喫茶鉄血   作:いろいろ

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今度こそ、これが今年最後の投稿!これ自体はわりと前に書いていたんですが、コラボもあったしね(汗
今年も色々ありましたが、無事年を越せそうです笑

コミケ行きたかったよぉおおおおおお!!!!!!


第百三十六話:鉄血工造の年末

「戸締りよし・・・・・皆さん、そろそろ行きましょうか」

 

『はーい』

 

 

12月31日、大晦日。今年も残るところ十数時間といったところで、喫茶 鉄血の面々は店を後にし街の駅まで向かう。今日はこれから全員で鉄血工造に向かい、鉄血一同で新年を迎えるのだ。

駅のロータリー着くと、そこには鉄血工造のロゴがデカデカと描かれた輸送車が停まっており、その傍らには輸送部隊を取り仕切る人形の姿があった。

 

 

「お、待っていたよ代理人」

 

「お待たせしました、ゲーガー。 わざわざ来てもらってありがとうございます」

 

「いや、大勢で移動は大変だろうからこれでいいんだ。 さ、乗ってくれ」

 

 

促され、荷台を改造したスペースに乗り込んでいく。全員が乗ったのを確認すると、ゲーガーはハンドルを握り車を出した。

 

 

 

 

 

 

 

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「いらっしゃい代理人ちゃん、待ってたよ」

 

「喫茶 鉄血の皆さんも、お疲れ様です」

 

 

鉄血工造のロビーで皆を出迎えたのは、彼女らも何度かお世話になっているサクヤとユウトだった。といっても服装はいつもの白衣ではなくラフな部屋着で、ある意味新鮮な光景ではある。

 

 

「これで全員揃ったね」

 

「あら、私たちが最後でしたか」

 

「みんな意外と早かったぞ。 というか昨日には着いてたやつもいたからな」

 

「今みんなで自己紹介してるところですよ」

 

 

思いの外、というかおかしいくらい早くに揃ってしまったようだ。代理人たちは夕食の準備があるので早めに着いたつもりだったのだが・・・・・それだけ楽しみだったということか。

 

 

「せっかくみんな揃う日だからね。 ささ、立ち話もなんだし早く行こ」

 

 

サクヤとユウトに連れられて奥の会議室・・・をちょっとばかり改造した団欒ルームへとやってくる。入るや否や何故かちょっと酒臭い匂いが流れ、部屋の真ん中のテーブルでアマゾネスとネイキッドが向かい合って腕相撲していた。

その足元にはすでに空になった缶が数個転がっており、早くも始めてしまっているようだ。

 

 

「ぐぬぬぬぬ・・・・・」

 

「くっ・・・ふぅううううううん!」

 

「こらー! まだ飲んじゃダメって言ったでしょ!」

 

「お! きたか代理人、どっちに賭ける?」

 

「トラブルになるのでやめてください執行人・・・・というか処刑人は?」

 

「キッチンにいるよ。 ガキは・・・・・あっちでスケアクロウと遊んでる」

 

「うぉおおおおおらああああああ!!!!」

 

「うがっ!? 痛たたたたたたた!!!!!!!」

 

 

若干顔が赤いアマゾネスがガッツポーズし、一瞬腕が変な方向に曲がったネイキッドが転げ回る。隅の方でスケアクロウがお得意のパフォーマンスで少女の興味をひいている。子供相手に教育上よろしくないと判断されたようだ。

他の人形たちもそれぞれ交流を深めているようで、ジャッジがデストロイヤーとドリーマーを誘って『無い者同盟』を組もうとしていたり、ウロボロスとイントゥルーダーがハンターを捕まえて根掘り葉掘り吐かせようとしたり・・・・・まぁまぁにカオスだった。

 

 

「はぁ・・・・ごめんね代理人ちゃん、きて早々こんな有様で」

 

「構いませんよ。 それに皆さん仲良くされているようで安心しました」

 

「それもそうだね。 じゃあみんな揃ったことだし、準備も始めよっか」

 

「えぇ、私とDはキッチンに行きます。 処刑人もいるようですから」

 

「あ、では私たちはノーマル用の宿舎に向かいますね」

 

「久しぶりに顔を出しておきたいですから」

 

 

そう言うと代理人とDは食材やら何やらを持ってキッチンへ、イェーガーとリッパーは同期や妹たちに会うために席を外した。残ったマヌスクリプトとゲッコーも他のハイエンドたちに挨拶に行き、ちょっと出遅れたフォートレスはジャッジに目をつけられて追いかけられる。

 

 

「ひぃ!? 何? 何!?」

 

「背が私とほとんど変わらないくせになんだその実りは!? 半分よこせ!!!」

 

「あひゃひゃひゃひゃ!!! ジャッジが、泣きながら追いかけてる!」

 

「笑ってないで止めてあげようよドリーマー・・・・・」

 

「確保ぉ!!!!!」

 

「ひにゃあああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おい、いまあのデカパイちゃんの悲鳴が聞こえたぞ」

 

「サクヤもいるでしょうし大丈夫かと・・・・それよりも手伝って頂いてありがとうございます処刑人、アルケミスト、ユウト」

 

「よせよ、他人行儀なんていらないぜ?」

 

「『手伝え』の一言があれば十分だよ」

 

「代理人姉さんはみんなの長女ですから」

 

「ふふっ、Oちゃん愛されてるね!」

 

 

手際良く調理しながらそんな会話を始める五人。時計を見えばまだ昼の二時を少し回ったところで、今から始めても早すぎる・・・・・わけでもなく、今日はちょっと早めに夕食にするつもりだ。

 

 

「一〇〇式さんたちがたくさん下さいましたから・・・・年越し蕎麦を」

 

「どれだけ普及させたいんだあいつ・・・・・いや、こりゃもう布教か?」

 

「でもいいんじゃない? 美味しそうだし」

 

「えぇ、なので早めに夕食にしましょう」

 

 

用意した食材を切っては鍋に入れ、あるいは炒める。ノーマル人形たちは彼女らで楽しむらしいのでハイエンドと人間組だけだが、それでもそこそこの人数とそれなりの大飯食らいがいるので結構な量である。

 

 

「パスタやドリアなら分けやすいでしょうし・・・処刑人のそれは、シチューですか?」

 

「あぁ、流石にこの人数分をってなるとこれくらいしか作れねぇし・・・なによりあいつが喜ぶんだよ」

 

「ははっ! 処刑人も随分と子煩悩になったな、この親バカめ」

 

「親バカで結構、あいつが笑えるならなんだっていいさ」

 

「子供、かぁ・・・・・」

 

「あ、ユウトもうそんなとこまで考えてるの〜?」

 

「えっ!? 違っ、Dさん!」

 

「その時は教えてくださいね、お祝いしますから」

 

「代理人姉さんまで!?」

 

 

からかい、からかわれながら手を動かし続ける。結局ユウトが拗ねてしまうまで弄ってしまい、ちょっとだけ反省するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「お待たせ〜!」

 

「皆さん、テーブルを空けてくださいね」

 

「お、待ってました!」

 

「お腹すいた〜!」

 

「あれ? アーキテクトいつ来たんだ?」

 

「失敬な!? 最初からいたよ!」

 

「正確には、隣の部屋でマヌちゃんと密談だったけどね〜」

 

「ちょっとサクヤさん!?」

 

「貴様ら、また身内をネタにするつもりか?」

 

「「めっそうもございません!!!」」

 

 

そんなこんなで時刻は五時過ぎ、代理人らが運んできた料理の匂いにつられてアリのようにテーブルに集まる。

大皿のパスタとドリア、ボウルごと持ってきたサラダに鍋まるごとのシチュー、それ以外にも酒のつまみをいくつか並べて準備が整う。それに合わせてグラスに飲み物が注がれ、飲み過ぎない程度という警告の上でアルコール類も用意する。

 

 

「揃ったね? じゃあ代理人ちゃん、乾杯の音頭を」

 

「え? 私ですか?」

 

「他に誰がいるんだよ」

 

「じゃあ私が!」

 

「なら私が!」

 

「座ってろ変態ども」

 

「「ノリ悪〜い」」

 

「うるさい!」

 

「ふふっ、わかりました。 では・・・・・」

 

 

スッとその場に立ち、注目する仲間たちを見渡す。皆気持ちがはやるのかすでにグラスを持ち、いつでも掲げられるようにスタンバイしている。

ちょっと苦笑しつつ、代理人は喋る始めた。

 

 

「皆さん、今日はお忙しいなか集まっていただき、ありがとうございます。

・・・・・少し堅苦し過ぎましたね。 ですが、本当に皆さんと無事に年を越せそうで嬉しく思います。そして、この一年でこれほど仲間が増えるとは思っても見ませんでした」

 

「お? 私ら感謝されてる?」

 

「結果的に、だ。 調子に乗るなよアホ」

 

「アホ!? 今アホって言ったね!?」

 

「・・・・・ふふ、まぁ出会った経緯は少々問題有りでしたが、今ではいい思い出です。

さて、今日はこのメンバーで新たな年を迎え、祝いましょう。 また来年も、良い一年となるように・・・・・乾杯」

 

『乾杯!!!』

 

 

雑にグラスを鳴らし、中身を一気にあおって料理に手をつけ始める。やはりというべきかアマゾネスは結構な勢いで食べ始め、たくさん食べればよく育つという()()()理屈を信じるジャッジもやけ食いのように食べ進める。

 

 

「というかやけ食いだよね、なんかあったの?」

 

「何かも何も・・・軍の連中、揃いも揃って私をチビ扱いしやがって!」

 

「いや、実際そのt「はいドリーマー、あーん!」モゴッ!?」

 

「お前も遠慮せずに食べろよ?」

 

「・・・・・・・」コクッ

 

「姉さん、食べないのか?」

 

「いや、最近体重が・・・・・」

 

「私はいっぱい食べるサクヤさんが好きだぞ」

 

「いただきます!」

 

「新手の惚気かよ・・・・」

 

 

そんなこんなであっという間に皿も鍋も空っぽになり、飲める者は飲みながら、それ以外は皿を片付けながら話に花を咲かせる。

すでに代理人は奥へ引っ込んでおり、今頃年越し蕎麦の準備でもしていることだろう。

 

 

「代理人も相変わらずだな、こういう時くらい私らに任せればいいのに」

 

「ま、それが代理人らしいといえばらしいが」

 

「うん、そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・♪」

 

「あ、やっぱりいた」

 

「年末になってもやることは変わりませんね代理人」

 

「リッパーにイェーガー・・・・あちらにいなくてもいいんですか?」

 

「年が変わる前くらいに戻りますよ。 今は代理人のお手伝いです」

 

 

それだけ言うとリッパーとイェーガーは代理人の隣に立って食器を洗い始める。半分諦めたような感じの代理人はそれ以上特に何も言わなかったが、片付けもあらかた終わった頃にポツリと喋りだす。

 

 

「・・・・・いつもありがとうございます、二人とも」

 

「? どうしたんですか急に」

 

「いえ、店を開いてからずっとついてきてもらって・・・・・今までお礼をいう機会もあまりありませんでしたから」

 

 

蛇口をひねり、水を止める。濡れた手を乾いたタオルで拭い、二人に向き直って手を伸ばした。

 

 

「本当にありがとうございます。 来年も、よろしくお願いしますね」

 

「・・・・・・こちらこそ」

 

「よろしくお願いします、代理人」

 

 

握手を交わし、次いでなんとも言えない気恥ずかしさに苦笑する。年が変わっても何か変わるわけではないが、それでもきっと、必要なことなのだろう。

 

良いお年を。

そう言い合って、それぞれの場所へと戻るのだった。

 

 

end




はい、これにて今年の『喫茶 鉄血』の更新は最後となりました!
いやぁ一年はあっという間に過ぎますね笑

では、今回はあえてキャラ紹介とか無しで、簡単な後書きにしたいと思います。

それでは皆さま、良いお年を!

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