喫茶鉄血   作:いろいろ

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鉄血の人形もバックアップ取ってたり予備の義体があったりするのにハイエンド達にはダミーシステムがあんまりないという。

いや、編成拡大5のハイエンドとか死ねるけど。


第三十六話:編・成・拡・大

編成拡大というものがある。ダミー人形に代用コアを入れることで自身がコントロールできる部下を作れる、というものだ。とはいえ無制限というわけでもなく、演算システムとかその他諸々の事情により最大で四体までしかダミーを作ることができない。

 

 

「じゃあ指揮能力とかが高い人形ならどうかなってことになったのよ!」

 

「それで、私が呼ばれたと。」

 

 

ここは鉄血工造の開発部研究所。サクヤが鉄血工造に赴任したことでメンテナンスをIoPに頼る必要がなくなった代理人は、こうして鉄血に来ているのだ。

・・・が、今日に限ってはメンテナンスだけでは済まなかった。

 

 

「・・・サクヤさんとペルシカさんはまだわかりますが・・・残りの二人に不安を感じるのですが。」

 

「えーなんでそんなこと言うのさ代理人!」

 

「まったく・・・私たちが何をしたと言うんです。」

 

(((どの口が。)))

 

 

ぷくーっと頬を膨らませるアーキテクトとやれやれと言った感じで嘆息する17lab(変態)に白い目を向ける三人。ペルシカも一歩間違えればあちら側だが、ギリギリのところで踏みとどまっている。

 

 

「・・・とりあえず本題に入ろうか。 単刀直入に言うと代理人、君のダミーを作りたいんだよ。」

 

「・・・まぁ、ダミーがいて困ることはありませんが。」

 

「そりゃ良かった。 というわけで今回用意した案は二つ、『指揮タイプはダミーをいくつまで運用できるかの検証』と『ダミーの限界の検証』だよ。」

 

 

そう言ってスクリーンに映し出される二つのプラン。一方は単純に代理人のダミー・・・メインフレームの指示に忠実な人形だ。

が、もう一方はというと・・・

 

 

「いわば『もう一人の代理人』だね。 同程度の指揮能力に加えてある程度まで自己判断が可能なAIを積んだ特別仕様。」

 

「・・・ちなみに、この案の立案者は?」

 

「私と17labさんだよ!」

 

「却下で。」

 

 

技術的には凄い、性能も申し分ない、ペーパープランなら言うことなし・・・なのだが、立案者がこの二人というだけでその全てが罠に見えてくる。

 

 

「あ〜、嫌なのはわかるけど代理人、今回だけは付き合ってくれないかな?」

 

「私とペルシカさんでちゃんと見張っておくから。」

 

「・・・まぁそれなら。」

 

 

二人を信じてとりあえず了承し、その日は代理人のパーソナルデータのコピーだけで終わる。

だが代理人はひとつだけ思い違いをしていた。ここの研究バカ達は、やることがないから無駄なことに走るのではない。やることをやった上で、いらんことに走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

二週間後

 

 

『おかえりなさいませ。』

 

「・・・・・。」

 

 

再び研究所を訪れた代理人は、自身のダミーに迎えられていた。その数なんと十二体、どれも同じ顔で同じ服、ダミーなのだから当然ではあるが、今までダミーを持っていなかった代理人は少しだけ恐怖を覚える。

 

 

「あ、いらっしゃい代理人ちゃん。 こっちこっち。」

 

 

角の部屋から現れたサクヤに招かれ、『調整室』と張り紙が貼られた部屋に入る。

そこにはペルシカ、アーキテクト、17lab主任が揃っている・・・自分のところはいいんだろうか?

 

 

「よく来てくれたよ代理人。 ダミー達は見てくれたね?」

 

「えぇ、なんとも不思議な気分ですが。」

 

「彼女達はコアこそ入れているものの、まだダミーリンクが結ばれていません。 今日は今回の本題、『通常のダミーをいくつまでリンクさせられるか』を検証します。」

 

「というわけで代理人、こっちに寝転がって。」

 

 

アーキテクトに促されるまま、やたらとコードが伸びているベッドへと移動する。寝転がると何やらゴツいヘッドレストをつけられ、それにコードが次々と繋がれる。

 

 

「じゃあ始めるけど、何か異常があったらすぐに言ってね?」

 

「今回の実験は初めての試みだからね。 失敗はないはずだけど念のためにね。」

 

「わかりました。」

 

「では始めましょう・・・アーキテクトさん。」

 

「はいはーい、スイッチオン!」

 

 

アーキテクトがボタンを押し、機械が作動する。代理人のヘッドレストから伸びたコードがつながる先、大きな機械からさらにコードが伸びて十一体のダミーへとつながっている。

今、そのうちの四体の頭上にあるランプが緑色に点灯している。

 

 

「5link完了・・・バイタル正常。」

 

「OK、次は一体ずつ追加。」

 

 

コンソールを操作し、五体目ダミーとリンクさせる。同期率とバイタルを見つめる四人の額に汗が浮かぶ。

80%・・・90%・・・95%・・・99%・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・100%

 

 

「や、やったぁ! 成功よ!」

 

「ば、バイタルは!?」

 

「オールグリーン・・・代理人、どう?」

 

『今のところ何も。』

 

 

ひとまず胸をなでおろす四人。が、実験はまだ終わりではない。

 

 

「ここから先は本当の意味で前人未到よ、覚悟はいい?」

 

「えぇ。」

 

「はい。」

 

「うん。」

 

 

全員が頷いたのを確認すると、ペルシカは再びコンソールを叩く。

その後、八体目のダミーで同期率が止まるまで実験は続いた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「・・・気分はどう、代理人。」

 

「今のところは特に。 ただ、慣れないことで疲れはしましたね。」

 

 

結果はダミー七体までリンク可能。ただし、細かい指示が出せてその通り動けるのはダミー四体までで、それ以降は細かい指示にズレが出たり、大雑把な指示以外では動かないなどの問題が判明した。

 

 

「う〜ん、やっぱり今の人形じゃ5linkまでかなぁ。」

 

「でもまぁ、指揮タイプのダミー同期率が高いってのは証明できたんだからいいんじゃないかな。」

 

 

目を向ければ、壁沿いにずらりと並ぶ十一体の代理人ダミー。そのうちの四体は代理人の所有として喫茶 鉄血に送られ、残りの七体は予備だったり他の実験に回される。

 

 

「さて、あとは・・・」

 

「『アレ』ですね。」

 

 

どこか不安な視線を向ける先、十二体目のダミーがアーキテクトと17lab主任の手によって最終調整を受けていた。鉄血工造のデータベースからわざわざ作り出した本物と何ら遜色ないダミー。性能、演算能力、指揮能力、武装もまるっきりオリジナルと同じ高性能ダミーは、果たしてリンクできるのだろうか。

 

 

「でも、できたら便利じゃないかな?」

 

「喫茶 鉄血・二号店とか?」

 

「なるほど・・・そういう使い道もありですね。」

 

 

そんな想像を広げていると、アーキテクトが身振り手振りでベッドに寝るように指示を出す。

どうやら準備が整ったようだ。

 

 

「さて・・・どうなることやら。」

 

 

代理人も一応覚悟を決め、再びヘッドレストを被った。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「こ、こんにちは!」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 

代理人が、そしてペルシカとサクヤが睨みつける。その視線を、アーキテクトと17lab主任は目線をそらすことで回避する。

実験は成功した。

成功したのだが、目が覚めたダミーの反応はそれはもう予想外のことであった。

まずやたらと物腰が低い。続いて常におどおどしている。そしてなんといっても恥ずかしがり屋。

 

 

「・・・アーキテクト?」

 

「こいつよ! こいつが『女の子女の子した代理人とか最高ですよね』とか言い出すから!」

 

「な!? それを言うなら先にあなたが『面白みにかけるから何か加えよう』と言い出したのが始まりでしょう!」

 

 

醜い、それはもう醜い罪の押し付け合いが始まる。一応ダミーとしては普通に優秀で、オリジナルの統制下でしっかり作動し、さらに自立行動も可能という高性能っぷりだった。

が、性格その他ではオリジナルとは程遠いものではあるが。

 

 

「だいたい女の子女の子した代理人ってなによ!」

 

「そう言ってあなたが作り上げたのがアレでしょう! あなたもそんな願望があったということですね!」

 

「んなっ!? い、いいじゃん! 代理人に『アーキテクトちゃん』って言ってもらいながらギュ〜ってされたいじゃん!」

 

「「うわぁ・・・」」

 

「っていうかアンタはどうなのよ! 知ってるのよアンタがダミー製作の片手間にコスプレ衣装まで作ってたことをね!」

 

「恥じらう代理人が見たいだけ・・・それが何か?」

 

「「うわぁ〜〜〜・・・・・・」」

 

 

サクヤとペルシカ、ドン引きである。その横でダミーは顔を赤くしてアウアウと言い、オリジナルは仮面のような笑顔を貼り付けている。

 

・・・とその時、部屋の扉が開き誰かが入ってきた。

 

 

「お〜いアーキテクト、依頼されてた物資は運び終わったぞって何だこれ?」

 

「あら、ゲーg「ゲーガーちゃんだぁ!!!」・・・!?」

 

 

それまでのおどおどした雰囲気から一転、満面の笑顔でゲーガーに飛びつくダミー。飛びつかれた方は大混乱であるが。

 

 

「うおっ!? 何だ!? 代理人か!? え、何だこれ!?」

 

「いつもありがとね〜ゲーガーちゃん! 構ってあげられなくてごめんね〜。」

 

 

ゲーガーの顔を胸に押し当てて頭を撫でるダミー。代理人も怒りを忘れて呆然としている。

 

 

「これは・・・一体・・・」

 

「ん〜〜〜・・・あっ、もしかして。」

 

「おや? 何かわかったのサクヤ?」

 

 

何かを閃いたサクヤはだあいり人のデータの入った端末を操作し、ダミーのメンタルモデルと比較する。

 

 

「うん、やっぱり・・・あれは代理人ちゃんの本心だよ。」

 

『へっ?』

 

 

つまりこういうことだ。女の子らしいとは何かを(本気の冗談で)考えたアーキテクトと17lab主任は、普段何を考えているかわからない代理人の感情がすぐに現れるようにしようとした。もとが代理人のメンタルのコピーで、これまでの代理人を引き継いでいると言える特別なダミーである。

・・・つまりこれは

 

 

「・・・めちゃくちゃ素直な代理人、と?」

 

「そうなるかな。」

 

 

そんなことを側から聞いていた代理人は、顔を覆ってしゃがみこんでしまっている。

 

 

(あ、あれが私の本心!? い、いやでもたしかにゲーガーには苦労ばかりかけていますし労うこともできていませんがでもあれは・・・)

 

「えへへ〜、ゲーガーちゃんの髪って綺麗だから私は好きだよ。」

 

「んなっ!?」

 

「ねぇゲーガーちゃん、私のことはどう思う?」

 

「まっ、待ちなさいっ!?」

 

 

その後代理人がダミーを引き剥がし、放心状態のゲーガーをアーキテクトが連れ出してうやむやとなったまま御開きとなった。

 

 

なおこの高性能ダミーと通常のダミー5linkが両立できることがわかったため、後日まとめて喫茶 鉄血の届けられることになり、代理人は羞恥に頭を抱えることになるのだった。

 

 

 

end




代理人ってドルフロのシステム的には何になるんだろう。
SMG? 打たれ弱そう。
ARやRF、MG・・・は火力不足か。
SGは論外で、消去法でHGかなぁ。


ではキャラ紹介。

通常ダミー
それ自体は意志を持たず、本体の指示に従う。
他の世界でよくあるような、意志が芽生えてさぁ大変ってことにはならない。
が、増やしてもあまり意味はない模様。

高性能ダミー
鉄血工造・IoPの技術を集結し、変態とバカの悪ふざけによって完成した一品。
ダミー<オリジナルの序列は守るので代理人の指示は普通に聞く。
ほぼポーカーフェイスな代理人に対し、こちらは感情豊かで素直な性格。彼女の行動と表情を見れば、代理人がポーカーフェイスの下でどれだけ耐えているかがよくわかる。


以上!
高性能ダミーと通常ダミーの余りはフリー素材ですのでご自由にお使いください。

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