喫茶鉄血   作:いろいろ

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二人ともきてくれたので。
ライフル対象の陣形効果って強くね?


第二十九話:姉妹

「ん〜美味しい! 来た甲斐があったわ!」

 

「ありがとうございます。 おかわりもありますよ。」

 

「やったー!」

 

「・・・・・(ムッス-)」

 

 

だんだんと暖かくなってきたS09地区、その路地の先にある喫茶 鉄血では、少し珍しい客が来ていた。

美味しそうにケーキを食べ、コーヒーを啜るのはカルカノM1891、その横でふくれっ面をしているのがカルカノM91/38だ。

戦術人形としては珍しく装飾の多い服装の彼女たちだが、これは彼女たちが戦闘目的の他に式典用としても作られたからである。

 

 

「本部ではちょっとした有名店なんですよここ! はぁ〜来てよかった〜!」

 

「・・・楽しそうですね姉さん。」

 

「お口に合いませんでしたか妹さん?」

 

「えぇ、そうですね。」

 

 

言いながらコーヒーを啜るカルカノ妹。見ての通り、なぜか分かりやすい嘘をつくのが特徴だ。

 

 

「ごめんなさい、妹はちょっと素直じゃないだけなんです。」

 

「余計なことは言わなくていいわよ姉さん。」

 

 

ツンとした態度でケーキを食べる妹を見て苦笑するカルカノ姉。その時、姉の端末が鳴り響く。

 

 

「あら、失礼。 ・・・もしもし私です。 えぇ・・・はい・・・」

 

 

ジェスチャーで謝りながら外へと出るカルカノ姉。それを見送ると、つまらなそうな顔のカルカノ妹に声をかける代理人。

 

 

「お姉さんのことが好きなんですね。」

 

「いえ、別に。」

 

 

まったくセリフと表情が一致しないが、あえて何も言わないことにする。代理人としても手のかかる妹のような感じなので、別に悪い気はしないのだ。

 

 

「ふふっ。」

 

「・・・何ですか?」

 

「いえ、私に妹がいたらどうだろうかと。」

 

 

カルカノ妹は目をパチクリさせると、すぐに普段の無表情に戻る。が、はぁ〜っとため息をつくと、珍しく彼女の方から話しかけてきた。

 

 

「私には分かりません、何故初対面の相手に素直に話すことができるのでしょうか?」

 

「・・・私の場合は職業柄でもありますが、例え初対面でもわずかな会話でもその人となりは感じ取れます。 そして、悪い人ではないと思うから、こうして話せるのではないでしょうか。」

 

「・・・・・。」

 

「お姉さんが心配なんですね。」

 

 

そう、彼女の性格の所以はそこであった。

誰にでも明るく社交的な姉。式典用でもある自分たちは必然的に多くの人間、特に企み事に秀でたお偉い様と話す機会が多くなる。姉の正直な性格が利用されるのではないか、足元をすくわれるのではないかと気が気でなかった妹は、分かりやすくも本心を隠すように振る舞い、姉に近寄る人々を観察することにしたのだった。

 

 

「・・・今までは、何事もなく過ごせています。 ですが、それが続くとは限りません。」

 

「取り返しの付かなくなる前に、防いでおこうと?」

 

「・・・はい。」

 

「それで自分が嫌われることになってもいいと?」

 

「姉さんのためですから。」

 

 

クスッと笑うカルカノ妹。その仕草から、本心であることが伺える。

釣られて代理人も笑うと、一度背を向けて棚を探り始める。

 

 

「あなたがお姉さん思いなのはよく分かりました。 ですが・・・」

 

「?」

 

「お姉さんは、あなたにも笑っていた欲しいと思いますよ。 ね、お姉さん?」

 

「あちゃ〜、バレてたか!」

 

 

カウンターの隅からひょっこり顔を出したカルカノ姉。なんとも気まずそうな苦笑いを浮かべて戻ってくる。

 

 

「ね、姉さん!?」

 

「いや〜妹のためにやってるつもりが、全部裏目に出てたなんてお笑いぐさですよ。」

 

「本当に、姉妹でそっくりですね。」

 

 

妹が妹なら姉も姉。妹に負担をかけまいと進んで前に出て明るく振舞っていたが、それが返って妹を追い詰めることになるとは思わなかったようである。

 

 

「ごめん!」

 

「え、あの、姉さん?」

 

「全然構ってあげられなくてごめん! なんか心配させてごめん!! 他にもいろいろごめん!!!」

 

 

両手をパンッと合わせて謝るカルカノ姉に、呆気にとられるカルカノ妹。代理人を見ればクスクスと笑うだけで何もしてこない。

 

 

「・・・そ、その・・・」

 

「え?」

 

「私も、迷惑かけてごめんなさい!」

 

 

勢い余って声が裏返る妹。

一瞬シーンとするが、カルカノ姉と代理人が同時吹き出し、笑いに包まれる。

 

 

「な、なんですか二人とも!」

 

「い、いや・・・可愛い妹だなって。」

 

「ふふふっ、本当に姉妹ですね。」

 

 

あー笑った笑ったと目尻に涙を浮かべながら笑う姉に、妹はむすっとした顔で睨むもなんの迫力もない。

そんな二人を眺めつつ、代理人は用意していたあるものを差し出した。

 

 

「? 代理人これは?」

 

「先ほど飲んでいただいたブレンドになります。 あちらでも淹れられますよ。」

 

「え、でも・・・。」

 

「サービスです。 二人でゆっくり飲んでください。」

 

 

微笑む代理人に、二人は顔を見合わせるとクスッと笑って袋を受け取った。

 

 

 

 

 

数日後、ある式典を取り上げた新聞記事を見て、代理人は一人微笑んでいた。

そこには、いつもの笑顔で手を振る姉と、ぎこちないながらも同じく笑顔で手を振る妹の姿があった。

 

 

end




最近もう一方の作品を書くほうが楽しくなってる・・・いかんいかん、こっちがメインだぞ!(自己暗示)

旅行先では思うように書かなかったけど、リアルMP5を見れたので大満足です。
・・・お土産?思い出話なら語ってやろう。


ではではキャラ紹介を。

カルカノM1891
姉の方。この姉妹の名前を毎回書くと面倒な上長いので姉と妹で書くことに。
原作では姉妹の服は彼女が作った(らしい)が、ここではもともとそういうデザイン。よく笑う明るい人形。

カルカノM91/38
妹の方。「私は明るい人形です」(自己申告)
あの分かりやすい嘘に理由があるとしたら、という感じで書き始めたのがきっかけ。

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