「どうやら私はツンデレだと思われているらしいわ。」
「そうですね。」
「ちょっとは否定してよ!?」
昼下がりの喫茶 鉄血。世の中は卒業シーズンだったり新生活に向けてだったりと日頃の感謝を告げるムードが漂っている。一年に何度かあるこんな日には、少なからずムードに染まってしまう人形も当然いたりする。
その典型がこちら、S09地区のツンデレ代表『WA2000』である。
さてその彼女が一体何に悩んでいるかというと、周りから見た彼女のイメージらしい。本人曰く「できる女」なのだが・・・
自警団(男性)『頑張ろうとして空回りしてるとこが可愛い』
酒屋のオヤジ『美味い酒を飲んだ時に素直に美味しいと言えないとこが可愛い』
地元の男子高校生『一見冷たいけど実は優しいとこが可愛い』
近所の子供『猫を撫でてる時がとっても笑顔だった!』
「・・・ねこ、好きなんですね。」
「ち、違うわよ! ただちょっと足元にすり寄ってきたから撫でてやっただけでってなによその顔は!」
こんな感じである。
その彼女だが、客としてここにいるわけではない。その身をウェイトレスの服装で包み、お盆を片手に店内を動き回っている。
想像してほしい。戦術人形の中でも屈指のナイスボディな彼女が『いらっしゃいませ』と言ってくれるのである。
・・・デイリー来店必至だろう。しかも、
「ああもう口元汚れてるわよ。」
「溢れちゃったの? しょうがないわねぇ。」
「あら?風邪気味? これ使いなさい」つ ティッシュ
代理人が見ても素晴らしい接客というかサービス精神である。これが素なのだから驚きであり、さすがは『できる女』といったところか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お疲れ様でした、WAさん。」
「ふ、ふん! 当然よ!」
その夜。
閉店後にもかかわらず明かりのついた厨房には、代理人とWAの二人の姿があった。その前にはびっしりと書かれたレシピの数々、だがそのほとんどにはチェックが付けられ、残っているのはあと一品だけである。
「さて、いよいよこれで最後ですね。」
「・・・・・。」
目の前には、硬い殻を背負ってうねうねと体を動かす怪生物・・・食用カタツムリだ。
そう、最後の一品は誰もが知るフランス料理、エスカルゴである。ここまで代理人に手伝ってもらいながら様々な料理を勉強し、普通の料理本に乗っているものならほぼ作れるくらいになった彼女。その最後の難関は、料理の難易度ではなく見た目の問題だった。
「だ、大丈夫よ私、やればできるやればできるやればできる」
そ〜〜〜〜・・・ちょんっ
ムニュッ
「っ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
ジ◯リもびっくりなほどに髪を逆立て、全身鳥肌だらけになるWA。その後ろで必死に笑いをこらえる代理人。彼女がエスカルゴに挑戦したのはこのプチ料理教室の初日で、その日も全く同じ反応だった。
が、そこはプライドの高いWAちゃん。今度はしっかり押さえつけ、調理を開始する。
・・・目に涙を浮かべながら。
「う〜〜〜なんでこんなモノ食べるのよ〜〜〜〜!」
「あの・・・無理して作らなくても・・・」
「絶対やだ!」泣
殻から取り出し(小さく悲鳴をあげる)、内臓を取り除き(結構ガチ泣きする)、加熱する(同時に凄い勢いで手を洗う)。
あとはソース(エスカルゴバターというらしい)と絡めて殻に盛り付けるだけで調理方法としては割と簡単な部類なので苦労はしないが、これまで作ったどの料理よりも神経を使った気がする。
「お疲れ様ですWAさん。」
「・・・・・。」
ぐったりしていつもの見栄すら晴れないWAに、代理人は語りかける。
「そういえば言っていましたよね? 最後の料理を作り終えたら説明すると。」
「・・・まだ終わってないわよ。」
やっと復帰したWAは身を殻に盛り付け、その上で味見する。
予想よりも美味しかったのか、はたまた成功したことが嬉しかったのか、パァっと笑顔を見せるも代理人の視線に気づきすぐに顔をそらす。
その後、食べたものを飲み込んでから、WAは静かに語り出した。
「私ね、ここの司令部に来たくて来たわけじゃないの。 ・・・とばされてきたのよ。」
「・・・・・。」
「私は戦術人形として誇りを持っていたし、自信もあった。 でも前のとこではろくに出撃もないし、指揮官はセクハラばっかり。 で、ある日思いっきり蹴り飛ばしちゃってね。」
「それでここに来たと。」
「えぇ。 で、ここは確かに前よりはマシだったけど、相変わらず警備が主な仕事。 指揮官に訴えても『平和なのはいいこと』って返されるだけだったわ。」
「まぁその通りですからね。」
「その時は相当イライラしてたから。 しかも間の悪いことに、その日は司令部で小さなパーティーがあったの。 みんな楽しそうにはしゃいでるのが気に食わなくって叫んだわ。 『こんなことのために生まれてきたわけじゃない』って。」
「・・・・・。」
「みんな静かになってようやくやっちゃったと思ったの。 私は怖くてずっと下を向いてた。」
「・・・・・。」
「初めは確か、M16だったかしら。 酒ビン片手に『私は戦うことと酒のために生まれてきた!』って叫んだのよ。」
「ふふっ、らしいといえばらしいですね。」
「そっからもう大騒ぎよ。 『私はウォッカだ!』とか『お姉ちゃん大好き!』とか・・・脱ぎだす娘もいたわね。」
「目に浮かびます。」
「開いた口が塞がらなかったわ。 そんな騒ぎの合間にいろんな人形が来て、名前と目的だけ話していったわ。 でもみんな決まって『戦うことと〜』とか『敵を倒すことと〜』って言ったのよ。」
笑いながら話す彼女の目には涙が浮かび、頬を伝って落ちる。
「そんなの見てたらなんだか、戦うこと以外ない私が馬鹿みたいに思えちゃってね。
・・・それからよ、みんなとも話せるようになったし、警備の任務だって苦じゃなくなった。」
「・・・いい仲間ですね。」
「・・・あの時から、まだ私は謝れてないのよ。 それで近いうちにまたパーティーがあるって聞いて、これだって思った。 でもただ謝るだけじゃダメだと思ったから・・・」
そう言って彼女はレシピを手に取る。
そこに書かれていたレシピは簡単なものから難しいもの、ファストフードから伝統料理まで・・・様々な国の料理が並んでいた。
「私はほら、こんな性格だから、きっと素直に言えないと思うの。 だから私のもう一つの生まれた理由、『料理』で伝えようと思ってね。」
そして彼女はペンを取り、『エスカルゴ』と書かれた欄の最後の一つにチェックを入れる。
満足げに笑う彼女につられて、代理人も笑った。
すると突然WAはうつむき、深呼吸する。
「・・・あ、ありがと。 代理人のおかげよ。」
そう言ってカバンから何やら分厚い封筒を数個取り出す。
差し出そうとする手をそっと抑えて、代理人は言う。
「お礼は結構ですよ、WAさん。」
「で、でも!「そのかわり」・・・え?」
「今度来た時は、その話を聞かせてくださいね。」
ニコリと笑う代理人。
キョトンとしていたWAもつられて微笑み、頷いた。
end
ライフルレシピでデイリー回してきた甲斐があったというものだ!
実はギャグかこういった話かでWAちゃんが出る前から悩み続けていたわけですが、これで良かったのかな?
ほなキャラ紹介するで〜。
WA2000
ツンデレ・ボイン・黒タイツというなんともけしからん人形。加えておばけ嫌いという萌えポイント付き・・・いいっ!
一方で仕事はしっかりする感じなので、そんな仕事に生きる彼女を表現したかったんや。
料理が得意。
食用カタツムリ
<来いよ小娘、手袋なんか捨ててかかってこい!
<かかったなアホが!(粘液ボディ)
・・・みたいなネタが思い浮かんだけどカット。
最近R-18のエロコメディも描きたいなぁなんて思ったりもするんだけどどうだろうか?