喫茶鉄血   作:いろいろ

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でっかいG11。
この娘だけ影というか線というか、薄すぎませんかね?


第三十話:休暇(自主申告)

突然だがこの世界では人形にも労働基準法のようなものがある。民生人形が社会進出を果たした当時はそんなものはなかったのだが、人形協会やら鉄血クーデターやらでいろいろ見直された結果、ある程度は休めるようになっている。

またも突然ではあるが、グリフィンは民間企業である。よってある程度休暇を与えなければならないのだが、世の中そんな都合よく行くはずもない。

 

 

「だから私はサボタージュを敢行するのだ〜。」

 

「怒られても知りませんよ。」

 

 

喫茶 鉄血の角の席、外からも中からも目立たない場所でグデ〜っと机に突っ伏しているのは割と最近やってきたライフル人形『ゲパードM1』。

自分で言ったように、現在進行形でサボっているのだ。

 

 

「・・・ほら、外で探してる声がしますよ。」

 

「アーアーキコエナーイ」

 

 

外では彼女と同じ部隊の人形たちが探し回っているようだ。特に普段ストレス漬けのFALは怒り心頭である。

そこで扉が開き、彼女を探していたスプリングフィールドが入ってくる。

 

 

「うげっ・・・」

 

「『うげっ』じゃありません。 皆さん心配してますから戻りますよ。」

 

「え〜やだ〜今日はサボる〜」

 

「ダメです!」

 

 

首根っこを掴んで連れ去ろうとするスプリングフィールドと机にしがみついて抵抗するゲパード。

チラリと代理人を見るが代理人は苦笑するだけで助けようとはせず、事の成り行きを見守っている。

 

 

「・・・ねぇスプリング。」

 

「言い訳は後で聞きます。今は巡回任務に戻」

 

「指揮官とのデート、セッティングしてあげるよ?」

 

「ちゃんと任務をこなしているようですね! FALさんには私から伝えておきます!」

 

 

満面の笑みで出て行くスプリングフィールド。

代理人はゲパードの勝ち誇った顔を見て、盛大にため息をつく。

結局その日、ゲパードは巡回任務が終わるまで居座り続け、至福の一日を得たのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

その翌日。

昨日の報告書(嘘)を提出したゲパードは日のよく当たる机でのんびりしていた。

 

 

(はぁ〜やっぱり休みはいいなぁ〜)

 

 

昨日も休んだというのにこれである。とはいえ今日はちゃんとした休日だし、報告書も受理されてしまった(FALは最後まで疑っていたが、決定的証拠がなかった)ので何も言われない。

 

 

「お待たせしました、ホットコーヒーです。」

 

「ん、ありがと〜」

 

 

代理人が運んできたコーヒーを一口すすり、さらに表情を緩ませるゲパード。

が、いつまでも立ち去らない代理人に訝しむ。

 

 

「ゲパードさん、今日はお客様がいらっしゃいますよ。」

 

「・・・え?」

 

 

昨日のことで文句を言いにきたのか?そうなるとせっかくの休みがパーだ。

などと考えながら視線を移すと、気だるげな目をした人形が一人。

 

 

「あなたがゲパードだね。 私はG11、よろしく。」

 

「え、あ、ゲパードM1です。」

 

 

では失礼します、と言って代理人は下がり、11がゲパードの対面に座る。

得体の知れない威圧感が漂い、ゲパードはかつてないほど緊張していた。

 

 

「あぁ、そんなに緊張しなくていいよ。」

 

「は、はぁ。」

 

「で、今日来た理由だけど・・・明日からの巡回任務、()()()と来てもらうから。」

 

「私たち・・・っていうと・・・」

 

「うん、404。」

 

 

その瞬間、ゲパードの頭の中はフル回転していた。

404といえばかつて極秘任務のみを扱ってきた特殊部隊だ。が、今は基本的に暇なのほほん部隊だと聞いている。買収するなら誰か、注意すべき相手は誰か・・・サボるためなら全力投球なゲパードは、明日以降の休みのために思案する。

 

 

「じゃ、明日の10時に指定の場所に来て。 ・・・まぁ逃げてもいいけど。」

 

 

妙に不吉なことを言いながら去って行く11の背中を見ながら、ゲパードは策を練り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

さらに翌日。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

路地裏を全力で逃げる一人の少女。灰色の髪を揺らし殺人鬼から逃げるかのような形相で走っているのはあのゲパードである。

さて本日は404との合同任務だが、彼女はいつも通り途中で姿をくらましサボり始めた・・・

 

 

 

 

 

のだが、なぜか隊員たちに見つかり追い回されているのだ。

 

 

「そんな・・・なんで・・・!」

 

 

それが彼女の感想である。サボり始めて早々に見つかり、連れ戻されては再び姿を消し、そしてまた見つかるの繰り返しである。どこに行ってもすぐに見つかるという恐怖から、絶賛逃亡中というわけである。

 

 

(お、おかしい・・・こんなに簡単に見つかるなんて・・・!)

 

 

 

 

『ちょっと! 11じゃないんだからサボらないでよ!』

『はーい、すみませーん』

 

『あ、ゲパードみっけ! もぅダメだよサボっちゃ。』

『うへぇ・・・』

 

『あらぁ、そんなところでどうしたの?』

『ひっ!?』

 

『・・・まだサボる気?』ピキピキ 

『・・・・・』

 

『あ、今度はここにいたんだ! 探したよ!』

『嘘・・・』

 

 

 

 

 

(こうなったら仕方がない、いつものとこで匿ってもらおう!)

 

 

そう考えたゲパードが向かった先は路地の先にある喫茶店。

勢いよく扉を開け、目的の人物を見つけると抱きついて懇願する。

 

 

「お、お願い代理人! 匿って!」

 

「あらゲパードさん、そろそろいらっしゃる頃だと思っていましたよ。」

 

「ふぇ・・・?」

 

 

フフッと笑う代理人か視線を向ける。ゲパードもつられてそちらを見て、いよいよ泣き出しそうになった。

 

 

「待ってたわよ。」

 

「ニシシ〜、まだ鬼ごっこを続けるの?」

 

「観念しなさい。 あなたじゃ逃げきれないわ。」

 

「まぁ、そういうことだよ。」

 

 

逃げていたはずの404小隊が勢ぞろいしていた。テーブルには人数分の飲み物があることからそこそこ前にはここにいたことになる。

ゲパードは信じられないものを見るかのように立ち尽くしていた。

 

 

「ど、どうして・・・」

 

「あなたは確かにサボりのプロとも言えるわ、そこは認めてあげる。 ・・・でもね。」

 

「上には上がいるんだよね!」

 

「そんなのを追いかけ回してれば、嫌でも予想がつくわよ。」

 

 

45、9、416がそれぞれ述べ、11が前に歩み出る。その小さな体からは圧倒的強者の雰囲気が溢れ出ていた。

 

 

「みんなから逃げ切れるなんて思わないことだね。 それにサボることに関しては

 

 

 

 

 

 

私の方が断然上手い!

 

 

その言葉に崩れ落ちるゲパード。流石に不憫に思ったのか、困ったような顔で11は近く。

 

 

「まぁ大丈夫だよ。 ただ普通に仕事して、終わってからゆっくり休めばいいんだし。 なんなら私が相談に乗るよ?」

 

 

その姿はゲパードには女神のごとき姿だったという。そんな崇拝の(ちょっと危ない)目で見つめるゲパードは11の手を取る。

 

 

「あ、ありがとうございます! 一生ついていきます『お姉様』!」

 

「「「「・・・・・へ?」」」」

 

 

目をキラキラさせるゲパードに狼狽える11と、唖然とするその他隊員。

その後結局任務どころではなくなり、ゲパード含め五人まとめてお叱りを受けることになったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ〜お姉様ぁ〜」

 

「416助けて」

 

「まぁ、その・・・頑張りなさい。」

 

 

 

end




なんだこれ?
ぶっちゃけ町の警備とか巡回にライフルとか過剰戦力過ぎるとか思ったけど特に気にしない。


てな訳でキャラ紹介

ゲパードM1
絶対休暇取得するウーマン。
間延びした喋り方といい休みたがるところといい、まんまでかいG11じゃねえかとは常に思っていた。
サボりの先輩としてG11を尊敬(というよりも崇拝)しているが、当のG11本人は基本的にサボっていない。

G11
サボるというよりただ寝たいだけの人形。
ここの404は基本的に暇なので、その寝ることすら飽きてきた。以降何かにつけてゲパードに引っ付かれることになる。



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