喫茶鉄血   作:いろいろ

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言い訳はあとがきで書きますので……
とりあえず、帰ってきました!

ちなみに、この話は12月ごろに書き始めたため作中の季節はまだ冬です。


第二百四話:振り回される力

 地球の表面の七割は海に覆われている。これに加えて氷の塊である北極や、遥か深くまで続く深海など、人類が永住できる場所は意外と少ない。

 もちろん人工島や海底の施設など、なければ作ってしまえの精神でのし上がってきた人類がその領域に踏み込むのも時間の問題とも言えるが、現時点ではまだ陸上での生活から解放される気配はなさそうだ。

 

 では見方を変え、残り三割を占める陸地。その中でも欧州とアジアを含み、最大の陸地面積を誇るユーラシア大陸というものがある。そのあまりにも広大な大地は多くの民族を受け入れ、多くの国の土台となってきた。結果として地図には複雑怪奇な線が多数引かれ、時には争いの種ともなるのだった。

 

 

「つまりこの大地は、数多の破壊と再生を経て今日まで続く、歴史そのものと言えるのよ」

 

「なるほど、やはりAK-12は博識ですね」

 

「その大地を、こんな重いバイクを押す羽目になったのは、どこの、誰のっ、せいかしらねっ!?」

 

「諦めましょうAR-15、私たちにも非はありますから」

 

 

 厳しい寒さの冬といえど、真っ昼間にバイクを押して歩くには辛いものがある。M4とAR-15は、この苦行の元凶であるAK-12を見つめながらも、そこに乗っかってしまった自身の軽率さを恨むのだった。

 

 

 

 

 

 

 時は遡り、IoP16labのガレージ。前日の定期メンテナンスの後に指示され、本来なら帰りの列車を待つはずのM4たちは言われるがままに集合した。

 最新の設備と用途不明な機器が集まる16labの中ではかなりまとも……というかごく一般的なガレージで、大型車が数台並べられるくらいのスペースに、カバーをかけられたバイクが四台並んでいる。ただ、呼び出した本人(ペルシカ)の姿はない。

 

 

「ペルシカさーん、言われた通り来ましたよ」

 

「呼び出しといていないなんて、いい身分ね」

 

「まぁ、実際それなりの身分の人ですから」

 

「……ねぇ、あれ開けてみない?」

 

 

 呼びかけにも応じず、ただ時間が過ぎていくのに痺れを切らしたAK-12が指さしたバイク。呼び出された先にちょうど人数分とくれば、要件はおそらくこれだろうと察しはつく。

 どのみち待っていても仕方ないと判断し、M4たちもAK-12の提案に乗ってカバーを取り外した。

 

 カバーの下から現れたのは、見るだけで既製品ではないとわかる大型のバイク。車種は同じようだが、各部に施されたアタッチメントは四台全て異なり、予想通りというかそれぞれにM4たちの名前が彫られていた。

 

 

「これ………軍用の最新モデルじゃない」

 

『その通り、そしてこれが君たちを呼び出した理由だよ』

 

「「うわ、出た」」

 

 

 ハンドルの中央、メーター上部の装置から現れたホログラムに映るペルシカ。どうもカバーを外すことがトリガーになっていたようで、外した順に四台分現れる。

 AK-12とAR-15のリアクションはかなり苦いものだが、気にする様子はない。

 

 

「私たちがそのまま帰ったらどうするつもりだったのかしら」

 

『少なくとも君たちの誰かが手を出すとふんでたからね。 実際こうして触ってるわけだし』

 

「なるほど、ペルシカが四人もいると煩いのはよく分かったわ」

 

 

 映像自体はリアルタイムでどこからか送られているようで、会話もできている。が、四台分のホログラムは連動しているため一度に四人分のペルシカが喋ることになる。

 流石に邪魔なので、M4のバイク以外は映像を切ることにした。

 

 

「それで、これが私たちを呼び出した理由なんですね?」

 

『えぇ、私からのプレゼント……と言いたいところだけど、これは正式に承認が下りている君たちの追加装備よ。 まぁ私も開発に携わってるけどね』

 

「開発陣は? 改造とはいえ、人形がメインのIoPが二輪まで造れるなんて思わないんだけど」

 

『確かにIoPは人形のノウハウはあっても車両のノウハウはない……16lab(うち)17lab(変態)を除いてね』

 

「「「帰る」」」

 

「ま、まぁまぁ………」

 

 

 前者はともかく、後者が絡んでいてロクな結果になったことなどない、そんな経験則から踵を返す三人をなんとか宥めるM4。実際のところは、元となる軍用バイクに機能を付け足した程度なので、三人が危惧するようなトンデモ仕様にはなっていないのだが、その程度では安心など程遠いのが17labだ。

 

 

「ですが、それならわざわざ呼び出さずとも指令部(S09地区)に送っていただければ良かったのではないですか?」

 

『それはそうなんだけど……せっかくだから、慣熟訓練も兼ねて乗って帰ってもらおうかなってね』

 

「乗って帰るって……ここからS09地区まで!?」

 

「高速道路やアウトバーンを使ってもそれなりの距離ですね……ということは、どこかに中継地点が?」

 

『察しがいいねANー94、途中の地区指令部に補給と休憩の許可が出てるよ。 件のエリート小隊が来るって言ったら二つ返事だったね』

 

 

 用意周到とはまさにこのことで、断ることなど一切想定していないほど全てが整った状態であった。断ろうと思えば断れるが、特にM4は見ず知らずの指揮官や人形たちが生みの親(ペルシカ)に振り回されるのは不憫だと感じていた。

 それに、心優しいとはいえ戦術人形である彼女たちだ。追加装備と聞かされて一切無関心というわけにもいかない。

 

 

「はぁ……わかりました、受け取ります」

 

『うんうん、そう言ってくれると思ってたよ。 それじゃ、気をつけて帰るんだよ……大丈夫だと思うけど、羽目を外しすぎないようにね』

 

「そんな免許取りたての子供みたいなことはしないわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イィィィイイイヤッフゥゥウウウウウウ!!!!

 

『AK-12! インカムつけてるんだから叫ばないで!!』

 

『すごい……これが軍の最新モデル………!』

 

『み、みんな落ち着いて! もう少し安全運転を……!』

 

 

 だだっ広い舗装道路を、一目でまともな仕様ではないとわかるスピードで駆けていく四台のバイク。ゴツいサイズと装備とは裏腹にそこらの車はおろかスポーツカーすら置き去りにし、奇声と怒号を残して走り去ってゆく。

 

 

『この……ちょっとは速度を落としなさいAK-12!!』

 

『あら、この私と張り合うつもりかしら? ………ま、空気抵抗が少ない分は有利かもしれないわね』

 

『あ゛あ゛っ!?』

 

『フルスロットルでこの安定性、加減速性能も申し分ない。 私たち(人形)用にカスタマイズされているはずなのに驚くほどクセがない……!』

 

『周りの車の迷惑になるから……ダメだ、聞こえてない……』

 

 

 先頭を走るAK-12は出発前の文句はどこへやら。それを追う形で爆走するAR-15は、視線だけで人を殺せそうなほど怒りをあらわにしている。そこから少し下がったところで機体の機能や仕様を一つ一つ試していくAN-94だが、なんでもないところで武装を展開したり、急加速や急制動を繰り返すせいで周りがかなりビビっている。

 M4は本人の性格もあってできれば安全運転を心がけたいところだがそんな三人を放っておけず、追い越し際に周りに謝りつつ、一気に加速して先頭に出ると、ウインカーと手信号で進路の変更を促す。車通りの少ない道へ誘導することで周りに迷惑をかけないためではあるのだが、一番の理由は即座に止める(爆撃する)ことができるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてさらに少しして、冒頭の状況になる。

 

 

「遠回りと寄り道を繰り返した挙句、ガス欠なんて……笑えないわね」

 

「あんたのっ、燃費も考えないっ、爆走の結果でしょっ!」

 

 

 戦車などの戦闘車両の燃費が極端に悪いのは有名な話だが、軍用ということもありこのバイクももちろん燃費が悪い。様々な機能を持たせた結果重量が増し、その重量でも十分な運動性を持たせるためにパワフルなエンジン(超重量)を

 

 

「それを言うならAR-15も似たようなものです。 私も性能試験にかまけて、基本的な燃料配分を怠ってしまいました」

 

「そして、それを止められなかった隊長である私の責任でもあるわ……」

 

 

 本当ならぶつけてでも止めなければならなかったと悔やみつつ、与えられたばかりの装備を壊すことができなかったことと多少なりとも浮かれていた過去の自分に一人恨み言をこぼす。

 

 

「いや、その手段が爆撃なのはどうなのよ」

 

「いくら彼女(AK-12)が頑丈だからって、爆撃はちょっと……」

 

「あんた、MOD化してから爆撃魔みたいになってるわよ」

 

「そんなぁ……」

 

 

 周囲からそんな風に思われていたことに軽くへこむM4。ちなみにここにいる3人の他、AR小隊や404小隊をはじめとしたグリフィンの人形たち、ペルシカらIoPの人間や鉄血工造、そして代理人からも似たようなことを思われているのだが、それをM4が知るのはまだ少し先である。

 

 軽口を叩き合いながらバイクを押し進めること数十分、広大な畑の間に民家がポツポツとあるような場所にガソリンスタンドなどあるはずもなく、マップの最寄りのスタンドはまだまだ先。ヒッチハイクよろしく牽引してくれそうな車が通りがかるのを待つも、そもそも軍用の重量バイクを4台も牽引できるような車両が奇跡的に通ってくれるわけがない。

 これは帰りは日が暮れてからかな、と4人揃って半ば諦めかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 捨てる神あれば拾う神あり、とはこういうことを言うのだろうか。地平線に向かってまっすぐ続く道の対向車線ーーーつまりM4たちに向かって、田舎道にはとても似つかわしくない装甲車とトラックの一群が現れる。そしてM4たちの近くまで来ると、なぜか一斉に停車した。

 先頭の装甲車の上部ハッチから顔を出してのは、彼女たちのよく知る人形だった。

 

 

「ゲーガー、さん?」

 

「あぁ、見間違いかと思ったがやはりお前たちか……こんなド田舎で新しい訓練か?」

 

 

 よく見れば車両の側面には見慣れた鉄血工造の社章が描かれ、後続のトラックからワラワラと輸送部隊の面々……Aigisたちが姿を現す。どうやら大量の人形を納品した帰りらしく、荷台は空っぽだった。

 さて、鉄血工造といえば戦術人形業界においてIoPと二分する存在である。そのため、納品する人形も数体や十数体なんてものではない。そんな物量を支える専用のトラックは、当然ながら十分な積載量を持っている……軍用車を積み込めるくらいには。

 

 状況を理解した4人の行動は素早く、そして驚くほど統率が取れていた。つまり、4人揃って土下座である。

 

 

「「「「乗せていってください!!」」」」

 

「…………うん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、それは災難でしたね」

 

「笑い事じゃないですよ代理人〜」

 

「ごめんなさい、普段のあなたならそんなミスはしなさそうですから、つい」

 

「うぅ………」

 

 

 結局トラックに乗せてもらい、そのままS09地区まで帰ってこられたM4たちであった。が、初運転でガス欠などという初歩的なミスを道中の車内でいじられ続け、戻ってきたら指揮官から危険運転についてお叱りを受け、ペルシカにはまるで他人事のように爆笑され………。

 

 

「一回メンタルをリセットしたい……」

 

「まぁまぁ、失敗は誰にでもありますから」

 

「そうだよM4、ビークなんてニュートラルなのにフルスロットルまで回しちゃって」

 

「それは言わない約束でしょアーキテクト!?」

 

 

 グッタリするM4の隣で勃発するいつものドタバタ劇。店員含め誰も止めないといういつも通りな光景に、疲れもあってM4もクスリと笑う。

 

 

「とりあえず……おかえりなさい、M4」

 

「あ、うん………ただいま」

 

 

 

 

end




はい、というわけで半年ぶりの更新となりました。
あぁ、初期の毎日投稿してた頃が懐かしい……

執筆どころかハーメルンからも離れてたせいで他作者様方の作品も完全に浦島太郎状態だったり、気がつけばアニメ始まってたり、こんな投稿頻度なのに今でもコメントと誤字指摘もらえたり……本当にありがとうございます!!

今後も超スローペースになると思いますが、頑張って書き続けます!


てな訳で今回のキャラ紹介!………これやるのも久しぶりだな笑

・M4A1
規則は遵守、でも融通は利くタイプ。ただし、制裁方法は大体爆撃。
意外とメンタルが弱い。

・AR-15
今作ではMOD前も後もあまり変わっていない。
体形についてはそこまで気にしてないが、なぜかAK-12に言われるとイラっとくるらしい。

・AK-12
調子に乗りやすく、大体勝手に動くタイプ……だが、作戦中などはきっちり働く優秀な人形。ちなみに道中最も危険運転が多かったということで、指揮官主催の二輪講習(鬼モード)の受講が決定している。

・AN-94
生真面目だが流されやすく、特にAK-12に対してはかなり甘い。
性能試験と称して危険運転が多かったが、本人が反省しているのでそれ以上のお咎めはない。
バイクに目覚めたら一日中弄ってそうなタイプ。

・ペルシカ
性能試験とちょっとした息抜き……と称して帰りの交通費をケチろうとする16lab主任。おまけに燃料も半分くらいしか入れてない。
今回の一件の(名ばかりの)監督者ということになっていたため、ガソリン代と鉄血工造への輸送代を支払うことになる。

・ゲーガー&輸送部隊たち
あらゆる意味で無茶苦茶な戦術人形業界において数少ない、堅実かつ確実な仕事をすることで有名。
なお、隊長格が先頭車両に乗っていることについては、本人が最も強いから……というのが表向きの理由で、本当は「ゲーガーLOVEなAegisたちが鬱陶しいから」

・代理人
今回はとくに何もしていない。
常連でなくとも「いってらっしゃい」「おかえりなさい」と言ってくれる。

・アーキテクト&ビーク
アーキテクトはサボり、ビークはそれに巻き込まれただけ。
この後M4からの通報でゲーガーにつかまった。
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