喫茶鉄血   作:いろいろ

35 / 279
そろそろ風呂回とか海回とか描きたいなぁ。


第二十六話:ダイナーゲートのとある一日

S09地区にある喫茶 鉄血。

今まであまり気にされてこなかったが、一応ここにはペットのようなものがいる。鉄血の下級人形、ダイナーゲートだ。

普段は店の中をちょろちょろ動き回りながらゴミを拾ったり、監視カメラのような役割を担っている。そんなダイナーゲートは客から一定の評価を得てたり、特に子供や老人から可愛がられることが多い。

 

しかし、その栄光は突然に終わりを迎える。

 

 

 

 

 

 

それはある日のこと。

いつも通り店の中で歩き回っていると、やけに入口の方が騒がしい。内容から危険性は薄いと判断できるが、念のため確認に向かうダイナーゲート。

 

そこにいたのは、一匹の茶色いネコであった。誰かの入店に紛れて入ってきたであろうそれは入口付近でちょこんと座り、時折ニャ〜オと鳴いている。

そんなネコが可愛いからか、周りにはケータイやカメラを構えた人だかりができている。

 

 

(・・・・・。)

 

 

()()()()()()()()()()()()()()と感じたダイナーゲート。というか飲食店にいてもらっては困るだろうと思い、退出を促すように近寄る。が、ネコはここは退かないぞと言うかのように体を丸め、スヤスヤと眠り始めた。

 

 

(・・・イラッ)

 

 

軽く体当たりしてみるが、それでも出て行く気配はない。それどころか集まった客の足元にすり寄り、甘えるような声まで出し始める。

しかも逆にダイナーゲートが客に抱えられ、輪の外に出されてしまった。その一瞬、ネコと目が合う。

 

 

(・・・・・フッ)

 

(・・・!?)

 

 

コイツ鼻で笑いやがった。

もちろん人間にはわからないだろうが、この店のマスコットとして長年(?)やってきたダイナーゲートには分かる。

・・・可愛いのは外見だけだと。

 

そんな腹黒ネコは視界の隅にあるものを見つけると、人の輪をするりと抜けて一直線に目指す。

 

 

「・・・っ!? な、何ですか!?」

 

 

その人物・・・代理人の足元に潜り込むと、その足にくっつくように擦り寄る。

これに驚いたのは代理人だ。突然何かが足に当たってきた上に、彼女の服装では足元がほとんど見えない。片手にトレーを持っている以上確認することもできず、珍しくあたふたしながらその場をクルクルと回る。サブアームで探ろうにも、ネコの方も器用に避けるので一向に捕まらない。

 

この事態にダイナーゲートが黙っているはずもなく、一度店の奥に消えたかと思うと、背中のアタッチメントにクローアームをつけて帰ってきた。

ネコに悟られないようにジリジリと距離を詰め、チャンスを待つ。

ちなみにそこそこの勢いで回っているせいで代理人のスカートが若干浮き、そこから見えるふくらはぎや太ももに鼻の下を伸ばす男どもがいるが無視する。

 

待つこと数分、ついにチャンスは訪れ、ダイナーゲートはアームを伸ばす。アームがネコを捉え、引き剥がそうとしたその時、ネコが代理人の足に()()()()()

しかも、

 

 

「ひゃあ!?」

 

「・・・あっ。」

 

(っ!?!?!?)

 

 

喋った。その顔もまるで人間のように「やっちまった」みたいな顔である。

 

コイツ、ネコじゃない!

 

そう判断したダイナーゲートは排除しようとするが、器用にアームから抜け出したネコ(仮)は、なぜか開いている窓の方に向かう。

その窓から飛び出す直前、

 

ボンッ

 

突然爆発?が起き、辺り一面に煙が捲き上る。煙が晴れると、そこにいたのは窓のサッシに引っかかっている()()()()だった。

 

 

「あちゃ〜、慌てすぎて()()人間に化けちゃった。」

 

「・・・ペルシカさん?」

 

 

それはダイナーゲートもよく知る人物、IoP16labのペルシカだった。が、その耳はいつもの髪型よりも猫耳っぽく、白衣の裾からは尻尾のようなものが見える。

 

 

「ペルシカさん・・・それは・・・?」

 

「・・・バレちゃったら仕方ないね。」

 

 

ペルシカはニヤリと笑うと再びネコの姿になり、

 

 

「残念だけど、見られたからには生かして返せないね。 この店は好きだったよ、代理人!」

 

その姿をネコからトラに変えて代理人に襲いかかる。その牙が届く直前、何者かが横合いから体当たりをかます。

ダイナーゲートだ。

 

 

「ま〜た君か・・・本当に邪魔ばかりしてくれるね!」

 

 

ペルシカはダイナーゲートに狙いを変え、前足で吹き飛ばす。テーブルや壁にあたりながら吹き飛ばされたダイナーゲートはノイズが走る視界の中で避難する代理人たちを見つめる。

 

 

(・・・・・。)

 

 

ダイナーゲートは何も言わない。

しかし、どこか満足そうな雰囲気を持ちながら、意識を途切れさせた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

(・・・っ!?)

ガバッと起き上がるダイナーゲート。どうやら窓から差し込む陽気に当てられて眠ってしまったらしい。

急いで店内を見渡し、異常がないことを確認すると心底ホッとしたような動作を取る。

・・・が、視界の隅に()()()()を捉えると、その空気も一変する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんかめっちゃ警戒されてるんだけど。」

 

「また何かしたのか? お前まで変態どもの仲間だとは思いたくないぞ。」

 

「またって何よまたって・・・っていうか本当に身に覚えがないんだけど。」

 

「・・・案外、お前のことを人間に化けたネコだと思われてるかもしれんぞ? その耳っぽい髪型のせいで。」

 

「んなアホな・・・。」

 

(・・・・・・。)

 

 

 

end




夢オチ回。
7割ほどは実際に見た夢の通り。
・・・俺、疲れてるのかな・・・。


というわけでキャラ紹介

ダイナーゲート
実は最初期からいるがほとんど目立ってない人形。今回はコイツが見た夢という話で、それ以外特にない。
背部のアタッチメントを換装することであらゆる状況に対応できる。
一定のファン層がいる。

代理人
普段は落ち着いてるけど夢の中では関係ない。
ここまで慌てることなんてないけど夢の中では関係ない。
・・・実際はサブアームにもセンサーがあるのでこんなことにはならない。

ペルシカ(ネコ)
あのネコっぽい耳が本物だったら・・・とか考えながら寝た結果、こんなカオスな夢を見た。
なんか妖怪っぽくなったけど夢だから問題ない。
九つの魂になぞらえて九つの姿に化けることができる、という設定を付け加えたけど特に使う予定もない。
フリー素材(需要なさそうだけど)


以上!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。