喫茶鉄血   作:いろいろ

193 / 279
7月発売予定の45姉のfigma、買うべきか否か・・・・・
9ちゃんかM4か代理人なら即買いなんだけどなぁ

そんな話は置いといて、今回は番外編!
・修道女の常備品
・グータラエリート
・残されし者
・チェス王決定戦 in 司令部
の四本立てでお送りします!


番外編35

番外35-1:修道女の常備品

 

 

S09地区の教会に住まう修道女、アデーラ。先日喫茶 鉄血を訪れたローウェンの古い友人(自称)である彼女には謎が多い。それもそのはずで、彼女もこことは違う世界から流れてきた人物だからだ。にもかかわらずあっという間にこの世界に順応し、信仰しているのか怪しい神に向かって祈りを捧げる毎日を送っている。

 

 

「・・・・・と、いうのが貴女のイメージだそうですよアデーラさん」

 

「あら、それは嬉しいことですが・・・・私が祈っているのは神などという頼りのないものではありませんわ」

 

 

全世界の様々な教徒を根本から否定し始めたアデーラだが、先日の一件で彼女がそういう人間であることはなんとなく知っていたので、代理人も特にツッコミはいれない。

 

 

「ではどなたに・・・というのは野暮ですね」

 

「えぇ、もちろん愛しの狩人様ですわ」

 

 

恍惚の表情、と言った感じで語るアデーラ。見ての通り少々危なっかしいが一応話の通じる人間なのでこういうタイプなのだと納得しておく。

ただし、それはあくまで『アデーラ自身』の話である。問題は彼女の持ち物・・・・・服の下に隠してある()()()()()()()()()()()()()()()があまりにも異質だったからだ。

代理人とて直接見ているわけではない。だが防犯の観点からある程度のセンサー類を起動させて客をスキャンしているので、彼女の持ち物にも気がついたのだ。

 

 

「アデーラさん、以前にお会いした時から気にはなっていましたがその・・・・なぜ『注射器』を持ち歩いているんですか?」

 

「あら、お話ししましたっけ?」

 

「いえ、服の上からですが、形状からそう判断しました」

 

 

そこまで代理人が言うと、アデーラは苦笑して服の下から注射器と小さな箱を取り出す。注射器は本物の医療用ではなく、むしろアンティークな感じの丈夫そうな金属のやつ、それがなんと五本も出てきた。そして箱の方は腰に固定するポーチのような感じで、しかも保冷保温ができる割とイイお値段のやつである。

 

 

「これ、開けてみても?」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

「では、失礼いたしまs・・・・・お返しします」

 

「うふふふふ」

 

 

箱をちょっとだけ開け、すぐに閉めてアデーラへと返す代理人。中に入っていたのは、なんか赤い液体が満載された透明のパック・・・・・輸血パックだった。

 

 

「狩人様は、血を必要とされるのです。 いつまた出会っても大丈夫なように、常に持ち歩いているんですよ」

 

「血を、ですか・・・・・もしかして」

 

「えぇ、私のです。 狩人様が私の血を受け入れてくださると思うと、それだけで私・・・・・あはぁ!」

 

 

そう言ってまた一人でトリップし始めるアデーラ。

悪い人ではない、が大丈夫な人でもない、と認識を改めるのだった。

 

 

end

 

 

 

番外35-2:グータラエリート

 

 

戦術人形AKー12が喫茶 鉄血に住みついて早数日。着任初日にトラウマものの事件に巻き込まれた彼女だが、あれからなんとかやっていけているらしい。なにせ高い戦闘能力に加えて高度なハッキング技術も持ち、指揮官からの評価も高いそうだ。

そんな彼女だが、元は軍に所属していた人形である。いくら平和だからと言えど軍は軍、当然規律や規則にも厳しい世界だ。おまけに人形があらゆる場面で活躍するこのご時世であっても軍は男所帯で、人間人形含めても女性はまだまだ少数派だ。

 

気の休まらない、そんな世界から一転し、従業員全てが人形であるこの喫茶 鉄血に住みつくようになるとAKー12は変わった。

軍時代の反動か、しぼんだ風船のように腑抜けてしまったのだ。

 

 

「D、そろそろAKー12を呼んできてもらえませんか?」

 

「了〜解!」

 

 

夕食に支度を終え、ゾロゾロと喫茶 鉄血の面々が揃い始めた頃になって、DがAK-12を呼びに行く。物置だった部屋を片付け、ベッドと机だけを置いたその部屋の主は、制服を脱ぎ散らかし下着のままでベッドに寝転がっていた。

 

 

「あらD、もうご飯かしら?」

 

「また散らかしてる・・・・脱いだらちゃんと畳むかハンガーにかけないと。 あと下着だけなのははしたないよ!」

 

「いいじゃない、見られて困るものでもないし。 せめて家でくらいのんびりしていたいの」

 

 

そう言ってベッドの上であぐらをかき、大きくあくびをするAK-12。Dは盛大にため息をつくと、とりあえず脱ぎっぱなしになった服を集めながら言った。

 

 

「とにかく、もうご飯できてるから降りてきて。 あと部屋着でいいから何か着てきてね」

 

「むぅ〜、面倒ね・・・・・これでいいでしょ?」

 

「・・・・・・まぁないよりマシかな」

 

 

AK-12が着たのは、ベッドの隅に丸められていたちょっと大きめのパーカー。それを頭からズボッと被ると、そのまま何事もなかったかのようにリビングへと降りていった。

もし仕事がなくなったらニートにでもなってしまうのではないか、そう不安に思うDは、とりあえず彼女の服を畳むのだった。

 

この後、あまりのズボラっぷりに代理人の説教が始まるのは言うまでもない。

 

 

end

 

 

 

番外35-3:残されし者

 

 

それは、AK-12がグリフィンに配属となってすぐのこと。彼女が所属していた基地の司令室で書類に目を通りていたカーター将軍は、突然開け放たれた扉に思わず拳銃を引き抜きそうになった。

 

 

「将軍! 私もグリフィンに行ってきます!」

 

「え、ANー94か・・・・なんだいきなり」

 

「だって、AKー12がグリフィンに行っちゃったから・・・・・」

 

 

やってきたのは軍に所属する戦術人形のANー94。あのAKー12の姉妹機であり、彼女が大好きで仕方がないという人形である。

そんな彼女がなぜ今になってやってきたかというと、それは単純に知らされていなかったからだ。

そのANー94を追いかけてきたジャッジが背後から羽交い締めにして連れ出そうとする。

 

 

「こらANー94! お前将軍に向かって何言ってるんだ! ・・・・し、失礼しました将軍、こいつ止めても止まらなくて」

 

「やだやだ私もグリフィンに行くんだ!」

 

「えぇい諦めろANー94! 貴様それでも軍人か!」

 

「煩い貧乳!まな板!!ペッタン娘!!!」

 

「くたばれ!!!」

 

 

ジタバタ暴れる上に禁句まで吐き出したANー94を、ジャッジが華麗なジャーマン・スープレックスで黙らせる。そしてカーターに謝罪すると、完全に伸びたANー94を引きずって出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ・・・会いたいよぉ、AKー12ぃ・・・・・」

 

「あぁもう鬱陶しい。 別にもう会えないわけでもないだろうに」

 

「グスッ・・・でも・・・・・でもぉ・・・・」

 

 

落ち着きを取り戻したかと思えば、今度は泣きっぱなしになるANー94。製造から今日まで常にAKー12とともに過ごし、もはや依存とも呼べる状態になっていた彼女からすれば、この状況は受け入れがたいものだろう。

が、仮にも軍に所属している身でいつまでもウジウジされていては堪らない。というわけで今日何度目かの叱責に入ろうとしたジャッジだが、思わぬ人物に止められた。

 

 

「あら、やっぱりこうなってたのねANー94」

 

「あ、アンジェリカ隊長!?」

 

「うぅ・・・アンジェぇ・・・・・」

 

 

現れたのは彼女たちの上官で、彼女たちが所属する部隊の隊長であるアンジェリカ。堅実無骨な人形が主流の軍の中で、彼女が率いる感情豊かな人形部隊は大変人気がある。

それはさておき、凹みまくるANー94にアンジェリカはこんなことを言い出した。

 

 

「ねぇANー94、やっぱりAKー12と居たい?」

 

「いたいですぅうううう!!!!」

 

「わかった。 この件は私がなんとかするから、それまで普段通り過ごしなさい。 約束できる?」

 

 

涙やら鼻水やらで顔をくしゃくしゃにさせながら頷くANー94。それを見たアンジェは、満足そうに頷いて立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

それからまた数日後。あれから大人しくなっているANー94だったが、その日は朝からやたらとテンションが高かった。

あまりにも不自然なので、食堂で昼食をとっている間に聞いてみた。

 

 

「どうしたんだお前、ちょっと気持ち悪いぞ」

 

「え? 聞いてくれるジャッジちゃん!?」

 

「ジャッジちゃん言うな! それで、何があったんだ?」

 

「えへへへ・・・・私、明日からグリフィンに行くんだ!」

 

 

二ヘッと笑うANー94。だがそれと同時に、ジャッジの視界の隅に映る妙にやつれたカーター将軍の姿が気になっていた。そしてそんなタイミングでやってきたアンジェに詰め寄る。

 

 

「隊長、いったいどんな手を使ったんですか!?」

 

「あ、もう聞いたんだ。 いやぁ、『上に相談しよっかなぁ』って呟きながら司令室の前を行ったり来たりしただけだけどね」

 

「十分すぎる嫌がらせじゃないか!?」

 

 

ジャッジは、せめて自分だけは将軍に優しくあろうと心に決めるのだった。

そして約束通り、翌日にはANー94はグリフィンへと旅立っていったのだった。

 

 

end

 

 

 

番外35-4:チェス王決定戦 in 司令部

 

 

「さぁさぁ皆さん! 『第一回 S09地区司令部チェス王決定戦』まで後少しです! 練習はしていますか? 自分の駒は買いましたか? もしまだならぜひお声がけください! 今ならお安くして差し上げますわ!!!」

 

 

S09地区司令部、その購買を取り仕切るカリーナの声が響く。それはつい数日前に、チェスが喫茶 鉄血でちょっとしたブームになっていると聞いた指揮官の思いつきから始まったものだった。

 

 

『ふむ、ではこの司令部でもやってみてはどうだろうか』

 

 

それを聞いたカリーナは当然こう思う。これは商売の匂いが、金の匂いがする、と。

とはいえ、ただそれだけなら参加する人形は増えないだろう。というわけで指揮官を上手いこと誘導し、いくつかの景品を用意した。

 

・参加賞は地元のおいしいシュークリーム

・トーナメント形式で、ベスト8に入れば賞状とカフェの割引券

・ベスト4でさらにS09地区のお店で使える商品券

・準優勝以上で特別報酬(現金)

・そして1位には、指揮官がなんでもいうことを一つ聞いてくれる

 

用意された景品はこんな感じだが、これ以外にもそれなりに意味を持って挑む人形たちもいる。チェスとは頭脳戦であり戦術、戦略が求められるゲームである。各部隊の隊長格の中には、己のプライドをかけて挑む者もいるのだ。

が、やはり魅力的なのは優勝者の景品だろう。

 

 

(指揮官が、なんでも一つ・・・・・()()()()!)

 

(うふ、うふふふふ・・・・・)

 

(あ、あんなことや、こんなことも・・・・・あはぁ!)

 

 

指揮官ラブ勢など、言うまでもなく勝ったつもりでトリップし始める。それ以外でも、例えば新しい服を買ってもらいたかったり(FAL)、隊員に休暇を与えたかったり(MG5)、喫茶 鉄血に引っ越したかったり(ダネル)と、結構色々な思惑が混じっていた。

また当初の目論見通り、カリーナの元へ買い物に来る人形も増えるのだ。

 

 

「あぁ、お金がいっぱ〜い! 指揮官様、私は今幸せですわ〜!」

 

 

 

end




今回のイベントのいいところは、何度も同じステージを回らなくてもいいところですね。その分ステージ数が増えましたが、ストーリーに厚みがあっていいと思います。
ところで代理人のあのダミー、いつぞやに大量生産したヤツとかDとかじゃないですよね(震え)


ではでは各話の解説!

番外35-1
アデーラさんの日常。
ちなみにここにはあの憎きアデラインもいないので幸せなようです。信ずるべきは神ではなく狩人。

番外35-2
エリートの成れの果て。
でも意外と下着でうろついてる姿も似合うと思うのよ・・・生活力とか女子力とかは落ちるけど。

番外35-3
ANー94を本編に出さなかった理由、それはリアルでまだお迎えできていないから!
いつか訪れるその日のために、合流フラグだけ立てておきした。

番外35-4
チェス王とか言っておきながらほとんどカリーナの話。
でもチェスセットって、高いやつはマジで高いからね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。