喫茶鉄血   作:いろいろ

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クリスマスツリーちゃん回。
初めてセリフを聞いた時はなんのことかさっぱりだったのはいい思い出。


第十八話:いつも元気な子が珍しく落ち込んでるとめっちゃ可愛く見えると思います!

「・・・・・。」

 

「おい、どうなってんだありゃ。」

 

「私に聞くなって。」

 

「ちょっと前からずっとこんな調子ですね。」

 

「心ここに在らず・・・ですね。」

 

 

喫茶 鉄血のテーブル席で話し合っているのは処刑人とM16、RO、M4の四人。その彼女たちの視線はカウンター席の隅に座っているSOPMODに向けられていた。

 

・・・おわかりいただけただろうか。あのSOPMODが()()()()()()座っているのである。

 

 

「明日はジュピターが降るのか?」

 

「縁起でもねぇよ。」

 

「本当にどうしたんでしょうか。」

 

「一度診てもらったほうがいいのでは。」

 

 

一人で静かに座っているだけでも異常なSOPMODだが、なんと彼女はこの状態で三十分近く座っている。おまけに何も頼まず、出された水にすら手をつけていない。ただ時折ため息を吐くだけであった。

通常ならこの手の客には代理人からの注意が入るが、今回ばかりは割と深刻そうなので代理人も触れられずにいる。

 

 

「・・・ちょっとちょっかいかけてくるか?」

 

「おいやめろ」

 

「大丈夫だって。 軽い世間話をするぐらいだ。」

 

 

そう言って席を立ち、SOPMODの方に歩み寄る処刑人。

 

 

「よおちっこいの。 今日は寂しく一人か?」

 

(((いきなり煽ったぁぁぁぁぁ!!!!)))

 

 

軽い世間話とはなんだったのか。

ちなみに処刑人から売ればこれでもかなり軽い方である。またSOPMODは『ちっこいの』と言われることをかなり嫌う。

・・・のだが、

 

 

「・・・ん? 処刑人?」

 

「お、おぅ。 お前が一人なんて珍しいからな。」

 

「・・・そう。」

 

「あぁ。」

 

「・・・・・。」

 

「・・・・・。」

 

 

席に戻る処刑人。

 

 

「・・・誰だあれ?」

 

「言いたいことはわかるがSOPMODだよ。」

 

「いやいやいやぜってぇ違うだろ!? あいつの皮かぶった別人って言われた方がまだわかるわ!」

 

・・・もしかして、私が黙って彼女のプリンを食べたから?

 

「・・・RO? 今のはどういうことですか?」

 

「はっ!? ち、違うのM4! あとで同じものを買ってきたらいいやと思ったら限定品だとは思わなかったの!」

 

「そもそも勝手に食べることがいけません! というかプリンと言いましたね? それは三日前のものでしょう? あれは()()プリンでしたっ!」

 

「まじかよRO・・・よりによってM4のを食べたのか?」

 

「ご、ごめんなさいぃ〜〜〜!!!」

 

 

とか無駄な寸劇が数分間行われ、その間もSOPMODは動くことはなかった。

もはや打つ手なし、と思っていたその時、新たな客が訪れる。

 

 

「お? なんだ、お前たちもいたのか。」

 

「よぅハンター、AR-15。 デートの帰りか?」

 

「えぇ・・・まぁ・・・。」

 

「周知の事実なんだから照れなくてもいいだろうに・・・初々しいねぇ。」

 

「オヤジ臭いですよM16姉さん。」

 

「で? 何かあったのか?」

 

 

このメンツとSOPMODを見ながら訪ねてきたハンターに、M16らがかいつまんで説明する。

 

 

〜〜〜〜五分後〜〜〜〜

 

 

「「恋だな(ね)。」」

 

 

あっさりと結論が出てしまった。

これでようやく疑問が解消され

 

 

「いやいやいやいやちょっと待て!?」

 

 

なかった。

結論を出した二人は首を傾げて『え、何かおかしなことでも?』といった感じだ。だが当然周りにはわからない。

 

 

「何がどうなってそうなったんだよ。」

 

「どうなったも、私がこいつを好きになった時も同じことをやったからだ。」

 

「わ、私もょ・・・。」

 

「惚気かよ。」

 

「ふ、ふん! 一生独り身のM16にはわからないことよ。」

 

「ま、まだ決まったわけじゃねぇし!」

 

「話が進まないので落ち着いてください。」

 

 

さて話を詰めて行くことになったわけだが、なるほど彼女らの言い分もわかる。

物憂げな表情、熱のこもったため息、時折緩む頬、そしてほんのり赤い顔色。言われてみればそう見えてくる。

だがそうなると別の問題が浮上する。

 

相手がだれか、である。

 

 

「いつからだ?」

 

「一週間ちょっと前から、ですね。 詳しくいつからかは覚えていませんが。」

 

「その間に何かあったか? 誰かに会うとか。」

 

「護衛と演習があったくらいです。 護衛の方は正直恋愛対象にはならないくらい歳が開いたおじいさんですし、演習の方もよく見知った相手なので。」

 

「・・・となると残りはプライベートで、か。」

 

「と言ってもあいつが一人になること自体がほとんどないからな。 私かM4にべったりだし。」

 

「ますますわかんなくなってきたぞ。 つか本当に恋愛沙汰なのかよ?」

 

「だが他に思い当たることもあるまい。 というか他のことならお前たちに相談するだろう?」

 

「ですよね・・・。」

 

 

謎は深まるばかり。カウンターの中にいる代理人の方を見ても、首を横に振ってわからないという意思だけが返ってくる。ペルシカにでも頼めば、彼女の記憶モジュールからいくつか候補を絞り込めるかもしれないが、自分たちの興味本位でSOPMODの純情(?)を踏みにじりたくはなかった。

 

万事休す、と思っていたその時、噂をすればということなのかペルシカが店に入ってくる。

いいタイミングだとペルシカを呼んで話をしようと声をかけようとしたその時、店内のだれよりも早く動いた人物がいた。

 

 

「ペルシカっ!」

 

「ゔっ!? そ、SOPMODか。 相変わらず元気だね・・・でもタックルはやめてほしいかな・・・。」

 

「あっ・・・ごめんなさい。」

 

「ふふっ、まあいいよ。 君は元気が一番だからね。」

 

「! ペルシカ〜!」

 

「「「「「「 ( °д°) 」」」」」」

 

 

ペルシカを見つけるなり弾丸のように突撃するSOPMOD。たびたび犬に例えられる彼女だが、もし今の彼女に尻尾が生えていたらものすごい勢いで振っていることだろう。

今の今までの雰囲気からは考えられないほどの変わり身である。

 

この後ペルシカは代理人にいくつか資料を渡し、代理人から袋をもらって帰っていった(こちらには気づいていなかったようだ)。

そして帰るまでの間SOPMODはべったり張り付き、別れた後もずいぶん嬉しそうな表情を浮かべていた。

というか相当嬉しかったのだろう。財布の中身も確認せずにスペシャルケーキと飲み物を注文、そこから先は終始にやけっぱなしだった。

 

 

「・・・・・おい、今のはなんだ?」

 

「わ、私に聞くなよ。」

 

「・・・ぺ、ペルシカは言わば私たちにとって親みたいなものですし、嬉しくなるのもわかr」

 

「落ち着け。 それと幾ら何でもあれは度を過ぎてるぞ。」

 

「で、でもあんなの普通じゃ・・・」

 

「あ、あのぉ〜〜。」

 

 

あまりの出来事に思考AIフル活用で整理を試みる人形たちに、逆に冷静さを取り戻したM4が発言する。

 

 

「そろそろ認めませんか。・・・SOPMODは、ペルシカのことが好きなのだと。」

 

「「「・・・・・。」」」

 

「・・・あれをみれば、そういうことになるな。」

 

「・・・はぁ、にしてもすげぇ変わり方だぞ。」

 

 

比較的早く落ち着きお取り戻した鉄血組。それに続くようにAR-15も復帰する。

が、M16とROだけは未だに現実に帰ってこれないでいる。

 

 

「・・・もしかして私ら・・・」

 

「だ、だめよM16! 言葉にすれば色々と終わってしまうわ!」

 

「そ、そうだな!」

 

「ん? ヘリアン(行き遅れ)コースってことか?」

 

「「かはっ!?」」

 

「ちょっ! こら、ハンター!」

 

 

とどめを刺され机につっ伏せる二人。ハンターとAR-15は知っての通りだし、M4は性別問わずモテる。 これは処刑人にも言えることで、加えて生活能力や女子力に欠けるであろうペルシカと一番子供っぽいと思っていたSOPMODに先を越されたという事実が重くのしかかっていた。

 

 

「・・・まぁひとまず一件落着ということですね。」

 

「そうね。 相手がわかった以上、私たちはあの子を後押ししてあげなくちゃ。」

 

「で、こいつらはどうするよ?」

 

「少ししたら復活するでしょうからこのままでいいでしょう。 ・・・それとRO?」

 

「な、何かしら・・・?」

 

「プリンの件は水に流してあげますから、支払いをお願いしますね。」

 

「・・・はい。」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「ねぇSOPMOD?」

 

「何? M4。」

 

「ペルシカさんのことはいつから好きになったの?」

 

「へぁ!? な、何のこと!?」

 

「(へぁ!?って・・・) 隠してるつもりかもしれないけど、この前の喫茶店のを見たら誰だってわかるよ。」

 

「見てたの!? っていうか居たの!?」

 

「居ましたよ。 ・・・で、答えは?」

 

「う・・・・・い、いつからかは分かんないけど、気がついたら離れたくないとかずっと一緒に居たいとか考えちゃって。 で、でも、

私は人形だし、ペルシカは多分、子供としてしか見てないから。」

 

「確かにそうだけど・・・」

 

「自分が後悔しないようにすればいいのでは?」

 

「あ、代理人。」

 

「AR-15もハンターも同じことを言っていましたし、二人の相談も受けましたからね。」

 

「・・・後悔しない、か・・・。」

 

「SOPMOD、私は応援するわよ、あなたのこと。」

 

「M4・・・うん! ありがとう! わたし、ちゃんと伝える!」

 

「うん、頑張って。」

 

「・・・ところで。」

 

「ん? なに?」

 

「M4と代理人って、なんだか親子みたいだね。」

 

「へぁ!?」

 

 

end




はい、というわけでSOPMODの恋心、でした!
AR小隊の誰か×ペルシカっていう案は前からあったんですが、めでたく彼女に決まりました。
この後SOPMODの告白があるわけですが、それはまた次の番外編で。


というわけでキャラ紹介です!

SOPMOD
今回のヒロイン。普段の無邪気さからは考えられないほどの純情っぷり。
ちなみに彼女が恋愛に興味を持ったきっかけはAR-15とハンターのおかげ。彼女からすれば理想のカップルらしい。
今作では鉄血と敵対していないので、人形分解という趣味はない。

M4
みんなご存知AR小隊の隊長。
ある一件(第八話)以来ちゃんとチームをまとめることのできる隊長らしい隊長になった。
『限定』という文字に弱く、甘い物好き。

M16
残念姉貴。
45といい彼女といい、やたらと残念なことになってしまった。だがわたしは謝らない。
一応フォローしておくと隊長であるM4のサポートからSOPMODの世話、比較的新参者のROの指導などをこなす優秀な人形。
・・・なのだがおれとプラマイ0、むしろマイナスにするくらいAIが残念。

RO
典型的な委員用気質・・・というのが最初期の設定。
気がつけばややポンコツ気味の人形になり、残念組に片足を突っ込んでいる。どこまでポンコツになるかは不明。
余談だが、彼女のスキル台詞に「お前の罪を数えろ」というものがあり、なんとかあの探偵たちとの絡みを作りたいと考えている。

処刑人
割と久しぶりの登場。
ドルフロ全体でも貴重な近接戦闘人形だが、今作でそれが活かされる場面はきっとない。
キャラとか口調とかが微妙にM16と被るのに残念にはならないのはなぜだろうか。

何時ものリア充
末長く爆発しろ

ペルシカ
よもや自分が作った人形から好意を向けられているとは思うまい。
いかにも不健康そうだが美人で色白で美人だからなんの問題もない。





おまけ・・・という名の鬱クラッシャー
(原作6ー4eより)

AR-15「じゃあ・・・元気でね、私の友達・・・」

M4「A・・・R・・・15・・・・」


オーディン「修正が必要だ」<タイムベント
天道「おばあちゃんが言っていた・・・」<ハイパークロックアップ
てつを「キングストーンフラッ!!!」


よし。これで未来を変えられる!

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