喫茶鉄血   作:いろいろ

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そこそこ話も溜まってきたのでここら辺で投下。

今回は、
・自由な彼女と自由すぎる彼女
・歯医者「痛くないと言ったな〜、あれは嘘だ〜。」
・私と彼女とケーキと
・夜戦(意味深)用オプションパーツ

の四本です。


番外編5

番外5-1自由な彼女と自由すぎる彼女

 

「・・・んぅ・・・朝?」

 

 

窓から差し込む朝日で眼を覚ますUMP45。ぐっと一伸びして大きく息を吸い込む。

9が416と付き合うようになってからそれなりに立ち、今では9分を補充せずとも活動できるようになっていた。

 

 

「・・・今日も任務なし、か。 また代理人のとこでお茶でも飲もうかな。」

 

 

そう呟いて、ベッドから出るために掛け布団をどけようとして・・・

ムニュッ

 

 

「・・・・・へ?」

 

 

その手が何かをつかんだ。自分の小さな手のひらに収まる程度の、何か柔らかいもの。フニフニと揉んでみると、

 

 

「・・・んっ・・・んん・・・」

 

「!?」

 

 

聞き覚えのある、しかし今聞こえるはずのない声が聞こえる。徐々に冷静になっていくと、自分が今()()()()()()()()()()ことに気がつく。顔が半笑いのまま凍りつく。嫌な汗が止まらない。恐る恐る布団をめくってみると・・・

 

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「!?!?!?」

 

 

彼女の大切なもう一人の妹、F45がそこにいた。・・・しかも裸で。

すぐさま昨晩の記憶を掘り起こす。昨晩はそう・・・確か夕食の後に9と416が外泊届を出して出て行き、何か知らないかと11に聞けば

 

 

『町外れの赤いお城に行くみたいだよ。』

 

 

と言う答え。

・・・そんな建物、この街に一つしかない。

いつか来るとは思っていたことがついにきてしまったのだ。呆然とした私はフラフラと司令部のバーに向かい、一人酒に浸って・・・確かその後にF小隊が来て・・・・・F45が一緒に飲もうとか言ってきて・・・あれ?でもあれはソフトドリンクだったはず・・・で、二人で飲んでそれから・・・それから・・・・・あれぇ〜・・・・・

 

 

「・・・どうしよう、覚えてない。」

 

 

もう一度状況を確認する。

昨夜、私は酒を飲んだ。今、私とF45は同じベッドにいる。二人とも全裸。

・・・ヤバイかもしれない。

 

 

「・・・え、F45?」

 

「んぁ?・・・お姉ちゃん・・・おはよ〜」

 

「おはようF45・・・ってそうじゃなくて、昨日の晩のこと、何か覚えてる?」

 

「昨日?・・・!」

 

 

急に顔を赤らめるF45・・・って何その反応!?

 

 

「ご、ごめんお姉ちゃん・・・まだちょっと恥ずかしい。」

 

「待って待って待って」

 

 

布団で胸元を隠すようにして縮こまるF45。ヤバイぞヤバイぞこれはヤバイ。

というか今気がついたがここは私の部屋じゃない。F45とF9の部屋だ。バッともう一つのベッドに目を向けるが、その持ち主はいない。

 

 

「な、9なら・・・昨日は戻ってきてないよ・・・」

 

 

いまにも消え入りそうな声でF45が告げる。私は昨夜の真相を知るため、F45に詰め寄る。

 

 

「F45! 昨日何があったか教えt

 

「おっはよー45姉! 朝ごはん食べ、に、い・・・こ?」

 

 

部屋に飛び込んできたのはF45の妹のF9。

そして今この状況は、①二人とも全裸、②乱れたベッド、③布団で体を隠すF45と詰め寄る私。

そして最近知ったことだが、F9はUMP9よりも口が軽い。

 

 

「・・・お邪魔しました〜・・・大変よ11! 416!」

 

「待って9! 待って〜!」

 

「ちょっ!? 服着て!」

 

 

これを機に、私は禁酒することを決めた。

 

end

 

 

番外5-2:歯医者「痛くないと言ったな〜、あれは嘘だ〜。」

 

これは、アストラが歯医者に連行される、ほんの一週間前の話。

 

 

「じゃ〜そこに座ってね〜。」

 

「よろしくお願いします・・・人形にこの検査はいるのですか?」

 

「一応前例があるからね〜。 ま、ほとんどないだろうけど。」

 

「はぁ、わかりました。」

 

「それじゃ〜口を開けてね〜。」

 

 

代理人は部下とともに飲食店従業員対象の一斉検診会に参加し、現在歯科医の検診を受けているところである。

・・・のだが、

 

 

「・・・あれ〜?」

 

「?」

 

「代理人ちゃん・・・虫歯があるよ〜。」

 

「へ?」

 

 

口を開けているので間抜けな声しかでないが、相当驚いた様子の代理人。

その後も検診は続き、結局発見されたのは一箇所だけだったのだが、

 

 

「ほっとくのもなんだし〜、治療しちゃおっか〜。」

 

「そう、ですね。 痛くないうちに直してきましょうか。」

 

「わかったよ〜。 じゃ〜後でもう一回来てくれるかな〜?」

 

 

・・・で、その後の検診を全て終え、人がほとんどいなくなった後で再び歯医者のもとを訪れる代理人。

そこはさっきまでの検診用スペースとはうってかわって、物々しい機械が並べられた施術室だった。

 

 

「お、来たね〜、そこに横になってね〜。」

 

「・・・こうですか?」

 

「そうだよ〜、じゃ〜口開けてね〜、ちょっとしみるけど、痛くはないよ〜。」

 

「わかりました、お願いします。」

 

 

そう言って口を開く代理人。ちなみに彼女は口を大きく開く時は目を瞑る。結果、視覚を失ったため聴覚と触覚が鋭敏化してしまう。

 

 

「それじゃ〜いくよ〜。」

キュイイイィィィィィイイイン!!!

 

 

いやに耳障りの悪い音が聞こえてきた直後、あまりの衝撃に代理人は思わず目を見開いた。

代理人自身も戦術人形であるため何度か戦場に立ったこともあるし、何度か被弾もした。それ以外でも日常生活や普段の業務の中で痛みを伴うことが起きることもそれなりにある。

だが今回感じたものは、そのどれとも違うものだった。歯を削っているはずなのにまるで脳を突き刺されたかのような鋭い痛み。歯に伝わる振動もそれを助長し、さらには洗浄のためであろう水が患部にしみるため絶え間なく痛みが襲ってくる。

いい年した女性(という精神設定にされている)である代理人は暴れることはなかったが、全身に力が入りては椅子をしっかりと掴んでいる。

 

数分で終わった治療後も、代理人はしばらく脱力したままだった。

 

 

「終わったよ〜代理人ちゃん。」

 

「・・・痛くないって、言いましたよね?」

 

「痛いって聞いて受ける子が、果たしてどれだけいるのかな〜?」

 

「・・・・・。」

 

「・・・チャンスッ!!!」

パシャリッ

 

「!?」

 

 

普段の動きや言動からは想像もできない速さでスマホを起動、写真モードにして涙目の代理人を写真に収めた歯医者。

呆れて怒るよりも先に歯医者は顔をグイっと近づけ、スマホの画面を見せながら、

 

 

「代理人ちゃ〜ん、ちょ〜〜〜っとだけ手伝って欲しいことがあるんだけど〜?」

 

「・・・脅迫のつもりですか?」

 

「それはどうだろうね〜。 で、やってくれるよね〜?」

 

「・・・・・。」

 

 

結局、代理人は盗撮写真(後で聞いたところ施術台のライトにもカメラが仕込まれ、治療中の顔も撮られていた)に屈し、歯医者の要求を飲むことになる。

 

その要求こそが、喫茶 鉄血の客に歯の異常がありそうな者がいた場合はウチ(歯医者)に連れてくる、というものだった。

 

 

 

「ありがとね〜代理人ちゃん〜。」

 

「・・・・・。」

 

end

 

 

番外5-3:私と彼女とケーキと

 

「う〜〜〜〜ん、疲れたぁ。」

 

「ご苦労様だサクヤさん。 コーヒーを持ってきたぞ。」

 

「あ、ありがとうゲーガーちゃん。」

 

 

ここは鉄血工造の研究室。

新たな人形の量産を中止している鉄血の研究員が何をするかというと、個人単位での細かな調整や新兵装の開発、そしてメンタルケアだ。

さて鉄血の開発部といえば、あのアーキテクトをトップに据えた変態の巣窟として有名である。そしてそのモルモットにされるのはいつもゲーガーである。

そんな心身ともに限界を迎えつつあったゲーガーを担当しているのが、新たに加わったサクヤだった。

 

 

「調整したあとはどう? 何か違和感とか。」

 

「いや、何も。 むしろ体が羽根のように軽くなったよ。」

 

「そっか・・・それ以外では?」

 

「・・・まぁまだ胃薬は手放せないかな。 といっても、服用量は減っているが。」

 

「ふむふむ、じゃあもう少し様子見で。 何かあったらすぐに言ってね。」

 

「あぁ、ありがとう。」

 

 

サクヤにコーヒーを届けたゲーガーは部屋を出ようとする・・・直前で、机の上に置いていた箱に気がつく。

 

 

「あっ、忘れるところだった。 サクヤさん、あなたに届けものだ。」

 

「・・・私?」

 

「あぁ、アルケミストからだが。」

 

「えっ! アルケミストから!?」

 

 

猛ダッシュで箱に向かい、中を開けるサクヤ。

が、開ききったところでその動きを止めた。

 

 

「どうした?・・・ん? メッセージカード?」

 

 

開いたときに落ちたであろうそれを拾い、目を通すゲーガー。

 

『サクヤへ

 

鉄血には慣れただろうか。アーキテクトが迷惑をかけていないか?ゲーガーの世話ばかりしていないか?

世界や環境は違えど、「お前」は「私」を育ててくれていた。そのことには感謝している。何か不自由があるなら、遠慮なく言ってくれ。

それと、あの後お前を見つけた場所を再度探したが、他には何もなかった。力になれなくてすまない。

これを送ったのは、いわば日頃の感謝の気持ちだ。受け取ってほしい。

次にそっちに寄った時は、またあっちの私の話をしてくれ。

 

アルケミスト』

 

 

「・・・律儀なやつだ。 そうは思わないか、さくやさんってうおっ!?」

 

 

読み終えたゲーガーが振り向くと、サクヤは箱の中身を凝視したまま大粒の涙をこぼしていた。

ギョッとしたゲーガーだが、サクヤの表情が柔らかなものであることに気づき、それ以上何も言わなかった。

 

彼女たちの視線の先には、少し小ぶりの、いちごのショートケーキが並んでいた。

 

end

 

 

番外5-4:夜戦(意味深)用オプションパーツ

 

人形というのはほぼ全てが女性である。で、彼女たちが配属される司令部は、一部の人間を除き全て人形・・・つまり、圧倒的男女比が生まれる。

その結果どうなるかというと、ソコソコの確率でデキてしまうのである。人形のカップルが。

その程度は様々だが、行くとこまで行けばそういうことにもなる。

で、そんな連中は日々新しい刺激を求めるのだ。

 

そんな状況を打破すべく、16labの天才があるものを作り上げた。普段の彼女なら絶っっっ対に作りそうにもないものだが、これには訳がある。

・・・彼女もこの問題の当事者だからだ。

 

 

「・・・で、できたのがこれ。 人形用特別夜戦装備『16lab-99X M'sシンボル』よ。」

 

「・・・ほぉ。」

 

「・・・け、結構大きいね。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 

完全密室、防音防弾のまるでシェルターのような特別会費室に集まった四人。

ペルシカ、UMP9、ハンター、SOPMODである。

 

 

「ていうか大丈夫かSOPMOD、顔が真っ赤だぞ。」

 

「だ、だって・・・それってアレでしょ?」

 

「・・・ペルシカ、なんでSOPを連れてきたの?」

 

「この装備は()()()よ、私が使えない以上仕方ないでしょ。 ・・・それに可愛いし

 

「私としては9よりも416がくると思ってたんだがな。」

 

「い、いっつも私がいいようにヤられるから、これで仕返ししてやるの!」

 

((無理っぽいなぁ・・・))

 

 

さて一通り雑談やツッコミが済んだところで、いよいよ本題である。

 

 

「じゃあ説明するよ。 これはその名の通り特別夜戦・・・まぁつまり()()()()()()のためにのものよ。 当然戦闘では無用の長物ね。 で、使用方法は簡単。 これの片側、断面になっている部分を指定の場所に取り付ければいいだけ。 あとは勝手に同期されて、本物同様の感覚を得られるわ。 つまりふたn

 

「おっとそこまでだ。 ・・・で、外す時は?」

 

「基本的には回路を切断するように指示を送れば勝手に外れるわ。 一応外れなかった時の場合でも外せるように手は打ってあるけど。」

 

「それって?」

 

「・・・・・許容限界以上の快楽を送るだけよ。」

 

「「「え”っ・・・」」」

 

「あ、あくまで外れなかった場合よ!? もちろん私の設計に不備はないけど、念には念をってやつよ!」

 

 

それだけ言うと手元の袋から箱を三つ取り出し、それぞれに配る。

 

 

「詳しいことは説明書を読みなさい。 ・・・それと、ムードを大切にね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

後日感想を求めた際、彼女らは揃って

 

「凄かった・・・。」

 

と言ったらしい。

 

end




この作品はどこに向かっているんだろうか・・・


ドルフロ二次も続々と増えてきてますね、読みたい作品が山のようにあるのに時間が足りない。


さてさて解説を

5-1
第十九話の後日談。
経緯は、45がやけ酒→F小隊が合流→F45、45姉のお世話→潰れた45姉をF45が自室に運ぶ→シワが寄るといけないので服を脱がせる→寝ぼけた45姉がF45にチュー→微量ながら酒が入り、「暑い〜」と言いながら服を脱ぐF45→そのまま両者とも寝落ち→朝チュン

・・・この誤解がどこまで行くのかは不明。

5-2
第二十話の前日譚。
・・・というくらいしか解説のしようもない話。人形の患者はこの歯医者しかないが、人間相手なら他にもいくつかあり、経営を楽にしたいという歯医者の思惑にまんまと乗ってしまった代理人。
脅迫?・・・いいえ、お願いです。

5-3
第二十二話の後日談。
彼女とアルケミストの関係はここから始まったと言っても過言ではない重要なアイテム・・・と思っている。
アーキテクト的にはゲーガーとサクヤにくっついてもらいたいらしい。

5-4
マンネリ・・・というよりも新しい刺激が欲しくなったペルシカの思いつき。
そんな描写を書くつもりなんてないのに設定だけが増えていく・・・深夜テンションってスゲー。


以上でーす!

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