喫茶鉄血   作:いろいろ

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一週間以上空いちゃいましたね・・・・いやぁモチベーション上がらないって辛い笑



ところでログイン絵のM4可愛すぎん?
一人くらいお持ち帰りしてもええやr(銃声)


第百六十八話:イタズラシスターと自称敬虔シスター

S09地区は、意外となんでも揃う地区の一つである。古い街並みを残しつつも大型のショッピングモールもあり、さらに大通りに面している店では日用品から雑貨や骨董品まで買うこともできる。そこそこ大きな街だが交通の便もよく、その気になれば一年中この街から出ずとも問題なく暮らしていけるだろう。強いて挙げるとすれば映画館などの娯楽施設が少ないが、それも隣の地区に行けば手に入るのだ。

さて、そんな便利な街の片隅に、ややボロくなっている教会がある。後任の神父もおらず、近所の老人たちが日課として掃除をしに来る程度のもの・・・・・・というのはあくまで過去のお話である。

 

 

「本日も、狩人様に幸あらんことを」

 

『幸あらんことを』

 

 

少し前まではホラー映画の舞台とも言われるほど閑散としていた教会だが、今ではほぼ毎日のように祈りを捧げる人々の姿を見ることができる。それも男女年齢人種問わず、非常に幅広い層だ。

こうなったきっかけというのが、今まさに皆の前で祈りを捧げている一人のシスター・・・・・・アデーラの出現である。

どこから現れたのか、いつ現れたのかすら不明であり、戸籍も存在しない彼女はなんやかんやあってこの教会に住み着いている。そして毎日欠かさず祈りを捧げ、気がつけばそれに倣う者たちが現れたのだった。

 

 

「ふぅ・・・・・さて、今日のお祈りはここまでとしましょう」

 

 

柔和な微笑みを浮かべるアデーラは、この寂れかけた教会に似つかわしくないほどの輝きを持っている。それに惹かれるのも無理はないが、彼女を知る者・・・・・とくに彼女への苦手意識100%などこぞの狩人がこの場にいれば、皆騙されていると声高に言ったことだろう。

 

・・・・・と、様子を見に来た代理人は思うのだった。

 

 

「随分と増えましたね、信者の方が」

 

「うふふ・・・・・一見明るく見えても、それだけ暗闇の中を彷徨っているということですよ、代理人さん」

 

「それについては同意します・・・・・が、信仰の対象はいかがなものかと」

 

「あら、決して間違いなどございませんよ」

 

 

そう言って見上げる先、ステンドグラスからの灯りをバックに妙な神々しさを醸し出す石像・・・・・・どこからどう見てもあの狩人(ローウェン)である。

そう、これがこの協会の信仰対象であり、名を『ヤーナム教』という。

 

 

「愛しの狩人様が悪夢を切り開き、終わりなき夜に夜明けをもたらしてくださるのです」

 

「文字通り悪夢のような世界であったことは聞いておりますが・・・・・・よろしいのですか? もともとは別の宗教の教会でしょう」

 

「問題ございません。 ここではあらゆる宗教を信仰していただけますから」

 

 

にっこりと笑うアデーラ。実際、彼女がここで新しい宗教を始める際に、文句を言いに来る人間がそこそこいた。なにせ得体の知れない宗教である、進行だけならともかくカルトのようになってもらっては困るのだ。

そこでアデーラは、この協会の敷地内に別の宗教用の建物まで立ててしまったのだ。具体的には、協会の裏手に簡素ながらもモスクと神社がある。モスクの方はまぁいいとして、神社には一体なにが祀られているのかは不明だが。

 

 

「信ずるものに祈りを捧げたい、しかし場所がない、だからここを提供する・・・・・そういえば伝わりましたわ」

 

「・・・・・珍しくまともな説得ですね」

 

「まるで私がまともではないように聞こえますが」

 

 

常に注射器と輸血パックを持ち歩き、自身の血を満載しているシスターをまともと呼べるはずがない。

とはいえ、今のところとくに問題もなく過ごしているようなので、あまり口を出すこともないだろう。いざとなれば代理人を含め誰かに連絡するようにと言っているし、そもそも彼女だけでもなんとかしてしまいそうである。

 

 

「では、私もそろそろ・・・・・・ん?」

 

 

帰ろうかと出入り口に向かおうとした代理人は、直後に何かを感じ取り立ち止まる。それは言うなれば視線に近いが・・・・・

 

 

(カメラ・・・にしてはやけに揺れて・・・・・・)

 

「・・・・・・あら?」

 

「え?」

 

 

タタタタタタタッ…………バサッ‼︎

 

アデーラの声に反応した一瞬、小さな足音に続いて何かを捲るような音が聞こえる。そして太ももの辺りまで感じる空気・・・・・ロングスカートの代理人であればほぼない感覚だ。

ハイエンド随一の高演算能力の結果導き出されたのは・・・・・・・何者かにスカートをめくられたということだった。

 

 

「っ!? だ、誰ですか!?」

 

「まぁ、初めて見ましたけど・・・・・扇情的ですね」

 

「忘れなさい、可及的速やかに!」

 

 

どうせ武器を使うと見えるのに、とはあえて言わない。きっと本人もその時は見える見えないなど問題ではないのだろう。

もっとも、平常時であればその限りではないようだが。

 

 

「イヒヒッ! 大成功〜!」

 

 

そんな代理人のスカートをめくるというある意味全ての男の夢を実現してしまった張本人は、アデーラの後ろからひょこっと顔を出してしてやったと笑っている。

シスター服とそれに覆われている耳が特徴の小柄な人形・・・・・P7である。

 

 

「・・・・・アデーラ、この子は?」

 

「ここに住んでいるP7ちゃんです。 なんでも、絶賛家出中なのだとか」

 

「ここならイタズラしても怒られないから大好きなの!」

 

 

家出、ということはおそらくグリフィンの所属なのだろう。チラッと見えたホルスターには彼女と同じ名を冠す銃が下げられており、その幼い見た目との不釣り合いさが戦術人形であることを物語っている。

そしてそんなP7最大の特徴にして家出の原因、それが『イタズラ』なのである。

 

 

「アデーラ、あまりとやかく言うつもりはありませんでしたが、彼女の保護者ならばあなたが注意すべきでは?」

 

「そう言われましても、これもまた信ずるものの違いですので」

 

 

前述の通り、この教会での信仰対象は多岐にわたる。一神教から多神教、邪神や悪魔を祀る者すらいる始末だ。アデーラ自身ももはや神とかそんなものではない相手を信仰(?)しているのだから。

そしてP7が崇めているのは・・・・・・

 

 

「北欧神話のロキや、中国の孫悟空ですね」

 

「イタズラ関係ばかりじゃないですか」

 

「ですが真っ当な神様ですよ?」

 

 

何か問題でも?、と首を傾げるアデーラと、論破しましたとでもいうかのように勝ち誇った顔のP7。並大抵のことでは怒りを覚えない代理人だが、さすがにちょっとイラっとしてしまった。

子供相手に大人気ない・・・・・と思っていたのだが、引き返せないほどの悪事に走ってしまう前に阻止すべきと考えを改めた。

 

 

「・・・・・わかりました。 では私もしかるべき措置を取らせていただきます」

 

「へぇ・・・ま、なにをしたって私には叶わないけどね!」

 

「こらこら、あまり挑発するものではありませんよ」

 

 

余裕をかますP7に、代理人は深くため息を吐きながら端末でメッセージを送る。正直、()()()()に貸しをつくるのは大変リスクの大きいことなのだが、これがもっとも確実なのだ。

 

 

「その余裕、いつまで続くか見ものですね」

 

「そっちこそ、恥の上塗りには気をつけるのね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして十分後、代理人の打った一手に、P7はあっけなく翻弄されてしまっていた。

 

 

「ちょ、ちょっと!? 助けを呼ぶなんて卑怯じゃない!!」

 

「『力こそ神だ』という言葉があります。 そしてコネや人脈もまた力・・・・・つまり神なのです」

 

「そんな暴論っ!?」

 

 

一見無表情だがどことなくスッキリした顔の代理人。彼女が用意した手段は援軍を呼ぶという、シンプルにして大体の事案を解決してくれる万能案であった。

そして、彼女の人選こそが、P7が太刀打ちできないものだったのだ。

 

 

「ほらほら〜、よそ見してると捕まるよ〜」

 

「にゃはははっ! その程度の罠なんて目を瞑っても避けられるにゃ!」

 

「う、うるさいっ! 2対1なんて卑怯よ!」

 

「なんだ、2対1で簡単に負けちゃうんだ」

 

「所詮はお子ちゃまだにゃ〜」

 

「キーーーーッ!!!」

 

 

挑発を挑発で返し、教会中に張り巡らされた罠を解除しながら追い詰めるG11とIDWに、P7の沸点は瞬く間に超えてしまった。

目には目を、曲がった根性には曲がりきった根性を、悪戯好きには愉悦部(イタズラガチ勢)を、である。

 

 

「はい確保、じゃあグリフィンに戻ろうか」

 

「あ、サボってた間は有給として処理してあるにゃ。 今日から休みなく働いてもらうにゃ」

 

「嫌あああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一件落着ですね」

 

「ふふっ、少し寂しくなりますね」

 

 

二人がかりで引きずられていくP7を見送りながら、代理人は心底ほっとしたような顔でそう言った。たまたま様子を見いにきただけなのに、随分と疲れる1日になってしまったものだ。

 

 

「それにしても、力こそが神、ですか・・・・・代理人さん」

 

「はい?」

 

「是非ともあなたもヤーナム教に」

 

「お断りします」

 

「あら残念」

 

 

その日以降、顔を合わせるたびに勧誘される代理人であった。

 

 

 

 

end




メスガキちゃんを分からせる回。イタズラは子供の特権だけど、やりすぎは良くないよなぁ?

でもP7ちゃんにイタズラされるのも悪くないと思います!


では今回のキャラ紹介

P7
グリフィン所属、家出中のイタズラ娘。スカートめくりなどの子供らしいイタズラから、トリモチなどを使った厄介なものまで様々なイタズラを行う。
煽りはするが煽られると弱い。口喧嘩も弱い。

アデーラ
教会に棲まう謎多きシスター・・・・コラボ回で登場した、ブラボ界を代表するヤンデレ。
シスターを名乗りながら神々を信仰していないという砕けっぷりであり、その対象はとある狩人のみ。
教会中にP7のトラップが仕掛けられているが、信者のために丁寧に解除して回っている。

代理人
自分から見せるのと不意打ちで見られるのとでは違うらしい。
ちなみに『力こそ神』とはその場ででっち上げた言葉。本人は力による解決をあまり好まない。

G11&IDW
グリフィンS09地区を代表する愉悦部。並大抵の口論では勝つことができず、加えて煽り能力も高い。人形としての性能も抜群であり、一度敵に回すともはや止められなくなる。
頼み事をただで引き受けることはない。

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