「
「あら、おかえりなさいデストロイヤー」
「久しぶり〜!」
とある日のこと、喫茶 鉄血にふらっと現れたのは別の地区で働いているはずのデストロイヤーだった。大きなリュックを背負いキャリーバッグを引いて入ると、Dが出迎えて荷物を受け取る。
「珍しいですね、こんな時期に来るなんて」
「そうそう、何かあったの?」
代理人もDも不思議そうに首をかしげる。別にデストロイヤーが滅多に帰ってこないというわけではないが、基本的に帰ってくるのは年末年始や長期休暇、もしくは何かの記念日くらいなので、何もない時に来るのが少し珍しいのだ。
それを問われると、デストロイヤーは少しだけ苦笑いを浮かべてこう言った。
「いや、そのぉ・・・・・・実は職がなくなっちゃって・・・」
「「・・・・・・・・は?」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
とりあえず立ち話もアレなので、二階の個室へと案内する。デストロイヤーに飲み物を差し出し、落ち着いたところで話してもらう・・・・・もっとも、動揺しているのは代理人とDの方だったが。
「それで、どういうことなのですか?」
「どういうって・・・さっき言った通りなんだけど」
「それがびっくりしてるから聞いてるんだよ!」
「えっと、じゃあ順番に話すとね・・・」
職を失ったという割のは随分と冷静なデストロイヤーは、ことの顛末を話し始める。
発端は昨年の暮れのこと。デストロイヤーのいた地区は最近急速に成長を遂げており、その煽りを受けて企業の進出と倒産、統廃合が相次いでいた。デストロイヤーを雇っていた会社も、それに飲まれて合併されることになったのだ。といっても、この時はただ合併するだけでやることはそのままだと思っていたという。
ところが年が明け、しばらくした頃。どうもまるっきり別の仕事になりそうな感じがし始めると、職場の同僚も上司も次々と去ることを決めたのだ。
「というわけで、まるっきり変わるなら私も別のところで仕事しようかなって」
「なにが『というわけで』ですか」
「そういうことはまず相談して欲しかったよデストロイヤーちゃん!」
「いひゃいいひゃい!」
けろっとそう話したデストロイヤーに代理人は呆れ、Dは割と本気で怒りながらデストロイヤーの両頬を捻りあげる。
「まったく、あなたとスケアクロウとハンターだけはまともだと思っていたのに」
「あれ? 処刑人は?」
「傭兵、とだけ言って何をしてるかは話してくれませんから。 気がつけば娘がいましたし」
「アルケミストちゃんとドリーマーちゃんに至っては神出鬼没だしね」
「あ、あははは・・・・・・」
そう言われると、職と居場所がはっきりしている自分はかなりまともだと思われていたのだろう、とデストロイヤーは引きつった笑みで思う。代理人だってすました顔でいるが、バラバラになった皆のことが心配なのだ。
そういう意味では、要らぬ心配をかけてしまったと反省する。
「ごめんなさい」
「いえ、もう過ぎたことです」
「ん? じゃあ今は無職なの?」
「え? あぁそうそう、もう次の仕事は見つかってるの」
そう言って一枚のチラシを取り出すと、二人の前に差し出す。それを見た二人の顔は、わかりやすいくらいに引きつった。
『歯』をモチーフにした看板に、『人形の治療も可』という文字、極め付けは見覚えのある腹黒そうな顔・・・・・このS09地区ではいろんな意味で評判の歯医者である。
「仕事を探してる時にたまたま会って、話したら助手として雇ってくれるって!」
「そ、そうですか・・・」
「よ、よかったね・・・」
目をキラキラさせて、本当に感謝しているのだと感じる顔に何も言えない二人。きっとデストロイヤーは知らないのだろう、あの歯医者が治療という大義名分で人を泣かせることが好きなサディストだと。そしてその被害者の一人に代理人がいることを。
とはいえ、妹分の新たな旅立ちを明るく迎えてやるためにも言わないでおく。とりあえず大丈夫だと判断し、Dを下がらせた代理人は静かに尋ねた。
「さて、これで私たち二人だけですね。 まだ話していない理由もあるのでしょ?」
「・・・・・・はぁ、やっぱり代理人にはわかっちゃうんだ」
「ふふっ、これでも皆の姉ですからね」
代理人がそう言って笑うと、デストロイヤーも少し恥ずかしげに笑う。
職を失ったのは事実だし、歯医者に声をかけられたのも事実・・・・・だがそもそもの話、元いた地区で探せばもっと楽だったはずなのだ。わざわざ引っ越す必要もない。
「うぅ・・・恥かしいから言いたくなかったんだけど・・・・」
「話すまで帰しませんよ?」
「さらっと怖いこと言うよね代理人」
「ふふふ」
はぁ、っと大きくため息をつくと、デストロイヤーは諦めたように口を開いた。
「・・・・・さ、寂しかったから・・・」
「・・・・・・ふふふ♪」
「あぁもう! だから言いたくなかったのに!」
思ってたよりも可愛らしい理由だった。とはいえ、これはある意味仕方のないことなのかもしれない。当時では製造時期も遅く、見た目もメンタルも幼めに作られていたデストロイヤーは皆から可愛がられた。それがある日突然バラバラになり、自分の力で生きてゆくことになったのだ。
もちろん、ハイエンドモデルの戦術人形であるのだから普通の人間の独り立ちとはまったく違う。見た目は幼くとも中身は高性能なので仕事だってできるし、実際できていた。
だが、それがイコール『大丈夫』であったというわけではないということだ。
「無理せずとも、寂しいのならそう言っていただければよかったのに」
「そう言ったら本当に助けようとするでしょ? 自分のことをほったらかして」
「えぇ、もちろん」
「・・・・・あの時、一番大変だったのって代理人よ。 それ以上に迷惑なんてかけられないわよ」
要するに、妹は妹なりに気を使っていたということだった。それも、代理人の周りが落ち着くまで一年以上・・・・・それがわかると、代理人はデストロイヤーをギュッと抱きしめた。
「ちょ、ちょっと代理人!?」
「ごめんなさい、今まで苦労をかけましたね」
「・・・・・うん、でも気にしてないわ」
「・・・・・おかえりなさい」
「・・・・・グスッ・・・・ただいま」
この後、個室から出てきた二人の目元は少し赤かったが、二人とも憑物が落ちたような笑顔だったという。
「ところで、私の扱いが末っ子みたいなんだけど?」
「まぁみんなの妹みたいな感じですから」
「・・・・・私末っ子じゃないんだけど。 というか今いるのも合わせたら割と姉の方よ?」
「ふふっ、そうですね」
「言いながら頭撫でるなぁ!」
end
歯医者「ようこそ〜、私の城へ〜!」
破壊者「よ、よろしくお願いします」
歯医者「それじゃ〜早速〜、そこに縛ってる娘を抑えといてね〜」
アストラ「イヤダーシニタクナーイ‼︎」
破壊者「・・・・・治療よね?」
歯医者「もちろん〜、
キュイイイイイイイイイン
・・・・・はい、では今回のキャラ紹介
デストロイヤー
自主退社。S09地区に来たのでこれでようやく好きなタイミングで出すことができる。
誰だよよその地区で働くとかいう設定つけたアホは。
代理人
みんなの姉。そしてなんでも抱え込もうとする人。
基本的に泣くことはないが、きっかけがあると途端に決壊する。
歯医者
後書きのみ。
みんなのトラウマ製造機。
アストラ
後書きry
虫歯は再発するもの。