喫茶鉄血   作:いろいろ

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ハーメルンの感想欄って、感想をいただいた方の隣に話数が出ますよね?
そしてそこに『199話』って書いてますよね?


・・・・・・・あれ?もうそんなに書いてたっけ?
てなわけで今回は『喫茶 鉄血』200話記念回、そんな感謝を込めて書きました!
登場人物は、代理人と『あなた』です!


通算200話記念:『あなた』と私の喫茶 鉄血

朝、目を覚ますと決まって彼女の顔が見える。

 

 

「おはようございます、〇〇さん」

 

 

枕もとで両手に顎を乗せる彼女は、優しく微笑みそう言った。人形である彼女は常に規則正しく生活しており、今日もいつものメイド服を着こなしている。開いたドアの先から漂う香りは、すでに朝食の準備ができている証拠だ。

 

 

「ふふっ、〇〇さんの寝顔が可愛かったのでつい見惚れてしまいました。 さぁ起きてください、せっかく作ったのに冷めてしまいますよ?」

 

 

少し悪戯っぽく笑うと、彼女はそっと手を差し伸べてくる。

これが彼女・・・・・代理人との1日の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

あの人との出会いは数年前。

当時すでにDや他の娘たちも自立し、この喫茶 鉄血1号店も少し縮小していた頃のこと。最初はただのお客様でしたが、この店を気に入ってくださったのかすぐに常連になりました。

転勤でやってきたというあの人の話はとても面白く、旅行などでなければこの地区をほとんど出ない私にとって新鮮なものでした。そして、どこか不思議な雰囲気のあの人に、私は惹かれていったのです。

家族と呼べる彼女たちが外に出ていって、少し寂しさを感じていたのもあるかも知れません。気がつけば、あの人が来る日を待ち望むようになりました。

 

 

ーーー好きです、付き合ってくださいーーー

 

 

あの人と知り合って数ヶ月、その言葉を聞いてすぐにお受けしました。私の周りでも人と人形が結ばれるケースはよくありましたが、私がそうなるとは思っても見ませんでした。

 

あの人との最初のデートは、それはもう酷いものでした。お互い意識しすぎて、最初の一時間くらいは会話が全く続かなかったほどです。それどころか手を繋ぐことさえ躊躇してしまい、やっとの思いで繋いだと思ったら思いっきり握ってしまい・・・・・今思い出しても恥ずかしく思います。

ですが、手を繋いだ時の安心感は、今でも忘れることはありません。あの人と肩を並べ、あの人と歩幅を合わせて歩いたあの日は、私の何よりの思い「〇〇さん、ご注文のコーヒーを・・・・・ってななな何を読んでいるのですか!? ちょっ、見ないでください!」

 

 

部屋で見つけた代理人の日記を読んでいるのが見つかった。ちなみに今日は休日で、私の仕事はない。以前店を手伝おうと言ったら、彼女に『休む時は休んでいてほしい』と言われたので、こうして客として座っている。

その彼女は顔を真っ赤にして日記を隠しているが、普段大人びている彼女のその仕草は普段とのギャップもあって破壊力抜群だ。

 

 

「まったく・・・・・ちなみに、読んでいたのはこれだけですよね?」

 

 

そう彼女がいう通り、あれは彼女の日記のうちの一つでしかない。記念すべき一冊目には何が書いてあるのかと読んでみたが、なるほどやっぱり彼女は可愛い。

 

 

「可愛っ!? そ、そういうのはこんなところでいうものではありません!」

 

 

小声で叱りつけるように言ってはいるが、彼女の頬が少し緩んでいるのは満更でもないと思っているからだろうか。ともかく、客の前ではいつもの凛とした表情の彼女が、私の前でだけコロコロと表情を変えてくれるのがたまらなく愛おしい。

 

 

「もう、そんな意地悪なお客様は、このコーヒーは没収ですね」

 

 

・・・・・・・ちょっとやりすぎたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「もう、手伝わなくてもいいと言っていますのに」

 

 

閉店後、私と彼女で店の片付けを終わらせると、彼女がそう言ってきた。この店は代理人を除く従業員全てがアルバイトやパートで、閉店作業自体はその人たちにもやってもらっているがその後の片付けは代理人だけになる。私が休みの時くらいは、彼女に楽させてあげたのだ。

 

 

「ふふふ、本当に私のいうことを聞いてくれませんね」

 

 

言葉だけなら呆れているようにも聞こえるが、言った彼女は嬉しそうに笑っている。最後の片付けを終え、二人揃って伸びをすると、私は彼女よりも一足先に部屋に戻る。

扉を閉め、部屋の明かりをつけ、そして扉の前で彼女を待つ。そして遅れてやってきた彼女が扉を開く。

 

 

ーーーおかえりーーー

 

「ただいま、〇〇さん・・・・・んっ」

 

 

二人で距離を詰め、そっと唇を重ねる。そしてスッと離すと、顔を赤らめた彼女がはにかむ。

 

 

「やっぱり、まだ慣れませんね」

 

 

そんな彼女が可愛くて、私は再び彼女の唇を奪う。

私が帰る時は、決まって彼女がこうして出迎えてくれる。だが今日みたいに私がいる時は、反対に私が彼女を出迎えるのだ。週に2回だけ、私が彼女を甘やかせられる日なのだ。

そして、彼女が私に甘えてくれる日でもある。

 

 

「・・・・・〇〇さん、その・・・・・」

 

 

彼女が体をより一層密着させてくる。私と彼女の暗黙の了解、そして私は彼女の望み通り、彼女をベッドに押し倒した。

口付けを交わし、今度はより深くまで互いを求め合う。絡んだ舌を解き、顔を離すと、彼女の潤んだ瞳と視線が合う。

 

 

「〇〇さん・・・・・きて・・・・・・」

 

 

彼女のその言葉を合図に、私は部屋の照明を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、〇〇さん」

 

 

目を覚ますと、枕もとにいつもの彼女がいる。昨晩のことなどなかったかのようにしゃんとしている彼女は、私の頬をツンツンと突きながら微笑んだ。

 

 

「朝食の準備ができています。 冷めないうちに起きてくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

end




はい、というわけで今回は外伝的な感じ。時系列ではDたちが自立した後というタイミングです。そして私の願望を詰め込んだ一話であります!

書くにあたり、『あなた』の一人称は性別のはっきりしない『私』に、代理人の日記でも「彼」や「彼女」ではなく『あの人』としました。もしかしたら女性読者の方もいるかも知れないからね!

1日遅れですが、これが作者から皆さんへのバレンタインデーです。お返しは、今後ともこの作品を読んでいただけると嬉しいです!


それでは、皆さん良いドルフロライフを!

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