喫茶鉄血   作:いろいろ

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大掃除にあたって最大の敵、それは長く読んでいなかったコミックたち!
たまに読むと面白くて一気見して・・・・・気がついたら日が暮れ始めてるんだ。


第百三十三話:今年も色々ありました

年の瀬が迫る頃のS09地区。多くの商店は既に店を閉め、年明けに向けて大掃除を始めている。年末決算や在庫確認なんかの業務的なものから、文字通りホコリひとつ見逃さない掃除まで、一年でこの日だけ店をひっくり返すようにしてくまなく掃除する。

 

それは当然、飲食業である喫茶 鉄血も同じである。

 

 

「三階のワックス掛け終わったよー!」

 

「お疲れ様です。 皆さん、しばらくは三階には上がらないようにしてくださいね」

 

「二階の掃除もあらかた終わったぞ。 ここもワックスをかけるのか?」

 

「えぇ、一気にやってしまいましょう。 それが終わったら一度休憩にします」

 

「ダイナゲート(ワックスブラシ)、GO!」

 

 

椅子も机もその他雑貨類も全て撤去した二階スペースを、後ろにワックスを浸したブラシをくっつけたダイナゲートが走り回る。

これでしばらくは一階以外が使えず、しかも二階と三階から撤去いてきた家具類が置かれているため掃除も進められず、ということで喫茶 鉄血一同は休憩となった。

前日で年内の営業は全て終了し、今日一日で大掃除を終わらせるために朝から動き始めた代理人たち。普通、三階建ての飲食店をたった一日で終わらせるなど至難の技なのだが、そこはハイスペック揃いの喫茶 鉄血なので問題ない。

狭苦しい店内からテーブルと椅子を外に出し、ケーキとコーヒーや紅茶を並べておやつタイムに入った。

 

 

「いやぁ〜疲れたぁ〜」

 

「まだまだだぞマヌスクリプト、終わったのは上二階の床や壁だけなんだからな」

 

「えぇ、これからまず上に運ぶテーブルなどを磨き上げ、それが終わってから一階の掃除です」

 

「・・・・・・聞くんじゃなかった」

 

 

グッタリと机に突っ伏すマヌスクリプトに苦笑する代理人たち。とはいえ、今年に限っていえばそこまで念入りに掃除しなくてもそこまで汚れてはいないのだ。というのも、一度改築リフォームがあったおかげでボロい部分や汚れた箇所が全てきれいになっており、あとは精々半年程度で積もった分くらいだ。

テーブルや椅子にしてもそこまで凝ったデザインのものではないので、たいして苦労もしないだろう・・・・・単純作業にはなるだろうが。

 

 

「おや代理人さん、今日は大掃除かい?」

 

「あら、こんにちは。 えぇ、見ての通りです」

 

「ふふふ、こういう時は人形さんが羨ましく思うね。 この歳になると一部屋掃除するのも一苦労さ」

 

「よく言うよ、おばあちゃんまだまだ元気じゃんか」

 

「嬉しいことを言ってくれるね。 じゃ、また年が明けたらお邪魔するよ」

 

「あぁ、いつでも歓迎だ」

 

「では、良いお年を」

 

 

通りすがった老人を見送り、ふと大掃除中の喫茶 鉄血を見上げる代理人。

思い返せば、今年も色々なことが起きたものだ。トラブルもあれば騒がしい事件もあり・・・・・というかなにもない日の方が少ない気がする。

 

 

「Bar鉄血がオープンしたのも今年だよね」

 

「前からあったように思うが・・・・・まだそんなものなのか」

 

「えぇ、それにいろんなお客様が訪れました」

 

 

そう言って視線を移した先には、これまで訪れた()()()()()()()()()()()が置いていった品の数々。コインにルビーに小さな鐘に写真に・・・・・・

 

 

「あの薬莢は・・・・・あぁ、あの発砲事件の時か」

 

「というか転送装置ってのが一番存在感あるよね」

 

「ほんと、この店って魔境か何かなのかな?」

 

「あの鐘、鳴らしてみない?」

 

「やめた方がいいですよ、せっかく警告してもらいましたしね」

 

 

さらに視線を移せば、喫茶店にはあまりにも不似合いな衣装の数々が眠る大型クローゼット。そしてそれを見ながら、代理人がポツリと呟いた。

 

 

「・・・・・そういえば、あなた達が来たのも年内でしたよね」

 

「ん? そういえばそうだな」

 

「あ〜、最初は私たちと代理人だけでしたね」

 

「倍以上にまで増えるとは・・・って痛っ!」

 

「ふふっ、ダイナゲートも最初からいましたよ」

 

 

ある時の実験でDが生まれ、サクヤがこっちに来てから始めて作ったマヌスクリプトが現れ、アーキテクトが無断で作ったゲッコーが現れ、アーキテクトが徹夜テンションで作り上げたフォートレスが現れ・・・・・・

 

 

「ほとんどアーキテクトのせいですね」

 

「ま、まぁまぁ代理人、おかげで賑やかになったんだしさ」

 

「ですが、結局他所に行ったものの他にも色々来ましたよね、違法ハイエンドたちが」

 

「・・・・・お年玉は彼女だけ無しにしましょう」

 

「あはは・・・・・そう言えば、サクヤさんもこの世界の人じゃないんだよね」

 

 

Dがそう呟くと、話題は異世界から来た人間や人形に移る。今でこそ鉄血工造のトップ3にいるサクヤ、世界を旅しているノイン、S08地区でカフェを営む夫婦に、辺境の町の司令部でのんびり過ごす指揮官と人形二人。

化物を主に持つ二人の人形、人が化け物へと変わる町から流れ着いた少女、怪物を狩るために生まれた銃、覚めない悪夢の中で夜明けを目指した女性、異教徒と聞くと撃ちたくなる衝動を抱えたトンプソンにの女性などなど。

 

 

「・・・・・ほんと、なんなんだろうねここは」

 

「もしかしなくてもこの店、呪われてる?」

 

「幽霊騒ぎもあったし、あながち間違いでは・・・・・」

 

「ふふっ、いいではありませんか。 人も人形も、それ以外の誰であっても訪れる店というのは」

 

「代理人も肝が座ってるよ・・・・・」

 

 

呆れつつも代理人らしいと納得する彼女らに微笑みながら、代理人もコーヒーを一口飲む。そして思うのだ、誰が来ても「美味しかった」と言ってもらえる一杯を淹れようと。

少し冷たい風が吹き、代理人は軽く体を伸ばしてから言った。

 

 

「さて、そろそろ再開しましょうか」

 

「そうだね、じゃないと日が暮れちゃうし」

 

「ところで、これ日が沈むまでに終わらなかったらどうなるの?」

 

「皆さんで野宿ですよ、そこの公園で」

 

「こんな文明の進んだ街で野宿・・・・だと・・・・?」

 

「は、早く掃除してしまいましょう!」

 

 

代理人の冗談っぽくない冗談に脅されて急いで取り掛かる。それを見ながらクスリと笑い、ふと自分もよく笑うようになったと気づく。

 

 

(人形も変わるもの・・・・・ふふっ、私も例外ではなかったようですね)

 

「Oちゃん、上のワックス乾いてたよ!」

 

「わかりました。 上に運ぶものだけ綺麗にして運びましょう」

 

 

 

end




本当に色々あったよ・・・・見返してみて色々、ね。
ということで今回は、そんな喫茶 鉄血メンバーの初期と今の違いを書いてみようかなと思います。

代理人
全体的にはあまり変わっていないが、見返してみるとちょっと硬いというか、まだ冷たい印象があった気がする。
ちっちゃくされたり着せ替えさせられたりとそれなりに弄られている。

イェーガー
ハイエンドが増えたせいで出番が減った。こちらもあまり変わりはなく、昔も今も代理人の忠実な部下といった感じ。

リッパー
イェーガーとほぼ同じ。
ちなみにこの二人はそれぞれの一号機であり、稼働時間もずば抜けて長い。

ダイナゲート
実は最初からいる。
喋らないし登場回数も少ないのでキャラの変化もほぼないが、たまに出てきては役に立つ。

D
ハイスペックダミーちゃん。
他の通常盤ダミーの出番はなくなったが、この娘は気がつけば人気者になった。
ほぼほぼ代理人とは別人格に育ったが、ダミーなのでオリジナルの好みなんかが結構残っている。

マヌスクリプト
トラブルメーカーだが、これを作ったのはあのサクヤさん。登場初期よりもテンションがやや上がった気がする。

ゲッコー
登場初期から随分変わった。見境なく口説くのが無くなった・・・・わけではなく描写がないだけ。それでも結構減ったけど。
男っぽい口調なのは変わらないが、なんとなく柔らかくなった気がする。

フォートレス
喫茶 鉄血ではもっとも最近来た娘。
ロリ巨乳、人見知りというキャラだが、喫茶 鉄血のメンバーとは打ち解けた。
マヌスクリプト、ゲッコー、フォートレスはリクエストから頂いたキャラで、中にはめちゃくちゃ細かい設定が盛り込まれている娘もいるのだが・・・・・・基本的に戦闘描写のないこの作品では表に出ない設定も多い。


・・・・・・うん、キャラも書く側も、一年で結構変わったんだなと思います。
今年はもう一話あげる予定ですが、来年もどうぞよろしくお願いします。

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