喫茶鉄血   作:いろいろ

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コラボ回の伏線回収。

逃亡の果てに彼がたどり着いたところは・・・
はい、いつものとこです。


第十七話:受〜難は続く〜よ〜、ど〜こま〜で〜も〜

一見いつも通りに見えるS09地区の街、だがそこに暮らす人々からすれば明らかに異様な光景だった。

街を見回る警察がいつもより多く、しかも皆緊張した面持ちでいた。さらに近くの司令部から人形部隊も警備に加わっており、その装備も対人用ではなく対人形装備である。

そして、街のいたるところに張り出される手配書には、人相の悪そうな顔が写っていた。

 

 

「・・・では、我々はこれで。」

 

「はい、ありがとうございました。」

 

 

この地区にひっそりと(というにはいろいろ目立っているが)開かれている喫茶 鉄血の店内にも同様の手配書が配られていることから、事の重大さがうかがえる。

 

 

『・・・本日未明にS09地区郊外で発見されたトラックはIoP社のものであり、先日発生しました人形脱走事件の際に強奪されたものと一致しました。 同地区の警察ならびにグリフィン部隊は警戒レベルを上げるとともに、周囲への注意を呼びかけています。』

 

「・・・確認ですが、()には大した戦闘能力がないんですか?」

 

「設計上では、そう聞いてるわ。 けどファクトリーと一緒に逃亡した以上、必ずしもそうとは言い切れないわね。」

 

「人形はスティグマを結んだ銃でなければ性能が著しく低下する、鉄血もIoPも同じはずでは?」

 

「その通り。 でも銃の威力とかが落ちるわけじゃない、ただ上手く扱えなくなるだけ。 ばらまくだけならMGを、命中精度なら追尾式のロケットランチャーを作ってしまえばいいだけだからね。」

 

「・・・そうならないことを祈っていますよ。」

 

 

この騒動を起こしたのは、IoPの11labから逃走した新型人形(第十五話参照)、機体名「クリエイター」である。

この一件で11labは相当のお叱りと大量の反省文を課せられ、事態の沈静化には他の部署にの人間が当たることになっていた。その中で、代理人ら旧鉄血組と面識のあるペルシカに白羽の矢が立ち、彼女経由で鉄血に協力を依頼することとなっていた。

 

 

「と言っても、その頃にはすでにアーキテクトたちが動いていましたが。」

 

「本当に思い切ったことをしてくれたわね。 クリエイターの識別コードに反応する小型発信機を詰め込んで、改造したジュピターで撃ち出すなんて。」

 

「・・・結果的におおよその位置は絞り込めましたが、グリフィンは随分と慌てたそうで。」

 

「・・・あれが実弾だったら今頃大惨事よ。」

 

 

そうした諸々の調査でS09地区周辺に潜伏していることが判明したわけである。

一通り店での聞き込みを終えたペルシカが店を出る。こんな状況だからか店内の人間は数える程度しかおらず、残った彼らも帰り支度を進めている。

残りの業務を部下に任せると、代理人は()()()()()()()()()()二階の自室に上がった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「どうぞ。」

 

「・・・あぁ、助かる。」

 

「ありがとうございます。」

 

「・・・正直、私はあなたのことをもっと真面目な子だと思ってましたよM()4()。」

 

「私は私の判断で、彼を連れてきただけです。 この方がグリフィンにとっても、彼にとっても良い結果になると思いましたから。」

 

「・・・・・。」

 

「悪いようにはしませんから、少しは警戒を解いてはどうですか? ()()()()()()。」

 

 

喫茶 鉄血の二階、代理人の自室にいたのは件の人形「クリエイター」と、クリエイターをここに連れてきたグリフィンの人形「M4」であった。実を言えば本格的な捜索が始まる前にクリエイターはAR小隊に発見され、捕獲済みであったのだ。

 

 

「ヘリアンさんやクルーガーさんが聞けばなんというでしょうね。 脱走犯を匿い車両を全く別の場所まで運転し、発見された頃にはすでに街の中。」

 

「俺がいうのもなんだが、お前本当にあのグリフィンのエリート部隊なのか? 完全に共犯者だぞ。」

 

「双方に利のある結果に、というのが表向きの理由です。 ・・・理由はどうあれあなたは自由を求めて行動した。 私はその行動を支持しますし、幸いまだ死傷者は出ていません。」

 

「あなたが連れてきたときは、何やら良からぬウイルスにでもかかったのかと思いましたよ。 ・・・まぁ、頼られたからには応えないといけませんね、()()として。」

 

「もう! からかわないでくださいよ!」

 

 

当事者を残してワイワイ盛り上がる二人。 さてと、と一言置いて、

 

 

「悪いようにはしない、とは言いましたが、脱走の動機が不明では説得も何もできません。 話してもらえますか?」

 

「・・・・・・・・・・身の危険を感じた。」

 

「「・・・・・は?」」

 

「だから、身の危険を感じたと言ったんだ。 ・・・あの研究者どもの欲望のはけ口にされるぐらいなら、ここから逃げてやろうと思っただけだ。」

 

「「納得しました。」」

 

 

実際のところ、11labの面々の欲望で作られたのは事実であるが別に彼女らは人形に欲情するわけではなく、クリエイターが(性的に)襲われることはない。

・・・多分。

 

 

「ならこんな機能はいらんだろう! 戦闘の邪魔になるだけだ!」

 

「・・・その点だけは概ね同意します。 が、あって良かったという声も一応ありますので。」

 

「AR-15も、そう言ってましたね。」

 

「・・・ハニートラップでもやれと?」

 

 

そりゃ戦闘用として作られたと思ってたのにガッツリ余計な部分まで作りこまれていたら逃げたくもなる。というか逃げた。

 

 

「つまるところ、あなたは本来の運用を希望していたものの、それが叶いそうになかったから脱走したと。」

 

「あぁ。」

 

「・・・まぁあの研究所なら否定できませんが、グリフィンならちゃんと運用してくれるはずですが。」

 

「・・・信用できん。 それに俺自身、活躍の場がそうそうあるとは思えんからな。」

 

 

身もふたもない。

が、実際彼を運用する場面は極端に限られるだろう。戦争ならいざ知らず、テロかデモ相手のこのご時世ではファクトリーを出すほどのこともなさそうだからだ。

このままでは彼の要望を伝えて互いの納得する形で収める、という手が使えない。IoP製とはいえ設計元は同じ鉄血、研究所に戻されて初期化されるというのはちょっと不憫だと考えて匿っているが、何かいい手はないだろうか。

と悩んでいるところで階下が騒がしいことに気がつく。

 

 

「ちょ、おい待て! そこから先は従業員以外t」

 

「うるせぇ!」

 

「ぐはっ!?」

 

 

ドタバタと足音を響かせながら階段を上がり、ドアを勢いよく開けて(施錠していたが壊れてしまった)入ってきたのは代理人も見覚えのありそうな人形。

バルカンだった。

 

 

「見つけたぞM4! さぁここにサインを書いてくれ!」

 

「ってこれ入隊許可証じゃないですか! その話はお断りしたはずですよ。」

 

「ヘリアンからもペルシカからも断られたから、AR小隊の隊長であるアンタに直訴してるのさ!」

 

「勘弁してください!」

 

 

やいのやいのと騒ぐ二人と置いてけぼりの二人。

彼女が暴れまわれる日は来ないだろうなぁ、と考えていた代理人に閃きが走る。

 

 

「・・・これなら、いけるかもしれません。」

 

「「「・・・・・へ?」」」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

数日後、某国国境付近

 

政治的にデリケートなその場所を活動拠点とするテロリストたちは恐怖していた。眼下に広がるのは装甲車両や銃器の残骸、そしてそれらの真ん中を悠々と進む二体の人形。

彼らは事前にグリフィンが人形を投入したことを知っていた。しかしその数わずか二体で、こちらには装甲車両もロケットランチャーもある。物の数ではないと思っていた。

ところが戦闘開始わずか数分でその楽観は覆る。

誰が想像しただろうか、うなり声のように駆動音を響かせながら無数に弾をばらまく人形がいるなどと。装甲車両(といってもトラックに鉄板を貼り付けて武装した程度)はあっという間にスクラップにされ、積み上げた土嚢は同量の土の山になる。

だが彼らもテロとはいえ武器を扱うという意味では一流だ。あの手の銃は数秒、長くとも数十秒も撃ち続ければ弾切れになる。だからひたすら耐えた。

耐えて、耐えて、耐え抜いて・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば拠点まで押し戻されていた。

どう考えてもおかしい、と思った頃にはすでに手遅れで、彼らの根城としている洞窟(山の斜面にいくつもの洞窟が蟻の巣のように掘られている)から頭すら出せない状況だ。

いや、あの無限とも言える弾幕のカラクリ自体はなんとか掴めた。満面の笑みで弾幕を張る人形の後方、やたらと大きな箱のようなものを牽引しながら追従しているもう一体の人形だ。ヤツから無尽蔵に弾を受け取っているからこその芸当だ。加えて部下の一人からこんな証言もあった。

 

 

「あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ! 『ヤツが鉄板を箱の中に入れたと思ったら弾が出てきてた。』 な…何を言っているのかわからねーと思うがおれも何が何だかわからなかった」

 

 

全くもって意味不明だったが、それが今目の前で行われていれば信じざるを得ない。

鉄板、車のパーツ、銃器などなど、あらゆるものを放り込んでは弾を吐き出すあの箱はなんなのかと。

 

 

「く、だがまだ負けちゃいない。 どういう理屈かは知らんが周りの廃材がなけりゃ弾も作れんようだ。 このまま持久戦に持ち込めば・・・」

 

「流石に拉致があかないねクリエイター。 なんか一発ドカンとできるのない?」

 

「ドカンよりも燃やす方が楽そうだ。 ありったけの焼夷グレネードでも投げてみるか?」

 

「おぉいいねぇ! で、出てきたところを・・・」

 

「わかった! 降参する! だからそれはやめてくれ!!!」

 

 

こうしてまた一つ世界からテロが消えたのである。

この実地試験の結果を受け、グリフィンは彼らを自由遊撃部隊として認定、ついにクリエイターとバルカンは日の目をみることになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇクリエイター。 連射速度をもっと上げたいんだけどなんとかならない?」

 

「全体的に改造を施すことになるが、可能だ。」

 

「よし! じゃあグリフィンにもそう伝えるね!」

 

 

クルーガーが頭を下げて取り下げてもらったのは言うまでもない。

 

 

end




弾薬超高燃費人形 + 資材自己生産人形 = 無限銃

この二人のおかげで密かに考えていたクロスオーバー(バイオ2の無限ガトリング)が使えなくなったよコンチクショウ!
ちなみにあのまま籠城されても、上空からヘリで鉄板を落とすだけで補給できるので実質いつまでも戦えます。

(二人が恋に発展することは)ないです。


というわけでキャラ紹介・・・ほとんど他作者様のキャラだけど。

クリエイター
脱走に定評のある人形。
元作品では旧式人形だが、今作では新型という真逆の立ち位置。脱走直後にたまたま任務帰りのAR小隊に見つかり、彼女らの協力を得てここに至る。
若干女性不信で、さらに人間に対してかなり懐疑的。なので、打算も何もないバルカンはかなり付き合いやすいらしい。

バルカン
元作品をご覧なった方ならわかるはずの極悪燃費人形。レベリングすら苦労しそうだ。
当初はAR小隊に配属される予定だったのだが、その燃費と運用方法で却下され、訓練以外まともに銃を握っていない。
今回クリエイターに出会ったのは全くの偶然だが、知っていればもっと早くに突撃していた。
自身の欠点を補ってくれるということで、少なからず感謝の念を持っている。

テロリストの皆さん
どこにでもいる連中。やられ役。
BGMはこち亀。



次回は番外編!
お楽しみに!

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