喫茶鉄血   作:いろいろ

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うちの作品が原作無視のキャラ崩壊著しいのはご存知かと思いますが、著しすぎて誰が原作通りなのかすら分からなくなってきました(今更)


第百五十七話:17lab(変態共)の発明品

人形製造会社『IoP』

民生用から戦術人形まで幅広く製造、販売、レンタルを行う人形業界の大手である。かつては鉄血工造とシェアを二分していたが、とある一件で鉄血工造のシェアが落ちて以来、もはや独占と見えるシェアを誇る。

そのラインナップの最大の特徴は、なんといっても個性豊かな人形たちである。量産性を落とし個々の性能向上を目指した結果、限りなく人間に近いとすら言われる出来栄えを獲得したのだった。

 

さて、そんなIoPであるが、その中でもいくつかの部署や研究所に分かれている。特に研究所はそれぞれが独立して人形の設計開発を行っており、その中でも特に優れたものが社の製品として世に送り出される。

現在は安心と信頼と確かな実績その他諸々の理由でペルシカリア率いる16labがリードしているが、ほかの部署も日々(おかしな方向で)研究を進めているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、17labへ・・・・歓迎するよスプリングフィールド君」

 

「あの・・・歓迎も何も拉致されただけなのですが?」

 

 

IoPの一研究所、17labに拉致さr・・・・呼び出されたスプリングフィールドは、いかにも警戒していますといった表情で周囲を見渡す。17labは技術力や発想、そしてその規模で16labと並ぶ研究所である。その頭脳をちゃんと使えば、16labをも凌ぐ成果を生み出せるとさえ言われるこの研究所がなぜ結果を出せないのか・・・・・理由は単純、努力の方向がずれまくっているからである。

 

 

「さて、今日君に来てもらったのはほかでもない。 実は我々は新たなダミー計画を立てているのだが、それに協力してほしい」

 

「勝手に拉致しておいて協力するとでも?」

 

「では早速説明しよう」

 

 

聞く耳持たない、というか都合の悪いことだけ右から左な研究員たちにうんざりするスプリングフィールド。本来であればさっさと見回りを終えて司令部に戻り、カフェでコーヒーを淹れて指揮官の微笑みを独占するつもりだったのだから、当然の反応である。

 

 

「戦術人形のダミーといえば、メインフレームに付随し戦闘を行ういわば子機だ」

 

「しかし昨今ではダミーを使用するほどの戦闘はおろか、そもそも戦う機会自体がなくなりつつある」

 

「これはダミーシステムの売り上げが低迷する自体であり、さらにいえば戦術人形という存在の根底にも影響しかねないのだ」

 

 

研究員たちが口々にそう言うのを、スプリングフィールドは時折頷きながら聴いている。地域によっては前線に出ることもあるという話だが、大部分の司令部はその主な任務がパトロールである。相手にするのは軽犯罪者などであり、彼女自身最後に現場で引き金を引いたのはいつなのかというくらいだ。

 

 

「そこで、我々は新たなダミーの形を模索していました」

 

「戦闘ではなく、日常での使用を前提としたダミーシステムの構築だ」

 

「そしてその試作システムがいくつか完成し、ちょうど散歩していた我々の前に現れたあなたに白羽の矢が立った、というわけです」

 

 

要するに、ただそこにいたからという理由で拉致られたらしい。スプリングフィールドはおのれの不幸を呪った。

 

 

「はぁ・・・・わかりました」

 

「おぉ、流石スプリングフィールド君!」

 

「グリフィン人気ランキング不動の上位は伊達ではないな!」

 

 

ちなみに、グリフィンの人気人形たちのランキングは主に司令部周辺の地区や各地の指揮官たちへのアンケートで決まる。スプリングフィールドの人気は製造当初から高いが、それはあくまで『ごく一般的な』スプリングフィールドの話である。

 

 

「では、さっそく調整しようじゃないか」

 

「こちらへ来てくれたまえ」

 

 

研究員たちに連れられて、スプリングフィールドは研究所の奥へと向かう。道中、怪しげな実験を行なっていたり何かよく分からない発光物を見かけたり目が血走った研究員とすれ違ったりしたが、つとめて気にしないことにした。

そうして歩くこと数分、複雑な機械が立ち並ぶ一室へと入った一行は、プロジェクターを起動して話し合いを始める。

 

 

「さて、今回君に試してもらいたいダミーシステムは5つある・・・・のだが、我々にも君にも全て試す時間はない」

 

「そこで今回は、どれか一つのダミーを使いたいと思うのだが・・・何か希望はあるか?」

 

「希望と言われても・・・・・あら、これは?」

 

 

ざっくりなカタログに目を通しながら、ふとスプリングフィールドは目を止める。より具体的には、その運用目的や開発に至った人形たちからの要望である。

 

 

「おや、それですか? ・・・そういえば、君はあの指揮官に想いを抱いていましたね」

 

「なるほどなるほど、確かにこれがあればライバルたちに差をつけられるな」

 

 

周りが何か言っているが、スプリングフィールドにはもう何も聞こえていない。ただただ脳内でその後の光景と、そのずっと先の未来を思い描いてだらしない笑みを浮かべるだけだ。

 

 

「こ、これでお願いします!」

 

「わかりました、ではこちらへ」

 

 

こうして、S09地区にまた新たな火種が持ち込まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

翌日、そんな昨日のことなど知る由もないまま平和なひと時を過ごす喫茶 鉄血の面々。

だがそんな何もない日常は、案外あっさり崩れ去るものだった。

 

 

カランカラン

「いらっしゃいm・・・・・」

 

「あ、スプリングフィール・・・・ド、さん?」

 

「ママぁ、おんなじ人が二人いるよ?」

 

「大丈夫よ()()、この人たちは()()のお友達だから」

 

 

店のベルに顔をあげた代理人が固まり、ひょこっと顔を出したDも思わず二度見する。

そこにいたのは、指揮官が絡まなければ温厚で理知的な戦術人形のスプリングフィールド・・・・・と、その彼女と手を繋いでいるかなり小さいスプリングフィールド似の少女だった。髪型や目の色はもちろん、ダウンサイジングされた服も本人そっくりであり、背中にはきっと玩具であろう小さめのスプリングフィールド銃を背負っている。そしてそのチビ・スプリングフィールドは大きい方を『ママ』と呼んだ。

 

 

「あ、コーヒーとオレンジジュースをいただけますか?」

 

「あ、はい・・・・D」

 

「へ? あ、りょ、了解!」

 

 

声をかけられてようやく動き出したものの、未だに整理がつかないのか微妙にぎこちない二人。異世界から来ようが銃を突きつけられようが動じなかった代理人がここまで動揺するというのも珍しい話である。

 

 

「ママ! あれ食べたい!」

 

「どれ? あぁこれね。 すみません、このケーキも追加で」

 

「かしこまりました・・・・あの、そちらの方は?」

 

 

流石にもう無視できないようで、代理人は恐る恐る尋ねる。するとスプリングフィールドは、待ってましたとばかりにチビの方を抱きかかえて言った。

 

 

「ふふっ、この娘は『ハル』・・・私の娘ですよ」

 

「・・・・・・・・・はい?」

 

 

聴き間違えだろうか、今彼女は『娘』と言った気がする。誰のか、もちろん彼女のだ。人形が子を生むのか、というか父親は誰なのか・・・・・ハイエンドの中でもさらに高度な演算能力を駆使してグルグルと考え始める代理人。ちなみにDはすでに混乱の極みのようで、片付ける食器の場所がしっちゃかめっちゃかになっている。

流石にやりすぎたと思ったのか、スプリングフィールドはネタバラシにすることにした。

 

 

「ふふふ、代理人さんでもそんな反応するんですね。 安心してください、この娘は私のダミーですよ」

 

「・・・・・ダミー、ですか? この娘が?」

 

「はい、昨日17labの方から協力してほしいと言われまして」

 

 

その名前を聞いて、あぁと納得するとともに冷静さを取り戻す。こんな馬鹿げたことをしそうなのは、かつ実現できてしまうのは間違いなくあの変態集団だけだろう。冷静に考えれば、人形が子を生むというのは通常ありえない(専用の装備に切り替えればその限りではない)のだから。

ちなみに、こことは違う世界では割とあり得る話なのだが、代理人はまだ知らない。

 

 

「・・・・一体どういう実験なんですか・・・」

 

「そこは話すと少々長くなりますが・・・・まぁただのダミーですから」

 

「そうなんだぁ・・・・はいハルちゃん、ケーキだよ」

 

「わぁい!」

 

 

しかしこうしてみると、スプリングフィールドの母親姿は意外とよく似合う。心なしか普段見られない母性的な笑みが現れ、愛おしそうにダミーを撫でる姿は本当にあのスプリングフィールドかと疑ってしまう。

 

 

「ハルちゃん、美味しい?」

 

「うん!」

 

「ありがと!」

 

 

Dはもうすっかり馴染んだようで、ハルと楽しげに話している。何が目的のダミーなのかは不明だが・・・・・まぁ悪いことにはならないだろう。

そんな時、また新たな客がやってきた。

 

 

カランカラン

「やっほー代理人」

 

「IDWだにゃー!」

 

「突然ですまないな代理人、コーヒーを三つ頼む」

 

「随分珍しい顔ぶれですね」

 

 

やってきたのは相変わらず眠たげな目のG11、対称に有り余る元気を感じるIDW、そして苦笑する指揮官の三人だ。何があってこの三人なのかは不明だが、客の詮索は不要である。

 

 

「あれ? スプリングフィールドじゃん」

 

「にゃ? その娘は誰にゃ?」

 

「え、あぁこの娘は・・・・・」

 

「あ、()()!」

 

 

瞬間、世界が止まった。それまで楽しそうに談笑していた客も、楽しげに笑っていたDも、ついでに言えば相変わらず口説こうとしていたゲッコーでさえも・・・・・全員動きを止めてハルの方を向いていた。

そのハルはスプリングフィールドの膝から飛び降りると、指揮官の足に抱きつき満面の笑みを浮かべる。

 

 

「えへへ〜!」

 

「す、スプリングフィールド?」

 

「えっと・・・これはその・・・・」

 

 

スプリングフィールドは困ったような照れたようなよくわからない表情でチラチラと指揮官を見つめ、指揮官は指揮官で何がどうなっているのか分からないようだ。

そしてその横で、G11とIDWが徐々にニヤッと笑い始める。

 

 

「そ、その娘は私のダミーでして・・・・」

 

「そ、そうか・・・だが何故「パパ、抱っこ!」・・・・私を父と呼ぶのだ?」

 

「さ、さぁ・・・・・」

 

 

知らないというつもりらしいが、目が泳いでいるあたりどうやら仕込んでいたらしい・・・・・要するに、既成事実というわけだ。

指揮官もこの状況がよくわかっていないが、何度もせびられるうちにハルを抱き抱える。その瞬間、スプリングフィールドが嬉しそうに微笑んだのを代理人は見逃さない。

 

 

「えへへ〜、パパ、ママ!」

 

「・・・・・・ふっ」

 

「・・・・・ふふっ」

 

 

仕方なし、という感じで指揮官はスプリングフィールドの隣に座る。

結果的とは言え、その姿はある意味理想的な家族のようだった。

 

 

 

end




爆弾投下!
この場にG11とIDWがいるのがミソ。

というわけで今回のキャラ紹介!


スプリングフィールド
指揮官と結ばれることを夢見る乙女(笑)
17labの提案に乗り気ではなかったが、既成事実と言われて乗らないはずがなかった。

ハル
ちっちゃいスプリングフィールド。可愛い。
小さい銃を構える。可愛い。
太陽のような笑顔で抱っこをせびる。可愛い。

17lab
発想も努力の方向も変態だが、人間と人形のために働くいい人たち。そのため、トータルで見ればプラマイ0なことが多い。

指揮官
身に覚えのない娘がいる父親ってこんな気分だと思う。見て分かる通り、子供に弱い。

G11&IDW
愉悦部。IDWとは着任時に顔合わせでピンときたらしい。
もう未来は読めてるよね?

代理人&D
流石に予想外すぎる、とは本人談。

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