喫茶鉄血   作:いろいろ

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本当は正月っぽく初夢話にしようと思っていたわけですが、なんか色々力尽きました泣

そしてその結果やりたい放題になったけど勘弁してね☆


第百九十五話:夢

 夢、という言葉には複数の意味がある。睡眠中に見る夢から、目標という意味のもの、良いものから悪いものまで。そしてその「夢」というものも、人の数だけ存在するのである。

 今回は、そんな夢にまつわるお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・人はなぜ働くのだろう」

 

「・・・・・さぁな」

 

「「・・・・・・・・・・・はぁ」」

 

 

 普段通りの賑わいを見せる喫茶 鉄血の片隅で、まるでそこだけ証明が落ちているかのような薄暗い雰囲気を漂わせる二人組がいる。片やグリフィンの真っ赤な制服を身にまとい、堅物感漂うメガネが気だるげな女性、片や軍の制服を着崩した、ごつい体格と義手が目を引く女性・・・・・ヘリアントスとアンジェリアだ。

 グリフィンと軍は仲がいいというわけでもなく癒着しているわけでもなく、まして敵対関係でもないが一定の距離感を置いており、それぞれでそれなりの地位にいるこの二人が会うのは珍しくはない。しかしそれがこんな喫茶店の片隅で、二人そろってため息をつきながらというのは滅多にない。

 

 

「・・・・どうされたんですか? あのお二人は」ヒソヒソ

 

「ヘリアンさん、年明けに溜まっていた有休を使って一週間くらい休みを取っていたんですよ」ヒソヒソ

 

「アンジェもね。 ジャッジから聞いたわ」ヒソヒソ

 

 

 パトロールの一環で店に立ち寄ったM4とAK-12に話を聞くと、そう答える。

 どうにもあの二人、一気にとった休みを自堕落な生活で浪費してしまった挙句、その反動で仕事に対するモチベーションが最低値を更新してしまったらしい。しかしどれだけ嘆いたところで失った時間は戻ってこず、その結果があの現実逃避なのだ。

 

 

「いいのですか? あれでは仕事にならないのでは」

 

「それが、あれでも仕事の効率は全く落ちていないんです」

 

「出会いも何もかもを犠牲にして仕事に打ち込んだ結果ね。 もう体が覚えてるのよ」

 

 

 普段の行いだとか、やけに食いつきすぎるところが仇になっているせいなのだが、流石に不憫に思う代理人。だがこればかりは代理人がアドバイスできることもないため、現状は自力で持ち直してもらうほかない。

 

 

「一応、こちらでも気にかけておきましょう」

 

「ありがとうございます、代理人」

 

「何かあったら呼んでくれて構わないわ」

 

 

 一先ずは保留、ということで話を終わらせる三人。

 しかし、その様子を見つめる不穏な影がいることには誰も気づくことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 それから一週間ほど経ったある日のこと。喫茶 鉄血には臨時休業の札が掛けられ、客のいない店内には物々しい雰囲気が漂っていた。

 要請を受けてやってきたM4らが店に入ると、そこには完全武装の404小隊とAR小隊、そして軍の人形を率いたジャッジがずらりと並び、その対面に代理人を始めとした喫茶 鉄血の面々・・・とサクヤ、ゲーガー、ユウトの鉄血工造組が並ぶ。

 そして双方の中間、頭に大きなたんこぶを生やしたアーキテクトとマヌスクリプトが正座したまま俯いている。よほど察しが悪い者でもないかぎりはこう思うだろう・・・・・・あぁ、またか。

 

 

「・・・・・・今度は何をやらかしたんですか?」

 

「開口一番ひどい!? 私たちがやらかした前提なのM4ちゃん!?」

 

「いえ、なんとなく・・・・・で、実際は?」

 

「「私どもがやりました」」

 

「はぁ・・・・・そういうことですので、頼りにさせていただきました」

 

 

 では状況を説明します、という代理人の言葉で事件の全容が語られる。

 

 ことの発端は一週間前、代理人とM4、AK-12の話を盗み聞きしていたマヌスクリプトがアーキテクトに連絡を入れたところから始まる。マヌスクリプトは二人の願望を「休みたい」「出会いが欲しい」という二つであると分析し、そういえばアーキテクトが依然人形用の仮想空間的なものを作っていたことを思い出したからだ。

 連絡と要望を受け取ったアーキテクトの判断は早かった。すなわち、今やろう!すぐやろう!、である。以前開発したシミュレーターを調整し、睡眠中の人間に思い通りの夢を見せるという商品化すればバカ売れ間違いなしな代物をパパッと作り上げ、最終調整を終えて秘密裏に喫茶 鉄血に持ち込んだのが五日前のこと。その後マヌスクリプトの私室に設置され、客として訪れていたアンジェとヘリアンを「開発中のストレス改善装置のモニターになってほしい」と声をかけて部屋に連れ込む。

 

 結果として二人はぐっすり熟睡し、バイタルも安定値を保っていた・・・・・のだが、ここで予期せぬトラブルが発生した。

 

 

「二人がね、目を覚まさなくなったのよ」

 

「正確には、それを拒否してるって感じかしら。 よっぽど居心地がいいんでしょうね」

 

 

 いったいどんな願望が詰まった夢を見ているかは不明だが、二人は夢に浸かったっきり目を覚まさないらしい。この装置は、目を覚まさせるときは外部から信号を送って使用者が受諾する流れだが、これを拒否されると装置を止めることができなくなるという欠点があったのだ。

 また、人形と違いバックアップがあるわけでもないうえに複雑怪奇な人間の脳に繋がっているため、無理やり起こせば何が起きるかも未知数、最悪の場合何らかの障害が残るとされている。

 何とか栄養補給用の点滴でしのいでいるが、いつまでもこのままというわけにもいかない。そこでグリフィンが誇るエリート部隊に白羽の矢が立ったということだ。

 

 

「端的に言えば、二人の夢に乗り込んで中から強引に二人を連れだすって作戦ね」

 

「あの・・・・それ、お二人に影響は?」

 

「強制終了ではなく正規の手順を踏めば問題ないよ」

 

「あくまで本人たちに『そろそろ目を覚まさないと』って思わせるだけだから」

 

 

 まぁ実際、今回の任務は比較的難易度の低い部類にはなるだろう。対象の説得だけで、なんらかの戦闘や妨害があるというわけでもない。説得するうえで知り合いの方が効率がいいからというだけなのだから、そこまで身構えることもないだろう。加えて・・・・・・

 

 

「私も同行します。 身内の責任は取らねばなりませんし、電子戦の心得もありますから」

 

 

 説得という意味ではこの上なく心強い代理人もいるのだ。代理人自身も最上位ハイエンドの一人、単純な戦力としても、そして指揮タイプの人形としての状況判断能力もずば抜けている。

 作戦の成功は堅いだろう・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・と思っていた時期がM4にもあった。

 

 

「あの、ヘリアンさん・・・・何度も言いますがそろそろ帰りましょう」

 

「悪いなM4、だが私も何度でも言おう・・・・・私は帰らん! ここで彼と添い遂げるのだ!!」

 

「だからここはただの仮想空間で、現実ではないんですって!」

 

「うるさい! 現実なんてくそくらえだ!」

 

 

 一先ずアンジェの方はAK-12に任せ、M4と代理人はヘリアン救出のために仮想空間へと飛び込んだ。が、そこで目にしたのはやたらとイケメンで若い男と、見ているだけでイラっとしそうなほどイチャイチャしているヘリアンの姿であった。

 とりあえず声をかけてみるも、やはりというかヘリアンは見向きもしない。これにしびれを切らしたM4のランチャー発射によって強引に気を引いた結果が前述のやり取りである。年齢的にも見苦しい駄々をこねるヘリアンにいよいようんざりするM4だが、ここは現実ではなく仮想空間・・・・銃弾を何発ぶち込もうが大した効果はなく、護身程度の戦闘能力しかないヘリアンを取り押さえることすら一筋縄ではいかない。

 

 

「ふん、お前には分からんだろうなM4・・・・持って生まれたお前には!」

 

「持って生まれたって・・・・・私はあくまで人形ですよ?」

 

「うるさいうるさい! どいつもこいつも美形でスタイル抜群だと? 私への当てつけか!!!」

 

「「うわぁ・・・・・」」

 

 

 ちなみにだが、()姿()()()()()()()()ヘリアンも一定数の人気がある。所謂メガネ美人というやつで、その手の好みの人間からすればどストライクらしい。ただそのがっつきすぎる恋愛願望と、なんだかんだ仕事人間なところが彼女の出会いを遠ざけている要因なのだ。

 もっとも、今のヘリアンにそんなことを伝えたところで事態が解決するはずもなく、むしろ火に油を注ぐだけだろう。

 

 

「それにだ、M4。 ここはあくまで私の理想の世界だということを忘れていないか?」

 

「いったい何を・・・・・」

 

「こういうことだ!!」

 

 

 ヘリアンが手を振り上げると先ほどまでの景色が一変し、一面がなぜか荒野になる。ヘリアンのとなりにいた『理想の彼氏』も消え、代わりとばかりにヘリアンの周りから見たこともない人形たちが姿を現す。全体的に白系の塗装で、歩兵タイプと思しきものからブースターで浮遊しているもの、はては重武装の巨体まで様々。

 そんな正体不明の勢力が、ヘリアンの指示で二人に襲い掛かる。もはや白い波となった謎の軍勢は二人を飲み込まんと進撃し・・・・・・突如としてその一角が爆ぜた。

 

 

「・・・・・・・・は?」

 

 

 ヘリアンが間の抜けた声を上げている間にも、まるで連鎖するように爆発が起き、白い軍勢がノイズとなって消えていく。徒党を組んだ歩兵は紙屑のように消し飛び、ブースター付きはその爆炎から逃げきれず、耐久力のある巨体でさえ数度の爆発で崩れ落ちる。

 ヘリアンは目を疑った。最前線の指揮官でないとはいえそれなりに知識のあるヘリアンだが、目の前の光景が信じられなかった。

 あの爆発はおそらく、M4のランチャーによるものだろう。しかし閲覧した資料では連射性能は決して高くなく、また弾数も限りがあるはず・・・・しかしそのデータを無視するかのように榴弾をばらまき、駆逐していく。

 

 

「な、なぜだ・・・・」

 

『ここが電脳の世界・・・・私たち人形の、いわばホームグラウンドだからだよ!』

 

 

 外部からスピーカーを繋いでいるのか、アーキテクトがおちょくるような声色でそう言った。

 

 

『M4ちゃん、調子はどうかな?』

 

「問題ありません。 それにしても、【無限弾化】なんて機能があったんですね」

 

『まぁデバック用だけどね~』

 

 

 そう、現在M4には『弾数無限化』と『リロードなし』という設定が付与されており、文字通りチートのような戦力を有している。ただでさえ強力な榴弾をポンポン発射されては、どれほど強固な敵であろうとただの的である。

 

 

「貴様まで私の夢を壊そうというのか、アーキテクト!!」

 

『いやいやぁ、ちょっとお手伝いをね☆』

 

「くそっ・・・・お前も、世のリア充たちも! 私をみじめにさせるものは、皆〇ねばいい!!!」

 

 

 もはやただの妬みでしかないが、ヘリアンの執念に呼応して敵はさらに数を増す。電子の集合体であるため、文字通り無限に湧いて出てくるのだ。

 もちろん、M4も代理人もその程度は織り込み済みである。

 

 

「・・・・・M4、お待たせしました」

 

「! ではお任せします、代理人さん」

 

「えぇ・・・・・では、参ります!」

 

 

 それまでM4の後ろに控えていただけの代理人が、一歩前に出る。そして呼吸を整えると、素早く十字を切った。その瞬間、代理人を中心に膨大な量のエネルギーがあふれ出し、代理人が目を振らくと同時に解放される。

 あたり全てを包むほどの光を発し、それがやんだころには白の軍勢は文字通り跡形もなく消し飛んでいた。

 

 

「な・・・な・・・・・・・」

 

「殲滅完了・・・・・ふぅ」

 

「お疲れ様です。 さて・・・・・」

 

 

 M4は唖然とするヘリアンの前まで歩み寄ると、銃を構えながらニコリと微笑んで言った。

 

 

「帰りましょうか、ヘリアンさん?」

 

「・・・・・・・はい」

 

 

 こうして、一人の独身女の夢は終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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数日後

 

 

「や、やっと終わったぞ・・・・・」

 

「数日分の仕事が溜まるって・・・・地獄ね」

 

「お二人ともお疲れ様です。 コーヒーのお替わりは?」

 

「「お願いします」」

 

 

 無事現世への生還を果たした二人は、相も変わらず独り身同士で店に立ち寄る。

 現実逃避の恐ろしさを改めて実感した二人は今のところまじめに働き、以前ほど盲目的に出会いを求めなくなったという。現実を受け入れることが良いか悪いかは知らないが。

 

 

「ふふっ、もうあの装置のお世話にはならなさそうですね」

 

「あぁ、もちろんだ」

 

「それに、今の私たちには()()があるからな」

 

「・・・・・コレ?」

 

 

 代理人が二人の手元を見てみると、揃って私用の端末を横にして何かをしている。どうやら最近はやりの、イケメンが多数登場するゲームのようだ。

 

 

「「はぁ・・・・・・〇〇君かっこいい・・・・」」

 

「・・・・・・・・」

 

 

 代理人は何も言わず、コーヒーを注ぐのだった。

 

 

 

 

end




ま・た・せ・た・な!
毎週投稿すら達成できない自分のモチベ管理が恨めしい日々です。
しかも他作者様のとこではコラボが盛り上がってるし・・・・・べ、別に羨ましくなんてないんだからね!




では今回のキャラ紹介!

ヘリアントス
泥沼にはまった独身A。
相変わらず人形や身内をネタにした本を出しているが、やはり出会いは欲しいらしい。
上級代行官という役職のため給料はよく、課金する元手は十二分にある。

アンジェリア
泥沼の独身B。
容姿端麗ではあるのだが、ガツガツしすぎるところと需要と一致しないアピール(筋肉ゴリゴリの水着)のせいで相手が遠のく。
彼女の話は番外編で。

アーキテクト
常習犯A。
変態+技術=危険であることを体現した存在。

マヌスクリプト
常習犯B。
変態+発想力=危険であることを体現ry
アーキテクトと合わせることで究極にダメな方向にメガ進化する。

AK-12
電子戦のエキスパート。
侵入からハッキング、クラッキングに遠隔操作など、戦闘能力がすべてではないという点ではおそらく最も優秀な人形。
サボり癖が玉に瑕。

M4
電子戦もこなせるエリート。
アーキテクトバックアップのもと、弾数無限というチート性能によって蹂躙する。
物理的な力以上に、威圧感たっぷりの笑顔の威力が高い。

代理人
アーキテクトによって戦闘用モジュールを組み込まれた戦闘用装備。
普段はただのサブアームに銃を装備し、加えて広域殲滅兵装「悪兆の鍵」を装備。莫大なチャージ時間こそ必要だが、最低出力でも辺り一帯を更地にできる。
サクヤ曰く、鉄血工造の切り札。











白の軍勢
別の世界ではパラデウスと呼ばれる組織の人形(?)
ゲーガーが訓練用ダミーとして制作したものを、アーキテクトが魔改造したもの。元の面影などなく、演習で殺しにかかる超火力が特徴。
偏向障壁はないため、通常兵装で撃破が可能。


カレプラス(仮称)
アーキテクトとマヌスクリプトによる狂気の産物。
個人の深層心理から理想の相手像を映し出し、理想の彼氏として表現させる。当人が望む理想そのものであるため抗いがたく、またそれ以外の部分も使用者の意のままになるため、製品化されていれば中毒者が多数出たであろうことは想像に難くない。
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