いやぁ〜無心で建造するって大事ですね(物欲センサー回避)
珍しく大粒の雨が降りしきる日の喫茶 鉄血。
雨が降れば気分も落ち込むというが、それだけでは言い表せないほど淀んだ空気が店内に広がっている。そんな空気の中、うんざりした顔でアイスコーヒーを啜るのは最近設立されたMG部隊の一人、PKPだ。
ちゅ〜っとストローでコーヒーを吸い、机に突っ伏すと目の前の代理人に文句を垂れる。
「・・・なぁ代理人。 客の快適のためになんとかしてくれないか?」
「そう言われましても・・・それに、あなたのお姉さんでしょう?」
「あんなポンコツが私の姉なはずがない!」
視線の先、この粘り気を持ったようなどんよりムードの発生源にいるのは、PKPと同じMG部隊の副隊長でありPKPの姉でもあるPKだ。
白い服に透き通るような銀髪、そして圧倒的ボリュームを誇る胸部装甲を持つ彼女だが、今はその胸をテーブルに乗せて頭も下げ、その長い髪が顔を完全に覆い隠している。
まるで銀髪になった貞子のように見え、さらに時折めちゃくちゃ重いため息を吐くのだから完全にホラーである。
「・・・で、ああなった原因は?」
「・・・実は今朝な、姉貴がシャワーを浴びた後・・・」
ーーーーー回想だよーーーーー
『ふんふんふ〜ん♪』
『なんだよ姉貴、鼻歌なんて歌って。』
『うふふ・・・今日は隊長とデートなのよ♪』
『デートって・・・ただケーキ食いに行くだけだろ。』
『何を言ってるの? 私がデートと言ったらデートなのよ。』
『ふ〜ん・・・ま、太らない程度にな。』
『太っ!? 何を言うのPKP!』
『いやだって、姉貴割と夜食食うだろ? その上ケーキまでって危ねぇ!?』
『ふんっ! そこまで言うなら今から測って証明してあげるわ! 私は断じて太っていないと!』
ーーーーー回想終わりーーーーー
「・・・で、脱衣所から出てきた時にはあのざまだったよ。」
「それでも来るんですね、彼女。」
「流石に断れなかったんだろ・・・隊長のこと好きだし。」
果たして彼女の想定していた数値はいくらだったのか、実際に針が指した数値はいくらだったのか、それは彼女にしかわからない。が、失敗してもくよくよせずに前を向く彼女が顔を上げないレベルであることは確かなようだ。
と、そこへ慌てた様子で店に駆け込む人形が一人。銀髪ショートに青い瞳が特徴のMG部隊隊長、Gr MG5だ。
「すまない、遅くなった。」
「やぁ隊長、何かあったか?」
「報告が長引いてしまっただけだ。 あ、代理人、コーヒーをホットで。」
「かしこまりました。」
やや慌ただしく注文だけ告げてPKのいる席に向かうMG5。流れるようにコーヒーを頼んで行ったが代理人は知っている、彼女はコーヒーよりもジュースの類の方が好きだが、隊長としての威厳を損なわないためにやや無理をしていることを。
MG5が近づいてくるのがわかると、PKは顔を上げてパァっと笑顔になる。ちなみにだが本人はPKP以外にはこの気持ちを隠しているつもりらしい。
「待たせてしまったようだな、すまない。」
「い、いえ! 私が早く来すぎてしまっただけですから。」
濁った空気が一転、なんともむず痒い気持ちになる。かたや必死で『頼れる上司』を演じ、かたやバレバレな恋心を隠そうとする。
代理人が微妙な顔をするくらいなのだから相当なものだろう。
二人の話は軽い世間話から始まり、続いてMG部隊の今後の運用や各々の得手不得手の整理といった『隊長』と『副隊長』としての話し合いになる。基本的に真面目で優等生と言っていいPKは、こういう時はしっかりと話すことができている。
(なんであれが普段からできないかねぇ・・・)
(単純に度胸がないだけかと。)
(違いない。)
そんなこんなで話は進み、仕事の話に一区切りつけたMG5は今日の本題に入る。
「そういえばPK、ここのケーキを食べたいと言っていたな?」
「へ? あ、まぁ・・・その・・・」
「ん? なんだ遠慮するな、部下の頼みくらいいくらでも聞いてやる。」
そうじゃないんだけどなぁ、と店内の客と従業員の心が一致する。が、言われたPKの方はまんざらでもなさそうで、顔を赤らめてモジモジしている。
チョロい・・・。
「そ、その・・・ケーキなんですが・・・」
「ん? どうした?」
「き、今日はやめておきます・・・。」
「え?」
割と深刻そうな顔で告げるPKに不審がるMG5。
彼女は基本的に色恋沙汰にも他人の善意にも鈍い、だが戦闘やどうでもいいところでは無駄に鋭い答えを導き出すことがある。
・・・今回もそうだった。
「・・・まさか、太ったのか?」
(直球っ!?)
(MG5・・・あなたという人は・・・)
泣きそうな顔で固まるPKと、頭を抱えてため息をこぼすPKPと代理人。いや、店内のほとんどのものが同じ反応だった。
男性陣からは『やっちまったなぁ』という視線を、女性陣からは非難の目を向けられるが、MG5はそんなことに気づかずに話し続ける。
「まぁ私たちは人形とはいえ生体パーツを使っているから太っても仕方がない、気にするだけ無駄だ。」
「い、いや、その・・・・」
「というより本当に太ったのか? いつも通り綺麗だぞ?」
「ふぇっ!?」
まさかの一言に顔がボッと熱くなるPK。しかしMG5はそんな様子に気がつくそぶりすらなくケーキを頼み、コーヒーを啜る。それを見つめるPKの顔はまさしく少女漫画にヒロインのようであった。
やがて二人分のケーキが運ばれてくると、ここでもMG5のど天然っぷりが発揮される。
「・・・そっちのケーキも美味そうだな、一口くれないか?」
「え? あ、どうぞ。」
「んむ・・・あーん。」
「っ!?」
上体を突き出し、口を開けるMG5。声にならない悲鳴をあげるPKだが、震える手を必死に押さえつけてケーキを口まで運ぶ。
「・・・うん、美味い。」
(私のフォークで食べた私のフォークで食べた私のフォークで食べた)
「じゃあこちらもお返ししないとな、ほら。」
そう言って自分のケーキを一口分刺し、PKの口に持っていく。本人としてはコミュニケーションの一環としてやっているだけなのだが、もちろんそんなことは知らないPKはあわあわしながら狼狽える。
これがMG5と二人っきりだったなら襲いかかっていたかもしれない、しかし周りの目もあるので衝動を抑えて口を持っていく。
パクッ
「どうだ?」
「・・・美味しいです。」(あぁもう死んでもいい・・・)
もしもPKに尻尾が付いていたなら、犬のようにブンブンと振られていただろう。
冷静に冷静にとしているPKだがそれでも頬は緩み、自然と笑みを浮かべてしまう。で、上司として部下の些細な変化に身を配ることを大切にしているMG5は、当然その変化にも気がつくわけで・・・
「うん、やっぱり美味そうに食べている方が可愛いと思うぞ。」
「ひゃいっ! あ、ありがとうございましゅ!」
こんなセリフを素面で言えるのだから大したものである。
そんなココアに砂糖をぶち込んでさらに煮詰めたような甘ったるい空気は二人がケーキを食べ終えるまで続き、その間のコーヒーの追加注文が激増した。もう誰から見てもデレデレなPKとなぜかそこには気がつかないMG5に、代理人とPKPはもやもやしたなんとも言えない気持ちが募っていく。
PKPとしては、残念な姉ではあるが同時に大切な姉でもある。なんとかくっつけたいと考えていると、なんとPKが自ら動き出した。
「隊長、いえ・・・え、MG5さん・・・」
「どうしたんだ、急に改まって。」
背筋を正し、深く息を吸い込んで真剣な顔つきで話し始めるPKに、MG5も真面目な態度で対応する。
もうPKが言わんとすることはわかっているPKPと代理人、あと他の客は固唾を飲んで見守る。
「わ、わた・・・私、と・・・」
震える声でなんとか言葉を絞り出すPKに、PKPは自然と手を組んで祈る。
「その・・・えっと・・・・つ・・つきっ・・・」
しどろもどろのなりながらも着実に言葉を紡いでいき、周りもその瞬間を今か今かと待ち続ける。
というかここまで聞いたら察しろよという視線も混じっている。
爆発しそうなほどまで赤くなったPKは
「や、やっぱり無理です〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「えぇっ!?」
『えええええええええええ!?!?!?!?!?!?』
「あ、姉貴ぃぃぃいいいいいいいいい!!!!!」
ゴール目前でヘタレて逃亡した。店を飛び出し雨の中を傘も差さずに一目散に走るあたり、色々と限界だったのだろう。
残されたMG5は呆然とし、周りは自分のことでもないのに頭を抱え、PKPは姉を追って同じく雨の中を飛び出していった。
状況をうまく飲み込めないMG5はゆっくりと代理人の方へとやってきて、いまにも泣きそうな顔で言ってきた。
「・・・・・だ、代理人、私はまた何かしてしまったのか?」
「・・・・・・・・・・はぁ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日の夜。
「・・・姉貴、大丈夫か?」
「うぅ〜〜〜〜PKPぃ〜〜〜〜。」
「あ〜よしよし、姉貴は頑張ったよ。」
「隊長に嫌われたらどうしよ〜〜〜〜・・・」
「嫌われないって。 あの隊長だぞ?」
「でも、でもぉ〜〜〜〜」
「わかったわかった、あとで私から謝っとくから。」
うじうじと泣き続けるPKを相手に、PKPは一晩中付き合うことにしたのだった。
end
新カップル成立ならず。
PKPが来たらPKとの姉妹愛を書こうと思ってたのにPKとMG5の話になってしまった。
ところでPKの妹というわりには胸がn(パァーン)
PKP「というわけでキャラの紹介だ。」
PKP
今日のデイリー建造で出てきた人形。レベリングもまだなので使い勝手とかさっぱりわからんけどとりあえず書きたかったから書いた。
姉のポンコツ具合に辟易しているが嫌ってはいない。
MG5の本性(ポンコツ)は知らない。
PK
PKPの姉。
MG部隊の副隊長で、頼れる参謀。同隊の隊長であるMG5に惚れている。MG5のポンコツさは知らないが、知っていても気にしない。
巨乳
MG5
温泉回ではポンコツったが幸いMG部隊の面々にはバレていない。隙を見せないようにポーカーフェイスを意識しているが、結果として寡黙で有能な上司だと思われている。
ハーレム主人公のような鈍感っぷりだが、幸いなことに惚れているのはPKだけなので刺されることはない。
きっとこいつもヘタれる。