喫茶鉄血   作:いろいろ

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新年早々に更新が遅れるという失態。いや、年末年始の特番が悪いんだ。
というわけで今回は糖分増し増しでお送りします。

あ、G11の正月スキン買いました笑


お正月編・B面

代理人がS09地区の司令部で挨拶回りする少し前、一足早くS09地区についていたハンターとユウトは、閉店中の喫茶 鉄血の前に車を止めて歩いていた。

それぞれの集合場所はバラバラだが、路地を抜けるまでは同じなので並んで歩いていく。

 

 

「・・・そういえばユウト、お前はこれが初デートか?」

 

「うっ・・・意識しないようにしてたのに・・・・・」

 

「ははっ! まぁあいつらはお前に惚れたんだ。 どこに行っても楽しいだろうさ」

 

「簡単に言って・・・・・そういうハンター姉さんの初デートはどうだったんですか?」

 

「私か? もちろん緊張したさ、お互いほとんど目を合わせられないくらいにな」

 

 

今でこそ公衆の面前でも平然といちゃつくハンターたちだが、最初は誰でも同じようなものらしい。むしろここまでこれるくらいに長い付き合いだからこその余裕だろう。

ということで、今回はこの二人の元旦デートの様子を見てみることにしよう。

 

 

 

 

 

ハンターの場合

 

元鉄血工造ハイエンドモデル、ハンターとその彼女であるAR-15及びD-15。彼女たちの馴れ初めは以前に知っていただいたとは思うが、それはまぁ糖分に満ち溢れたものであった。

何気にこの地区におけるカップルで、かつ鉄血製人形の中で最も古参なカップルである彼女らの元旦デートもまた、のっけから糖分全開である。

 

 

「あ、ハンター」

 

「やぁ二人とも、待たせたか?」

 

「ううん、全然」

 

 

と言いながらも待ってましたとばかりにハンターに抱きつき、両側から頬にキスをする。ハンターもハンターでそれをしっかり抱きしめると、それぞれにキスを返す。見ているこっちが胸焼けを起こしそうだが、これはまだ序の口。

まず三人が向かったのは、地区の大通りで開かれている出店。比較的大きな街であるS09地区では、新年を迎えたこの日に街のあちこちで出店が開かれる。大通りのものは食べ歩くものから衣服や雑貨などの露店もあって一番大きな規模となる。

 

 

「やっぱりすごい数ね・・・」

 

「街の端から端まで連なっているからな。 あ、D-15は初めてか?」

 

オリジナル(AR-15)の記憶は受け継いでるけど、実際に見るのは初めてよ」

 

「そうか・・・ならまずはあっちだな」

 

 

そう言ってハンターが連れて行ったのは、アクセサリー類の店が多く集まる一角。その中でもなぜか大きな店ではなく、少しこじんまりとした店の前で立ち止まった。

 

 

「あぁ、ここね・・・・懐かしい」

 

「ここって確か・・・」

 

「あぁ、AR-15と二人で来たときに初めて立ち寄った店だ。 その時にネックレスをプレゼントしたんだが、お前にはまだだったな」

 

「おや、今年も来てくれたのかい?」

 

 

そんな三人に、店の主人が声をかける。去年も来たから覚えていた・・・というより、決して訪れる客の数が多くなく、しかもそれが人形同士のカップルとなれば忘れようがない。

すると何も言っていないのに突然店の品物をいくつか入れ替え始め、見るからに高そうなアクセサリーが表に出てくる。

 

 

「おい主人、値札が変わってないぞ?」

 

「あぁ、変えとらん。 その値段で売ってやろう」

 

「・・・去年も思ったけど、なんで初めから売らないの?」

 

「これはワシが現地で仕入れた逸品だ、ワシが売りたい相手にしか売らんよ」

 

「そんなのだから店の規模も変わらないのだぞ主人、まぁ助かるから構わないが」

 

 

さてオリジナルの記憶では知っているというD-15も、さすがに現物を見ると軽く目が回り始める。別に彼女が貧乏というわけでもなく、むしろあのAR小隊の専属オペレーターであるためそこそこの給料はもらっている。

が、それでも目が眩むほどの価値があると認識している。

 

 

「私が選んでも構わないが・・・・気に入ったのがあれば言ってくれ」

 

「ふぇっ!? え、いや、でも、その・・・・」

 

「ほぉ、そこの娘さんの時と同じリアクションだな」

 

「まぁ、一応『私』だから・・・・・気持ちはわかるわよD-15」

 

 

わたわたと狼狽るD-15だが、残念なことにどれがどのくらいの価値かは正確にはわからない。なのでとりあえず小さめのものを手に取ってみると、

 

 

「おぉ、なかなかいいチョイスだ。 ちなみにそれの元値は・・・・これだな」

 

「はうっ!?」

 

「主人、あまりからかわないでやってくれ」

 

「性格悪いって言われるわよ」

 

「安心せい、もう言われとる」

 

「は、ハンター・・・お家が買えるわよ・・・」

 

「(可愛いなぁ)大丈夫だD-15、そこまで高くない・・・・実際はそれの三分の二くらいだろう」

 

「・・・・・・チッ」

 

 

店主の舌打ちが聞こえた気がしたが務めて無視する。AR-15もからかってやろうかと思ったが、昨年の自分がそうだったので流石にやめておいた。

結局選びきれないということでハンターに任せ、小ぶりのアメジストが埋め込まれた指輪に決める。プレゼントなのでハンターが買ったのだが、そこでも慌てて自分の財布を取り出すD-15を止めるという場面があったりした。

 

 

「さて、じゃあ次に行こうか」

 

「も、もう高い買い物はなしでいいよハンター!」

 

「あら? まだまだあるのにもういいの?」

 

「こらこら、あまりいじめてやるな」

 

「AR-15のいじわる!」

 

 

やいやいと騒ぎながらも、三人は屋台を回り始める。食べ歩いたりあーんしあったりD-15をいじったり逆にいじられたら店の人にちゃかされたり・・・・・とまぁ甘々カップル感を漂わせながら年明けお祭りムードを楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウトの場合

 

ハンターと別れたユウトは、恋人二人との待ち合わせ場所に着くと同時に頭を抱えたくなった。先ほどハンターが言った通り、ユウトは今回が初デートとなる。ただでさえこの世界の土地勘やら流行に疎い上、さらにこれまた右も左も分からない年始の出店。

男なら女性をリードするものという若干前時代的なことで頭を悩ませるユウトだったが、大した解決策も出ないうちに待ち人がやってきてしまう。

 

 

「あ、あけましておめでとう、ユウト」

 

「今年も、よ、よろしくお願いします!」

 

「あけましておめでとうございますM16さん、ROさん」

 

 

ユウトの彼女たち、M16とROはそれぞれ私服にマフラーとちょっとしたアクセサリーというシンプルながらオシャレな服装だった。基本的に会う時は普段の仕事着だったのでドキッとするユウトだが、それはあっちも同じようで互いに固まってしまう。

 

 

「えっと・・・・・とりあえず、行きますか?」

 

「あ、あぁ、そうだな」

 

「ではっ、まずどこに行きましょうか?」

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

 

再び沈黙。

ユウトとしてはここで気の利いた場所に連れて行きたいところなのだがそもそも場所も知らず、ROもこういうことには疎いのでオロオロしている。そうして必然的に、残ったM16に決めてもらうことにした。

 

 

「え、いいのか?」

 

「えぇ、お任せしてもいいですか?」

 

「まぁそういうことなら・・・・じゃ、ちょっと付き合ってもらうぞ」

 

 

そう言うとやや上機嫌に歩き始めるM16。その足の向かう先は大通りから少し外れた路地のようで、ユウトとROはどこへ向かうのだろうと首を傾げながらついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ぷはぁ〜! やっぱり寒い日はこれ()に限るぜ!」

 

「ってここ酒屋しかないじゃない!?」

 

「あ、代金は僕が出しますから好きなだけ飲んべください」

 

「ユウトさん!?」

 

 

S09地区の年明け屋台は何も大通りだけではない。街にいくつかある公園でもいくつか店が出ており、大小様々な路地の中にも出店が並んでいる。もともとある店自体はまだ閉まっているのだが、それぞれが出店として商売を始めるため品揃えも豊富なのだ。

そして三人が向かったのは、酒関係の屋台だけが集まった小さな通りである。

 

 

「ごめんなさいユウトさん、せっかく誘っていただいたのに姉が御迷惑を」

 

「いえ、楽しんでくれたのならそれで十分ですよ。 ほら、ROさんも一杯」

 

「え、あ、ありがとうございます」

 

 

チラッとM16を見ると、もうすでに何軒か先の屋台まで行っている。もともと物流の規制が少ない欧州の街ということもあって世界中から酒が集まりやすく、それがこの狭い路地に密集しているのだから酒好きのM16にはたまらないだろう。

だが、ROはあえてM16を自由にさせていた。

 

 

(M16には悪いですが、ユウトさんと二人きりになるチャンスですから)

 

 

意中の人と二人きり、そしてそこそこお酒が入っているということで、ROはちょっとだけ積極的になってみることにした。何かあればお酒のせいにできるという言い訳もあったのだろう。

いかにもちょっと酔ってますという雰囲気で、ユウトの腕に抱きついた。

 

 

「ろ、ROさん?」

 

「ごめんなさい、少し酔ってしまったみたいで・・・・」

 

 

さらに思い切って体を預けるようにしてみる。

一見落ち着いているように見えるゆうとも、内面では大いに焦ることになった。初デートで緊張しているというのに突然彼女が腕に抱きつき、それなりにあるモノを押し付けてきているのだ。

決して自分が欲に塗れた獣だとは思っていないが、理性が削られているのは確かである。

 

 

「と、とりあえずそこのベンチで休みましょうっ!」

 

 

ややテンパりながらROをベンチに座らせると、ユウトは屋台で水をもらってこようと立ち上が・・・・・ろうとして、腕を引かれて止められた。

酔っているという割にはしっかりと掴んだ腕を離さないROの顔は真っ赤だったが、それが酒のせいかどうかはわからない。ただ、いつもなら気恥ずかしさが勝つようなことも、今ならできた。

 

 

「い・・・・一緒に、いてくれなきゃ、いやです」

 

「っ!?!?」

 

 

そんなことを言われて、なんとも思わない男などいるだろうか。まして経験0なユウトからすれば破壊力抜群の一言である。

ユウトはそのままベンチに座ると、改めてROを見る。抱きつかれた腕に彼女の鼓動と熱が伝わり、それが一層彼女を扇情的に映す。互いに視線を交わすと、無言のまま顔を近づけ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいストップ」

 

「え?」

 

「な!? M16!」

 

 

なんともいいタイミングで帰ってきたM16が、二人の間に手を伸ばして遮った。その顔はしてやったりといった感じで、いい雰囲気を邪魔されたROからすれば憎たらしいことこの上なかった。

 

 

「一人だけお楽しみとは感心しないなぁ、RO?」

 

「一人で飲み歩いているM16が悪いんですよ・・・!」

 

「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いて」

 

「ほら、ユウトさんもこう言っていますよ」

 

「それもそうだな・・・・それじゃあ」

 

 

そう言うとM16はユウトを挟んでROの反対側に座り、ROと同じくユウトに抱きつく。さらにその方にコテンと頭を乗せ、上目遣いでユウトの顔を見上げた。

 

 

「わ、私もこうしてても・・・いいか?」

 

「わ、私だって!」

 

「わわっ!? ふ、二人ともくっつきすぎですって!?」

 

 

二人の美少女に挟まれ、理性と衝動の板挟みになるユウト。

そんな三人に、酒屋のオヤジたちの微笑ましい視線が向けられるのだった。

 

 

end




いよいよ正月休みも終わりですね。皆さん、そろそろ現実に引き戻される覚悟を決める時ですよ?

では、今回のキャラ紹介!

ハンター・AR-15・D-15
この作品でもっとも長いカップル。D-15が加わった経緯もAR-15の惚気から。
もう細かいことでは照れなくなったが、変なところで恥ずかしがったりする。なんとかハンターをおちょくろうとするも、大体カウンターを喰らう。多分原作からかなり遠いAR-15。

ユウト・M16・RO
屋台といえば酒、というイメージがあったのでこんな感じに。
イメージ的にはユウトとM16が大体同じ背丈、ROがやや小さめという感じ・・・・・ROに見上げてもらえてM16が方に頭を乗せてくるとか羨まけしからん!

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