寝る前のお祈りは?
ベッドの上でワクワクしながらサンタさんを待つ心の準備はOK?

では、メリークリスマス!
*24日に投稿できそうにないのでフライング投稿です。


第百三十二話:メリークリスマス!

12月24日、ここ一ヶ月ほどで大いに盛り上がりを見せてきたイベントがついにピークを迎える。クリスマス・イヴである。

町の至る所にイルミネーションや出店が並び、夕方以降は仕事や学校終わりの人波がドッと押し寄せる。賑わいを見せる中でも特に繁盛しているのが、クリスマスケーキを扱う店たちだった。

 

 

「お待たせしました、こちらがご注文頂いていたケーキです」

 

「メリークリスマス! ご予約されていた方ですね? すぐお持ちしますね!」

 

「蝋燭は何本お付けしますか?」

 

「ん? 誕生日も兼ねているのか? ではメッセージカードも付けておこう」

 

 

喫茶店ということで普段からケーキを振る舞っている喫茶 鉄血もまた、クリスマスケーキの列ができた店の一つだ。といっても路地裏という点と事前予約分のみということで長蛇の列と言うほどではないが、それでもかつてないほどの列ができていた。以前に腹ペコ娘たちの料理教室を開いたときにあったケーキの一部は、この時のための試作品だったというわけだ。

 

 

「ありがとうございました! ・・・・・ふぅ、やっと少し落ち着いたね」

 

「えぇ、覚悟はしていましたがここまでとは思っていませんでした」

 

 

軽く息を吐き、少々疲れ気味に笑う代理人。初期からいるイェーガーやリッパー、代理人のダミーであるDはまだ軽く疲れたなくらいで済んでいるが、これほどの列を体験したことのなかったマヌスクリプトとゲッコーはもうヘトヘトだった。

それでも客の手前、笑顔を絶やさないようにはしているがちょっと無理している感は否めない。

 

 

「二人とも、店も落ち着きましたし少し休んでは?」

 

「大丈b・・・・いやすまない、少し休ませてもらおう」

 

「私もちょっと休憩〜・・・・・」

 

 

ちょっとぐったりしながら奥へ消える二人。予定ではあと二時間くらいは予約の人もおらず、また店内の客もあまりいない。二人が抜けても問題ないだろう。

そしてそんなタイミングを見計らっていたかのように、この店の常連が現れはじめる。

 

 

「おやペルシカさん、ラボかどこかでゆっくり過ごされると思っていたのですが?」

 

「いや、なんか準備があるからって追い出されちゃって・・・・」

 

「代理人! ケーキとココア!」

 

「ふふっ、わかりました。 すぐお持ちしますのでかけてお待ちください」

 

 

やってきたペルシカとSOPを案内し、代理人は注文の品を用意しはじめる。今日はなんだか知った顔が来る気がして、少し楽しそうに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というのがさっきまでのお話。気がつけば店内のほとんどがそんな顔ぶれになっていれば、喜ぶとかよりも別の方に意識が働く。

 

 

「あの、皆さん他に行くところはないんでしょうか?」

 

「いや、折角だからどこかに行こうかと思ったんだが・・・・・」

 

「どこも人が多くて、疲れてしまって・・・・」

 

「結局ここが落ち着くもん。 ね、416!」

 

「そうね、美味しいケーキもあるし」

 

 

店内の多くを占める人形カップルたちの返答にため息をつく代理人。別に来て欲しくないわけでもないしむしろ喜ばしいことなのだが、もっとこう・・・・・クリスマスにふさわしい過ごし方とかがあるんじゃないだろうか?

 

 

「代理人、それは人それぞれよ」

 

「まぁ、私たちはハンターといれればそれで幸せだからね」

 

「くくっ、可愛いことを言うんだなお前たち」

 

 

惚気で返されてしまった。とはいえ彼女らの言い分はもっともだし、そもそも他人の過ごし方に口を出す筋合いもない。本人らが幸せならそれでいいだろう。そんな彼女らだが、カップルで来ていてケーキがあるのだからやるべきことは大体同じだった。

 

 

「いやぁ、ラブコメの波動に満ち溢れてるねぇ!」

 

「休憩は終わりですかマヌスクリプト?」

 

「十分! むしろこの光景だけで無限に働けるよ!」

 

 

ノリとしてはコミケに近いね!と鼻息を荒くしながら持ち場に戻るマヌスクリプト。流石に今日ばかりは何もしないとは思うが、一応警戒はしておいた方が良さそうだ。・・・・・まぁ最悪縛り上げて部屋に閉じ込めておけば問題ない。

とそんな中、新しい客が扉を開けて現れる。そこにいたのは間違いなく来ないと思っていた彼だった。

 

 

「あらユウトさん、珍しいですねお一人でなんて」

 

「こんにちは代理人姉さん、まぁ色々あって」

 

 

そんなユウト曰く、二人で過ごしたいというサクヤとゲーガーたっての希望でラボを追い出されたらしい。アーキテクトも同様なのだが、先に出て行ってしまいどこにいるのかさっぱりわからないという。

で、困ったからとりあえず来たらしい。

 

 

「なるほど・・・・とりあえずお掛けください」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「あ、こっちの席が空いてるから座りなよ!」

 

 

そう言われてユウトはマヌスクリプトに連れられて奥の席に座らされる・・・・・と今度はそこにさらに椅子を二つ追加し、ユウトを挟むように配置した。

突然のことにユウトも代理人も、というかマヌスクリプト以外全員固まる中、止めようとした代理人よりも先にマヌスクリプトが動いた。

 

 

「準備完了! OKだよアーキテクト!」

 

「この瞬間を待っていたよマヌスクリプト!」

 

『うわぁ・・・・・』

 

「・・・・・またあなたたちですか・・・・」

 

 

いつのまに・・・・というかおそらくマヌスクリプトの手引きだろうが、店の奥から元気よく現れたのは行方知れずだったアーキテクト。こめかみを抑えて深くため息を吐く代理人の額には若干青筋が浮かんでいるようにも見えるが、そんなのはお構いなしにアーキテクトは喋りだす。

 

 

「ユウト君! 今日は君にプレゼントがあるのだ!」

 

「嫌な予感がするので拒h「おっと君に拒否権はないよ!」・・・・えぇ」

 

「さぁ準備ができたようだから・・・・二人ともカモン!」

 

 

アーキテクトが指を一回だけパチンと鳴らすと、店の奥に続く通路からプシャーっとCO2ガスがとびだし(アーキテクトが勝手に設置)、それが晴れるとなんとM16とROが現れた。

しかもいつもの格好ではなく腋や足などの露出の多い、所謂ミニスカサンタというやつである。

 

 

「ゆ、ユウト!」

 

「ユウトさん!」

 

「「メリークリスマス!」」

 

( °д°)

 

 

唖然とするユウトに、今更恥ずかしくなってきたのか顔を真っ赤にする二人。だがマヌスクリプトに手招きされて覚悟を決めたのか、二人はユウトの両隣に置かれた椅子に座るとその腕を掴み、

 

 

「ユウト・・・・い、一回しか言わないからな」

 

「き、聞き逃さないでくださいよ」

 

「え? えっ?」

 

「付き合ってくれ!」

「付き合ってください!」

 

 

チュッ

言うと同時に二人は顔を近づけ、ユウトの両頬に口付けした。ギャラリー、特に身内であるAR-15・D-15・ペルシカ・SOPは口を開けたまま固まっている。当然だろう、あんなに乙女なM16も積極的なROも見たことないのだから。

だがその静寂も束の間、ワッと歓声が起こり祝福する。さっきので全てを使い果たしたのか、二人ともこれ以上にないくらい真っ赤になって俯いてしまっているが。

 

 

「ちょ、ちょちょちょちょっと待って下さい! 僕は二人のうち一人を選ぶなんて・・・・」

 

「いや、選ばなくていい」

 

「私たち二人と、です!」

 

「えええええ!? で、でも二股なんて・・・・」

 

「安心して下さい」

 

「それは人間のルールであって・・・・・・私たち人形には当てはまらない!」

 

 

暴論、しかも都合の良い時だけ自分たちをモノ扱いである。が、かなり異例とはいえハンターとAR-15、D-15のカップルも存在しており、決して非現実的なことではない。というか性能向上を理由に複数の人形に指輪を渡す指揮官だっているのだ・・・・・・と言われてしまえば何も言い返せなくなる。

 

 

「で、でも・・・・・」

 

「ユウトさんは、私たちのことが嫌いですか?」

 

「い、いや、そういうわけでなく・・・・・」

 

「強制するつもりはないが、私たちの気持ちに嘘偽りはない」

 

 

正直かなり卑怯な手ではあるが、それくらい彼のことを想っているからこそだ。チラッと代理人に救援の目を向けるが、困ったように微笑むだけで干渉するつもりはないらしい。

悩みに悩んだ結果、ユウトが出した答えは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・よ、よろしくお願いします」

 

「ぃやったぁああああ!!!!」

 

「ユウトさん大好きです!!!」

 

 

感極まって泣きながら抱きつく二人に、ギャラリーから拍手が飛び出す。特に保護者でもあるペルシカは感動のあまり泣き出しており、Dももらい泣きである。資料のためにと構えていたスケッチブックを、マヌスクリプトは放り投げた。

その様子を見ながら、代理人は涙を拭うDを手招きで呼び、厨房へと急ぐ。

 

 

「しかし、随分大胆な手に出たな二人とも」

 

「それ、ハンターが言えること?」

 

「416! 新しい家族の誕生だよ!」

 

「まだそういうわけではないけど・・・・でも、おめでとう」

 

「良゛か゛った゛・・・・ヘリアンみたいになったらどうしようかと・・・・・」

 

「そ、それは言い過ぎじゃないかなペルシカ」

 

「・・・・・あれ? そういえば代理人は?」

 

 

 

 

 

「三人とも、おまたせしました」

 

 

カウンターから聞こえてきたその声に、皆一斉に振り返る。そこには頬に少しクリームをつけた代理人と、何やら大きめの箱の乗ったトレーを持ったDが立っていた。代理人とDはユウトたちの席まで行くと箱を置き、せーので開ける。

 

 

「「「わぁ!!!」」」

 

「「おめでとうございます!」」

 

 

中から現れたのは色とりどりのフルーツケーキ。そしてその上に三本の蝋燭が立ち、てっぺんがちょうど真ん中で重なるように斜めになっている。その根本には簡単にではあるが、三人の顔を模した砂糖菓子が添えられている。

 

 

「ど、どうしよ・・・・」

 

「ゆ、ユウトさんが吹き消して下さい・・・・」

 

「じゃ、じゃあ三人で一緒にやろう・・・・せーのっ」

 

 

フゥーっと同時に息を吹きかけ、蝋燭の火を消す。再び歓声と拍手が巻き起こる中、Dにこの場を任せて代理人はアーキテクトとマヌスクリプトを捕まえた。

 

 

「さて、二人とも?」

 

「私たちはやり切った、後悔はない」

 

「煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

 

「いや、なんでそんなにドヤ顔なんですか・・・・・・はぁ」

 

 

息を吸い、ゆっくり両手をあげる。それに合わせて二人はキュッと目を閉じるが、訪れたのはポンと手を乗せられる感覚だった。

 

 

「「・・・・・・へ?」」

 

「無断で部外者を裏口から通したこと、お客様を無断で巻き込んだこと、その他にも色々と言いたいことはありますが・・・・・・・今回は不問とします」

 

「「だ、代理人・・・・・・」」

 

「・・・・・・二人とも、お疲れ様でした。 喫茶 鉄血を代表して、お礼申し上げます」

 

 

二人は顔を見合わせるとニコッと微笑み、代理人を連れて皆のもとに戻る。

たまには大はしゃぎするのも悪くない、そんなクリスマスだった。

 

 

end




やりました(一航戦並感)
ユウトとM16、ROに関しては実は前からクリスマスでくっつけようと想っていまして、でもどっちかとくっつくとどっちかがフラれる、そんなムードはこの作品のクリスマスには相応しくないと想った結果








『どっちもくっつけちゃえば良いんじゃね?』

という神のお告げを聞きまして、こうなりました。
多分これでいいはず!

というわけでキャラ紹介!


416&9
ナチュラルにいちゃつくカップル。夜はもちろん・・・・・

ハンター&AR-15&D-15
この前例がなければ違った結果だったかも

MG5&PK
セリフのみで名前は出なかったがいた。あれから亀の歩みで進んでいるらしい。

ペルシカ&SOP
保護者にして娘と恋人関係という作中屈指の無茶苦茶カップル。そんな論理感を無視するのが科学者という意味不明な言い分がある。

ゲッコー
今回は大人しくしてもらった。

マヌスクリプト&ゲッコー
今回はいい方向でのトラブルメーカー。サクヤとゲーガーにそれとなく二人でいるように勧め、同時期にM16とROを焚きつける。ユウトは多分喫茶 鉄血に行くので、先回りして諸々の準備、そして全責任を負う。

代理人&D
最後のケーキは、スポンジ部分だけできていたケーキにクリームとフルーツを大急ぎで盛り付け、全アームフル稼働で作った砂糖菓子を添えた。
本来使う予定ではなかった分を使ったが、特に気にしていない。

ユウト&M16&RO
結果的にこうなった。ちなみに前回は結局ヘタれた。
これから長い時間をかけてどちらかを選ぶのか、それとも最後までこのまま行くのか・・・・・それはまだ誰にもわからない。
祝え(命令)

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