電気代?司令部のバッテリーで十分だろ。
そしてコラボ回以来の『ヤツ』が帰ってきた!
「製造さ〜れて、
「・・・・・。」
「今日も〜遠征・戦闘・拡大そして〜・・・」
「強化〜材料〜。」
「・・・なんですかその歌は?」
今日も平和な喫茶 鉄血。
マスターである代理人は、その対面に座る人形・RFBの微妙に物騒な歌に顔をしかめる。当のRFBは、入店してからずっと携帯ゲーム機に向かっており、大型の携帯充電器まで持ち込んでいる。
一応注文はしており、無くなればまた注文してくれているので追い出すことはないが。
「ん? これ? 人形コレクションRe:Diveっていうゲームの歌だよ。」
そういって彼女が見せてきた画面には、二頭身くらいの可愛らしいキャラクターがダンジョンを進んでいる姿が写っている。キャラクターや敵のレベルから相当終盤のようではある。
「発売日に並んで買って正解だったね! お陰でまだ一睡もしてないよ!」
「寝てください、隈がすごいことになっていますよ。」
二パーっと笑うRFBだが目元にはガッツリ隈ができており、ゲームから目を離すと焦点があっていないようにも見える。
ちなみにこのゲームは昨日の昼ごろに発売されたもので、それだけならここまでひどくはならないのだが・・・。
「最近のゲーム業界は熱いね! 欲しいゲームばっかりで時間がいくらあっても足りないよ!」
「・・・ちなみに今日で何日寝ていないのですか?」
「ん〜〜〜・・・五日?」
だめだこの人形、早くなんとかしないと。
とはいえ彼女もグリフィンの人形、当然任務などもあるはずだがまさか・・・。
「・・・任務を抜け出してまでゲームを?」
「いやいやいやいやそんなわけないじゃん。 ちゃんと任務は真面目にこなすしこれでもサボったことは一度もないんだよ!」
プンスカと頬を膨らませながら再びゲームに戻るRFB。度々誤解されるが、彼女はあくまで仕事の合間にゲームをやっているだけで、仕事そのものには一切手を抜かない。緊急出動と言われればすぐさまゲームを閉じることだってできる。
ただ、任務以外での最優先がゲームというだけである。
「ですが、いくら人形とはいえ休息は必要です。 一度横になりましょう。」
「え〜〜大丈夫だよ〜!」
「ダメです!」
とそこへ突然割り込む新たな人物。代理人と瓜二つでありながら雰囲気とか口調とか表情とかまるっきり違う人形、高性能ダミーである。
そんな彼女が今、腰に手を当てて私怒ってますといった感じで見下ろしている。
「寝不足はいろんなところに影響が出てくるんです! お肌も悪くなりますし判断も鈍りますし、何よりその顔! 可愛い女の子が台無しですよ!」
「・・・代理人?」
「彼女の言葉が本音であることは認めますが誇張表現でもあります。 ・・・D、仕込みは終わったのですか?」
「もちろんですよOちゃん。」
早口でまくし立ててRFBからゲームを没収しようとするダミー。
ちなみに『D』とはダミーのDであり、『Oちゃん』とはオリジナルのOである。
「ぶー、別に見た目なんて気にしないしいいじゃん!」
「だーめ、たまにでもしっかり休みなさい!」
そう言ってDは慣れた手つきでゲーム機の電源を落とし(ちゃんとセーブはしてくれた)、今尚ふてくされるRFBを引き寄せた。
「わわっ! なになに!?」
「はいはい、ちゃんと寝ましょうね〜。」
RFBの隣に座ったDは彼女を膝の上に乗せると、後ろから手を回して優しく包み込む。
左腕で優しく、しかし抜け出せない程度にはしっかりとホールドし、右手でRFBの頭をゆっくり撫でていく。
店内の男どもの視線が突き刺さり、なぜかDではなく代理人の方が赤くなる。
が、それ以上に恥ずかしいのは撫でられているRFBだった。
「うぅ〜、恥ずかしいよ〜。」
「ふふっ、大丈夫大丈夫、ゆっくり瞼を閉じて〜。」
撫でながら体をゆらりゆらりと左右に揺らすD。その揺り籠のような動きに、RFBの瞼は次第に落ち始める。
そして抱きついてものの数十秒で、RFBは静かに寝息を立て始めた。
「あら、寝てくれましたね。 Oちゃん、二階のベッドに運んできますね!」
「・・・えぇ、早く行ってきなさい。」
満面の笑顔でRFBを抱え直し、所謂お姫様抱っこで運んでいくD。
代理人は変に熱くなった顔を仰いで冷まし、再び業務を再開する・・・が、男どもの妙な行動が目に入る。
「お、俺も最近寝不足だな〜」(チラッ)
「さ、最近寝付けないな〜」(チラッ)
「あ〜このままじゃまた三徹(大嘘)かなぁ〜」(チラッ)
誰かに話しかけているというわけでもなく、しかし独り言にしてはやや大きめの声で時折こっちをチラチラと見ながらボヤく男性陣。その透けて見える魂胆に女性陣は呆れ、白い目を向ける。
中には嫁の前で言い放つ猛者までおり、向かいに座る嫁の額に青筋が浮かぶ。
何を求められているかを察した代理人は再び顔を赤くするが、一度小さく咳払いしてから例の笑顔を浮かべてカウンターを出る。
そして一番近くの、一番初めにぼやいた男の側に立ち、
「そうですね、どうしてもというのであれば私がしっかりと起こしてあげましょう。」
「へ?」
ぽかんとする男に、代理人は右手を大きく振り上げ、
「ふんっ!」
バッチィィィィィィン!!!!
「ありがとうございます!」
全力フルスイングで平手を放った。軽い殺意すら感じるそれを受けた男は驚愕の表情を浮かべ、しかしすぐに
「」ギロッ
「あ、あ〜背筋伸ばしたら目ぇ覚めたわ〜!」
「そ、そうだガムがあったんだこれを噛んで目を覚まそう!」
代理人がひと睨みすると挙動不審な動きで目が覚めましたアピールをする男性陣。女子陣と代理人のため息が響き渡る。
と、そこにRFBを寝かせてきたDが降りてくる。
「何か大きな音がしたけど大丈b・・・わぁ! 大変!」
心配したような顔で降りてきたDは店の隅で転がっている男を見つけると、パタパタと駆け寄る。そして優しく上体を起こし、覗き込みながら異常がないかを探す。
そして、男の赤く腫れた頬に手を添えた。
代理人の柔らかい手、至近距離の綺麗な顔、そして触れることができるくらいに間近に迫ったおっp・・・膨らみ。
男の理性は音を立てて削られていく。
「大丈夫ですか?」
「な、ナイスおっぱい!(はい!大丈夫です!)」
「ふぇ?」
「・・・ってあなた本部の指揮官じゃありませんか!」
「あ、やべっ」
男・・・改め本部所属の指揮官(おっぱい指揮官)は人間業とは思えない動きで復帰し、財布からお金を取り出して(ぴったし釣り銭なし)、
「ではな代理人、Dちゃん! また近いうちに来るよ!」
とだけ言って玄関ではなく開いた窓から出て行った。
そして遅れること数瞬、店の玄関を開け放って彼の副官であるG36が鬼のような形相で入ってきた。
「指〜〜揮〜〜〜官〜〜〜〜!!!!」
「・・・彼ならもう行きましたよ、あの窓から出てあっちに。」
「あ、そうですか。 これは失礼しました、では。」
クタバリナサイ!
ギャアアアアアアア!!!!
遠くから銃声と断末魔が聞こえてくる。
唖然とするDだが、代理人に肩を叩かれて振り向く。代理人の顔はそれはそれはいい笑顔だった。
「D、ちょっと奥に来なさい。」
「な、なんでですか!?」
「あなたは甘やかしすぎです! もう少し距離感というか・・・」
「で、でもそれはOちゃんが素直になれなくてついつい強く当たっちゃうから!」
「Dっ!!!」
その後逃げ回るDと顔を真っ赤にして追いかける代理人という珍しい光景が見られることとなった。
また翌日以降、妙に客から優しくされることになり、代理人はしばらくのあいだ羞恥に耐えながら接客することになるのだった。
end
RFB<(˘ω˘)
やたらと優しいけど元が代理人なので仕事は完璧というDちゃん。
まさしく『童貞を殺すダミー』だな!
てな訳でキャラ紹介。
RFB
生活<ゲームな人形。「働かざる者食うべからず」ではなく「働かざるもの遊ぶべからず」という考えを持つ。
ゲーム機が故障した場合に修理に出すとその間プレイできないことに気がつき、自力で修理できるようになった。
ジャンルの得意不得意はない。
D
高性能ダミー。
他のダミーと違いほぼ自立しているため固有の名前をつけられた。やや過保護気味で距離感が近く、誰にでも優しいという天使のような代理人。
ハグしてくださいと言ったら何も疑わずにハグしてくれる。
下心には鈍感。
Oちゃん
代理人本人。
Dのみこの呼び方で呼び、他のダミーは『メイン』と呼ぶ。
優しい代理人の需要がDに行ったため、ご褒美(意味深)目当ての強者が寄ってくることが多くなった。
なんだかんだまんざらでもない。
おっぱい指揮官
いつぞやぶりの登場。
巨乳をこよなく愛し、特定の人形以外の攻撃を変態じみた動きで回避する凄腕の指揮官。
こんなんでも本部所属のエリートなので、指揮能力はかなり高い。
G36
おっぱいのとこの副官。
気苦労が絶えず、このバカを追ってわざわざS09地区まで飛んできた。
巨乳。