喫茶鉄血   作:いろいろ

191 / 279
AK-12ちゃんをお迎えするのにやたらと資源を消費してしまった…
というか今回のイベント弾薬とか食料の消費エグくないかな?

ところでAKー12って目を閉じてても見えるそうですが、顔面パイ投げの刑をやっても見えるんでしょうか?
教えて、AKー12ちゃん!


第百四十話:期待の最新鋭エリート()

「や、やめなさい! こんなことをしても何にもならないわよ!?」

 

「何にもならないことはないさ、お前の祖国への忠誠心が試されるんだ!」

 

「これも祖国のためよ? というわけで覚悟!!!」

 

「ちょ、待っ、やだやだやだやだいやぁあああああ!!!!!」

 

 

その日、喫茶 鉄血を発信源とした悲鳴はS09地区全域へと広がり、夜の街を騒がせたのだった。

そんな大迷惑な騒ぎを前に、代理人は深くため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

事件の発生はその日の夕方まで遡る。今日は金曜日ということで、通常営業を早めに切り上げた喫茶 鉄血は夜間営業の『Bar 鉄血』の準備を進めていた。

と言っても、いつもなら昼の営業時間を縮めたりはしない。それにBarのほうももう少し遅くても問題ない。だが今日訪れる貸し切り客の面々を相手にするには、これくらい早くなければいけないのだと理解していた。

 

 

「お、もう準備できてるじゃん」

 

「うぅ、寒い・・・・はやくウォッカで暖まりたいわ」

 

「あーダメだ、禁断症状で幻覚まで見えてきた・・・・」

 

「皆さんお早いですね。 開店までは早いですが、中でお待ちになっていただいて構いませんよ」

 

 

現れたのは司令部に所属する人形たち。それだけならばいいのだが、彼女たちの共通点はそのモデルとなった銃の製造国にある。

ロシア・ソ連銃をモデルとする戦術人形一同が、今日のお客さんである。

 

 

「すまない代理人、どうにも待ちきれなかったようでな」

 

「構いませんよPKPさん。 ところで、お姉さんは?」

 

「察してくれ」

 

「ふふっ、どうやら順調のようですね」

 

 

はやくも空気だけで酔っていそうな面々に監視の目を向けつつ、幹事に任命されたPKPは代理人に挨拶を済ませて他の人形を誘導する。

ちなみに彼女が幹事を任された理由だが、酔っても他の人形よりは冷静でいられるからだ。それくらい、他の乱れようは半端じゃないのだ。

そんな中、彼女たちの列の一番後ろに一風変わった人形の姿が見える。綺麗な銀髪を揺らす姿は思わず目を奪われそうになるが、さらに興味を引くのは常に瞑った目だった。

 

 

「PKPさん、彼女は?」

 

「ん? あぁ、あいつか。 彼女はAKー12、正規軍からこっちに鞍替えしてきた新入りだよ」

 

「ふふ、あなたが代理人ね? 噂はこの店のことともども聞いていたわ、今日はよろしくね」

 

 

そう言うと手を差し出して握手を求める。目を瞑っている以外はいたって普通の人形なのだが、元正規軍ということはそれなりに高性能機なのだろう。

そう思っていたのを見透かしたのか、AKー12はクスッと笑いながら言う。

 

 

「あなたが疑問に思っていることは大体わかるわ。 まぁこれでも問題ないから安心してちょうだい、ただ余計な情報を入れたくないだけなのよ」

 

「そうですか。 でしたら、私も気にしません」

 

「ありがとう。 さて、今夜は楽しませてもらおうかしら」

 

 

そう言って楽しそうに仲間たちの輪に入るAKー12。だが彼女は侮っていたのだ。軍にいた頃も飲む機会はそれなりにあったし、酒豪とも呼べる者だっていた。が、それでも所詮は人間であり、どこかしらでリミッターがかかるようになっているのだ。

リミッターを完全無視した飲んだくれ人形たちの恐ろしさを見誤った、それがAKー12の敗因である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『かんぱーい!!!』

 

 

グラスやジョッキをぶつけ合い、さも当然のように一気飲みする人形たち。いざとなればアルコール強制分解機能が使えるとはいえ、このスタートダッシュの速さも彼女たち東欧勢の特徴の一つだ。

 

 

「ほ〜ら新入り〜、あんたも飲みなさよ〜」

 

「そうですよAKー12さん。 というか『AK』を名乗るのならば彼女くらい飲めなくてどうするんですか!」

 

「ちょっと待って、アレと一緒にされるのは遺憾だわ」

 

 

グローザと9A91が指差す先、両手にウォッカのジョッキを持ったAKー47がゲラゲラと笑いながら浴びるように飲んでいる。というか彼女に限らず酒癖の悪いのばかりで、なんだったらもう半数近くの人形が肌をあらわにするほど脱いでしまっている。

これを見越して代理人はカーテンを締め切っているが、止めるつもりはなさそうだ。

 

 

「ってもう乱痴気騒ぎじゃないの! 止めなさいよアレ!?」

 

「諦めろAKー12、これがグリフィンだ」

 

 

肩にポンっと手を置き首を振るPKP。というか一応幹事であるためそこそこの量に抑えているが、なんの責任もなければ今頃アレに混じっていることだろう。

そんな光景に呆然とするAKー12に魔の手が迫る。

 

 

モニュン

「ひゃあ!?」

 

「あら、意外とあるのね。 厚着だから気がつかなかったわ」

 

「というか、全然飲んでないじゃない。 もっとはっちゃけて楽しみましょ」

 

 

背後から鷲掴みにしてきたのはPTRDとDP28の二人。平時からすでに胸半分露出しているような服の二人だが、今はもう完全にオープンになってしまっている。なんだったら下がなくなるのも時間の問題とさえ思えるくらいだ。

そんな二人は渋るAKー12の腕を抑え、ほぼ無理やりウォッカを流し込んだ。

 

 

「んぶっ!? モゴモゴモゴ!」

 

「あらいい飲みっぷり。 じゃあもう一杯」

 

「ぷはっ!? こ、殺す気!?」

*お酒は無理やり飲ませてはいけません

 

 

AKー12は持ち前のハイパワーで脱出し、さっとその場を離れる。

が、悪酔と悪ノリしかいないようなこの場に逃げ場などない。

 

 

「お? いらっしゃ〜い!」

 

「来たわね、盲目の新人さん」

 

「盲目でもないし来るつもりもなかったわよ!」

 

 

転がり込んだ先は完全に出来上がったAKー47とモシン・ナガンの場所。その二人は迷い込んできたAKー12を両脇からがっしり押さえ込むと、ずいっと顔を近づけてこう言った。

 

 

「ねぇ、その目って開かないの?」

 

「ちゃんと開くわよ。 ただ瞑ってても見えるし、余計な情報を入れたくないってだけよ」

 

「ふ〜ん、そっか・・・・・じゃあ開けてみてよ」

 

「話聞いてた?」

 

「うん、じゃ、開けよっか!」

 

「『じゃ』、じゃないわよ!」

 

 

AKー12は軍用に製造されたかなり特殊な部類の人形である。そのためグリフィンなどの戦術人形よりもやや機械的な要素も多く、その一例が彼女の瞳だ。通常の眼よりもカメラの意味合いが強く、涙を流すこともなければ乾燥を気にすることもない。

が、そんなことを知らない二人はちょっとした好奇心を芽生えさせた。

 

 

「・・・・・ねぇ、あなたの目って痛覚とかあるの?」

 

「・・・・・・・・へ?」

 

「いやだから、ゴミが入ったりとかしても痛くないのかってことよ」

 

 

その疑問に、AKー12は答えることができなかった。なにせ彼女でさえ考えたこともなかったし、なんだったらロールアウト直後の起動テスト以来この目を開いてすらいないのだ。一応メンテの際は開いているらしいが、本人に意識がないのであれば意味がない。

そしてその沈黙を、二人は『知らない』と捉えるのだった。

 

 

「よし、やってみよう!」

 

「い、嫌よ! 誰が好き好んで自分の目に物を入れなきゃいけないのよ!?」

 

「大丈夫、固形物はやめておくから」

 

「それにな、とある国にはこんな言葉だってあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「嫌よ嫌よも好きのうち」」

 

「何それ意味わからないわ!?」

 

 

軍時代ですらここまで慌てた彼女を見ることはなかっただろう。そんなガチな反応のAKー12を見逃す二人ではない。

モシン・ナガンが器用に両腕を片腕で抑え、もう片方の手で片目のまぶたをこじ開ける。ヴァイオレットに輝く瞳があらわになると周りから歓声が沸き起こり、AKー12は最後の救援として代理人を頼る。

が、肝心の代理人は彼女の後ろ側にいるので気付いてもらえなかった。

 

 

「それじゃ、とりあえずこれにしてみるか」

 

「あ、それ私のレモン!!」

 

「後で別のあげるから我慢してくれAS Val」

 

 

AKー47が用意したのはチューハイに添えてあったレモン。その両端を指で摘んでにじり寄ってくる。

バタバタと暴れるAKー12だったが、他の人形にまで抑えられてはどうしようもなかった。

 

 

「というわけで、レッツ実験!」

 

「これも偉大な祖国のために!」

 

「それ絶対関係ない!」

 

「む、祖国を否定したな!? やれ、AK-47!」

 

「何このメンドクサイ連中は!?」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

そして冒頭に戻る。

情け容赦のかけらもなく吹き出したレモン汁はAKー12の瞳に降り注いだ。

結論から言えば、どうやら痛覚はあったようだ。とはいえ基本的に閉じている上に戦闘モードでは優先的に切られる部分であったため、そもそも目に何か入るということ自体想定されていなかったようだ。

まぁその開発陣の油断のせいで、AKー12は床をゴロゴロと転げ回っている。

 

 

「・・・・・・やっべ、やりすぎたか?」

 

「と、とりあえず眼を洗うか? おい、水持ってきてくれ!」

 

「は、はい!」

 

「だ、大丈夫か? 水持ってきたから、な?」

 

「お待たせ! 水持ってきたよ!」

 

「え? じゃあこれって・・・・・・」

 

「・・・・・・酒じゃね?」

 

「ぬわぁああああああああああああ!!!!!!」

 

 

もはや乙女の出していい声ではない声で叫ぶAKー12。軍に残してきた彼女を敬愛するANー94が見れば何と言うか。

流石に度がすぎているということで、この後代理人が店の奥で簡単に治療し、主犯格を当面の間出禁にするということで落ち着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ・・・・・もうやだグリフィン怖い」

 

「と、いうわけで代理人。 とてもじゃないがあの宿舎で過ごさせるのは気が引けるからここに泊めてやってくれないか?」

 

「・・・・・はぁ。 止めなかったこちらにも非はありますから構いませんが・・・・くれぐれも再発のないようにしてくださいねPKPさん?」

 

「わかっている。 ほら、もう大丈夫だから」

 

 

こうして、AKー12は喫茶 鉄血に住みながらグリフィンへと通う日々を送るのだった。

 

 

 

end




ごめんよAKー12ちゃん、余裕なお姉さんキャラは壊したくなっちゃうんだ(テヘッ)
ということで喫茶 鉄血から通勤することになったAKー12ちゃんです。なので非番の時は店の手伝いもしてくれるよ。


では、今回のキャラ紹介

AKー12
今回の被害者。人形としては最新モデルで、性能もかなり高い。電子戦が得意だが、そんな機会はこの世界ではそうそう訪れることはない。

PKP
このカオスなロシア勢を一応まとめる苦労人。
明確に誰がリーダーとか決まっているわけではないが、あの恋愛クソ雑魚な姉を見守り続けた面倒見の良さを買われて幹事になってしまった。

ソ連・ロシア勢
ウォッカを愛し、愛国心にあふれた人形たち。たとえ入隊時にそこまでの愛国心を持っていなくとも、入念な教育によって素晴らしい愛国心を手に入れることができる。
しばしば『赤色集会』なるものを開いているが害はなく、むしろ普段は気さくで話しやすい集団。

代理人
この店では客に不必要に干渉しないようにしている・・・・・が、そうせざるをえない厄介ごとの方からやってくる。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。