喫茶鉄血   作:いろいろ

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57の着ぐるみって相当暑いと思うんですよ。
普通に服の上から着たら脱水どころではないわけですよね。
ということは着ているのは最低限のものだけってことですよね。


・・・よし、脱がそう(パァーン


第三十五話:着ぐるみのお姉さん

「FALお姉ちゃん!」

 

「フェレットのお姉ちゃん!」

 

「はいはいそんなに慌てないの、順番にね。」

 

 

S09地区にある公園。

いつもは人もまばらで静かな公園なのだが、今日は多くの人間が集まっていた。年に一度行われる、地区の司令部との交流イベントだ。司令部に指揮官と最低限の人員を残し、公園とその周辺にも警備を配置してそれ以外の人形達は住民との親睦を深める。

ほとんどの人形は改めて親睦を深める必要がないくらいに仲がいいが、最近きた人形やほとんど街に来ない人形はこの機会に街の人間と話すのである。

中でも特に人気なのがFAL・・・の肩に乗っているフェレットだ。

 

 

「わぁ〜可愛い〜!」

 

「ねぇねぇ触ってもいい?」

 

「順番順番、まずはあなたね。」

 

 

慣れた様子で子供達の相手をし、フェレットを触れさせるFAL。フェレットのほうも慣れているようで大人しくしている。

 

 

「相変わらずの人気ですね。」

 

「動物は子供達のアイドルじゃからな。」

 

「わしらのアイドルは代理人ちゃんじゃよ!」

 

『わははははは!!!』

 

 

この交流会に参加しているのは、なにもグリフィンだけではない。鉄血工造グループは式典用装備(デコレート)したダイナゲートやデチューンしたドラグーン(の下のやつ)を用意し、喫茶 鉄血スプリングと協力して青空カフェを設置している。ちなみにこの後は正規軍による航空ショーも行う予定だ。そのため参加者も子供から大人、老人にオタクまで幅広い。

 

 

pppppppppp

「あら、時間ですね。 ・・・57さん、休憩終わりですよ。」

 

「あ、あと五分・・・」

 

「ちょっと57! 早く戻ってきなさいよ!」

 

 

FALにどやされて渋々起き上がるFive-seven。喫茶 鉄血の臨時屋台のうらにいる彼女は今、上下ともに水着だった。

もちろん水を浴びるわけでも濡れるわけでもない。気だるげに起き上がった57はそばに置いてある白い塊を掴み、のそのそとそれに入る。最後に別のパーツ・・・フェレットの頭を被れば、S09司令部公式マスコットのでかフェレット(愛称:フェレットちゃん)の完成である。

 

 

「あ゛〜あ゛つ゛い゛〜」

 

「マスコットが出していい声ではありませんよ。 はい、いってらっしゃい。」

 

「・・・行ってきます。」

 

 

最後に大きなため息をつくと、マスコットらしい元気な仕草で飛び出していく。跳ねるように駆け寄り、短い腕をブンブン振る。この着ぐるみ、マスコットという立場上武装できない57のために最新鋭の技術を駆使して作られた、超防弾防刃機能の特注品である。イベント毎にアップグレードされ、その都度57の身の安全は高まるのだがそれに比例してあるものも増えてしまう。

重量だ。

 

 

(ヒィ・・・ヒィ・・・ヤバイ、いろいろヤバイ!!!)

 

「わぁーいフェレットちゃんだ!!!」

 

(へぶぅっ!?)

 

 

無邪気な子供というものは無慈悲でもある。全力で飛びつかれた衝撃でそこそこのダメージを受ける57。この着ぐるみ、無駄に背が高いくせに視界が悪く、足元をうろちょろする子供達がほとんど見えないのだ。そのため急に抱きつかれると反応できず、不意打ちで衝撃を受けてしまう。

だが彼女の悲劇はまだ終わらない。

 

 

プチン

(え? なんの音・・・ってえええええええええ!!!!!)

 

 

何かが切れる音と同時に、汗に濡れた胸元がやけに涼しく感じる。視線を下げるとそこにあるべきもの・・・水着のトップスがなかった。どうやら先ほどの衝撃で切れてしまったらしい。

さらに・・・

 

 

(ちょ、ちょっと! こっちもヤバイじゃない!!!)

 

 

ボトムスの紐も解けかかっていた・・・というか片方はもう解けている。ぬいぐるみの裏地に引っかかって辛うじて耐えているというだけだった。

着ぐるみなので別に解けてしまっても困ることはないのだが、57的には大問題である。

 

 

(こんな真っ昼間に外で全裸なんて死んでもごめんよ!)

 

 

とりあえず救援だ、そう考えた57はFALの方に合図を送る。

しかし・・・

 

 

「ほらみんな、手を振ってくれてるよ〜。」

 

(違ぁぁぁぁぁぁぁう!!!)

 

 

声を出すわけにもいかず、通信機なんてあるはずもないので身振り手振りで合図を送るが、そのどれも伝わらない。FALなら楽しんでいる可能性がワンチャン・・・とも思ったがどうやら純粋に子供達目線な様子。

さっき休憩から戻ったばかりだから次は短くてもあと一時間。なんとかこの危機を脱したい57だが、もはや打つ手がない。

57は祈るような気持ちで子供達の相手を続けた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なに? 盗撮魔?」

 

「ただの盗撮魔ってわけでもないみたい・・・これを見て。」

 

「おいおい、なんでこいつら下着姿なんだ?」

 

 

公園警備中のAR小隊、その一人であるM16のもとに来たAR-15は、持っていた写真を見せる。ぱっと見では水着姿の女性の写真にも見えなくはないが、その背景はなんと街中。しかも来ているものは水着だはなく下着だった。

 

 

「・・・改造カメラか。」

 

「ええ、どうやら服一枚分くらいは透過できるみたいね。」

 

「で、その写真がばらまかれてるってわけか。」

 

 

まさしく女性の敵である。この写真にはモザイクがかけられているものの不特定多数の人間に見られ、しかもオリジナルは犯人の手の中ということになる。写真をグシャッと握りつぶしたM16は他の人形にも連絡し、警戒度を上げた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

(うぅ〜〜〜・・・ホンットにマズイわ・・・)

 

 

一方その頃、着ぐるみの中で57は新たな危機に直面していた。

あの後結局たいした時間も立たずにボトムスもずり落ち、ヤケクソになりながらパフォーマンスを続けていた57。FALから告げられた残り四十分という言葉を希望に働いていたのだが、ちょうどそのタイミングであの感覚がやってきた。

 

 

(・・・トイレに行きたい。)

 

 

着ぐるみを着ては脱ぐたびに大量の水分を摂取していた57。その弊害が今ここにきて訪れてしまう。そして、一度知覚してしまえば無視することは不可能だった。

そして、残り三十分を切った頃。

 

 

(無理無理無理無理ヤバイヤバイヤバイのおおおおおおおお!!!!)

 

 

着ぐるみの中で内股になりながら悶えていた。

幸い着ぐるみの足が短いため内股でもバレはしないが、もう最初の頃の激しい動きは出来そうにない。しかし子供達はまだまだ元気で、しかも入れ替わり立ち替わり新しい子供がやってくる。そんな子供が最初にすることといえば、とりあえず抱きつくわけである。

57は比較的背が高い方の人形である。そしてちょうどお腹あたりが、子供が一番抱きつきやすい位置だった。

 

 

(ひぃいいいいいいい!!!!!)

 

 

なんとか、本当になんとか耐えて子供を離す。

ほとんど役に立たない視界を頼りに探せば、新しくきたであろう子供があと三人。

・・・無理かもしれない。

 

 

(あぁ・・・ほんとにダメだからぁ・・・)

 

 

FALの『一人ずつだよ〜』という声が、『お前の寿命もあと三人分だ』という風にしか聞こえない。

終わった・・・そう思っていた57だが、意外なところで救いの手が差し伸べられる。

 

 

「いやぁ〜フェレットさんは人気ですね、お一ついかがですか?」

 

「あら? 写真屋さん? みんな〜並んで〜!」

 

 

カメラを持った青年が近づいてきて、FALの合図で子供達が並び始める。

57はホッとしつつカメラマンに感謝し、子供達の後ろに並んだ。カメラマンの後ろには子供達の保護者らしき姿もあり、恐らくこの写真撮影でお開きだろう。

ここを耐えれば、助かる!

 

 

「それではいきまーす。 ・・・3・2・1」

カシャッ

 

 

シャッターが押され、カメラマンが写真を確認する。

その確認作業いらないからまとめて全部取りなさいよ! 57の声なき叫びなど聞こえるはずもなく、諦めて大人しく待つことにしたのだが・・・

 

 

「? おじちゃん大丈夫?」

 

「鼻血出てるよー!」

 

「い、いえ、大丈夫ですから!」

 

「え、でも処置した方が・・・」

 

「大丈夫だっつってんだろ!!!」

 

 

心配して近づいたFALを、青年は思いっきり突き飛ばす。

瞬間、空気が変わった。青年はしまったという顔でにげようとするも、いち早く復帰したFALに取り押さえられる。その隙に相棒のフェレットがカメラを奪い、近くにいた代理人に渡す。

 

 

「か、返せ!」

 

「これは・・・どういうことでしょうか。」

 

「お、なんだもう捕まえてたのか。」

 

 

騒ぎを聞きつけてきたAR小隊ら警備要員たちがぞろぞろと集まる。揃ったところでカメラを確認していくと・・・

 

 

「あ、この写真だ!」

 

「こいつだったのか・・・。」

 

「見た目が好青年だから、警戒されなかったのね。」

 

 

その後現れた警察に男とカメラを引き渡す。子供達はその一部始終を間近で見て、さらに尊敬の念を強めるのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

後日。

 

「な、なによ貴方達!?」

 

「57さんですね。 貴方にはまぁ・・・その・・・いろいろ聞きたいこともありますので。」

 

 

なんとも微妙な顔の警察官に連れて行かれる57。妙なことに全員が女性なのだが、何か関係あるのだろうか。

警察車両の中に入れられ、リーダーと思しき警察官(女性)と一対一になる。

 

 

「・・・で、私がなにをしたっていうのよ。」

 

「その前にですが57さん・・・貴方は子供が好きですか?」

 

「は? ・・・まぁ嫌いではないわね。」

 

「・・・聞き方が悪かったようですね、貴方は子供を見て性的興奮を覚えますか?」

 

「んなっ!? そんなわけないでしょっ!」

 

 

机をバンッと叩いて立ち上がる。一体自分のどこがそう見えるのか、全くわけがわからないという態度で再び座る57。

すると警察は一枚の写真を取り出し・・・

 

 

「・・・これを見ても違うといえますか?」

 

「これってなによこれ・・・って・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

直後、聞いたこともないような悲鳴が響き渡り、顔から文字通り湯気を出しながら机に突っ伏す57の姿があったという。

 

 

 

end




アップデート後の57に衝撃を覚えたのは私だけではないはず。
というわけで彼女には犠牲になってもらいました。


ではではキャラ紹介とかを。

57
当地区の愉快犯。ハンドガンとは思えないほどの高身長とおっぱいの持ち主。
着ぐるみって暑いよね・・・というわけで脱いじゃおうというのが今回の発端。写真? カリーナあたりに大金積んだら出てくるんじゃない?(テキトー)

でかフェレット
無駄に洗礼された無駄のない無駄な着ぐるみ。
どれだけ厚かろうと一枚は一枚なので透視カメラで透ける。
魚型の大型ハンドガンというオプションパーツが存在する。

FAL
シスコン会で胃を痛める人形。
子供とのふれあいと笑顔が私の癒し、故に邪魔されることを本気で嫌う。
着崩した服を目当てに子供を連れてくるお父さんもいるとかいないとか。

フェレット
銃弾飛び交う戦場を、生身で縦横無尽に走り回る謎の生き物。
白旗を振ることができるが意味はわかっていない。

青年
透視カメラを作ることができるくらいには優秀な男。
・・・なのだが母親以外の女性の裸を見たことがなく、まるっきり耐性がない。
故に、海水浴場で写真を撮る勇気もない。今回の不幸は、57のハプニングのせい。



・・・なに書いてんだろうな俺。
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