「何度も言わせないで。 9が一番可愛いに決まってるでしょ。」
「いいえ、MG42が一番です。」
「おいおい何言ってんだ、M4だろ。」
「・・・帰っていいかしら。」
冬を迎え、寒さを増した風が吹くようになったある日のお昼時。
寒さから逃れ熱いコーヒーでも飲もうかという人間や人形で賑わう『喫茶 鉄血』、その店内の一角で行われている盛大に無駄な、しかし彼女たちにとっては死活問題である会議が開かれていた。
基本的に他の客の迷惑にならないようにと角の席を選んで行われているが、話の中身が気になるのか周りの客がちらほら聞き耳を立てている。
彼女たちはグリフィン所属の人形であり、定期的にこの会合を開いている組織の一員である。
組織の名を、『妹を愛で、妹に尊敬される姉になるための会(通称シスコン倶楽部)』である。
「あなたにはわからないでしょう。 朝起きてすぐに満面の笑顔で『おはよう、45姉!』と言ってくる9の素晴らしさが!」
UMP45・・・『妹を愛で、妹に尊敬される姉になるための会』の創設者で会長。グリフィンの特殊部隊『404小隊』の隊長を務める優秀な人形。過去に妹を(性的に)襲おうとし、グリフィン警備隊に連行されたことがある。妹と二日間会わないと動かなくなる。
「それなら私のMG42だって、あの舌ったらずな声で『お姉しゃま』って言いながら抱きついてくるんですよ!その破壊力といったらないでしょう!!」
MG34・・・会の一員。
「わかってないなぁ。 そりゃただ可愛いだけだろ? うちのM4は家事全般できるし、私が二日酔いでぶっ倒れた時なんかつきっきりで看病してくれたんだ。」
M16A1・・・会の副会長。グリフィンのエリート部隊『AR小隊』の一員でムードメーカー。一見シスコンには見えないが、それは妹の前では優秀な姉でいたいがために特訓した成果。妹に邪な念を抱く者は片っ端からブラックリストに載せ、手を出そうとする者は病院送りにする。
「あなた達みんな似たり寄ったりよ。 あとM16はお酒を控えなさい。」
FAL・・・会の一員。グリフィンの人形部隊『FN小隊』の隊長。シスコンというわけではなくただ面白そうという理由だけで入会し、二日後には後悔した人形。当初は退会することを考えていたが、身内から犯罪者が出ることを危惧し、ストッパーとして参加し続けている。胃薬は戦友。
「失礼ね、こんな上官反逆罪紛いの女と一緒にしないで。」
「そっちこそ、愛でるべき妹に手を出すなんて有り得ないわ。」
「全くだ。 それとFAL、悪いが酒はやめねーぞ。 何より酒を飲ませた時のM4がまた可愛いn」
「あーハイハイ。 で、そろそろ今回の議題に行きたいんだけどいいかしら?」
らちがあかないと思ったFALが強引に話を戻す。というよりも今回の集会の本題に当たるまでにすでに二時間は経過している。この時点でFALは午後の予定を大幅に修正する必要があり、大変不機嫌になっている。
ちなみに今日の集まりは、この会には所属していない姉妹人形たちから寄せられた相談の解決策を議論する予定である。
「・・・えーとじゃあ一人目。 名前は95式、内容は・・・
『最近、妹の97式が本部の職員の方から告白されたそうで、本人からどうすればいいか相談されました。 良い案があれば教えてください。 尚、その本部の方は人当たりの良い好青年とのことです。』・・・だって。
さて、何か良い案はある?」
「射殺」
「蜂の巣」
「半殺し」
「なんでよっっ!?」
FALがキレた。むしろここまでじっと耐えていたことが驚きであり、周りの客からもちらほら拍手があがっている。
「告白を受けるかどうかでしょ!? 彼女たちの印象も悪くないでしょ!? 何が問題なのっ!?」
「「「妹に近づく男は悪」」」
「なんでっ! そうっ!! なるのよっっ!!!」
思わず立ち上がり机をバンバン叩くFAL。対してシスコン姉たちは何がダメなのかと首をかしげるばかりである。それを見ていよいよ爆発しそうになるFALだが、コーヒーのおかわりを入れに来た代理人がそっと肩に手を置き、深呼吸させて座らせる。
「代理人・・・」
「言いたいことはわかりますがまず落ち着きましょう。
それに、こういうことは自分に置き換えればいいと思いますよ。」
「「「「?」」」」
そう言ってコーヒーを入れ終えた代理人はいつもの優しい笑顔のまま、
「もし、皆さんの妹さんに好きな人ができたら、どうしますか?」
「ちょっとおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」
特大の爆弾を落としていった。間違いなく核レベルである。
目を白黒させていたFALが他の会員たちに向き直ると、そこにはドス黒いオーラをまとった三体の修羅がいた。
「9に・・・彼氏・・・?」(セーフティーを外す音)
「・・・ふふっ・・うふふふふふふふ・・・・・・」
「SOPMODをけしかけるか・・・、いや待てここは私が直々に・・・」
あくまでもしもの話なのだが、本人たちは完全にその気である。
どーすのよこれー!と言うような目で見てくるFALに、大丈夫ですよとアイコンタクトで返した代理人は更に言葉を続ける。
「皆さん、本当に妹さんのことが好きなんですね。」
「「「当たり前よ(だ)!!!」」」
見事なシンクロで答えが返ってくる。
代理人は、ならばと付け加えて、
「言葉足らずでしたね。 私が言いたかったのは、妹
火に油どころじゃないでしょぉぉぉ!と言わんばかりにあたふたするFALだが、予想に反して姉バカ三人が何も言い返さないことに疑問を持つ。
「私と言うものがありながら・・・でも9が幸せになるなら・・・でも・・・」
「・・・・・・・・・・・・・グスッ」
「M4が・・・そうか・・・いやしかし・・・う〜ん・・・」
FALは自分が見たものが信じられなかった。あの脳内妹一色集団が本気で思いつめた表情を浮かべている。しかも否定どころか割と肯定的でもある。
「皆さんが本当に妹想いだからこそ、それだけ悩むことができると言うことです。」
「我々鉄血には姉妹というものはありません。 鉄血はそれが一つの大きな家族とも呼べるものですし、ある意味では全員が姉妹とも言えるでしょう。」
「だからこそ、私たちはお互いの幸せを願いますし、その人が決めたことには全力で応援します。 それに・・・」
そこで一度区切り、代理人はふっと息をつく。
一度目を閉じ、深呼吸してから、再び言葉を紡いだ。
「あなた方の妹が彼女たちであるように、彼女たちの姉もまた、あなた方だけなんですよ。」
「「「「・・・・・」」」」
店の中は時計の針の音が聞こえるほど静まり返る。
それはほんの数十秒だったのかもしれないし、数分もしくは数十分だったのかもしれない。
そうね、と言った呟きは果たして誰のものだったのか。
おもむろに立ち上がった三人の人形は、それぞれ背筋を伸ばしたり肩を回したりして凝り固まった体をほぐしていった。
ただ三人とも、自分の中の答えが見つかったような、スッキリとした表情を浮かべていた。
「さてと、9のお土産でも買って帰ろっかな。」
「最近ゆっくり話せてなかったかなぁ。 帰ったらMG42とお茶しよっと。」
「ふふっ、そうだな。 今日はM4の行きたい店にでも食いに行くか。」
そういうとそれぞれ注文した分のお金を払い、代理人に一言お礼を言ってから彼女たちは帰っていった。
いまだに呆然としていたFALは代理人の顔を見て、
「ねぇ、あなたうちの会に来てくれないかしら?」
と言った。割と切実な顔で。
代理人は一瞬困ったような顔をすると、すぐにまたいつもの微笑みに戻る。
「残念ですが、私はここのマスターですし、店を空けるわけにはいきません。何より、
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連日冷たい風が続くとある日の午後。
ここ、『喫茶 鉄血』はそこそこの客で賑わっていた。
店内を見渡せば、左右反対の目に傷がある姉妹が一つのケーキをつつき、妹の舌ったらずな話を優しげな表情で聞く姉がいて、五人姉妹が時々喧嘩しながらも笑いあっている。
それを見るマスターの目は、どこか懐かしげな、優しいものだった。
終始ギャグストーリーで行くつもりだったのに普通にいい話になってしまった・・・。
今回からはこのあとがきで登場人物たちの紹介をしていきたいと思います。(初回は第一話も合わせて紹介します)
代理人・・・主人公。喫茶 鉄血のマスター。かつては鉄血の実質的なリーダーだったが、とある理由により鉄血を部下に任せて人間社会で生きて行くことに。
従業員・・・なんか勝手についてきて勝手に従業員になった鉄血兵。まったくもってどうでもいいが、実はそれぞれのタイプのオリジナル。食費も給与もいらないので経営的には便利。
おばちゃん・・・街の有名人。バーゲンの女帝。一度話すとなかなか終わらないが、不思議と聞き続けられる謎の話術がある。既婚。
モシン・ナガン・・・ダイス神の奇跡によって第一話に抜擢された娘。普段元気っ子がしおらしくなるとめちゃくちゃ可愛いと思う。指揮官と飲んだ翌日は一日中にやけっぱなしだったため、同僚のナガンからドン引きされる。名前の入力がスゴクメンドクサイ。
UMP45・・・シスコン一号。リアル司令部で来てくれた時からこいつはシスコンだと思ってた。使うかどうかわからない設定として、普段は指揮官をからかうくせに撫でられたりハグされたりすると途端にオーバーヒートする。
MG34・・・シスコン二号。ボイスを聞くとほとんどにMG42が出てくるくらいのシスコン。書いてみると意外といじりやすい。どーでもいい設定として、教導官をやってるせいでファンクラブの人数がやたら多い。
M16A1・・・シスコンV3。最初はAR-15がこのポジションだったが、いろんなとことかぶりそうだったので変更。ちなみにSOPMODとはいたずら仲間のような関係なのです、M4の時ほどは暴走しない。
いらない設定として、眼帯コレクションなる趣味がある。
FAL・・・苦労人。この枠は誰でも良かったが、絶賛レベリング中の彼女に来てもらった。指揮官に好意を持ってはいるが、どこか諦めている節がある。使うかもしれない設定として、料理が壊滅的に下手。
年が変わるまでにはもう一話上げたいなぁ。