今回の番外編は、前回までの夏回で描ききれなかったキャラを中心に書いてます。
case1:Ameli
「だ、誰かぁ〜・・・・」
そんな彼女の控えめな救援要請は、当然ながら誰にも届かない。司令部一同で遊びにきたはいいもの、周囲からの視線にビクビクしながら誰かの背中に隠れ続けていたAmeli
しかしせっかく遊びにきておいてそれではもったいないと仲間から浮き輪を渡され、半ば強引に流れるプールへと引っ張られ、有無を言わさずプールに放り込まれてしまった。
そしてそのまま流れること十数分、完全に孤立してしまった彼女は涙目だった。
「うぅ・・・どうしよう・・・・・」
普通なら浮き輪から脱出してプールサイドまで行けば済む話だ。しかし彼女はいろんな意味でその普通に当てはまらなかったらしい。
Ameliという人形は、MGタイプの人形としてはかなり背が低い。大の大人なら足がつく程度の深さのプールでも、彼女には届かない。
Ameliという人形は、その身長に対して一部がとても大きい。どうやってその重量を支えているのか、しばしば男たちの間で議論が交わされるくらいには立派なものを持っている。
その結果・・・・・・
「誰か、助けてくださいぃ・・・・・」
丸い浮き輪にすっぽりと収まったまま、川を流れる桃のようにいつまでも流され続けているAmeli。浮き輪から出ようにも上半身は浮き輪を潜ることができず、上から抜けようにも水の上では不安定すぎる。
そんなわけで、脱出の糸口すら掴めないままただ時だけが過ぎていくのだった。
そんなAmeliを狙う、不穏な視線が二つ。
「ヒュ〜、見ろよアレ」
「こりゃなかなかの上玉じゃね?」
見るからにチャラそうな男が二人、表情をにやつかせながらAmeliを追う。すでに男たちの頭にあるのは、このあとで連れ込む場所と
だから気づかなかった。そんな彼らの後ろから迫る影の存在に。
「あら、そこのお二人さん」
「「へ?」」
「あんな小さい子なんて相手にしてないで・・・・お姉さんと『イケナイコト』しましょ?」
哀愁漂うAmeliを陰ながら見守っていた保護者・・・・DSRー50の甘美な誘惑に、男たちはまんまと釣られてしまうのだった。
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「あらあら、大丈夫Ameliちゃん?」
「DSRさん、助けて・・・・・」
「ふふっ、えぇもちろん」
「あ、ありがとうございます・・・・・ところで、今までどこに?」
「ん〜・・・・ちょっとゴミ掃除に、ね♪」
case2:鉄血工造輸送部隊
「なぁ同志よ」
「なんだ?」
「我らが隊長殿の姿が見えんのだが」
「同感だ。 というか更衣室から出てこないな」
休暇を取ってやってきているのは、グリフィンや喫茶 鉄血だけではない。常日頃からフル稼働している鉄血工造も、一般企業らしく有給というものがあるのだ。
そんなわけで施設へとやってきたゲーガー率いる輸送部隊の面々・・・・というかAigisたち。明らかに場違いな彼らは今、更衣室の前でずらりと並んだまま待機していた。
「・・・・・で、どれくらい経った?」
「もう30分になるぞ」
「何かトラブルでもあったか?」
彼らが待つのは愛しの隊長、ゲーガーである。「着替えてくる」とだけ言って入ったっきり出てこない彼女を、Aigisたちは心配していた・・・・・ついでに水着姿を拝みたいとも思っていた。
ちなみにアーキテクトは来ていない。流石に本社機能を完全に止めるわけにはいかないことと、サボりすぎてすでに有給を全消化済みであるからだ。
「・・・・・・なぁ兄弟」
「なんだ兄弟」
「やむを得ない状況って、あると思わないか?」
「・・・・・・例えば?」
「安否確認のために、更衣室に入るとか」
『・・・・・・・・・・』
右を見る。誰もいない。
左を見る。小さい子供が遊んでいる。
正面を見る。観察を続けているので、今はゲーガーしか入っていないことは把握済みだ。
「・・・・・・・ヨシ」<指差し
『突撃〜〜〜〜!!!!』
『うわっ!? い、いきなりなんだお前ら!?』
『隊長、ご無事ですか!?』
『隊長があまりにも遅いので待ちきrゲフンゲフン心配して見にきました!』
『それだけのために入ってくるな! しかも女性更衣室だぞ!』
『我々には厳密な性別は設定されていません!』
『つまり合法!』
『んなわけあるかぁぁぁぁあ!!!!』
今日も鉄血工造は平和だった。
case3:ユウトとM16とRO
「はぁ〜・・・・たまにはいいなぁ」
人工砂浜と林の一角、木に釣られたハンモックに揺られながら微睡むユウトがそう呟く。
生前(?)から運動不足どころか日に当たることも少なかったため、正直海とか苦手だったのだ。その点ではこの施設なら空調も効いているし、日に焼ける心配もない。
泳ぐつもりもないので、このまま日がな一日寝ていよう・・・・まだ若いのにそんな年寄りじみた発想に至るユウトだが、そうは問屋が下さない。
「おいおいユウト、せっかくプールに来てそれかよ」
「もったいないですよ、ユウトさん」
その声に目を開けると、ハンモックの両サイドからM16とROが覗き込んでいた。二人ともシンプルな色合いの水着に、ROは上から薄手のパーカーを羽織っている。M16のスラッとしたスタイルは大人な女性の魅力があり、逆にROは年相応の可愛らしさがある。
そんな誰もが羨む『両手に華』な状況であっても、残念ながらユウトの中では惰眠が勝りつつあるようだ。そんな状況にM16とROは顔を見合わせると、無言でハンモックに掴みかかり、結構な勢いで横に揺らし始めた。
もともと揺れるようにできているハンモックを、人形二人分の力で揺らすのだ。当然、ユウトはなんとか振り落とされないようにもがき始めるが、何かをつかもうとするその手は空を切るばかり。
「わわわっ!? ふ、二人とも危ないって!?」
「観念しろユウト!」
「おとなしく私たちとプールを満喫しましょう!」
「ちょっ、やめっ、お、落ちるっ!?」
まるでブランコのように揺らされ、気が付けば左右90度くらいまで振り回されるユウト。さすがにここまでされてしまえば休む休まない以前の問題なので、渋々ながら起き上がることにする。
・・・・・が、ただでさえ不安定なうえに揺れまくっているハンモックで起き上がると
どうなるか、それは火を見るよりも明らかだった。
「っ!? うわっ!?」
「「ユウト(さん)!?」」
バランスを崩し、しかも足がハンモックに引っかかって面白いように崩れ落ちる。M16とROが慌ててそれを支えようとするが、あと一歩遅くそのまま落下してしまう。
「きゃっ!」
「痛てて・・・・・あれ? 痛くない?」
「ゆ、ユウト・・・・その・・・・・」
「・・・・・・・・・え?」
襲い掛かるであろう衝撃に備えてみたが、意外なほど痛くもなんともなかった。まるで上質なクッションに受け止められたかのように、ユウトには痛みなど何もなかったのだ。そして実際、上質なクッションというのはあながち間違いでもないようだった。
ユウトが顔を上げると、驚くほど近い距離にある
「わぁっ!? ご、ごめんM16!?」
事故とはいえ、白昼堂々と人前で胸に顔をうずめていたのだ。その事実に顔を真っ赤にしながら飛びのくと、フリーズしていたM16もゆらりと起き上がる。
うつむいた顔から表情は読めないが、小さく震える肩から、ユウトはとんでもないことをしてしまったと後悔する。
とにもかくにも謝らねば、そう思い声をかけようとするも、それよりもわずかに先にM16ががばっと立ち上がった。
「・・・・う・・・」
「うわぁぁぁぁぁぁああああああ!?!?!?!?!?」
「「え、M16!?」」
期待・後悔・羞恥・歓喜・・・・・・そんなものがごちゃ混ぜになったままオーバーヒートした思考のまま、M16は砂浜を走り出す。
唖然とするユウトとROだったが、ハッと我に返ると慌てて追いかけるのだった。
「いやぁ、青春してるねユウト・・・・お姉ちゃんうれしいよ」
「M16姉さんのあんな悲鳴、初めて聞きました・・・・・」
「あの様子じゃ、先は長そうだね」
彼らに進展はあるのだろうか・・・・とりあえず今年中にちょっとは進めばいいかなぁ、と暢気に考える三人だった。
end
気が付けば八月も終わり・・・・時が経つのは早いですね。
あれほど連日報道だったコロナも、いつの間にか受け入れられて・・・・いやぁ人間って強いなぁ。
それはそれとして、今回のキャラ紹介
Ameli
誰もが思ったであろう・・・・ビーチボールが三つある、と。
ハイエース不可避だけどMGを振り回せるくらいには強い、それが戦術人形。
DSR-50
Ameliをはじめとする人見知り人形たちの見守り役を命じられた人形。
一見不真面目な行動や言動だが、仕事はきっちりこなすあたり有能である。
チャラ男
残念ながらこの作品は全年齢向けなので彼らの運命は決まっている。
ゲーガー
鉄血工造輸送部隊隊長で、社を仕切るトップの一人。
常に暴走する同僚と部下でたまった疲れを癒しに来たはずなのだが・・・・・どうにも彼女はそういう星の運命にあるらしい。
Aegis
自称、性別:なし
外見はいたって普通のAegisなので、当然ながらレジャー施設ではいらん注目を浴びる。
安全確認・・・・ヨシッ!
ユウト
引きこもり・・・・というほどではないが慢性的な運動不足。
最近、ハーレム系主人公並みのラッキースケベが多い気がする。
M16
眼帯のお姉さん。作者の中では艦〇れの〇龍と結構被る。
基本は姉御肌なのにいざってときは乙女になるってアリですよね?
RO
生真面目風紀委員長系・・・・なキャラはどこかへ行った。
こっちもこっちであと一歩が踏み出せない。