喫茶鉄血   作:いろいろ

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コラボイベント始まりましたね。
それにしても秩序乱流といい今回といい、指揮官は指揮官やめて役者にでもなればいいと思うの。


第百八十二話:ライバル?

 雲ひとつない夏空、石畳に照り返す熱、しかし全体的に湿度が低く風もいい感じに吹き、実に過ごしやすい一日となっている。さすがは春の陽気とは比べるべくもないが、それでもここ最近の中では穏やかな気候であろう。そのためか、喫茶 鉄血も店先に椅子とテーブル、それを覆うほどのパラソルを立てた屋外席を設けている。路地裏ということもあって適度に影が入り、実気温ほど高く感じないようだ。

 そんなテーブル席の一つで、何かの本を読む女性がいる。知らぬものが見ればまるで育ちの良いお嬢様かと思うほど柔和な笑みを浮かべているのは、この店一番の常連と言っても過言ではないライフル人形、ダネルNTW-20である。

 

 

「お待たせしました、アイスティーとティラミスです」

 

「あぁ、ありがとう代理人」

 

「随分と楽しそうに読んでいますが、何の本なのですか?」

 

「ん? これか?」

 

 

 代理人は純粋な興味本位で尋ねた。ダネルの持っていたものはやや大きめのハードカバー本のようで、外には簡素なブックカバーを付けているため表紙が見えない。それに代理人と向き合うような形で座っているため中も見えず、それ故に()()()()()()()のだ。

 ダネルはふぅっと息を吐くと、持っていた本をくるっと回した。

 

 

「私の『代理人コレクション』だ。 少し前に製本の依頼を出していたのだが、それが今朝届いたのでな」

 

「捨ててください、可及的速やかに」

 

 

 ダネルが熱心に読みふけっていたもの、それはダネルが何度も通い詰めることでひそかに撮り続けた代理人の写真を収めたアルバムだった。まともな本と見まごうほどの厚さと無駄に丁寧な仕上がりに、相当値が張ったであろうことは想像に難くない。実際なかなかにいいお値段がしたのだが、ほかに趣味やらお金の使い道のない彼女には大した障害とはならなかったようだ。

 なお、製本の依頼は司令部の万能後方幕僚ことカリーナを通しており、彼女もノリノリで協力していた。

 

 

「本当はカバーを付けるつもりはなかったのだが、流石にな」

 

「その様子ですと、表紙も私なのですね」

 

「もちろんだ。 一冊丸ごと代理人の、この世に二つとない宝物だぞ」

 

 

 ちなみに表紙は入店した客を迎える彼女の写真、裏表紙はいつぞやの旅館で記録した寝顔である。とてもではないがそのまま外で開けるようなものではない・・・・・もっとも、ダネルは躊躇なく持ち運びそうだが。

 

 

「まったく・・・一体いつの間に撮ったんですか?」

 

「撮った、というよりは記録として残していたという方が正しいな。 そういう意味では、私は人形であることに感謝している」

 

 

 要するに、彼女は戦闘記録用レコーダーから代理人の姿だけを選び抜き、それをワンシーンずつ丁寧に並べて製本したのだ。見たものをそのまま記録できる人形ならではのものであり、そして残念ながら『盗撮』には当たらない事例だ。

 代理人は諦めたように溜息をつき、申し訳程度に警告することにした。

 

 

「・・・・作ってしまったものは仕方ありません。 ですが、あくまでも個人での利用にとどめるようにしてくださいね」

 

「もちろんだ」

 

「それと、今後は自粛していただけると助かります」

 

「いや、それはちょっと・・・・・」

 

「そうですか、では大変心苦しいですが強制措置(出禁)をとるしか」

 

「自重シマス」

 

 

 ダネルの扱いを心得るようになってきた代理人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが代理人ね? 写真もいいけど、やっぱり本物の魅力には及ばないわ!」

 

 

 ダネルの代理人愛炸裂(いつもの)から丸一日たった今日、見慣れぬ人形が現れたと思ったらそんなことを言い出した。

 褐色肌に防弾アーマー、肩から下げた散弾銃となかなかに特徴的な彼女の名は『Saiga-12(サイガ)』、グリフィンの最新鋭SG人形だ。どうも先日のAA-12といい、グリフィンはSGタイプの人形開発に力を入れているらしい。

 そしてそんな彼女の右手には、ダネルが持っているものと同じ()()()が収まっていた。

 

 

「・・・・・ダネルさん?」

 

「ま、待て代理人! 誤解だ!」

 

「では、これが彼女の手の中にある理由を伺っても?」

 

 

 割とマジで怒っている代理人に、ダネルは涙目になりながら説得を試みる。しかし事実として二冊目がそこにあり、残念ながら無実を証明する手段もなく、昨日の今日なので疑われても仕方がない立場でもあった。

 このままではいよいよ出禁コース、というところで助け舟が出る。あのサイガだ。

 

 

「大丈夫よ代理人、彼女は一応関係ないわ」

 

「一応、というところが気になりますが・・・・ではそれをどこで?」

 

「ふふふ、それはもちろん・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配達の時によ!」

 

「配達員が中身を見るな!!!」

 

 

 経緯をまとめると、ダネルが注文したものを最初に受け取ったのがサイガだったようだ。人形の多い司令部では直接個人に届けられるのではなく、ひとまず荷受け係によって受け取られるのだが、その日の当番が彼女だったらしい。

 そして無駄に厳重かつ品名不明のそれにちょっとした好奇心が芽生えた彼女は気づかれないように箱を開けて中身を確認、ダネルの盗撮紛いと同様の手口をもってして同じ写真を手に入れたのだった。

 確かによくよく見れば、本のサイズや作りがダネルのものと異なるように見える。が、代理人からすれば中身が同じであるのならば同じものという認識だ。むしろカバーもつけずに持ち歩くあたり、ダネルよりもたちが悪い。

 

 

「あなたの写真を見たとき、私は衝撃を受けたの。 あぁ、なんて美しい女性なのかと!」

 

「は、はぁ・・・・・」

 

「写真だけじゃ満足できなくてこうして会いに来たのだけど、やっぱり本物は一層綺麗でカッコいいわ!」

 

 

 大仰に語るサイガの姿に、代理人はふと妙な既視感を覚える。もちろん彼女とは初対面だが、熱く語るしぐさやその対象が自分であることなど、どこか身近に体験したことのように思え・・・・・・あ。

 

 

「・・・・・・・」

 

「な、なんだ代理人?」

 

「いえ、なにも」

 

 

 たじろぎながら首をかしげるダネルに、代理人は何とも言えない表情で返す。今でこそ大人しく(?)なったが、かつてのダネルは注文よりも先に告白してくるような勢いだった。むしろ注文などついでのような感じではなかっただろうか。

 このサイガからは、そんな在りし日のダネルと同じ匂いがする。

 ということは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「代理人、あなたは私の運命の人よっ!」

 

「んなっ!?」

 

「・・・・・・はぁ」

 

 

 外れてほしく、しかし半ば確信に近かった台詞が飛び出す。ある意味宣戦布告ともとれる言葉にダネルが驚愕の色を浮かべ警戒を高めるが、そもそもダネルにチャンスのかけらもないことなど言うまでもない。

 だが事態はそんな当人を無視して進んでいく。

 

 

「お前に代理人は渡さん!」

 

「んん? まだ誰のものでもないでしょ? じゃあいいじゃない」

 

「断る。 パッと出のやつの譲る義理はない!」

 

「あの、お二人とも・・・・・」

 

「今の今まで特に進展もなかったんでしょ? もう脈なしなんじゃない?」

 

「ま、まだわからないだろ!」

 

「いえ、脈なしなのは事実ですが・・・・」

 

「いつまでも足踏みしてるなら、横取りされても文句は言えないわよね」

 

「横取りの自覚があるならやめろ!」

 

「・・・・・・ふぅ」

 

 

 代理人の静かなため息は、しかし二人に届くことはない。ダネルは今にも掴みかかろうとする勢いで、サイガも徹底抗戦の構えを見せている。だがそれ以外の者には、代理人を中心に室温が2~3度ほど低くなったような錯覚を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンッ!!

「「っ!?」」ビクッ

 

 

 突然の物音に体を縮こませ、音の発信源を探る二人。それは二人のちょうど中間・・・・代理人がいるあたりのテーブルに深々と刺さっているフルーツナイフからだった。恐る恐る視線を上げ、持ち主の顔色を窺うと・・・・・・

 

 

「「ヒッ!?」」

 

「・・・・・お二人とも、まだ続けますか?」

 

 

 いつもの優しい無表彰でもなく、怒ったときの不気味な笑みでもなく、それはまるっきり感情の感じられない無表情だった。人形であるのだから当然だが、例えるのならまさに『人形のような』といえるくらいだ。口角も眉も動かず、その目は冷たく二人を見つめている。

 聞くまでもなく、代理人はキレていた。

 

 

「あ、その、代理人・・・・」

 

「えっと・・・・・」

 

「・・・・まだ、続けますか?」

 

「「いえ! もう大丈夫です!!!」」

 

 

 この日、たまたま店にいたG11はのちに語る・・・・・代理人を怒らせてはいけないのだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ではその本(諸悪の根源)は渡していただきましょう」

 

「え、いやそれはちょっと・・・・」

 

「ダネルさん、あなたもですよ?」

 

「な、待ってくれ代理人、私は今回被害者寄りだぞ!?」

 

「・・・・・それが何か?」<ナイフを抜きつつ

 

「「納めさせていただきます!」」

 

 

 

 

end




おかしい・・・秩序乱流よりも簡単だと聞いてたのにそこそこむずいぞこのコラボ
というか雑魚キャラがスキル使用とかやめてください死んでしまいます(SGが)

それはそれとして、ガンスリンガーガールをほとんど知らない作者でも楽しめるイベントでしたね。コラボキャラが最初からボイス付きなのも初めてかも?
さぁあとは堀周回のみ・・・・・任せたぞM16姉さん(無慈悲)


では、今回のキャラ紹介

Saiga-12
新型SGタイプの人形。そして異性だけでなく同性もイケる・・・いや、むしろ同性よりなやべーやつ。
褐色肌に白寄りの服装という一目で目立つ風貌にレズで潔癖症・・・どんだけキャラ設定が濃いんだコイツ。
代理人にガチで恋したというわけではなく、どちらかというとゲッコーのように手当たり次第に愛をささやきたがるタイプ。

ダネル
目で見たものをアウトプットしただけだから盗撮じゃない、という謎理論を盾に合法(?)的に代理人の写真を持ち運ぶ。
別に躊躇しているというわけではないが、代理人にソッチの気がないため望み極薄。

代理人
流石にキレた。

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