さぁあとは音ゲーを達成するだけだ!
D-15、と言う人形がいる。AR小隊のST AR-15と瓜二つの彼女は、名前の通りAR-15のダミー機である。もともとはAR-15のちょっとした悪戯心から生まれた本機ではあるが、今ではAR-15ともどもハンターに恋する乙女である。
そんな彼女は、エリート部隊のAR小隊でありながら前線に出ることはほぼない。彼女自身に戦闘能力はなく、銃もまともに扱えないと言うのが理由だ。では彼女の役割は何か・・・それは、後方からAR小隊をサポートするオペレーターである。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・どうかしら」
「うんうん・・・・まぁ悪くはないかな。 ヘリアンはどう思う?」
「能力的には問題ないだろう。 なんらかの試験をする必要はあるが」
昼過ぎの喫茶 鉄血、そのテーブル席を囲むようにしてD-15はペルシカとヘリアンに向かい合っていた。その二人の手には、D-15が提出したレポート・・・これまでの成績と戦術論、そして指揮権付与の要請書だ。
「前線指揮にM4、その補佐にRO、そして戦術指揮にD-15か・・・悪くはないだろうな」
「むしろ、どこに配属されても上官の能力に左右されないのが利点だよね」
D-15がこれを提出したのには理由がある。もともとは前述の通り戦闘能力を持たないダミー、悪く言えば欠陥品である。それでも彼女なりに手伝えることとして物資の運搬や資料の作成など、AR小隊の雑務をこなしてきた。その根底にあったのは、戦えない自分へのコンプレックスからでもあるのだ。
転機となったのは数日前のこと。司令部で何度か行われている各部隊間による模擬戦でのことだった。
「指揮官からその時の話を聞いたときは驚いたものだ。 まさか人形が指揮官の代わりを行うなんてな」
「けど、ルール違反ではないわね」
模擬戦では、各部隊の能力のみを競うため指揮官は干渉しない。いつもであれば受けられる作戦指揮や戦況報告もなく、戦場での自己判断の積み重ねとなる。
そんな中、D-15は指揮官の元を訪れ、こう言ったのだ。
『私を、作戦指揮所に置いていただけませんか?』
指揮官も彼女のことはよく知っている。オリジナルと同様に真面目で勤勉だ。戦場に出ることは少ないが、その分頭脳労働担当として隊を支え、時にはM4の戦術の相談に乗ることもある。
だからだろうか、指揮官もその場の勢いで任せて見ることにしたのだ。指揮官が直接指揮をとるわけではないので、不公平でもない。
その結果、AR小隊は過去最高の成績で全部隊を圧倒した。これには指揮官もAR小隊も、そしてD-15自身も相当驚いていたらしい。
「私も見たかったものだ。 あの指揮官がかなりの熱意を持って書いたであろう推薦書を読めば、認めようとも思うさ」
「で、では・・・・!」
「だが、そう簡単な話でもない」
パァッと明るくなるD-15に、ヘリアンは厳しい声でそう言った。D-15はキョトンとするが、隣のペルシカも少し困った表情でうなずいている。
「人権団体・・・ですね」
「あ、代理人・・・・・」
「ずいぶん話し込んでいましたが、そろそろ休憩なさってはいかがでしょうか。 コーヒーのお代わりをお持ちしましたよ」
「あぁ、すまない」
からになったカップにコーヒーを注ぎ、芳醇な香りがふわっと広がる。真剣な表情で書類を眺めていたせいで少し凝った体をほぐすと、ヘリアンはコーヒーを一口飲みフゥッと息をつく。
「あぁそっか、代理人はそういうことには鋭いもんね」
「そうせざるを得なかった、と言った方が正しいですが」
「あの、どういうことでしょうか」
「ふむ、では私から説明しよう」
カップを置くと、ヘリアンは静かに語り出した。
人権団体・・・正しくは人類人権団体、という組織は知っているな?
はい、人形の台頭に合わせて規模を大きくした組織ですね。人間と人形の完全分業を目指していると。
そうだ。といってもその理念もここ最近のものだがな。
もともとはね、ロボット排斥活動で有名だったんだよ。そのせいでロボット保護協会としょっちゅう衝突して、ひどい時は軍が出動したこともあるくらい。
そうだ。そして彼らの一部はまだ、人形がいずれ人間の職を奪うと思い込んでいる。所謂過激派だ。またそうでない連中も、人形たちの動向には目を光らせている。
代理人も、ずいぶんしつこく狙われたよね。
そうですね。あの時は多くの方に助けていただきました。
・・・話を戻そう。そこで我々グリフィンを含む人形を扱う組織は、人間と人形の線引きをより明確にしてきた。それが、『指揮官』という存在だ。指揮官自体は発足当時からあるが、ここ数年で彼らに関する規則が倍以上に増えている。
そういうこと・・・まぁだから、実はM4とかUMP45って結構グレーなところにいるんだよ。
な、なるほど・・・・・あっ!じゃあつまり・・・
そうですね・・・仮にD-15さんがオペレーターとして任命されたとしましょう。現時点ではAR小隊に限ったものになるでしょうが、有用性が示されると将来的には他の部隊に・・・・・つまり、人形の指揮官が誕生することになるかもしれません。
代理人のいう通りだ。そしてこれは人権団体にとっての『人間の職を奪う』ことに当たるだろう。
最近大人しくなったけど、過激派はとことんやるからね。
「・・・・・そう、ですか・・・・」
ヘリアンたちが一通り話すと、D-15はひどく落ち込んだ様子だった。彼女にとっては、きっと残酷なことなんだと思う。能力もあってそれが有用であると上司にも認められた。それが、「
その悔しさに涙さえ浮かべるD-15に、三人は申し訳なさそうに顔を伏せるしかない
・・・・・・が、世の中そこまで理不尽ではないらしい。
「話は聞かせてもらった」
「これは私も一肌脱ぐとしようか」
「「シャチョー⁉︎ ナゼココニッ⁉︎」」
突然降りかかる声にはっと顔を上げると、そこにいたのは妙にガタイのいい男とつかみどころのない雰囲気の老人・・・・・変装してはいるが、クルーガーとハーヴェイだった。グリフィンとIoPの社長が揃って変装してるのもかなりおかしいが、それ以前になぜここにいるのか。
「フフッ、彼らも君のところの指揮官君に呼ばれたようだな」
「か、カーター将軍!?」
「いやぁ、あの指揮官の行動力は侮れないね」
「あら、サクヤさんまで」
今度は別の方から、私服のコートに身を包んだカーター将軍に、同じく私服のサクヤまで。あらゆる組織のトップというトップが続々と集まってきた。
「私もおりますぞ」
「ゲッ、代理人のストーカー!」
「失礼な、私はファンクラブの会長ですぞ」
「お久しぶりです、会長さん」
またもやヌッと現れたのは代理人のファンクラブ、そして人権団体穏健派の会長だった。サクヤが警戒を強めているが、本人はどこ吹く風だ。
「え、えっと・・・・皆さんどういう集まりで?」
「カーター将軍が言った通りだ。 彼女の指揮官から連絡があってな」
「恐らくは人権団体の話が出るだろうから、力を貸してほしいとな」
「軍としても、これを機に過激派を炙り出したいと思っていたのだ」
「それに、私の彼女の夢は応援したいしね!」
「元はと言えば私どもの不始末、喜んで協力しましょう」
状況の整理が追いつかず、なんとも間の抜けた表情で固まるD-15。その肩に、代理人はポンっと手を置いた。
「よかったですね、D-15さん」
「え? あの、これって・・・・」
うまく状況を飲み込めないD-15だったが、だんだん落ち着きを取り戻すと同時に意味を理解し、ポロポロと泣き始めた。
「ほ、本当、に・・・・?」
「えぇ、彼らはこんな時に嘘をつくような人たちではありませんから」
「うっ・・うぅぅ・・・・・・」
涙を止めようにも止まらず、しまいには顔を覆ってしまうD-15を、代理人は優しく抱きしめる。
この後、D-15は無事試験を合格しAR小隊の専属オペレーターに任命される。
さらに数年後、それまでの功績が認められたことでグリフィンが指揮権を認可、史上初となる人形の指揮官となるのだが、それはまだずっと先のお話。
end
人間の皆さんが頑張る回。いつもはギャグとかトラブルしか持ち込まない彼らも、やるときゃやる人らなんです。
では、今回のキャラ紹介。
D-15
AR小隊の・・・バックアップとか後方幕僚とかサポートとか色々やってる娘。AR-15ともどもハンターの恋人。
彼女にグリフィンの制服を着せたら似合いそうだなぁ・・・特にまな板なとこr(首が折れる音)
ヘリアン
仕事ができる・・・というか仕事しかできない人。
誰かもらってあげて。
ペルシカ
人形の夢は私の夢!みたいな人。
サクヤと話が合いそう。
クルーガー
強面ムキムキの社長。意外と部下に甘い。
ハーヴェイ
IoP社の社長。ペルシカですら頭が上がらない。
カーター
軍のトップというわけではないが、この辺り一帯の指揮権を握っている。別に原作のような腹黒さがあるわけではない。
サクヤ
人間人形平等・・・よりもやや人形に偏っている人。対外的な鉄血工造トップ。
会長
穏健派の実質的なリーダー。指揮官と連絡先を交換していたという驚きの事実。
代理人
多くの人に支えられて、今ここにいる。故にたくさんの人の支えになるよう、日々店を営んでいる。