ということで、時間をかけてでもきっちりお返しさせていただきたいと思います。
まず今回は『無名の狩人』様の『ブラッド・ドール』とのコラボです!
https://syosetu.org/novel/196745/2.html
ところで今回のイベント、代理人の本気が見れて嬉しく思います(血涙)
異界渡りの鐘、というものがある。これは以前、とある人物がやって来るきっかけとなった小さな鐘であり、当然この世界の物ではない。
それを鳴らすことで世界の壁を超えて人を呼ぶことができるというなんとも摩訶不思議な代物だが、以前に訪れた人物の警告に従って以降一度も鳴らしていない。
が、まさか落っことしただけで鳴ってしまうとは思っていなかった。
というわけで今日の喫茶 鉄血にいるのは、異世界の狩人ローウェンと、彼のパートナーらしき鉄血工造のアルチゼンだ。ローウェンの方は二度目ということもあって落ち着いており、パニックになったアルチゼンをなんとか宥めて今はゆっくりとお茶を飲んでいる。
「やはり旨いな。此処の紅茶は」
相変わらず防塵マスクをつけたまま紅茶を啜るローウェンに代理人は苦笑しつつ、隣で美味しそうにケーキを頬張るアルチゼンのカップに紅茶を注ぐ。
見た目だけなら親子に見えなくもない(といってもローウェンの場合ほとんど顔も隠れているので背格好だけの判別だが)。そんな二人はケーキと紅茶を完食し、古びた懐中時計を見ながら呟く。
「そろそろ帰ろうと思ったが・・・まだもう少し時間が————-」
「すみません」
カランカランと店の呼び鈴が鳴り、一人の修道服の女性が現れる。彼女はこの街にある教会にいるシスターで、ある時ふらっと現れて以来教会に住み着いている。穏やかな雰囲気で老若男女問わず人気があり、代理人も何度か顔を見たことはある。
そんな彼女だが、なぜか店内をキョロキョロとしながら何かを探しているようだ。
「はい。何でしょうか?」
「いえ、用もなく店に入るのは失礼ですが・・・此処に古い知り合いに似た人がいると聞いて・・・もしかしたらと」
「古い知り合い?」
そう言われても、正直心当たりがない。それに今の時間は代理人とリッパーとイェーガー、客も異世界の二人しかいない。その古い知り合いとやらは人違いだろうと言おうとした矢先、カウンターに座っていたローウェンがガタガタと震えだした。
「あいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃないあいつじゃない」
「ろ、ローウェンさん・・・!?」
ぶつぶつと念仏のように呟きながら、胸元から怪しげな瓶を取り出して飲む。それでも震えは治らないようで、隣のアルチゼンが心配したように声をかける。
が、それで落ち着きを取り戻すよりも先に、修道女がローウェンのもとに歩み寄る。そして両肩に手を置き、耳元でそっと囁くように言った。
「あぁ・・・やっと見つけました・・・愛しい狩人様・・・」
「何故だ・・・何故、此処にいる・・・アデーラ!」
バッと飛び退くローウェン。だが飛び退かれた方の修道女・・・アデーラは一切気にすることなく話し続ける。
「気が付いたら此処にいて、今はこの世界の修道女として暮らしてます。ですが・・・狩人様が私と一緒に居てくれるのなら私は」
そう言った彼女の様子は、普段の温厚なそれとはかけ離れた物だった。瞳は光を失い、なぜか恍惚の笑みを浮かべて頬に手を当てる。今の彼女に相応しい道具は聖書や蝋燭ではなく、なぜか血塗れの包丁が似合いそうだった。
本格的に身の危険を感じたのか、ローウェンはついに逃げ出した。
「すまない代理人!今回はツケで頼む!」
「うふふ・・・逃がしませんよ」
全速力で逃亡を図るローウェン、だがその後ろをアデーラが追う。明らかに走るのには向いていないであろう修道服でありながらローウェンに迫る速度を出す彼女からは、ただならぬ執着心が見えるようだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「くっ・・・・くそっ・・・」
「うふふふふ・・・地の利はこちらにあるんですよ愛しの狩人様」
数十分後、疲労困憊のローウェンを引きずってアデーラが帰ってきた。
慣れない街並みをただひたすら逃げ回るローウェンに対し、この街の住人であるアデーラはあらゆる手を使って追い詰めたのだ。必要であれば塀を登り屋根を走り、ショートカットに次ぐショートカットであっという間に距離を詰めた。
もちろんローウェンも抵抗したが、無手での戦闘に加えて逃げ回った結果体力を使い果たし、捕縛されてしまったのだ。
律儀にここに戻って来るあたり、アデーラもそこまで狂っていると言うわけでもなさそうだが。
「さて、では行きましょうか愛しの狩人様」
「待て、どこへ行くつもりだ?」
「あら、言わせるのですか愛しの狩人様・・・・・私たちの
「断る! というか教会を愛の巣とか貴様本当に修道女か!?」
「私と愛しの狩人様の前には、そんなこと些細な問題ですわ」
話が通じない、とはこういうことを言うのだろう。しかもどこから取り出したのか、空いている手にはロープが握られている。ローウェンが逃げ出すそぶりを見せたら捕縛するつもりだろう。
流石にそうなると問題なので、代理人は助け舟を出すことにした。
「あの、アデーラさん」
「はい、なんでしょうか?」
「その、大変言いにくいことなんですが、ローウェンさんはこの世界の住人ではありません」
「・・・・・・・・は?」
先ほどまでの聖母のような微笑み(あくまで『ような』である)から一転、絶対零度の真顔になるアデーラ。その顔には『下らないことを言ったら××する』と書かれているようだった。
が、代理人も正直この程度の揉め事で動じるようなメンタルではない。なので事実を淡々と告げるのだった。
「ローウェンさんは一時的にこの世界に訪れているだけであり、時期に帰らねばならないのです。 元の世界でやることもありますので」
「・・・・・・狩人様?」
「すまないアデーラ、代理人の言う通りだ」
そう言ってローウェンはアルチゼンに目配せすると、懐から例の小さな銃を取り出す。アルチゼンもそっと側により、いつでも帰れるように構える。
正直、発狂したアデーラが襲いかかって来ると思っていたローウェンだったが・・・・・なんとアデーラは自らローウェンを解放したのだ。
「ア、アデーラ?」
「・・・・・・残念です。 残念ですが、狩人様には為さねばならない使命があるのでしょう」
心底残念そうに呟くと、アデーラはローウェンの前に跪き、祈りを捧げる。
「どうか、狩人様の行く道に幸あらんことを」
「アデーラ・・・・・・・」
「・・・・・あと、全てが終わったらこの世界に来れますように」
「それは断る」
「チッ」
加護も何もあったもんじゃない、そう思うローウェンにアデーラは懐から一本のナイフを取り出し、差し出す。
それはあの日に見たナイフだが血で汚れていることもなく、透き通った輝きを放っていた。
「狩人様の武器としては心許ないでしょうが・・・・どうか、お受け取りください」
「・・・・・あぁ」
「それでは、どうか御無事で」
最後にニコリと微笑む。おそらくそれが本来の彼女の笑みなのだろう。
それを見届けたローウェンは銃の引き金を引き、アルチゼンとともにこの世界を去った。
後に残される形となったアデーラはしばらく俯いたままだったが、やがて立ち上がると代理人に一礼する。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした」
「いえ、お気になさらず。 ですが、よろしかったのですか? 止めた私が言うのもなんですが」
「えぇ、大丈夫です。 もう二度と会うことは叶わないと思っていた狩人様とお会いできた、それだけで十分です。それに
私のナイフを肌身離さず持っていてくださる、そう思うだけで・・・・・あぁ!」
またしても恍惚の表情を浮かべて身をくねらせるアデーラ。
そんな彼女に、絶対例の鐘のことは話さないと誓う代理人だった。
end
なんというガバガバ世界線(予防線)
はい、というわけで今回は無名の狩人氏とのコラボ・・・・・の割にはアデーラが全部持っていきましたが、まぁ公式からしてアレだから大丈夫でしょ。
それではキャラ解説とか
ローウェン
『ブラッド・ドール』の主人公。またしてもこの世界に呼ばれてしまった。
E.L.I.Dだろうがハイエンドだろうがブタだろうが臆することなく戦う彼だが、アデーラだけはどうも別格らしい。
アルチゼン
ローウェンが見つけた鉄血のハイエンド。アーキテクトの妹分。
オドオドした性格だが、職人の名に相応しい腕前を持つ。
アデーラ
いつのまにかこの世界に紛れ込んでいたブラボ界のヤンデレ。
ドルフロ以上に殺伐としたあの世界の出身だけあって狂気の塊のような人物・・・・なのだがこの世界でだいぶ丸くなった。
戦闘力もないただの一般人だが、ヤンデレ特有の威圧感はボスクラス。
アデーラのナイフ
異世界で出会った修道女のナイフ。護身用でそれ以上でも以下でもない。
効果:使用すると体力を大きく失う(約8割)が、かなりの長時間『発狂』を受け付けなくなる。