今回はそのプロローグ的なものです。
コラボに関しては、後書きに載せた活動報告をご確認ください。
休日の昼下がりといえば、買い物やお出かけで人がごった返す時間だろう。S09地区の大通りは、日によっては人の波になることすらあり、厳しい寒さが落ち着いた春先ならなおのことだ。
そんな通りから少し離れた喫茶 鉄血も、この時間なら満席になることもある・・・・・のだが、この日はいつもより客の入りが少ないように感じる。パッと見では普通ににぎわっているが、感覚的に一割減といったところか。
そしてこれまた珍しいことに、今日は開店以来まだ人形の客を見ていない。この地区の司令部がいろんな意味でお世話になっていることを考えると、ありえないことだ。
「やっぱり今日も来ませんでしたね、グリフィンの皆さん」
「まぁ仕方のないことです。 厳戒態勢を布いている以上、彼女たちも常に備えておかなければなりませんから」
「だがここまでするものなのか? 旧式とはいえ軍の装甲列車砲だろ?」
軍用の列車砲・・・それがこの異常事態の原因だった。
もともとはここから遠く離れた軍の倉庫に格納されていたものだが、旧式であることに加えてそのあまりにも過剰な火力の使いどころがないと判断された結果、解体処分が決まったという経緯がある。だがこの列車砲、バカみたいな巨体と当時の最高技術の結晶ということもあり、解体できる場所が限られてしまう。
結果、そこまでの道中には警戒態勢が布かれ、地区を管轄するグリフィンの部隊も駆り出されることになったのだった。
「列車砲というよりも、その移動のための線路を守りたいんじゃないのかな?」
『その通りだマヌスクリプト、やはりそんななりでもハイエンドということか』
突然店内のラジオが消え、代わりの厳つい男性の声が降りかかる。しかもマヌスクリプトを名指ししたところを見ると、何らかの形で中の様子を把握していることになる。
店内がざわつく中、幸か不幸か代理人はその声の主を知っていた。
「何か御用でしょうか、エゴールさん」
『このような形ですまんな代理人、迎えを遣わせているから表で待っていてもらいたい』
「・・・・・・わかりました」
一方的ではあるもののただ事ではない雰囲気に、代理人は大人しく従うのだった。
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「大尉、代理人様をお連れしました」
「ご苦労、下がっていい」
「はっ!」
数十分後、S09地区近郊に仮設された軍の作戦本部に連れてこられた代理人は、そのまま奥の作戦指令室に案内される。通常なら必要であるはずの検査などもすっ飛ばしての案内に、代理人の中の懸念は増すばかりだ。
案内された部屋で、部下に指示を出していたエゴールが振り返る。
「まずは応じてくれてありがとう、代理人」
「断る理由もありませんので・・・それで、どのような理由で?」
余計な会話はなく、ただ用件だけを訊ねる。エゴールの方ももともとそういう気質なため、失礼だとかも思わずこちらも用件のみを話す。
「単刀直入に言おう、戦力として我々に協力してほしい」
「軍とグリフィン、それに鉄血工造も加えての大規模な警備であると小耳にはさんでおりますが、それでも足りないと?」
「ただの警備であれば問題ない・・・・・あれを出せ」
エゴールの指示で部屋の照明が落ち、スクリーンに地図が映し出される。そこには件の列車砲の移動ルートに加え、線路沿いの警備体制や投入戦力などが事細かに記されている。誰が見ても軍事機密だが、ここに来た時点で今更だろう。
その地図の上の方、輸送ルートからは少し離れた山岳地帯の一部が、赤い丸で囲われていた。
「不自然な物資の流れを、軍の情報部が察知した。 列車砲との関係は不明だがこのタイミングだ、不確定要素は潰しておきたい」
「なるほど・・・・しかしそれに割くことができるほどの戦力はなく、関係性も不明なため造園もすぐには用意できない、ということですか」
「そうだ」
となると、確かに代理人たちに話が回ってくるのも無理はない。いくら鉄血工造を離脱し民間を謳ったところで代理人たちはハイエンドモデル、そんじゃそこらの部隊とは格が違う。加えて代理人の能力である長距離テレポートを使用すれば、謎の勢力に察知されることもなく近づくことができるだろう。
『正規』の戦力がなければ『非正規』を使うまで・・・・ということだ。
「すでに鉄血工造には話を通してある。 反対はされたが、最終的に『代理人に一任する』だそうだ」
鉄血工造組の団結力はかなりのものだ。特にその長女ともいえる代理人に関しては、誰もが呼ばれればはせ参じるくらいに。おそらくはゲーガーもアーキテクトも、断腸の思いで話しを受けたに違いない。エゴールの言い方はかなり強めだが、この作戦において代理人が適役なのは事実なのだから。
「・・・・わかりました、お受けしましょう」
「すまんな、作戦開始は明日の夜を予定している。 それまでに装備を整えてもらいたい」
それを最後に、二人の会合は終わる。列車砲の通過予定日が近づき慌ただしくなる基地を抜け、人通りの少なくなった道を戻り、臨時閉店した喫茶 鉄血へと帰ってきた代理人は全員に内容を説明する。
「なるほどねぇ・・・・じゃ、その間はお店はどうするの?」
「Dとリッパー、イェーガー、フォートレスには残ってもらいますので、通常営業で構いません。 加えて、万が一の場合は避難誘導をお願いします」
「なるほど、戦力は私たちだけか」
実働部隊として参加するゲッコーとマヌスクリプトは、軽く鼻を鳴らす。戦闘能力のないDはもちろん、単体ではハイエンドクラスの動きについてこられないリッパーとイェーガーもお留守番、そもそもが戦闘に向いていないフォートレスもだ。
それに加え、敵の詳細が分からないため隠密行動に向くゲッコーとある程度の事態に即応できる万能さがあるマヌスクリプトがいれば十分だし、そもそも奇襲攻撃となる以上は人数は少ないほうがいい。
「目的は殲滅ではありません、あくまで列車砲輸送との関係を確認することがメインです。 敵対の意思がなければこちらから仕掛ける必要はありませんので」
「逆に列車砲が目当ての連中なら、時間稼ぎができればいいってことだよね」
「わかりやすくて結構だ、やってやろう・・・・美女の依頼でないのが癪だがな」
いつも通りの気楽な返事、だが二人ともその表情はやる気と獰猛さに満ちている。非公式とはいえ鉄血工造のハイエンド、そしてフォートレスとも違い決して非好戦的というわけでもない。製造されて今日までほとんど力を振るうこともなく過ごしてきたが、根っこは『戦術人形』なのだ。
そして代理人もまた、『喫茶 鉄血のマスター』から『鉄血最強のハイエンド』へ、自身の中のスイッチを切り替えていく。
「それでは皆さん、準備に取り掛かりましょう」
リリリリリリリリ…………
代理人が言い終えると同時に、店の電話が鳴る。すでに営業時間を過ぎている今、この電話にかけてくる者などほとんどいないはずだが。
「はい、喫茶 鉄血です」
『代理人か!? 私だ、ゲーガーだ!』
「ゲーガー? なぜこちらの番号に?」
普段なら個人あての番号にかけてくるはずのゲーガー、しかもその口調は何か慌てているようにも聞こえる。それにまず第一声が『代理人』だったことから、相手が代理人でなくても構わなかったということになる・・・・あるいは、相手を選んでいられないほどなのか。
「・・・・・何がありました?」
『察しがよくて助かる・・・先ほど軍から連絡があった、落ち着いて聞いてほしい』
ただならぬ雰囲気、そしてこのタイミングで軍からの連絡。代理人の頭をよぎった嫌な予感は、ゲーガーの言葉で現実となる。
「・・・・・・複数のテロ・武装組織が同時多発的に蜂起、輸送中だった軍の列車砲が強奪された。 しかもその先頭車両が、この地区に向かっている」
それとほぼ同時刻、どこか近くて遠い場所で、小さな鐘の音が響いた。
続く
他作者様みたいな大規模コラボがしたい
↓
でもただ呼ぶだけじゃ面白くない
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なんかこう、それぞれの個性を活かせる機会が欲しい
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列車砲、強☆奪
というわけで(私が)待ち望んだ大規模コラボ、開幕です!
詳しいことは活動報告にてお知らせしますが、多くの方に参加していただけたらと思っています。
コラボについては以下を参照ください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=260446&uid=92543