喫茶鉄血   作:いろいろ

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代理人、最大のピンチ!?

・・・って書いても緊張感がないのがこの作品の特徴です。
まぁ平和なだけじゃないんだよということで。


第二十三話:緊急事態

三月初頭、開店前の喫茶 鉄血に忍び寄る一人の影。

その人物はフードのついたパーカーを羽織り、マスクとサングラスで顔を隠したいかにも不審者といった出で立ちだった。しかし本通りから外れていてかつ早朝であったため、誰にも不審がられずに目的地までたどり着く。

『close』の掛け札がかかったドアを開き、中に入ると同時にターゲットに近寄る。

 

 

「? 申し訳ございませんが、まだ開店前でs

 

 

ターゲット・・・代理人がそう言い終わる前にその人物はポケットからなにかを取り出し、代理人に向ける。

それは奇妙な形をしていたが、間違いなく銃であった。

 

 

「っ!?」

 

 

咄嗟に応戦しようとする代理人だが一歩遅く、その銃から放たれた光を受け、気を失う。

その人物は満足げに口元を歪ませると、他の店員が来る前に店を後にした。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

通勤・通学時間。

しかしその日はなぜか騒がしく、路地の奥に何人もの警官や人形が集まっていく。彼らの向かう先には一軒の喫茶店があり、そのマスターが倒れたというのだ。

この事件の捜査に加わっていたAR小隊の隊長であるM4は、妙な胸騒ぎを覚えながら喫茶 鉄血に入る。

 

 

「失礼します、AR小隊のM4A1です。 被害者の方は?」

 

「◯◯警視です。 じつは・・・その・・・」

 

「!? まさか、代理人さんが・・・!?」

 

「い、いえ! 命に別状はないそうですがってちょっと!?」

 

 

警察の不審な反応に焦るM4は、生死の声も聞かずに店の奥へと走る。慌てて追いかける警視とAR小隊。そこにいたのは・・・

 

 

「っ!? こ、これは・・・」

 

「おいおい・・・なんの冗談だこれは?」

 

「嘘でしょ・・・?」

 

「うわぁ・・・」

 

「そんな・・・こんなことって・・・」

 

「・・・・・。」

 

 

 

 

「・・・お姉ちゃんたち、だぁれ?」

 

 

小学生、あるいは幼稚園児くらいまで小さくなった代理人であった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「・・・つまり、なにかが倒れる音を聞いて、見にきたときにはこうなっていたと。」

 

「はい、私たちでも一瞬誰だかわからなくて。」

 

「犯人の姿は?」

 

「イェーガーは厨房にいて、私は二階の掃除をしていた。 誰も見ていない。」

 

「・・・えっと、代理人・・・ちゃん?」

 

「? なぁに・・・えっと・・・」

 

「ROよ。」

 

「なぁにRO()()()()()?」

 

 

ずきゅーーz_____ん!!!!!

かつてない衝撃がROを襲い、一瞬意識が飛びかける。

ハッと我に帰ったROは代理人を抱え上げて、膝の上に乗せる。

 

 

「ふぇ?」

 

「可〜愛い〜〜〜〜!!! よ〜しよし、お菓子食べる〜?」

 

「「「「・・・・・。」」」」

 

「・・・・・はっ!?」

 

 

代理人を下ろして咳払いをし、何事もなかったかのように振る舞うRO・・・なのだが、その顔色は加速度的に赤くなっていく。

 

 

「・・・とりあえずその子から離れなさいロリコン。」

 

「AR-15!?」

 

「いくら出会いがないからって節操なさすぎるぞ。」

 

「あなたに言われたくないわよM16!!」

 

「その・・・誰が好きかは人の自由だと思うから・・・私は気にしないよ。」

 

「今はその優しさが痛いわよM4。」

 

「・・・・・。(ポンッ)」

 

「なにか言ってよSOP!?」

 

 

やいのやいのと騒ぐ隊員の中で、M4は冷静に状況を見ようとしていた。まず店内に争ったような形跡がないこと、スキンでもなんでもなく本当に縮んでしまったということ、そんな怪技術を生み出すことができる相手は限られること。

 

 

(アーキテクト・・・いや、ない。 彼女は悪ふざけはするけど代理人に迷惑はかけないはず。

16lab・・・も同じ。 例え実験に付き合ってもらうとしても、許可や立会人はいるはず。

となると・・・。)

 

「・・・もしもし、私です。 行ってもらいたい場所があるのですがよろしいですか。 理由は・・・」

 

 

用件だけを伝え、電話を切るM4。

ふと隊員たちの方を見ると、なんとも不毛な会話が繰り広げられている。

 

 

「可愛い子供を可愛いって言ってなにが悪いんですか!」

 

「ついに開き直ったか!」

 

「時々ホストクラブの前で止まってる人に言われたくはありません!」

 

「おまっ、なんでそれを!?」

 

「ちょっと落ち着きなさいよ二人とも。」

 

「「うるさいリア充!」」

 

「・・・グスッ」

 

「SOPお姉ちゃん、ホストクラブってなn

 

「あーそうだ代理人・・・ちゃん、あっちでケーキ食べよ!」

 

 

もう捜査そっちのけで騒ぎ立てる二人にイラッとしつつも、今の状況をなんとかしなければと再び考えを巡らせる。

一応手は打っているが解決するまでにまだ時間がかかるはずで、その間代理人の安全を守らねばならない。店員である鉄血二名は残念ながら戦力としてはあまり当てにならない。

これが一般人であれば司令部で保護するのだが、こんな姿になっても代理人は鉄血である。未だにデリケートな問題でもある鉄血人形を常駐させることは難しいのだ。どうにかして自分たちの手の届く範囲に居させたいが・・・。

 

そこまで考え、ふと一つの策が浮かぶ。これなら代理人を動かすこともなく、何かあっても自分たちがすぐに対処できるはずだ。

思い立ったと同時に、M4は司令部に連絡した。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

その翌日の喫茶 鉄血。

正午にさしかかろうかという店内は、平日とは思えない盛況っぷりであった。

 

 

「12番さんオーダーです!」

 

「私がいくわM4。・・・お待たせいたしました。 ご注文は?」

 

「・・・はい、ちょうどお預かりします。 ありがとうございました!」

 

「SOP、6番のテーブルを片付けてくれ。」

 

「了解〜、すぐ行くよ!」

 

 

 

「あれ、この前と同じM4か?」

 

「まるで別人だな・・・ていうか、」

 

「「私ら要らなくね?」」

 

 

そう、この繁盛の原因は、期間限定ではあるが住み込みで店員になったAR小隊のおかげだった。

あの後M4は指揮官の許可を貰い、『長期護衛任務』としてここで働きながら様子を見ることにしたのだった。幸い以前働いていたお陰で仕事はわかるし、隊員には昨日のうちに徹底的に叩き込んでいた。

人形というのはどれも美人であり、さらには人気の高いAR小隊が接客してくれる。そんな情報が流れたものの三十分後にはこんな状況である。

 

 

『こちらM4、怪しい動きは?』

 

『SOP、特に見当たらないよ。』

 

『同じく・・・だけど、代理人がいないから反応がないだけかも。』

 

『じゃあ代理人を出すか? それはちょっと賛成しかねるな。』

 

『接客はさせなくていいと思います。 チラッと、ここにいることを示せばいいのでは?』

 

『それでいきましょう。 全員気を引き締めてください。』

「代理人ちゃん、ちょっといい?」

 

「? なぁに?」

 

 

店の奥からひょっこり現れたチビ代理人に、店内は一瞬どよめく。そこにAR小隊の面々がフォローに入り、ひとまず落ち着かせる。

チビ代理人と他愛もない会話を続ける傍、M4はエリート人形としての機能をフル活用して周囲を監視する。

 

 

(・・・異常なし・・・ん? あれは・・・。)

 

 

ふと視界の端にあるものを見つけたM4。

短く通信を入れた後、足元を走るダイナーゲートを避けながらチビ代理人とともに店の奥に消えた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

陽も沈みかける頃。最後の客を見送り、店の掛け札を『close』にすると同時に行動を開始するAR小隊。手早く店の片付けを終えると昼間こっそり回収した()()()()をテーブルに置き、M4を残して他は店の奥へ移動する。

 

その数分後、一人の人物が入ってくる。

 

 

「すいません・・・ここに忘れ物はありませんでしたか?」

 

 

入ってきたのはサラリーマン風の男。どこにでもいそうなその男は店内を見渡し、テーブルの上に置いてあるソレを見つけると心底ホッとしたような顔で近寄る。

同時に、M4は隠し持っていた拳銃を突きつけた。

 

 

「両手をあげてください、()()さん。」

 

「な、なんのことだ!? 僕はただ忘れ物を」

 

「そんなどこにでもある()()()()()()()が、よく自分のだってすぐわかるな。」

 

「め、メモリーカードの忘れ物なんてそうあるものじゃない。 だからこれは」

 

「そうね。 でも違う人のものかもしれないわ、だから・・・」

 

()()で確認させてもらいます。」

 

 

そう言ってROが出したのはハンディサイズのビデオカメラ。そこにテーブルのメモリーカードを差し込み、再生する。

流れたのは、チビ代理人が店に現れてから奥に戻るまでの映像だった。

 

 

「・・・盗撮ですか?」

 

「そ、それは済まないと思っている。 あの代理人のあんな姿は随分とレアだから、咄嗟にカメラに収めようとしたんだよ。」

 

「へぇ〜、()()()ねぇ。」

 

「気持ちは分からないですが、ではなぜ()()()()()()()()()()撮っていたんですか?」

 

「っ!?」

 

「加えて、この映像はカメラが一切動いていない。 代理人がそこにいて、あんな状態ってことを知ってなきゃ無理だな。」

 

「そしてあの時、あなたのテーブルには小さな包みが置いてありましたね? わざわざそれにカメラを仕込むなんて、随分と手が込んでいますね。」

 

「・・・何か言い訳、あるかな?」

 

「・・・くっ!」

 

 

不利を悟った男は出口に向かって走る。

が、扉を開く直前で逃走は失敗する。入り口のドアが勢いよく開き、男の顔面を強打した。

 

 

「お? なんか当てちまったぞ。」

 

「問題ありませんよアルケミストさん。 それより、頼んでいたものは?」

 

「あぁ、コレだよ。」

 

「なっ!? それは!!」

 

 

アルケミストが放り投げたのは、なんとも近未来的なデザインの銃だった。グリップの上部には小さなダイヤルがあり、『R』と『N』の目盛りがついている。

 

 

「見覚えがあるようだな。 言っとくが下手な嘘は通じないぞ、私の家族が本気で調べてくれたからな。」

 

 

男はなおも逃げようとするが、玄関をアルケミストが、後ろをAR小隊が塞いでおり、さらにはパトカーのサイレンまでもが響いてくる。

脱出不可能を悟った男は、とうとう抵抗を諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

『・・・さぁ今週話題となったニュースを見てみましょう。 今日はこれ、人権団体の運営する研究所が閉鎖。 違法な研究や他社へのスパイなどなどが明るみに出た結果、研究所が閉鎖と。』

 

『週の初めに起きた鉄血人形への傷害行為が発端ですが、いやはやこれほど悪事が湧いて出るところは初めてですよ!』

 

 

「・・・ま、当然の結果だな。」

 

「全くです。 我々の試作品を盗むだけに飽き足らず悪用するなど。」

 

「でも、無事戻れて良かったですね代理人さん・・・あれ?」

 

「あー、代理人ならまだ二階で引きこもってるよ。」

 

 

その後、男は人権団体の過激派に所属していることや、それらが運営する研究所の悪事の数々が暴かれ、事件は収束した。あの奇妙な銃だが、あれはもともと17labがロリスキンと並行して進めていた『全人形ロリッ娘計画』で生み出されたもので、数日前に紛失していたものらしい。

なお、代理人はちゃんと元に戻ったがロリ化していた時の記憶はそのままらしく、戻ると同時にかつてないほど赤くなった顔で部屋に閉じこもってしまった。・・・以来まだ一度も出てきていない。

 

お見舞い?に訪れたアルケミスト、17lab所長、M4、ペルシカだが、そんな感じで会うに会えないといったところだ。

 

 

「・・・まぁ、たまにはゆっくり休んだらいいんじゃないか。 代理人は黙ってたら死ぬまで働くワークホリックだからな。」

 

「それもそうね。」

 

「ふむ、ではまた後日伺いましょうか。」

 

 

そう言ってM4以外の三人は帰り、残ったM4はしばらく悩んだ後、レジにいたイェーガーに一声かけて代理人の私室に向かった。

 

 

コンコン

「・・・代理人さん、M4です。 入ってもいいですか?」

 

「・・・・・(ガチャッ)」

 

 

代理人はM4を招き入れると、ベッドに腰掛けて俯く。

 

 

「・・・今回は、本当に助かりましたM4。 すみませんね、私が不甲斐ないばかりに。」

 

「い、いえ。 困っている人を助けるのが私たちの存在意義ですから。 それに、以前お世話になった恩返しでもあります。」

 

「ふふっ、本当にいい子ですね。」

 

「・・・まだ、気に病んでいるんですか?」

 

 

M4が問うと、代理人は苦笑しながら答える。

 

 

「そう、ですね。 鉄血を捨てたはずなのに、どこでもそれは付いて回る。 それで皆に迷惑をかけるなら、私がいる意味はあるんでしょうか、とね。」

 

「・・・・・。」

 

 

M4はその代理人の表情を、一生忘れないだろう。代理人はずっと悩んでいたのだ。人間やグリフィンの人形に混ざって生活していても良いのか、本当は迷惑になっているんじゃないのか。

それは、まるであの頃の自分を見ているようだった。

 

 

「代理人さん・・・いえ、()()()()。」

 

「えっ・・・」

 

「らしくありません。 いつものあなたはどんなことでも自信を持って決断して、私たちを助けてくれました。 私はあなたに会ったから、今こうしていられるんです。 例え私以外の皆があなたのことを拒絶しても、私はあなたを受け入れます。」

 

「M4・・・」

 

「・・・だから、一人で背負わないでください。 ・・・お母さん。」

 

 

そう言うと涙をこぼしながら抱きつくM4。受け止めた代理人もしばし呆然とした後、ぎゅっと抱きしめて静かに泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、『M4お姉ちゃん』。」

 

 

end




ちょっとだけシリアスにしてみた・・・えっ、なってないって?きっと気のせいだ。

歯医者に続き代理人が被害に遭うシリーズ。鉄面皮な代理人が泣いたり笑ったり慌てたりするのがとっても楽しいので書いてます笑


ではキャラ紹介

人権団体(の過激派)
今回の主犯。人権団体そのものは割と普通なのだが、人形の社会進出に合わせて出てきたのが過激派。人形に社会が乗っ取られるだのなんだのと言いふらしては人形を排除したがる。特に一度人間に対して排他的行動をとった鉄血にはかなり厳しい。本人らは自分たちが正しく、評価されてしかるべきと考えているため手に負えない。
幹部たちはアルケミストの粛清を受けました。

17lab
ある意味今回の元凶。
なんと光線を浴びせるだけで人形をロリ化できるアイテムを完成させたツワモノたち。本来は希望する指揮官の元に送られ、使用後は返却されるという予定だった。作ったきっかけは、『いちいちスキンを作るより安上がり』だから。

M4とアルケミスト
M4が代理人を『お母さん』と呼び、代理人に家族認定された後で交流が始まった。代理人が家族と認める=自分にとっても家族ということで、M4を他の鉄血同様に接する。その甲斐あって今回の事件ではアルケミストの協力を得られたのである。
M4曰く「面倒見のいいお姉ちゃん」
アルケミスト曰く「しっかり者の妹」



というわけで、M4は恋愛ではなく家族愛でした。
描くたびになんだか本当に親子でもいいんじゃないかとか思ってしまうほど買いやすい組み合わせです。

ではまた次回、お楽しみに!
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