喫茶鉄血   作:いろいろ

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前回のあらすじ
技術者(変態)たちがアップを始めました。

そして二度目のコラボ(?)回!
キャラクターを貸してくださいました作者の皆様、本当にありがとうございます!


第十五話:激突!人間の可能性(笑) 後編

『IoP主催・合同技術報告会』

というのがこのイベントの名前である。名前の通りIoPを始めとした様々な企業や研究所による新技術のお披露目会といったものであるが、今回のメインは16labと17labによる新スキンの採用コンペだ。

 

 

「・・・と言っても資料そのものは提出済みだし、プレゼンと結果発表はこの会の最後になるのよね?」

 

「そういうこと。 だからそれまでは他を見てまわるのよ。」

 

「・・・私が来てもよろしかったんでしょうか?」

 

「いいのよ私が招待したから。」

 

 

そんな感じで会場をうろついているのはヴァニラ、ペルシカ、代理人という少々珍しい組み合わせ彼女たちがまず向かった先は鉄血工造グループの大規模ブース。この会の目玉の一つ、鉄血とIoP共同開発の戦術人形の発表である。

 

 

「あ、代理人! 来てくれたんだ!」

 

「ええ。 あなたたちが出品すると聞いていたもので。」

 

「あぁ、今から発表だ。 よければ見ていってくれ。」

 

「えぇ、もちろん。」

 

 

それだけ言うとアーキテクトとゲーガーは代理人と別れ、壇上に向かっていく。

 

 

『・・・あーあー・・・よし。 皆さん初めまして、鉄血工造グループ開発部統括責任者のアーキテクトです。』

 

「彼女、普通に話せるんですね。」

 

「ゲーガーの顔から察するに、相当苦労したようね。」

 

『今回、我々がIoP社との共同開発に至った経緯は・・・』

 

「・・・後でお菓子を持って行ってあげましょう。」

 

『・・・というわけで、お見せしましょう。 これが我々の成果、M1887 ウィンチェスター散弾銃です!』

 

『IoP社由来の高性能パーツを使用しながらフレームなどの基本ハードを整備性に優れる鉄血製、戦術AIなどのソフト面を16lab と、各社と機関の強みをハイブリッドした、新世代の戦術人形です!』

 

『これによりSGタイプの人形でありながら高い機動性と整備製、SGの高火力の両立に成功しました。』

 

 

その後も説明が続き、質疑応答を終えて彼女らの発表は終わった。

・・・身もふたもない言い方をすれば、既に納入が決まっているためどんな発表であろうと結果は変わらないのだが。

 

 

『ご静聴、ありがとうございました。・・・・・じゃあ次は()()ターンだよ!』

 

『!?アーキテクト、何を・・・っておいなんだ貴様ら! 離せ!!』

 

 

突然口調を変えた(戻っただけ)アーキテクトの指示で下級人形に拉致られるゲーガー。

場が騒然とする中で笑顔を崩さないアーキテクトは、指をパチンと鳴らした。

 

 

『さあさあ退屈な時間も終わりだ! これからは鉄血の意地の一品、こちらのご紹介だっ!』

 

『にゃ、ニャンだこれは! どういうつもりにゃアーキテクト!!』

 

 

裏から連れてこられたゲーガーは、服装自体に変化はないもののその頭にはネコミミのカチューシャが、腰には尻尾がついたベルトが巻かれていた。

 

 

『これがその新製品。 つけるだけでどんな人形も猫語に大変身の「にゃんにゃん装備」だ! IoPとの共同開発で得たデータをふんだんに使い、鉄血・IoPどっちの人形にも対応できるのだ!!!

・・・というわけでゲーガーちゃん、一言。』

 

『う、うるさい! 見るにゃ!!!』

 

「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」

 

「いくらでも出すわ! 買いよ!!!」

 

「「・・・はぁ。」」

 

 

混沌とする場に頭痛を覚える代理人とペルシカは、血眼になっているヴァニラを置いて別のブースへと向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『狭い屋内や人質の救助に高火力な武器は使えない、音速で飛び回る航空機に戦艦では太刀打ちできない。 ではなぜ大型戦艦は消えないのか、取り回しの悪い武器が出回るのか。・・・・・答えは一つ、ロマンがあるからだ!!!』

 

『圧倒的火力! 絶えない弾幕!! 絶望するほどの資材消費!!!

諸君が、そして我々が求めたロマンがここにあるっ!!!

カモンっ! M61A2 バルカン!!!』

 

『ぃよっしゃー! 私がM61A2だ! 殲滅なら任せなっ!!!』

 

 

喉が裂けんばかりに叫ぶ15lab職員と、叫ぶと同時に銃身を回転、凄まじい勢いで弾(ペイント弾)をばらまくバルカン。

遠くの方が何やら大惨事になっているが本人たちはよほど楽しいのか全く気づかない。ついでにこんな変態のブースに見に来るような物好きたちも全く気にしない。

変に仲間だと思われると嫌なので、代理人たちはブースを後にした。

 

 

 

 

 

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『戦術人形には女しかいない、何故だ!』

 

『人形たちとは契約できるが、それで恩恵があるのは男どもだけだ!』

 

『我々だって男性モデルの人形と契約したいっ! 優しい笑顔で「おはよう、指揮官。」とか言われたい!』

 

『そんな同志たちの願いを叶えるべく、我々はこの人形を開発した!』

 

 

移動した先のブースも大概だった。担当は11lab、全職員が女性というかなり珍しい部署である。

・・・ついでに全員が独身である。

しかし彼女らの魂の叫びとも言えるプレゼンで配られた資料は、代理人たちを驚愕させるものだった。

 

 

「・・・クリエイター? コンセプトも纏まりきっていないペーパープランだったはずでは・・・。」

 

『その通りだ代理人! というかよく来てくれた礼を言う! 我々に共感してくれた一部の鉄血人形が、このプランを提供してくれたのだ!』

 

『ほとんど決まっていないと言うことは、つまり好き勝手していいということ!』

 

「「いやそれはおかしい」」

 

『そして男型がいない現状に悩んでいた我々は思いついた。 ないなら作ってしまえと!』

 

「「うわぁ・・・」」

 

 

ここまで言っているが結局プレゼンまでには間に合わず、こうしてデータのみの公開となってしまったようだ。

とはいえいくら欲望にまみれていてもIoPの職員、先ほどの15labと同様、実際に運用できる程度にはまともなものである。

 

 

(大型牽引装備『ファクトリー』との併用、戦闘能力を犠牲にしているものの作戦領域での補給と修理が可能で、加えて周囲の物を加工できるため資材の節約にもなる。 大量の電力がネックではあるけど、それさえクリアできれば強力な前線移動基地・・・これはかなりいい線いってるわね。)

 

(初めから物量重視だった鉄血では必要性が薄かったものが、グリフィンにとってはある意味死活問題にも関わる、か・・・IoP製の鉄血人形というのは、なんとも皮肉なものですね。)

 

 

結局この場は比較的平和に収まり、11labは野望が一歩前進したことに歓喜の声を上げていた。

だが、これがのちにある騒動を巻き起こすのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『・・・以上で、我々16labの発表を終わります。 ご静聴ありがとうございました。』

 

 

パチパチパチパチパチ

 

 

「いいんじゃないかしら。」

 

「まぁもともとスキンは趣味嗜好の方だから、どれだけ欲しがってもらえるかよ。 性能なんて二の次でいいわ。」

 

『では続きまして、17labの皆さんです。』

 

 

16labの発表は成功を収め、観衆の手応えもそれなりのものだった。

やはり世の中には、義理でもいいからチョコが欲しいと思う男性指揮官が山のようにいるのである。

 

 

「さて、あの変態たちが何を出してくるか・・・。」

 

「ロクでもないもの、というのははっきりしていますが。」

 

 

客席に戻ってきたペルシカは代理人と合流する。

そして壇上に現れる17labの面々。その容姿は、どこにでもいるような普通の研究員だ。

 

 

『えーでは、早速ですが我々17labのスキンを発表したいと思います。・・・モデルさん、こちらへ。』

 

「「・・・・・・・・・・・え?」」

 

 

発表者の合図で出てきたのはえらく小さい人形。だが、この場にいる人間にはそれが誰であるかすぐにわかった。

特徴的な赤いコートと茶色のブーツ、そして彼女を象徴するボルトアクション式の狙撃銃。

そんな特徴がなければわからないくらいまで縮んだ『リー・エンフィールド』がそこにいた。

 

 

『これが我々の新スキン、「幼き日々」です。 ・・・では皆様、あちらをご覧ください。』

 

 

言われるがままにそっちを向くと、会場の端の天井から的が吊り下げられている。

と、突然銃声が鳴り響き、数百メートルは離れているであろう的の中心に穴が開く。ちっこいリーエンフィールドが構えている銃からは、煙が上がっていた。

 

 

『いかがでしょうか。 ただ小さい体にメンタルモデルを移すだけではなく、姿勢の固定から反動制御、リロードや移動の際の身長差のズレを各人形ごとに個別に設定することで、自身よりも大きい銃を軽々と扱えるのです。』

『移すだけではなく、姿勢の固定から反動制御、リロードや移動の際の身長差のズレを各人形ごとに個別に設定することで、自身よりも大きい銃を軽々と扱えるのです。』

 

『加えて本体が小型化したことのより隠密性が高まり、閉所への侵入も可能となりました。 もちろん、小さいからといってパワーが落ちることはありません。』

 

『そして何と言っても可愛いのです!』

 

「「・・・あぁ、やっぱり・・・」」

 

 

誰だこんな変態に技術を与えたのやつは。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

その後も細かな仕様や実装予定の人形を説明して終わりとなり、いよいよ採用されるスキンが発表される。

とは言えスキンという名の別物をくりだした17labが採用されるのがほぼ確定しているため、特にこれといった盛り上がりはなかった。

ペルシカをはじめ16labの職員も最初はがっかりした様子ではあったが、今は片付けも終えて整列している。

 

 

『・・・え〜、であるからして、我々の意義は・・・』

 

「・・・長いわね、社長の話。」

 

「そして意外とアーキテクトがちゃんと聞いてるのね。」

 

「いえ、姿勢を固定したままスリープモードに入っているだけです。」

 

「人形すげぇ。」

 

 

とまあ長い長い話を聞き終え、ようやく結果発表に移る。壇上に上がったのは、クルーガーだ。

 

 

『IoP、ならびに鉄血工造の技術者諸君、今日は素晴らしいものを見せてもらった。 長く話しても仕方がないから、早速結果を伝えたい。』

 

「といっても、今回は17labにとられただろうからねぇ。」

 

「次回はリベンジ、ってとこですね。」

 

『今回採用されるスキンは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17labの「幼き日々」と16labの「通じ合う心」だ。』

 

「「「「「・・・・・・・・・え?」」」」」

 

「ちょ、ちょっといいですかクルーガーさん。」

 

『あぁ、皆の疑問はよくわかる。 なぜ二つも採用したのかだが、これにはちゃんと理由がある。 ・・・ヘリアン君。』

 

『はい。 本来一つのみを採用とし、協議の結果17labの採用に決まった・・・のですが・・・。』

 

「「「?」」」

 

『・・・・・バレンタインスキンを実装した場合の収益、そして実装しなかった場合に起こるであろうトラブルを避けるため、異例の決定となりました。』

 

「トラブル?」

 

『・・・それだけチョコが欲しい、と言うことだ。』

 

『ちゃんと目を見て答えてくださいクルーガーさん。』

 

 

こうしてコンペは終了、採用されたスキンは時期をずらして実装されることになった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「・・・で、結局この対決はドローってこと?」

 

「あっちからはなにも言ってこないからどうでもいんだけどね。」

 

「代理人! これ付けて接客したらもっと売り上げが伸びると思うんだけどどうかしら!?」

 

「お断りします、というかどれだけ買ったんですか?」

 

「おばあちゃん可愛いよ! とっても似合ってるよ!」

 

「ククッ・・・い、いい感じよナガン・・・プッ!」

 

「くっ・・・覚えておれよ指揮官、あとで後悔させてやるからにゃ。」

 

『・・・続いてのニュースです。 本日の昼ごろにIoP社の11labにて爆発が発生、一体の人形がトラックを奪って逃亡しました。』

 

「「「「「・・・・・・・は?」」」」」

 

 

end





というわけで、『初の二部構成』で『コラボ(?)回』で『複数コラボ』というやりたいこと全部詰めた回でした!
反省はするが後悔はない!

今回はあくまでちょい出しで、今後はそれぞれを絡めた話も書きます。



というわけでキャラ紹介・・・今回は多いなぁ。

16lab
言わずもがなペルシカの所属する部署。
AR小隊作ったりM1887のAI作ったりスキン作ったりと結構色々してる。原作からして頭のおかしそうな連中なのに他の部署を盛り上げたせいでかなりまともに見える。

17lab
今回の元凶。
クソ真面目な顔で「可愛いは正義」と言いきる連中。
個人ではペルシカが最も優秀な研究員だが、部署単位で見ると最も優秀で最もバカなのがここ。
邪念も下心もなしにロリスキンを作り上げた。

15lab
大艦巨砲主義に魅入られた熱い部署。
稼働可能な範囲で限界まで火力を上げようとするため、資材消費は二の次になる。
戦艦大和、スツーカ攻撃機、超重戦車マウスが彼らの理想らしい。

11lab
女性オンリーの部署。全員独身。
よく誤解されるが別にBL好きというわけでは無い。
女性指揮官のために、というスローガンを掲げているが努力の方向性が色々違う。

鉄血工造グループ開発部
こんな肩書きになっているが対外的に必要になった時だけそう名乗っているだけでこんな部署はない。
というのもアーキテクトを中心に好き勝手作ったり実験したりとしているだけなので、別に目的もなにもない。
なんかいいのができたら製品化するのでそこそこの存在意義はある。

M1887
原作では鉄血の技術を使ったIoP製だが、今作ではIoPの技術を使った鉄血製。性能は原作と同じ。
この後、AR小隊に組み込まれる。

にゃんにゃん装備
全人形対象の猫語尾変換器。
カラーリングも白や黒など全五色。ただのカチューシャや尻尾付随のベルトではなく、ちゃんと本体とリンクさせることができるので耳も尻尾も動く。
お値段1000ダイヤ。

M61A2 バルカン
odsnakeさんの作品「破壊の嵐を巻き起こせ!」より。
圧倒的火力と弾幕、資材(弾薬)消費を誇る人形。申請時の扱いはマシンガン。弾薬庫と給弾ベルトを背負いながらもそこそこの機動力を持つため、資材消費にさえ目を瞑れば優秀な人形、資材消費にさえ目を瞑れば。

クリエイター
夜刃さんの作品「鉄血の旧式人形」より。
自分が知る限りドルフロ二次作品唯一の男性人形。
ファクトリーと呼ばれるコンテナ型装備によって様々な武器や資材を生み出せる。本体の戦闘能力は無いに等しい。
バルカンと組み合わせるとより効果的な運用ができるはず。
元作品と同じく脱走。

リー・エンフィールド
初登場がロリスキンというある意味不遇な人形。
彼女自身はいたって普通の人形である。

ロリスキン
人形を小さくする意味があるのかを考えた結果、こんな理由をつけてしまった。可愛い。
銃の持ち運びがすごく不便そうだけど特に気にしない。可愛い。
UMP9のロリスキン出してくれませんか運営さん。


以上です。
総文字数が4500越え、三作品とコラボ、後書きですら1,200時オーバー。
承諾してくださいました作者の皆様、本当にありがとうございました!!!

・・・やりすぎたかなぁ

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