喫茶鉄血   作:いろいろ

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ライセンス生産とかも姉妹扱いにすると一体どんだけ大家族になるというのか(特にAK47とか)

これかぞ!


第百五十八話:ぶっきらぼうと世話焼きと

毎週金曜日の夜、週末を目の前に控え浮かれた客たちが飲み屋を回り始める頃。賑わいを見せる大通りからは少し外れた路地でひっそりと明かりを灯す喫茶 鉄血・・・もとい、Bar 鉄血ではこの日の酒を目当てに来る客も少なくはない。

そんなBar 鉄血では、メニューもさることながら従業員たちの装いも少し変わるのだ。

 

 

「お待たせしましたお嬢様、『夜の囁き』でございます」

 

「あぁ・・・ゲッコー様・・・・」

 

「・・・・・ほどほどにしてくださいねゲッコー」

 

 

バーテンダーのような服装に着替えたゲッコーが歯の浮くようなセリフを言いながらお手製カクテルを差し出す。その無駄に優雅な仕草と無駄に雰囲気に合ったセリフが、今宵もまた疲れた女性の心を虜にする。

趣味の延長で覚えたカクテルは大変好評なのだが、いちいち名前がむず痒いものなのはご愛嬌である。

 

 

「しかしまぁ・・・・よくもあんだけ自然に口説けるもんだな」

 

「えぇまったく、どんなAIになっているのやら・・・CZ75さんには効かなさそうですけどね」

 

「ははっ、違いない」

 

 

そんなゲッコーを傍目に見ながら、カウンター席でひっそりと酒を口にするのはツインテールに赤色系統の服が特徴の「CZ75」、グリフィンS09地区司令部に所属する戦術人形である。見た目のインパクトもさることながら、彼女が腰に背負っている戦斧は彼女のトレードマークのようなもので、普段はカバーをつけて持ち歩いている。

戦術人形が銃を携行するのは当然なので誰も気にしないが、それ以外で物騒極まりないものを持ち歩くCZ75は、下手に注目されるをの嫌って大通りの店を避けるのだった。

 

 

「ぷはぁ・・・・はぁ〜、ここは静かでいい・・・うるさい蠍もいないしな」

 

「蠍・・・というとスコーピオンさんですか?」

 

「あぁ、別に嫌な奴じゃないんだが・・・・・あのテンションは疲れるんだよ」

 

 

ちなみに、同司令部に所属するスコーピオンが彼女に絡む理由は主に四つ。同郷の銃(チェコスロバキア)であることと髪型が似ていること、そして戦斧がかっこいいという理由と、とある一点がツルペタであること。さらに余談だが、そのせいでスコーピオンはMicro Uziに一方的な対抗心を抱いている。

そんな元気の塊のようなスコーピオンに絡まれ続けるため、気がつけば一人の時は静かな店に来ることが多い。

 

 

「ふふっ、嫌ってはいないが少しうんざり、といったところですね」

 

「そんな感じだ・・・・マスター、おかわり」

 

「そうはいきませんよ、75姉さん!」

 

 

グラスを差し出し、まだまだ飲むという意思表示のCZ75だが、それに待ったをかける者がいた。姉と呼ばれて振り返ると、そこにはCZ75とは対照的にお洒落な服と大きなハット帽、サラッとした髪をなびかせた少女が腰に手を当てて立っていた。

 

 

「げっ・・・『Spitfire』・・・」

 

「75姉さん、また夕食をそんな簡単に済ませようとして!」

 

「な、なんだよ、ちゃんと食ってるだろ」

 

「お酒のあてを夕食とは認めません!」

 

 

彼女の名前は『Spitfire』、彼女が呼ぶ通りCZ75の妹・・・と呼ぶこともできるかもしれない人形である。元となった銃は直接の姉妹銃ではなく、いわゆるオリジナルと複製改造品という位置づけだ。まぁ本人が姉妹だと思っているのならそれでいいだろう。

そんなSpitfireにとって、姉は少々ガサツやいい加減に見えるらしい。

 

 

「いいじゃねえか、ちゃんと朝も昼も食ってるんだ」

 

「いいえダメです! 夕食もしっかり栄養バランスを考えたものにしないと!」

 

「夜は酒を飲みたいんだよ」

 

「ダメです!」

 

「んな無茶苦茶な・・・・」

 

 

うんざり気味なCZ75だが、それでも引こうとするつもりはないらしい。一方のSpitfireも折れる様子はなく、これは所謂平行線というやつだろう。

ちなみに彼女の言う栄養の取れた一品とは、かの有名なスターゲイジーパイである。魚肉に野菜にと必要なものは全て詰め込まれている・・・と言っているが、残念ながら英国銃ではない姉にはその見た目を受け入れてもらえていない。

 

 

「あ〜わかったわかった、じゃあ今度から気をつけるよ」

 

「本当ですか?」

 

「あぁ、約束だ」

 

「・・・・・仕方ありませんね」

 

 

やれやれといった表情でSpitfireは席につくと、大きな帽子を脱いでフゥッと息をつく。見た目も仕草も性格も全く真逆の姉妹だが、不思議と仲が悪そうには見えないのだ。

 

 

「せっかくだから何か飲んだらどうだ? 私が持つからよ」

 

「え? じゃあ・・・・・どれがいいんでしょうか?」

 

「え? お前まさか飲んだことねぇのか!?」

 

「お、お酒なんて百害あって一利なしですよ!」

 

 

この場にロシア組がいれば猛抗議必至な一言。だが彼女にとって国民的飲料は紅茶であり、言ってしまえば朝から晩まで紅茶の日々である。加えて見た目がこんな感じなので、今の今まで酒の席に呼ばれたこともない。

 

 

「じゃあこの・・・・カルーアミルク?というものを」

 

「かしこまりました」

 

「大丈夫なのか?」

 

「75姉さんの妹なら、お酒も飲めるはずです!」

 

 

なんだその理屈、とCZ75は苦笑する。人形に遺伝なんてものは存在せず、酒が飲めるか否かに姉妹関係はほぼ関係ない。416とG28の姉妹がいい例だ。

 

 

「お待たせしました、こちらがカルーアミルクです」

 

「へぇ〜、お酒っていうよりもデザートっぽいわね・・・・あ、甘い」

 

「如何ですか、初めてのお酒は?」

 

「お酒って言っても色々あるのね・・・・これは気に入ったわ!」

 

 

そう言ってSpitfireはグイッとグラスを傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「んへへへ〜・・・・75おね〜ちゃ〜〜ん・・・」

 

「おい代理人、やっぱり止めときゃよかったんじゃねえのか?」

 

「いえ、ここまで飲めないとは思っていなかったので」

 

 

数分後、そこでは少々鬱陶しそうにするCZ75に、彼女の服と同じくらい真っ赤になったSpitfireがべったりとくっついていた。アルコール検査などするまでもなく酔っ払っているようだ。

その手元のグラスには、半分ほどに減ったカルーアミルク・・・まだ一杯目ですでにこの有様だった。

 

 

「おねえちゃ〜んだ〜いしゅき〜〜〜」

 

「はいはい、とりあえず水飲め水」

 

「や〜〜〜〜!」

 

「わかりやすい幼児退行ですね」

 

 

もはや口調すら変わって甘え続けるSpitfireに、代理人も思わず苦笑する。それでも見ているだけなのは、微笑ましい光景だからだろう。

 

 

「・・・・・75おねえちゃん」

 

「ん? なんだ?」

 

「・・・・・んーん、なんでもな〜い」

 

「ははっ、なんだよそれ」

 

 

呆れながら髪を撫でるCZ75。撫でられたSpitfireは少しくすぐったそうにしながらもやがて気持ちよさそうに目を細め、気がつけば静かに寝息を立て始めた。

 

 

「・・・寝ちゃいましたね」

 

「そうだな・・・・じゃあ私らは帰るよ」

 

「お一人で大丈夫ですか? もし良ければ人を貸しますが」

 

「大丈夫大丈夫。 それに・・・・・今日は二人で帰りたい気分なんだ」

 

 

そう言ってニカっと笑うと、CZ75はSpitfireを背負って店を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日。

 

 

「75姉さん、今週もあのお店ですか?」

 

「あぁ、お前も来るか? 酒はダメだけど」

 

「む・・・何故ですか? 飲んだことがないだけで飲めます!」

 

「いや、だからお前は一回飲んで・・・・ダメだ、聞いちゃいねぇ」

 

 

その日、再び訪れたSpitfireが再び酔っ払うのは当然の結果だった。

 

 

 

end




初見で「75姉さん」がまさか本当にCZ75だとは思わなかったくらい似てないなこの二人。でもその似てない感じがより微笑ましさを増すと思います(断言)

それでは、今回のキャラ紹介

CZ75
口調が荒っぽく見た目も行動もワイルドな人形。専用の戦斧には何故かスコープが、これを使っているところを見たことがない。
なんだかんだ言ってSpitfireのことを大切に思っている。

Spitfire
いかにも英国っぽい格好だなぁと思いました(小並感)
普段は「75姉さん」だが酔うと「75おねえちゃん」になる。姉を心配しすぎるあまり過保護でややストーカー気味になってしまっている。

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