喫茶鉄血   作:いろいろ

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アップデートでレイアウトが大幅に変わりましたね。
慣れの問題はありますが、個人的には宿舎と作戦を直接行き来できるのはありがたいですね。

ところでイベントのG36C、乗っ取られて口調が変わってもそれはそれでありだと思いました。


第百六十二話:おかえり

ドタドタドタドタ……バタンッ

「おはよう代理人! そしてビッグニュースだよ!」

 

「・・・・・UMP9、店の扉をそんな勢いで開け放つとはどういうことだ?」

 

「げっ、ジェリコ教官・・・・・」

 

「おはようございます、9さん」

 

 

今日も今日とていつも通り店を開ける喫茶 鉄血。そして開店からまだ一時間も経っていない頃に元気有り余る勢いでやってきたのは、この店常連カップルの片割れであるUMP9。開け放った勢いでくるりと一回転するほどテンションが上がっているようだが、先客のジェリコにバッチリ目撃されてしまう。

 

 

「まぁまぁジェリコさん、そう目くじらを立てなくても大丈夫ですよ」

 

「・・・マスターがそういうのなら構わないが」

 

「ありがと代理人!」

 

「だがこの場では不問にするだけだ。 司令部に戻ってから対応させてもらう」

 

「 」

 

 

笑顔のまま凍りつく9。どうやら404小隊の生活習慣改善担当になって以降、ジェリコは彼女らにとって恐れられる存在となったらしい。

さて、それはともかく

 

 

「それで9さん、そのビッグニュースというのは?」

 

「はっ! そうそう代理人、昨日の夜に電話があってね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノインが帰ってくるんだって!」

 

 

9は再び笑顔に戻り、嬉しそうにそう言った。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

グリフィン特別観察対象『ノイン』

もともとはこことは異なる世界で生まれ、何の因果かこの世界へと流れ着いた人間である。容姿は装備も含めてUMP9タイプであり、もとの世界でも『UMP9』といて活動していた。この世界に流れ着いてからは失った義手をヘリアンが提供し、その特異性からグリフィンが行動を監視している。

・・・・・もっとも、監視していたのはごく初期のみで現在は本人からの定期連絡で済まされている。

 

そんなノインもこの店に縁のある人物であり、同型意識から9とも仲がいい。S06地区の喫茶店の従業員でもあるが、どうやら先にこっちに寄るようだ。

 

 

「・・・なるほど、随分と数奇な運命を辿っているのだな」

 

「そうですね。 ですがまっすぐでいい娘ですよ」

 

「そうそう、なんたって私の妹だもん!」

 

 

そう胸を張る9。まぁこの自称9型長女が一番子供っぽいのだが誰も指摘しない。

さて、その9がここにいるということは、つまり集合場所がここということなのだろう。

 

 

「でしたら、先にお茶とケーキを用意しておきましょうか」

 

「なら私は引き上げようか。 水入らずには邪魔だろう」

 

「そんなことないよジェリコ教官、むしろ教官にも紹介したいし!」

 

 

そう言いつつもソワソワとし始める9は、今か今かと玄関の方を気にしているようだ。そして約束の時間となり、店の扉がゆっくりと開く。

 

 

「あ! おかえりノイn「open sesame」ズコーーーー!!!」

 

 

出迎えに行った9がそのままの勢いで滑っていった。現れたのは人でも人形でもない、無駄に渋い声のダイナゲートだった。

その見た目とのギャップに、思わずジェリコも頬をひくつかせる。

 

 

「ず、随分変わった妹だなUMP9」

 

「ち、違うよこんなのじゃないよ!」

 

「その声は・・・・・あら、お帰りなさいダイナゲート」

 

「あぁ、久しいな代理人よ」

 

 

彼は一匹のダイナゲート、特に名前などないのだがその存在感は一級品である。これは以前ノインの旅先へと送られ、旅のサポートとしてノインに付き添っていたものである。開発者はサクヤだが、発送したのは代理人なので当然知り合いである。

その後から、重そうに荷物を引きずってノインがやってくる。

 

 

「遅かったじゃないか、我が主」

 

「そう言うなら少しは荷物持ってくれてもいいんじゃないの?」

 

「なに、主の健康管理の一環だ」

 

 

ああ言えばこう言う、典型的なタイプだ。旅先での幾多の経験から、舌戦では勝てないと諦めてノインは話を切り上げる。

 

 

「ただいま、代理人」

 

「えぇ、お帰りなさいノイン」

 

「ノインおかえりー!」

 

「わぁ!? ただいま9!」

 

 

抱きしめ合い再開を喜ぶ二人を、代理人は席に案内する。誘われたジェリコも同じ席に座ったが、なんとなく気まずそうだ。

 

 

「あ、紹介するね。 この人はジェリコ教官、私たちの教官だよ」

 

「は、はじめまして、ノインと言います」

 

「はじめまして、紹介にあずかったジェリコだ。 まぁそう固くならなくていい」

 

「ふむ、ではそうさせてもらおう」

 

「君には言ってないよ、あとなんで椅子に座ってるの」

 

 

ノインのジト目も気にせず、床ではなく椅子の上でふんぞり返るダイナゲート。主の友人の上司を前にしても崩さないその尊大な態度に、ノインは笑顔のまま青筋を浮かべる。

が、いざ一発殴ろうかというところで自ら椅子を降り、スタスタと出口へと向かってしまう。

 

 

「では主よ、私は本社でメンテナンスを受けてくるぞ」

 

「あぁはいはい、行ってらっしゃい。 帰りはわかる?」

 

「ふっ、案ずるな。 ではな代理人」

 

「えぇ、サクヤさんには連絡を入れておきました」

 

 

終始勝手に動き回り、勝手に去っていったダイナゲートを睨むように見送って、ノインははぁっとため息をつく。

そんなノインをねぎらうように、代理人がケーキを運んできてくれた。

 

 

「ふふ、余計なお世話でしたか?」

 

「・・・・まぁ、寂しくはないからいいんですけど」

 

「そう言ってもらえて良かったです」

 

「じゃあ早速いただきまーす!」

 

「9は変わらないね。 じゃあいただきます」

 

 

ようやく団欒とした雰囲気が訪れ、ノインの旅先の話や最近の出来事に花を咲かせる。旅先で出会った人やちょっとした依頼、一時的にお世話になったアウスト指揮官たちや、ショーを手伝ったスケアクロウなど、話を聞くだけで充実していたことがよくわかる。それを聞く9は相槌を打ちながら楽しげに、ジェリコもわずかに微笑み黙って聞いていた。

9はもとより、ジェリコもノインが生きていた世界について話程度には知っている。だがそれはあくまで『話だけ』であり、それがいかに過酷な世界であるかなど想像でしかない。そして訳もわからぬままこの世界へと飛ばされてきた彼女がこうして笑えるなど、ある意味奇跡のようなものだ。

 

ふとジェリコは店の時計を見て残りのコーヒーを飲み干す。どうやらここで終わりらしい。

 

 

「さて、私はそろそろ戻るとしよう・・・・面白い話が聞けてよかった」

 

「あ、こちらこそ、ありがとうございます」

 

「ふふっ、それはこちらのセリフだ・・・・代理人、会計を頼む」

 

「はい、ただいま」

 

 

やがてジェリコが立ち去り、9もそろそろ時間のようで荷物をまとめ始める。どうやらノインとはここでお別れのようで、ノインはこの後S06地区に向かうらしい。着く頃にはすっかり日も暮れるだろうに、それでも9に会いにきたのだ。

 

 

「さて、そろそろ行こうかな」

 

「ふふっ、なんだかあっという間でしたね」

 

「今日くらい泊まっていけばいいのに〜」

 

「えへへ、ありがと。 でもあっちにも帰るって言っちゃってるから」

 

 

そう言ってノインは重そうなキャリーバッグを引きずり、店の前まで出る。9も名残惜しそうにしているが、ここでお別れだ。

 

 

「そう落ち込まなくても、またいつでも会いにいけるではないですか」

 

「そうだね・・・じゃあ最後に、えいっ!」

 

「わわっ!? な、9?」

 

 

いきなり飛びつき抱きしめる9にビックリするも、ノインもその手を9の背中に回した。

実の姉妹でもなく、生まれた世界も違う。だが9はノインを家族として受けいれ、この再会を噛みしめたいのだ。人形の中でも屈指の『家族』へのこだわりがあり、そして放っておけない性格の9だからこそだった。

 

 

「えへへ〜、ノイン成分補充完了!」

 

「もぉ、いきなりじゃビックリするよ」

 

「ごめんごめん・・・・じゃあ改めて、お帰りノイン」

 

「・・・・・・うん、ただいま9」

 

 

そう言い合って、再び抱擁を交わす二人。

この後結局なんやかんやで三十分程度話し続け、最後は代理人が締める形でお開きとなったのだった。

 

 

end




外出自粛、在宅勤務のせいでまともに人と会話していない気がする・・・・表情筋死にそう。
話は変わりますが、6月に予定されている少女戦略最前線、願うならぜひ行ってみたいところですね。コミケも含めてこういうイベント行ったことないからよくわからんけど笑

まぁそんな話はほっといて今回のキャラ紹介!

ノイン
世界を旅し続け、ようやく帰ってきた。
S06地区のカフェに住み込みで働いているが、店長夫婦の意向で基本的に自由に動ける。

9
明るく元気でハイテンションなムードメーカー。家族想いで、ノインの帰還を心から喜んでいる。
ややシスコンの気があるのは遺伝なのかもしれない。

ジェリコ
この地区に配属以来、すっかり気に入って常連となった。
朝に余裕があるときは開店直後からコーヒーを飲みに訪れ、その後司令部に戻るというフットワークの軽さ。

代理人
ノインが連れているダイナゲート経由で一応の動向は知っていたが、それでも無事帰ってきてくれてホッとしている。
ケーキはサービス。

ダイナゲート
よくよく考えればこいつも久しぶりに里帰り。
公式四コマでもフォークとナイフを使う個体がいるんだから意外とダイナゲートは高性能なのかもしれない。

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