ところで猫耳とかケモミミってどう考えてもペルシカさんの趣味ですよね?
その日、S09地区はなんとなく騒がしい雰囲気だった。何か祭りがあるわけでもなく、大事件が起きたというほどの騒ぎでもなく、ただ何かはあったという程度のもの。
そんないつもとは違う日であっても、代理人も喫茶 鉄血も変わらず一日を送っていた。
「代理人、今日は何かイベントでもあったか?」
「いえ、特には聞いていませんが・・・・非常事態というわけでもなさそうですけど」
「妙にグリフィンの部隊が多いと思ってな。 まるで何かを探しているようだが」
ゲッコーの言う通り、路地裏の店である喫茶 鉄血の前にもグリフィンの部隊が行ったり来たりしている。それも、一つではなく幾つもの部隊が時間やルートを変えてである。
決して殺気立っているというわけでもないが、ただの警備にしてはいつもの気楽さがないのも事実だった。
カランカラン
「失礼します」
「こんにちは〜!」
「あら、M4に皆さんも・・・」
そんな中、目の前を通りすがったM4率いるAR小隊が店に入ってくる。全員がしっかりと装備を固め、とても寄り道という雰囲気ではない。
「
M4がそう言い、代理人も何かあったのだろうと察してうなずく。M4はプライベートならば代理人のことを『お母さん』と呼ぶが、こういった仕事の際は『代理人』と呼んでいる。真面目な彼女らしい、公私混同を避けた結果だ。
「それで、何かあったのですか?」
「はい、と言ってもなんらかの被害が出たわけではありませんが」
「グリフィンやIoPにとって放っておけない案件ってことよ」
M4の言葉に、AR-15が続く。そしてポシェットから大きめの紙を手渡した。大きめの写真に、『見つけたら連絡を』という文字と番号・・・典型的な人探しの貼り紙だ。
もっとも、そこに載っているのは人間ではなく人形なのだが。
「IoP製戦術人形『IDW』、この騒ぎは彼女の捜索活動によるものです」
「? この方はグリフィンの所属ではないのですか?」
「あぁ、そうだ。 手短に話すと・・・・・」
M16がことの経緯を説明し始める。
まずIoP製の人形=グリフィンというイメージが大きいが、実際は最も大きな取引相手というだけで小さいものを含めれば多岐に渡る。民生用から自警団、個人所有のボディガードにPMC、そして傭兵組織などなどである。IoPとて素性のわからない相手に売ることはないが、逆に言えば素性がはっきりしていれば取引可能ということだ。
そしてこのIDWは、そんな取引の結果某国トップの私兵として購入され、つい最近までこことは全く違う地域にいると思われていたのだ。
「ところが数日前、その国で長く続いていた内戦が終結してな。 トップは行方をくらませたらしい」
「そしてグリフィンは、その人物の身柄確保を請け負いました」
「つまり、行方を知っている可能性があるので追っている、と?」
「はい」
そんなわけで各地の部隊が探していたのだが、なんと今日になってこの街での目撃情報が上がってきたのだった。当然グリフィンはこれを好機と捉え、グリフィン有数の規模を持つS09地区の司令部に捕縛命令が下された。
その戦力はAR小隊や404小隊を筆頭に、銃種を問わず様々な部隊が投入されている・・・・・過剰戦力にも程があるが。
「そういうことですので、もし見かけたらご連絡を、と」
「わかりました。 では、皆さんもお気をつけて」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
AR小隊を見送り、店の中と外に貼り紙を貼ってしばらくした頃。相変わらずグリフィンの部隊が探し回っているが、依然として確保には至っていないようだ。
一応発見することはできたようだが結局逃げられたようで、先ほど店の前を怒り心頭のWA2000が通り過ぎていった。よく聞こえなかったが、かなり物騒なことを言っていた気がする。
カランカラン
「いらっしゃいまs・・・・・」
「はぁ〜まったく、連中もしつこいにゃ〜・・・・・あ、マスター、アイスコーヒーを一杯頼むにゃ」
思わず作業の手を止めてしまった代理人。だがそれも無理はない、先ほどからグリフィンが血眼になって探し回っている件の人形IDWが、特に変装することもなければコソコソするわけでもなく堂々と入ってきたのだから。
写真同様、見間違えようのない猫耳を揺らしてカウンターにちょこんと座ると、心底疲れましたというようにベチャッとテーブルにに突っ伏す。
「あの・・・IDWさん、ですよね?」
「うん? そうにゃ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・あ、お腹も空いたからサンドウィッチも欲しいにゃ」
能天気、という感じである。危機感どころか逃げている身とは思えない神経の図太さだ。よほど強靭なメンタルを持っているのだろう。
見かけたら報告と言われているが、ここまで堂々とされると逆に困る。
「失礼ですがその・・・こんなところでゆっくりされていても良いのですか?」
「ふっふっふ・・・・・人も人形も意外と足元は見えないものにゃ。 貼り紙を配った店なら見回りも来ないにゃ!」
ごもっともだ。どうやらこの人形、そこそこ頭が回るようである。グリフィンが手を焼くのもわからなくもない。
とりあえず客であることには変わらないので、言われた通りコーヒーとサンドウィッチを用意した。
「うぅ〜ん、美味いにゃ! やっぱり運動した後の食事は別格にゃ!」
「運動って・・・・・しかしよく捕まりませんでしたね、グリフィンもそれなりの部隊を投入しているはずですが」
「んぐんぐ・・・ゴクンッ、そりゃそうにゃ。 連中は確かに実力も経験もあるのは見てわかるけど、それはあくまで戦闘での話にゃ」
追いかけっこなら話は別、と語る彼女に代理人も合点がいく。確かに戦術人形は人間と比べて高い身体能力と戦闘力を持っている。その中でも単体での戦力では下の方に入るSMGタイプのIDWが他の人形と戦闘になれば、ほぼ間違いなく負けるだろう。
だが、ただ走り回ったり壁をよじ登ったりとなると、実は人形間の個体差はそう大きいものではない。むしろこの場合、体躯が小柄かどうかが大きな要因となる。
「狭い路地に挟まって出られなくなったWAは見ものだったにゃ」
「あぁ、それであんなに怒っていたんですね」
「修練が足りんにゃ」
WAが聞けば助走をつけて殴るであろうことをしれっと言い放つ。が、本人は悪びれた様子もなくコーヒーを飲み干すと、代金をテーブルに置いて席を立った。
「さて、お腹も満たされたことだしそろそろ出頭するかにゃ」
「あら、自分から捕まりに行くのですか?」
「まぁこれ以上鬼ごっこを続けるのも飽きたからにゃ。 それに・・・」
そう言いつつIDWは代理人の方に振り返ると、悪戯っぽく笑って言った。
「グリフィンが欲しい情報は、私は何も持ってないからにゃ〜!」
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「・・・・・・で、結局分からずじまいと」
「はい・・・・・IDWさんはその当時、国外にいたそうで」
「国のトップが変わったって分かった途端に放浪を始めたそうよ」
昨日の騒動から一夜明け、喫茶 鉄血にやってきたAR小隊の面々は疲れ切った顔でそう言った。
特にコケにされた(と思い込んでいる)WAは全てが無駄であったことを知るとその場に崩れ落ち、現在は自室に引きこもっているらしい。
「まぁ、悪い人ではないようですけど」
「そうだね」
「まぁ気を落とす事はないにゃ。 人生失敗はつきものにゃ」
「「「「「「・・・・・・・・ん?」」」」」」
突然聞き馴染みのある声が聞こえ、一同はバッと顔を向ける。
そこにいたのは優雅に足を組み、これ以上にないくらいリラックスしたIDWだった。しかも、なぜかグリフィンの社章をつけている。
「おっと、挨拶がまだだったにゃ・・・・・・・今日からグリフィンでお世話になるにゃ・・・スゥ~……」
「IDWだにゃあああああああ!!!!!」
『うるさいっ!!!』
「・・・・・ふふっ」
end
うちのIDWの強キャラ感よ・・・
ドルフロのいいところって、『ランク=強さ』じゃないところですよね。
それでは、今回のキャラ紹介
IDW
元私兵の放浪者。知りもしない情報のために追いかけ回されているが、どこかそれを楽しんでいる節がある。
SMGとしての高い機動力とそこそこの火力、小柄な体躯で場所を選ばないオールラウンダー。
AR小隊
全員揃っての登場は意外と久しぶり。
SMG1にAR4、うち一人はARバフ持ちで、もう一人は防弾チョッキの前衛というバランスの良い部隊。パーツの互換性も問題無い・・・はず。
代理人
手配中の者であっても迎え入れるのは油断ではなく、何かあっても対処できる実力があるから。
ぶっちゃけハイエンド数体で構成されたこの店で騒ぎを起こす命知らずはこの地区にはいない。