喫茶鉄血   作:いろいろ

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この作品に登場するキャラは、コラボを除いて実際に入手した人形のみを出しています。

その制限、今回ばかりは破らせてもらおう!(意訳:書きたいけど出ないので書きました)


第百四十四話:姉をたずねて三千里

「はい・・・・・・はい、わかりました。 ではそのように伝えておきます。 はい、失礼します」

 

 

それはとある日のこと。今日も営業を終えた喫茶 鉄血の片付けを済ませ、これから夕食の準備に取り掛かろうとしていた代理人だったが、突然店の電話が鳴り始めた。営業時間外でかかってくることなどほとんど無く、そのほとんどは間違い電話か店の営業時間を知らない人からである。

今回もその手合いかと構えていたのだが、どうやら少し違ったようだ。

 

 

「代理人、電話か?」

 

「えぇ、グリフィンの指揮官から」

 

 

ゲッコーが不思議そうに訊ねると、代理人はそう返す。そして夕食の準備もそこそこに、代理人は上の階へと向かった。

向かった先は三階の従業員スペース。いつぞやに導入された炬燵が置かれた、通称『セーブポイント』である。そこで腑抜けたように動かない人形に、代理人は声をかけた。

 

 

「・・・・・・AKー12、そろそろ離してあげなさい」

 

「あら、私の癒しアイテムを奪う気? 酷いわ代理人」

 

「あ、あの・・・・もうすぐ夕食ですし・・・・・」

 

 

マヌスクリプトが持ち込んだ、人も人形も虜にする炬燵。それにどっぷりと、もはや一体となってしまっている人形は居候のAKー12である。ここに来て早々に炬燵に魅了され、さらに自費で様々なだらけグッズを揃えたAKー12は、かつてのキリッとした人形の面影が薄れつつある。

伸ばした足を炬燵に埋め、自費で買った一人用のクッション(人をダメにするソファー)に座り、マヌスクリプトに用意してもらった広袖を羽織り、まるでぬいぐるみのようにフォートレスを膝に乗せて抱えている・・・・・堕ちるところまで堕ちた人形がそこにいた。

 

 

「それで、何か用かしら?」

 

「は、離してください・・・・」

 

「嫌よ、できるならず〜〜〜〜〜〜っとこうしていたいわ」

 

「はぁ・・・・・・AKー12、あなたに伝える事があります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・ANー94が、ここに来ます」

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

 

代理人が、AKー12の目が開くところを見たのは、それが初めてだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

ことの発端は数時間前にまで遡る。当初予定されていた軍の退役申請、そしてグリフィンへの入社申請などなど、通常なら後数日はかかるであろうそれらの手続きを、ANー94とその(一応の)指揮官であるアンジェは徹夜と脅迫であっという間に通してしまった。

そうしてようやくグリフィンS09地区司令部へとやってきたANー94だったが、ここでもまたやらかした。

 

 

「遥々ご苦労だった、ANー94。 ようこそS09地区へ」

 

「指揮官、どうも。 今からこのAN94はあなたの命令に従います。 ところで指揮官、ここにAKー12はいますか?」

 

「うん? あぁいるよ、ただ「ありがとう指揮官、では失礼する」・・・・あ、あぁ」

 

 

着任早々、指揮官の話を途中で切り上げてAKー12を探しに行ってしまうANー94。何処にいるとか、そもそも今この基地にいるのかすら聞かずに飛び出したANー94は、このそこそこに広い司令部を片っ端から探し始める。

訓練室に救護室、春田のカフェにはたまたカリーナのデータルームまで、ありとあらゆる施設を探すも当然見つからない。仕方なく通りがかったカリーナに聞いてみれば、AKー12は今日は非番とのこと。

非番=宿舎、そう思い立ったANー94は部屋の場所も聞くことなく宿舎に突撃をかける。目につく扉全てを片っ端から開け、鍵がかかっていれば軍用由来の高い電子戦能力でハッキングする。

そんな迷惑行為を繰り返すこと数時間、どこにも見当たらないと泣きながら指揮官の元へ帰ってきて告げられたのが、

 

 

「AKー12はここの所属だが、ここにいるわけではない。 喫茶 鉄血という店に住まわせてもらっている」

 

 

という答え。当然ANー94は自分もそこに行くと言い張り、しまいには初めのクールなイメージとはかけ離れて子供のように駄々をこね始める。

そして、ここの指揮官は良くも悪くも人形のことを考える人物である。何ら叱りつけることもなく、代理人に電話した、というわけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・というわけです」

 

「そ、そう・・・・・」

 

 

妹の奇行に思わずたじろぐAKー12。それに加え、彼女はあることを危惧していた。

ANー94がグリフィンの所属になる、それはまだいいしウェルカムだ。だがここで一つ問題が起きる・・・・・どこに住むかだ。喫茶 鉄血は本来なら従業員でもないのに住むことはできない。特例でAKー12はその限りではないが、ANー94が来るとなるとそれはできない。

そしてあのANー94が、普段バラバラに過ごす事ができるか・・・・・無理だろう。となると移動するのはANー94ではない、AKー12(自分)だ。

 

 

(冗談じゃないわ、こんな居心地のいい場所を手放すなんて・・・・・今更無理よ!)

 

 

当初こそロシア勢に苦手意識を持っていたAKー12だが、交流を続けるうちにそれもほとんどなくなった。なので司令部に移ること自体は問題無い。が、人も人形も一度得た幸福は簡単には手放せないのだ。

 

 

(なんとか・・・・・なんとかしないと。 ANー94を説得? 無理ね、それができるならグリフィンに来ること自体ないはず。 ANー94もここに住む? これも無理、というか代理人が許すとは思えないわ)

 

 

軍用人形、その中でも最高クラスの電子戦機としての演算能力が、現状維持のためにフル稼働する。全てはここの美味しいご飯と炬燵とダラけられる自室とフォートレス(最高の癒し)のためである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・・とか悩んでいるんでしょうね)

 

 

顔はいつも通りだが雰囲気が固くなったAKー12を見下ろしつつ、代理人は苦笑する。ANー94という人形のことはよく知らないが、AKー12が時々話す軍時代の中で度々出てきていた。互いに中の良い姉妹であることは想像に難くなく、できることなら一緒に住みたいのだろう。

そもそもの話、代理人はもうすでにANー94もここに迎えるつもりでいる。今更AKー12にグリフィンに戻れとは言わないし、少々部屋が狭くなるが相部屋でも問題無いと考えている。

 

 

(まぁ、一応直接会ってから決めましょうか)

 

 

そう考えをまとめ、代理人はその場を後にした。

抱きつかれたままのフォートレスが助けを求めようとしていたが、救出できそうになかったので諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、喫茶 鉄血・・・・・ここにAKー12が・・・」

 

 

荷物を全部抱えて(と言っても大した量では無い)ようやくたどり着いたANー94。気づけば日もどっぷり暮れ、肌寒い風が吹いている。

ANー94は意を決し、喫茶 鉄血の扉をノックし・・・・・ようとしたところで扉が開いた。

 

 

「こんばんは・・・・・あなたが、ANー94さんですね?」

 

「こ、こんばんは・・・・あ、あの!」

 

「ご安心を、指揮官からお話は伺っております。 寒いでしょうから、どうぞ中へ」

 

 

ANー94を迎え入れ、荷物を預かる代理人。ANー94は思っていた対応と違うことに戸惑うが、ハッと我に帰ると代理人に問いただす。

 

 

「だ、代理人! ここにAKー12がいるって聞いて、それで・・・・・」

 

「えぇ、彼女に会いにきたのでしょう? 今呼んできますね」

 

 

突然押し掛けたにもかかわらず代理人は表情一つ変えず、落ち着いた様子でAK-12を呼びに行く。とその前に一度振り返ると、まだソワソワしているANー94に声をかけた。

 

 

「ところで、夕食はとられましたか? もしまだなら、一緒にいかがでしょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、AK-12・・・・・」

 

「久しぶりね、ANー94・・・・元気にしてた?」

 

 

夕食の時間となり、続々と集まる人形たち。そこで無事再会を果たしたANー94は、おもわずAK-12に抱きついた。

 

 

「AK-12〜〜〜〜〜!」

 

「ふふ、相変わらずね」

 

 

頭を撫でながら、嬉しいような困ったような笑みを浮かべるAK-12。いつまでも見ていたくなるような微笑ましい光景だが、さすがに料理が冷めるとまずいのでそれぞれ席につく。ANー94は安心したのかそれともお腹が空いていたのか、勢い良く食べ進める。

それも少し落ち着いたところで、代理人は二人に向かって話し始めた。

 

 

「さて、今後のことですが・・・・」

 

「私はAK-12と一緒がいいです」

 

(うっ・・・ついに来たか・・・・・!)

 

 

無邪気に抱きつくANー94とは対照に、石のように固まった無表情でいるAK-12。まるで判決を待つ罪人のような気分でいるというのが手に取るようにわかるが、代理人もあまりいじめるつもりはないのでサクッと発表する。

 

 

「AK-12、少々狭くなりますがANー94と相部屋でも構いませんか?」

 

「・・・・・・え?」

 

「一応地下室を改装するということもできますが、それでも少し時間がかかってしまいますので、暫定処置ということになりますが」

 

「お、追い出されるんじゃないの???」

 

「え? いえ、そんなつもりはありませんが」

 

 

AK-12の考えていることはよくわかるが、あえて知らない風に首を傾げる。が、狙いが分かっているのかDは隣でクスクスと笑い、マヌスクリプトもニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている。

余計な悩みだった、と知ったAK-12は背もたれにダランともたれかかると、盛大にため息を吐いた。

 

 

「よ、よかったぁ〜・・・・・」

 

「ふふっ、では改めて・・・・ようこそ喫茶 鉄血へ。 歓迎しますよ、ANー94」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

この日、喫茶 鉄血にまた一人仲間が加わった。

 

 

 

end




イベントの掘りがようやく終わり、あとは隠しステージ攻略のみ!
あ、ランキングは参加だけしときます。炊事妖精は惜しいけど、まぁいっか。


ということで今回のキャラ紹介!


ANー94
依存度の高いシスコン。高度なハッキングやらができるが本来は戦闘特化型。
シスコン・・・45 姉・・・・うっ、頭が・・・・

AK-12
だらけきったエリート(笑)
夏場は下着姿になって扇風機の前であぐらをかいてる姿が似合いそう。
楽園の死守に全力を注ぐ。

フォートレス
そのダイナマイトボディの抱き心地は至高のもの。よってAK-12に目をつけたれた。
まだまだ得体のしれないAK-12に抱きつかれて戦々恐々としている。

代理人
住み込みのバイトとかを想定してある程度の受け入れ態勢がある。
そろそろ従業員用の家を建てようかと思う頃。

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