最近映画館なんて行ってなかったけど、いい映画に出会えました!
話は変わりますが、昔こち亀の漫画で両さんがサンパチ式(レプリカ)に銃剣(レプリカ)を付けて長刀部とバトるという話を見た気がするんですが、その頃から銃剣突撃が大好きでした。
厳しい寒さが少し和らぎ、なんとなく春の訪れを感じられるようなられないような気候になり始めた頃。今日も変わらず店を開き、訪れる客をもてなす喫茶 鉄血に、ライフル銃を担いだいかにも戦術人形ですという風貌の女性たちが入ってきた。
「ほぉ、確かに雰囲気は良さそうだ」
「はい、私のお気に入りのお店ですから」
「いらっしゃいませ。 今日はお友達とご一緒ですか、スプリングフィールドさん?」
そう言いながら出迎える代理人。やってきたうちの一人は代理人もよく知る女性で、この店に度々訪れるスプリングフィールドだ。スプリングフィールドといえば、指揮官が絡むと十中八九暴走することで有名だが、司令部でカフェを開くなど普段は面倒見の良いお姉さんである。
そんな彼女が一歩引いた位置にいるということは、もう一人の女性はその上司なのだろうか?
その女性は代理人の前まで来ると、固い雰囲気のまま挨拶した。
「あなたがここのマスターだな。 昨日付でS09地区に配属となったリー・エンフィールドだ」
「はじめまして、喫茶 鉄血のマスターをしています代理人です」
リー・エンフィールドと名乗った女性は鋭い目つきのまま代理人を睨んでいる。いや、どちらかというと見定めていると言った方がいいだろうか。
互いになにも言わないが、さすがにこの空気に耐えきれなくなったスプリングフィールドが助け舟を出す。
「あの、リーさん。 代理人さんも困ってますからそろそろ・・・」
「む、あぁすまない、こういう性分なのでな」
「いえ、お気遣いなく。 どうぞ空いている席へ・・・ご注文はどうされますか?」
「そうだな・・・では紅茶を」
「私はコーヒーをお願いします」
「かしこまりました」
そう言って代理人は下がり、リー・エンフィールドとスプリングフィールドはカウンターに座り、傍に銃を置いて待つ。注文した品を待つ間、二人は軽く世間話をし始める。
「でも驚きました。 まさか先輩がこっちに来るなんて」
「その呼び方は研修で最後にしたはずだぞ?」
「たまにはいいじゃないですか」
そう言ってクスクスと笑うスプリングフィールドに、リー・エンフィールドは特にリアクションも見せずに返す。
「そういえば、お前のほうはどうだ? 最後にあった時よりも雰囲気が軽くなったようだが」
「え? そ、それはその・・・・・」
「ふふ、それは恋のおかげかもしれませんね」
突然そう言われてビクッと飛び跳ねるスプリングフィールド。その様子を面白そうに眺めながらコーヒーと紅茶を並べる代理人に、リー・エンフィールドは少し驚いた様子で声をかけた。
「恋、だと?」
「えぇ、あの人の話をする時はとっても楽しそうに話すんですよ」
「だ、代理人さんっ!」
スプリングフィールドは顔を真っ赤にして止めようとするがもう遅い。隣のリー・エンフィールドは目をスッと細め、彼女の方を向くと詰問の態勢に入る。
「で、相手は誰だ?」
「な、なんでそんなことを気にするんですか?」
「いいから言え」
意見反論は認めない、とばかりに詰め寄るリー・エンフィールドに、スプリングフィールドもついに折れて話し始める。
相手は指揮官であること、ほぼ一目惚れであったこと、そして未だに告白できていないことなどなど洗いざらい吐かされてしまった。最後に残ったのは、真っ白に燃え尽きた春田さんだけである。
「そうかそうか・・・随分と楽しそうにしているようだな」
「あの、リー・エンフィールドさん。 彼女は決して業務をおざなりにしているわけではありませんので、あまり責めないであげてください」
「ん? いや、別に責めているわけではない。 言葉通りの感想を抱いただけだ」
そう言って紅茶を一口飲むと、その表情をふっと和らげる。それまでのキリッとした、言い方を変えればキツイ表情ではなく、柔和な笑みを浮かべてこう言った。
「私は、見ての通りとっつきにくい人形だ。 喜怒哀楽も薄く、雰囲気も固いと自覚している。 彼女にはそうなって欲しくはないと思っていたが、余計な心配だったようだ」
「・・・・・・・・・・」
「うん? どうした、そんな顔をして」
「いえ、リーさんならもっとこう・・・『色恋沙汰にうつつを抜かすなど許さん!』とか言いそうだったので」
「お前は私を何だと思っているんだ?」
少々呆れたように言いながらも、再び紅茶に口をつけるとまた薄く笑い、瞳を閉じてリラックスした表情を浮かべた。
「ここはいい店だな。 雰囲気もいいし、味も申し分ない。 スプリングが気に入るのも頷ける」
「ありがとうございます」
「それと、これは個人的な頼みだが・・・これからも彼女の友人でいてほしい」
「リーさん・・・・・」
スプリングフィールドも知らない彼女の側面、それは先輩として後輩を心配する姿だった。自他共に厳しいと理解しているからこそ、誰よりも彼女のことを気にかけているのがわかる。
代理人の中で、リー・エンフィールドという女性のイメージが大きく変わったのだった。
「ふっ・・・この様子だと、私が教えるようなことはもうなさそうだな。 少し安心したよ」
「そんな・・・私なんてまだまだですよ」
照れたように笑うスプリングフィールドに、代理人もつられて笑う。指揮官が絡むとアレな彼女だが、やはり本質は見た目相応の可愛らしい一面を持っているのだと感じたのだ。
「さて、ではそろそろ戻るとしよう」
「そうですね。 代理人さん、お会計をお願いします」
「かしこまりました」
それぞれ頼んだものを飲み干し、会計のために席を立つ。少々揉めたが結局リー・エンフィールドが払うことになり、スプリングフィールドは二人分の荷物を持って外へと出た。
「ありがとう、美味しかったよ」
「こちらこそ。 またいつでもお越しください」
「あぁ、また近いうちに・・・・・ん?」
「あら、なにやら騒がしい様子ですね」
会計を終えた時、二人は外から聞こえて来る声に気がついた。なにやら怒鳴り声のようにも聞こえるが、そのうち一人はスプリングフィールドのものらしい。
何かトラブルにでも巻き込まれたのかと少し急いで外へ出てみると・・・・・
「ただでかい脂肪の塊をぶら下げているだけの人形には負けませんわ!」
「残念ですが、貧乳に需要などないのですよKarさん!」
「「ぐぬぬぬぬ・・・・・!」」
玄関先で、二人のライフル人形が額を突き合わせてガンを飛ばしあっていた。片方は店から出たばかりのスプリングフィールド、もう片方は同僚のKar98kである。
普段は仲の良い二人がいがみ合う理由はもちろん指揮官絡みだが、その論点は二人にとって死活問題だ。
「指揮官がお返しをくれるのは、私を置いて他にいませんわ!」
「あんな溶かして固めただけの貧相なチョコを渡すような方に、指揮官が応えてくれることなど億に一つもあり得ません!」
そんなホワイトデーのことで言い争う二人の後ろで、Karと一緒に来ていたカラビーナは困ったような表情を浮かべている。Karと行動を共にすることが多い以上、こんな場面に出会すこともよくあるが、その都度どうすることもできずに困ってしまうのだ。
「あら、またあの二人ですか」
「・・・・なに? 『また』だと?」
「えぇ、指揮官のこととなるとよくぶつかるんですよ」
慣れている代理人は苦笑するだけだったが、しかしもう一人は違う。戦術人形としての心構えやらを叩き込んだと思っていた後輩が、まるで小さな子供のように人目も憚らずいがみ合う。しかも今にも取っ組み合いっそうな状況で・・・・・・・あ、始まった。
「・・・・・・そうか、あれがいつものことか」
気がつけば代理人は店の中へと戻り、残されたリー・エンフィールドは笑みを貼り付けたまま一歩ずつ足を踏み出した。何かを察したカラビーナは二人の足元に転がった銃を拾い集めると、ササっとリー・エンフィールドの後ろに下がる。
互いの胸ぐらを掴んで睨み合う二人は、リー・エンフィールドがそばにきてようやく気がついた。
「・・・・・・貴様ら」
「「え?・・・・・・ヒィッ!?」」
燃え滾る怒気で髪や服が逆立っているかのような錯覚に陥るほど、リー・エンフィールドは怒っていた。そして二人は確信する、この後に待ち受ける運命を。
「今日の予報は終日晴れだそうだ。 明日まで屋外演習場も使える・・・・・覚悟はいいな?」
「え、その・・・・・」
「返事は?」
「「Yes.ma'am!!!」」
その後、彼女たちが宿舎に戻ったのは、翌日の昼頃だったという。
end
公 式 メ シ マ ズ 女 王
ロード画面の四コマの衝撃ったらないね笑
では今回のキャラ紹介!
リー・エンフィールド
本部から転属してきたライフル人形。本部時代に春田さんとは先輩後輩の関係だった。堅物だが融通が効かないというわけではない。怒ると怖い。
ちなみに第十五話で登場したロリー・エンフィールドとは別人である。
スプリングフィールド
黙っていれば素敵なお姉さん。指揮官が絡むと途端にポンコツと化す。
スキンに恵まれ、ドルフロの知名度アップにも(多分)一番貢献している・・・・・のだがこの作品ではその面影はない。
代理人
春田さんが大人しい方が珍しいと思っている。
店内のことはどうにかしようとするが、店の外は管轄外。
Kar
ちょっとお茶でも、と思って来たのが運の尽き。
カラビーナ
巻き込まれた形だが、もとより訓練を嫌ってはいないので気にしてない。