喫茶鉄血   作:いろいろ

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今回はちょっと時間かかったな・・・。


さて今回は
・二人の休日
・需要と供給
・過去と未来と
・科学の敗北

の四本立てです。


番外編6

番外6-1:二人の休日

 

 

「お母さん、次はどこに行きますか?」

 

「そうですね・・・店の模様替えもしてみたいので、雑貨屋さんに行きましょう。」

 

 

特に何でもない平日、S09地区の大通りを並んで歩いているのは二人の人形。

喫茶 鉄血のマスターである代理人とAR小隊の隊長のM4A1だ。

この日は喫茶 鉄血はお休みで、代理人含め店員たちは在庫の補充や掃除などをこの日に済ませるのである。一方M4も本日は非番であり、前々から代理人と出かけたかったというのもあって今に至る。

ちなみにM4はオフの日に限り、『お母さん』呼びである。

 

 

「あ、これとか可愛いと思いますけど。」

 

「ですがこれだけだと少々不自然ですね・・・こちらの造花と合わせましょうか。」

 

「ならこの花がいいですね。 色合いも綺麗です。」

 

「ではこれとこれと・・・次はあっちを見てみましょう。」

 

 

そんなこんなで買い物を終えて一度店に戻る。どうやら他の人形も帰ってきており、店の奥で楽しそうに話している。

 

 

「ふ〜、結構買ってしまいましたね。」

 

「予算の範囲内ですけどね。 さて、お茶でも入れて休憩にしましょう。」

 

「はい!」

 

 

代理人とM4は並んでキッチンに入る。M4は慣れた手つきで彼女専用のエプロンを着て、カップを用意し、皿を並べる。

 

 

「あ、冷蔵庫の上のほうに試作のケーキがあったはずですので、それも出しましょう。」

 

「は〜い。」

 

「ふふっ、楽しそうですねM4?」

 

「お母さんもですよ。」

 

 

まるで本物の母娘のように笑い合いながら準備を進める。お茶の香りに釣られて奥からリッパーとイェーガーがひょっこり顔を出し、足元からダイナーゲートが走り寄る。

 

その日はM4にとって忘れられない日となった。

 

 

end

 

 

 

番外6-2:需要と供給

 

 

「マスターのコーヒーは美味しいですね、おっぱい揉んでいいですか?」

 

「つまみ出しますよ?」

 

「撃ち抜いてくださって構いませんよ代理人さん?」

 

「嘘です冗談ですごめんなさい」

 

 

微妙に忘れられているがグリフィンは民間企業である。よって会社が定める休日というのもあり、今日がその日なのだ。

でなければ本部勤務のこの指揮官(変態)がここにいるはずがないのだから。

 

 

「あ〜〜休日くらいおっぱいに包まれて過ごしたいなぁ。」

 

「・・・心中お察しします。」

 

「・・・いつものことですから。」

 

 

指揮官のぼやきに頭を抱えるG36に、代理人は労いの言葉をかけながらコーヒーを差し出す。

いよいよもって殴りたくなる衝動に駆られてきたG36だが、その機会はついに訪れなかった。

 

勢いよく店の扉が開き、一人分のシルエットが浮かび上がる。

特徴的なサイドテール、フード付きパーカーとスカート、指ぬきグローブ。常連の彼女だ。

が、代理人含めこの店にいる者全てが目を疑った。トコトコと歩いてくるUMP45はその灰色のサイドテールを揺らす。

・・・いや、揺れているのはそこだけではない。本来の彼女なら到底揺れるはずのない部分も揺れているのは。

 

 

「・・・よ、45、さん? ですか?」

 

「えぇそうよ代理人。」

 

「あの・・・失礼ですが、それは?」

 

「ふふふ、よくぞ聞いてくれたわね。」

 

 

待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑い、腕を組んで胸を張る。

タユンッという擬音が聞こえてきた気がした。

 

 

「これが私の新しい姿よ! もう誰にも壁とかまな板とか射撃場の的(紙)とは言わせないわ!!!」

 

 

そう言い放つ45の胸には、確かに大きな二つの実りが付いていた。サイズは同隊の416より少し小さいが、416に比べて背の小さな彼女がそんなものをぶら下げていればどうなるか。

現に店内の男は鼻の下を伸ばしきっている。

 

 

「・・・ペルシカさんですか?」

 

「えぇ。 相談してみるものね、以前作ったきり使わなかった素体があったから私ように調整してもらったわ!」

 

 

ふんすっとドヤ顔の45。かつての暗部部隊隊長が、堕ちるとこまで堕ちたものである。

 

 

「・・・・・なぁ45。」

 

「ん? あら、あなたは本部のとこの指揮官じゃない。 何か?」

 

「いいおっぱいだな、揉ませてくれ。」

 

 

( °д°)

店内のほとんどの人物がこんな表情を浮かべたことだろう。この指揮官、でかけりゃ誰でもいいのか。

これには流石に45でも、と彼女の方を見れば

 

 

「ああ、これが持つ者の宿命なのね! いいわ、揉みなさい!」

 

 

いい笑顔でOKを出してしまった。代理人ですら見誤ったこの行動は、長年持たざる者だった彼女の願望と嫉妬と妄想が色々とこじれた結果である。

 

 

「やったぁぁぁぁ!!!」(ムギュッ)

 

「ひゃあん!?」

 

 

全力で揉みにいく指揮官と、初めての感覚に戸惑いつつ恍惚の表情を浮かべる45。

これはしばらく帰ってこないだろうなと思っていた周りの人間だが、直後に聞こえてきた特徴的な駆動音に一気に現実に戻される。

代理人が笑顔を貼り付けたまま、武装を展開していた。

 

 

「・・・お二人とも。」

 

「「ひゃい!?」」

 

「少しお話がございます、来ていただけますね?」

 

「えっと、俺この後ここの指揮官に挨拶「来・て・い・た・だ・け・ま・す・ね?」・・・はい。」

 

 

久しぶりにブチ切れた代理人に連れられて奥へと消えるバカ二人。

二人が解放されたのは、閉店間際になってからだった。

 

 

end

 

 

 

番外6-3:過去と未来と

 

 

S06地区の空港。

正面玄関を出てロータリーを見渡し、チラリと腕時計を確認する。時刻は10:30、約束の時間には少し早い。

 

 

「ん〜まだ来てないね。」

 

「仕方ありませんよ、サクヤさん。」

 

 

そう言うと代理人とサクヤは近くのベンチに座る。今日この二人がここに来たのには理由がある。と言っても彼女たちの用事ではないが。

 

 

「あら、早いわね二人とも。」

 

 

ぼんやりしているうちに時間が経ったのか、顔を上げれば水色の髪を揺らした彼女がいた。S06地区のHK416である。

 

 

「いえ、先程着いたところです。」

 

「結婚式以来だね、元気にしてた?」

 

「ええ、おかげさまで。」

 

 

S06地区の、と言ってはいるが彼女はグリフィンの所属ではなく、さらには()()人形でもない。服装は青を基調とした私服で、その左手の薬指には銀色の指輪が光っている。

 

 

「さて、さっそくだけど行きましょうか。 彼も会うのを楽しみにしてるわ。」

 

 

416に促されて用意された車に乗り込む。

行き先は、この地区の司令部だ。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

司令部についた三人は車を返し(どうやらここの指揮官の私物らしい)中へと進む。すでに話は通っているようで、三人を見ても誰も気にしなかった。

 

 

「この部屋ね・・・()()()、来てくれたわよ。」

 

 

そう言ってドアを開ける416。中にいたのは、車椅子に座った男性だ。

 

 

「お久しぶりです◯◯さん。」

 

「お元気そうで何よりですね。」

 

「今日は来ていただいきありがとうございます代理人さん、サクヤさん。」

 

 

簡単な挨拶を交わして談笑する四人。

結婚後のこと、新婚旅行のこと、それをクルーガーが自費で出してくれたこと、二人でお店を開いたことなどなど、本当に楽しそうに話していた。

さっき部屋に入るときに『指揮官』ではなく『あなた』呼びになっていたことを指摘すると416は顔を真っ赤にし、しかし開き直ったのか惚気話を始めたりもした。

 

 

ピンポンパンポーン

『◯◯様、HK416様、代理人様、サクヤ様・・・ヘリのご用意ができましたので、ヘリポートにお集まりください。』

 

「お、呼ばれたな。」

 

「では行きましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

S06地区から少し離れた岬。

そのすぐそばに降り立つと、416と彼はそれぞれ花束を持って岬の方に進んでいった。

 

 

「ねぇ代理人ちゃん、あそこって・・・」

 

「えぇ、彼の司令部が現れた場所ですね。 もう解体も済んでいますが。」

 

 

岬から海とは反対の方を見れば、何もない草原の一角に何か建造物があったかのような跡がある。

数ヶ月前に突然現れ、彼らが保護された司令部があった場所だ。内部調査や人形の回収が終わった後、ここにある資料が悪用されることを懸念して司令部は解体されたのだった。

 

 

「鉄血の人形はどうなりましたか?」

 

「うちで回収して、ちゃんと供養してあげたよ。 お墓も建てたし。」

 

 

一方の元指揮官と416は岬に建てられた小さな墓の前に来ていた。

そこに刻まれているのは、かつて指揮官の元で戦った仲間たちの名前。あの時外で倒れた者もいたため全員分を回収することはできなかったが、彼は部下を一人たりとも忘れることはなかった。

もしかしたら生きている者もいるかもしれない、突然自分たちが消えて悲しんでいるかもしれない。しかし帰る手段がない以上、自分たちはここで生きていくことになるのだ。

これはその別れのため、明日へと踏み出すために必要なことだった。

 

 

「・・・皆、すまなかった。」

 

「一番最初にそれ?」

 

「いや、しかしな・・・」

 

「悔いても還っては来ないわ。 なら、私たちができるのは報告だけよ。」

 

「・・・それもそうだな・・・皆聞いてくれ、僕たちは結婚したんだ。 誓約じゃなくて、籍も入れている。」

 

「祝ってくれ、とは言わないわ。 私はみんなのことは忘れない。 だから、彼を見守っていて。」

 

「・・・もう行かなきゃ。 じゃあ皆、また。」

 

「さようなら・・・楽しかったわ。」

 

 

花束を置き、ヘリへと戻る二人。

 

 

ーじゃあね指揮官、416 お幸せにー

 

ーあんまり416を困らせないでよね、指揮官ー

 

ー二人とも、元気でねー

 

ーおめでとう指揮官、416!ー

 

 

風に吹かれて花びらが舞う。

それはまるで、二人を祝福しているかのようだった。

 

 

end

 

 

番外6-4:科学の敗北

 

 

「・・・と言うことがありまして。」

 

「いやいやいや。」

 

「いくらあなたの言葉でも信じられることと信じられないことがあります、今回は後者ですね。」

 

 

場所はIoPの16lab、ペルシカの研究室。

今日は代理人の定期メンテナンスの日だったのだが、先日なんとも不可思議な体験をしたので一応精密検査にかけてもらったのだ。

ちなみにナチュラルに混ざっているのは17labの主任だ。

 

 

「ですが、メモリーには残っていますよね?」

 

「あぁ、これね。 ・・・本当に夢とかじゃないの?」

 

「違います。」

 

「とはいえ体験者もあなただけですから。」

 

 

と行った感じで話し合いは平行線。まぁ実際そんなことを言われて信じる方が珍しいのだ。サクヤやS06地区の二人も似たような事例だが、並行世界を行き来したと言う話は代理人だけである。

 

 

「・・・まぁとりあえず異常はなかったよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「では、私も戻らせてもらいましょう。」

 

 

そう言ってドアを開いて出ようとした矢先、突然固まる17lab主任。

何事かと後ろから覗いてみれば・・・

 

 

「・・・風船?」

 

「何かくっついてますね。」

 

 

ふわ〜っと流れてくるのは風船とそれに括り付けられたボトルのようなもの。どこから来たのかはわからないがなぜか真っ直ぐこっちに流れてくる。

風船はそのまま真っ直ぐ進み、なぜか開いていた窓から入って・・・

 

 

「あら?」

 

「「えぇ〜・・・」」

 

 

ちょうど代理人の手元に流れてきた。

どうやらボトルはプラスチック製で、中に手紙と写真らしきものが入っている以外は何もなかった。

未だに信じられないものを見たかのような二人を置いて中身を取り出す代理人。手紙の差出人と写真を見て、クスッと笑う。

 

 

「ペルシカさん、主任さん。 たった今、証拠ができましたよ。」

 

「「えっ!?」」

 

 

感謝の言葉が綴られていた手紙とともに送られてきた写真の中で、彼女は大勢の人に囲まれながら笑っていた。

 

 

end




というわけで恒例の番外編でした。
どこかの世界では大規模コラボ回もあってドルフロ二次の輪が広がることを嬉しく思うばかりです!


では各話の解説を。

6-1
二十三話の後日談。
恋愛以外のカップリングってあんまり見ないなぁ〜とか思ったので書いたやつ。
この二人を家族とした別作品も描きたいなと思う今日この頃。

6-2
二十四話の後日談・・・というか悪ふざけ。
45姉が使ったのは番外編の2-3でKarちゃんが使った巨乳義体、を改造したもの。
翌日にはもとの体に戻されました。

6-3
二十五話の後日談。
この話だけ時系列が大きく離れているけど気にしなくても問題ない。
この二人の話はひとまずこれでお終いの予定。

6-4
二十七話の後日談+α
手紙が届いたので出しました。
急いで書いた分短くなってしまった・・・。






ちなみに今私はドイツにいます。
ドイツでも頑張って描きますよー!

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