喫茶鉄血   作:いろいろ

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義理でもいい、なんだったらコンビニで売ってるチョコでもいい、バレンタインチョコください。
できれば9ちゃんか代理人から貰いたいです(血涙


第百四十六話:バレンタイン商戦

知ってるかな?チョコを貰えるやつは三種類いる。

リア充のヤツ

幼馴染みがいるヤツ

テキトーに配られるヤツ

・・・この三つだ。

 

 

「変なこと言ってないで、あなたもちゃんと作りなさいマヌスクリプト」

 

「へ〜い」

 

 

2月13日、バレンタイン前日。喫茶 鉄血の従業員は閉店後にもかかわらず厨房を慌ただしく行ったり来たりしていた。店の厨房はもともと全従業員が同時に入ることを想定しておらず、たとえ七人だけとはいえかなり手狭になる。

 

 

 

 

 

ことの発端は昨日の夜、他でもないマヌスクリプトの一言だった。

 

 

『バレンタインのチョコって、チョコじゃなくて誰から貰うかの方が重要だよね・・・・・〈代理人の手作りチョコ〉って名前で売ったら即完売じゃない?』

 

 

いつもなら代理人も(何言ってんだこいつ)みたいになるはずだったのだが、そこで代理人はふと考える。

ーーー意外と需要はあるんじゃないのだろうかーーー

決して自意識過剰とかではなく客観的な考えなのだが、ともかく実行する前提での採算を考え始める。そして程なくして、利益が出るという結果が算出された。

だが代理人の高速演算は、マヌスクリプトの結論よりも更に先を行ってしまっていた。なんと代理人は、じゃあ従業員全員がそれぞれ作ればいいのではないか、と言い出したのだ。

 

 

 

 

そして現在に至る。しかも話し合ううちにそれぞれのオリジナル感をということで、少々凝ったものまで作られるようになってしまった。

言い出しっぺのマヌスクリプトなど、いったいどんなチョコを作ればいいか悩み続けて一向に進んでいない。

 

 

「手が止まってるぞマヌスクリプト」

 

「マヌちゃん、ファイト!」

 

「チクショー!」

 

 

その後、大急ぎで間に合わせたチョコを冷蔵庫に放り込み、マヌスクリプトは逃げるように自室に飛び込んだのだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

翌日、2月14日。

今年もやってきたバレンタインデーということで、町中は大いに活気付いている。特にチョコレートをはじめとした製菓店はここぞとばかりに出店を出し、道ゆく人々に売り捌いている。

 

そして喫茶 鉄血でも、昨晩で間に合わせたチョコをショーケースに並べ、店頭販売のみの数量限定商品として売り出していた。

ラインナップは、

・大人のほろ苦ビターチョコ(代理人)

・初恋トリュフチョコ(D)

・ちょっと甘めのハートチョコ(イェーガー)

・ちょっと苦めの失恋チョコ(リッパー)

・愛のウイスキーボンボン(ゲッコー)

・ホワイト生チョコ(フォートレス)

・お前らどうせ独り身だろ?チョコ(マヌスクリプト)

である。これがそれぞれ50袋限定で売られているのだ。

 

 

「マヌスクリプト、あんたのこれってチョコ砕いてるだけよね?」

 

「いきなり失礼だね45、ちゃんと手作りのチョコをわざわざ砕いてるんだよ」

 

 

そう、マヌスクリプトが考えた末にたどり着いた回答は、『あえて独り身をターゲットにする』というものだった。見た目はそれこそ訳ありチョコのバラ売りだが、正真正銘マヌスクリプト手作りの数量限定モノということでそこそこ売れている。

 

 

「っていうか45こそ、てっきりいつもの二人に追いかけられてると思ったんだけどね」

 

「・・・・・今のところ静かだから余計に怖いのよ」

 

「あー・・・・・ご愁傷様」

 

「はぁ・・・・私はこんななのにどうして周りはカップルだらけなのかしら」

 

 

45がため息をつきながら店内を見渡す。今年の14日は金曜日、そういうこともあってか早めに仕事を切り上げたであろうカップルの多いこと多いこと。彼女の周りでも、例えば9と416などは1日非番を申請していたり、MG5とPKは仲間に気を遣われて二人で行動していたりなどなど。

 

 

「いつか君にも素敵な出会いがあるよ」

 

「それはそれで大惨事になりそうね、あの二人のせいで」

 

「血のバレンタインってヤツだね。 というわけで絶賛独り身の45、これ買ってくかい?」

 

「セールストークとしては最悪だけど、まぁせっかくだし買うわよ」

 

「まいど〜!」

 

 

こんな感じでマヌスクリプトのチョコは売れている。といってもやはりこの地区では人気の店となった喫茶 鉄血の手作りチョコ、それが限定50個だと特に何もしなくても売れていくのだ。

 

 

「どうもこんにちは、代理人さん」

 

「あら、お久しぶりですね会長さん。 今日はお仕事で?」

 

「いえ、用事などはなかったのですが、風の噂であなたの手作りチョコが買えると聞いて飛んできまして」

 

「・・・・・失礼ですが、どこから?」

 

「ニュージーランドからです! プライベートジェットを使って!!」

 

 

 

「フォートレスちゃ〜ん、いるかな〜?」

 

「え? わ、アーキテクトさん!」

 

「久しぶりだね! またおっきくなった?」

 

「ふぇ!? な、なってません!」

 

「あはは、ごめんごめん。 でも上手くやってるようで安心したよ! じゃ、これ一つもらえるかな?」

 

 

 

「ゲッコー様! 私のチョコを受け取ってください!」

 

「わ、私のも!」

 

「ははっ、そう慌てなくても拒否なんてしないさ。 君たちのようなレディならとくに、ね?」

 

『キャーーー♡』

 

「さて、早速お返しと行きたいところだが、生憎と商品をタダで出すと怒られてしまうのでね」

 

「いえ! ゲッコー様の作ったチョコを食べられるだけで幸せです!」

 

「言い値でも買います!」

 

 

 

「・・・・こっちは平和だな」

 

「・・・・そうだな」

 

「まぁ下級モデルだしな」

 

「買いに来るのがミリオタばっかりなんだけどな」

 

「何がいいんだ?」

 

「なんか『量産機という響きがいい!』らしいぞ」

 

「そんなものか」

 

「そんなものらしい」

 

 

 

「Dさん、僕と付き合ってください!」

 

「ごめんなさい」

 

「———————-」

 

「あ、でも! 今日はバレンタインですし、友チョコならご用意してますよ! まぁ売り物ですけど」

 

「い、いえ、それで十分です」

 

「ふふっ、あなたに素敵な出会いがありますように♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁ〜〜〜〜疲れた〜〜〜〜〜」

 

「お疲れ様です。 無事完売できましたね」

 

「正直私たちは売れ残ると思ってたんですけどね」

 

「ところでゲッコー、あなたまた口説きましたね? 明らかに見ない顔が増えてましたよ」

 

「待ってくれ代理人、ちゃんと営業時間外での話だ」

 

「口説いてるのは否定しないんだ」

 

 

バレンタインの営業を終え、店の片付けもあらかた済ませた一同。すると代理人は店の奥から少し大きめの箱を運び、テーブルの上に置いた。

 

 

「? Oちゃん、それは?」

 

「昼間に、M4が持ってきてくれました。 司令部からの差し入れだそうです」

 

「どれどれ・・・・おぉ! 美味しそう!」

 

 

箱を開けると、中に入っていたのはホールのチョコレートケーキ。フルーツや砂糖菓子も盛り付けられたその一番上には、『HAPPY VALENTINE』と書かれたチョコプレートが乗っていた。

 

 

「ふふ、せっかくいただいたものですし、皆さんで食べましょうか」

 

『はーい!』

 

 

こうして、喫茶 鉄血の長いような短いようなバレンタインが終わるのだった。

 

 

end




貰えない 今年もチョコが 貰えない

はい、そんなことは置いといて今回のキャラ紹介


マヌスクリプト
今回の発端。高みの見物を決め込むつもりが巻き込まれてしまった。
チョコは固めたものを砕いただけだが、何種類かのチョコを混ぜているので普通に美味しい。

代理人
売れると思ったら挑戦する。売れなければタダで配るつもりだった。
カカオ分の多いビターをベースにしたほろ苦チョコ、美味しくないはずがない。

D
結構ノリノリ。ついでに告られるが、全て丁重にお断りした。
見た目まん丸なトリュフチョコ、作り方自体は意外と簡単だが、綺麗に丸くしようとすると意外と難しい。

イェーガー&リッパー
もともとは二人で一つ作る予定だった。ハートと失恋というのはその名残。
シンプルな、いかにもバレンタインらしいチョコ。そもそも店に買いに来る時点で相手がいない以上、恋も失恋もない。

ゲッコー
代理人に怒られないよう、あの手この手で抜け道を探して口説く人形。
商品唯一のアルコール使用。チョコとはいえちゃんと酒も残っているので、未成年には売れない。これを食べさせて酔わせてお持ち帰りするつもりなのでは、と噂になった。

フォートレス
最近表に出てこれるようになったロリ巨乳。ア◯レンのフォーミ◯ブルをさらにちっさくするとこうなる感じ。
ラインナップ中唯一白色のチョコ。子供にも人気の甘めなチョコ。

45
何も起きないとかえって不安を感じるようになった。

会長
飛んできた(直喩)

アーキテクト
もちろんサボり

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