喫茶鉄血   作:いろいろ

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待たせたな!(土下座)

四十話ということでUMP40にしようかと思いましたが実装まで待つことにしました。


第四十話:親友

「あ゛〜つ゛〜い゛〜・・・」

 

「はい、ご注文のアイスコーヒーです。 ・・・代金は?」

 

「ウロボロスにツケといて。」

 

 

四月も終わりを迎えようかという頃のS09地区。

まだまだ夏には遠いはずなのだが、その日は何と最高気温が25℃近くまで上がるというやけに暑い日となった。衣替えもまだで長袖や人によってはジャケットを羽織っている時期にこの暑さ、おまけに見事なまでの快晴と無風で真夏のような天気となっていた。

そんなわけでアイスコーヒーの注文が殺到する喫茶 鉄血、働く社会人に混じってアイスコーヒーをズズズッと吸っているのは鉄血ハイエンド唯一のニート、ドリーマーだ。

 

 

「・・・それで、今日はどんな用事でここに? それにウロボロスはいないのですか?」

 

「アイツは仕事、暇だから遊びにきただけよ。」

 

「働きなさい。」

 

「やだ。」

 

 

そう言ってベチャ〜っと机に突っ伏すと、腑抜けきった顔でダラけるドリーマー。ちなみに働けと言っても意味がないことはすでに周知の事実であり、彼女の生活は全て同居人のウロボロス頼りである。

 

 

「そろそろ追い出されても知りませんよ。」

 

「・・・そうかもね・・・・・まっ、そうならないからこうしてられるのよ。」

 

(・・・弱みでも握られてるのでしょうか。)

 

 

十分あり得る・・・どころかまず間違いなく弱みを握っている。鉄血時代はアルケミストと並んでサディスティックで狡猾だったドリーマーなら納得だ。しかもアルケミストが物理的にSならばドリーマーは精神的にSと言えるほど捻じ曲がっている。

 

 

カランカラン

「いらっしゃ・・・あ、アルちゃん!」

 

「えっ、あ、ダミーのほうか。 久しぶりだな。」

 

「おや、珍しいですねアルケミスト。」

 

「久しぶりに代理人のコーヒーが飲みたくなってね。 ところで・・・」

 

 

Dの出迎えに優しく微笑むアルケミストだが、ドリーマーの姿を見つけると笑顔のままツカツカと歩み寄り、隣の席に着いたところで急に真顔になる。

 

 

「いつまでも入り浸ってないでハローワークにでも行ったらどうなんだドリーマー?」

 

「そういうあんたこそ、皆に隠れてよからぬことでもしてるんじゃないでしょうね?」

 

 

まぁた始まった・・・と思う喫茶 鉄血一同。

鉄血時代からなかなか方針が合わずに衝突を繰り返していた二人、鉄血を抜けた後もそれは変わらず、顔を合わせればこうしてぶつかるのである。

 

 

「まったく・・・貴様は昔からそうだ、他人に押し付けて自分は何もしようとしない。」

 

「前線に出張って部下に心労を与えるよりはマシじゃない?」

 

「あ?」

 

「ん?」

 

 

 

「二人ともやめなさい、それ以上は黙っていませんよ。」

 

 

いまにも掴みかかろうという勢いの二人を、代理人は静かに、そして強く止める。怒らせると怖い、というより代理人に迷惑をかけることを二人とも嫌うので、大人しく引き下がる。

こんな二人だが、決して仲が悪いわけではない。むしろ前線指揮の最高権力者(代理人は基本的に前線に出ない)であった二人は、互いに高め合う良きライバルでもあったのだ。

・・・そんな過去があるからこそ、アルケミストは今の自堕落なドリーマーを見過ごせないわけだが。

 

 

「・・・あの頃のお前はまだ真面目だったなぁ。」

 

「またそれぇ? もう昔のことじゃない。」

 

「正直言って、今のお前とは張り合いがない。」

 

「張り合うつもりもないし、そんな必要もないでしょ。」

 

 

そう言ってコーヒーを一口飲むと、再び机にうつ伏せるドリーマー。いつもならここでアルケミストが小言を言ってドリーマーが聞き流すというのがお決まりの流れなのだが、今日はアルケミストの小言よりも先にドリーマーがポツリと話し始める。

 

 

「・・・大体、私じゃあんたとは張り合えないのよ。」

 

「・・・ドリーマー?」

 

 

今まで一度も聞いたことのない、いつもの強気な態度とは全く違うか細い声に、アルケミストは眉をひそめる。

 

 

「ねぇアルケミスト・・・あんたが何をやってるか知らないけど、きっと危ない橋を渡ってんでしょ。」

 

「・・・・・。」

 

「はっきり言って理解できないわ・・・なんでわざわざ死にたがるのかね。」

 

「あいにくとこの生き方しか知らないんでな。 それに、死ぬつもりは毛頭ない。」

 

「ほんと変わんないわね、あんたは昔っからただ真っ直ぐ進むだけで、後ろなんか見向きもしない。」

 

「何だ・・・何もしない奴が随分と偉そうな口をきくな。」

 

 

アルケミストの目がスッと細まる。一方のドリーマーはただ無表情にコーヒーを飲むだけ。

一触即発、といった空気が流れ出し、代理人も警戒を強める。

 

 

「・・・ふん、まぁいい。 そうやって一人ヘラヘラしていればいいさ。 だがこれ以上仲間に迷惑をかけるつもりなら、さっさと荷物をまとめて鉄血に帰るんだな。」

 

「あ? なんつった今? 迷惑をかけてんのはそっちも一緒でしょうが!」

 

「貴様と一緒にするな。 私は私のやり方で自立している。」

 

「人に言えない仕事でしょ。 いつ死んでもおかしくないようなね!」

 

「そんなものは鉄血の頃は日常茶飯事だっただろ。 それに私がそうやすやすとくたばるとでも思っているのか?」

 

「・・・あんた・・・一度死にかけたことを忘れたの?」

 

「死にかけただけで死んではいない。 ちゃんと戻ってくる約束は果たし

 

 

パァーン

 

 

破裂音が響き渡り、代理人も客も目を丸くする。

それはアルケミストも同じで、ただただ自分の身に起きたことに驚いていた。

遅れてやってくる左頬の鈍い痛みと視界に映るドリーマーの右手で状況を理解し、しかし向き直ると同時に再び目を見開いて驚く。

 

 

「この分からず屋! こっちの気持ちも察しなさいよ!!!」

 

「ドリー・・・マー・・・」

 

 

ドリーマーは泣いていた。いつもの不敵な笑みや攻撃的な態度は鳴りを潜め、大粒の涙を流しながら泣いていた。

口調こそ強いが睨んでいるわけでもなく、ただ悲しそうな目をしていた。

 

 

「あんたはいっつもそう! 皆の前に出て一人で戦って! 無駄に傷ついて帰ってきて!」

 

「・・・・・ドリーマー。」

 

「なんで・・・なんでよ・・・・・もう戦わなくていいって言ったのは・・・あんたでしょうがぁ・・・・!」

 

 

ボロボロと泣きながら、それでも喋り続けるドリーマー。呆然としていたアルケミストだったが、徐々に冷静さを取り戻すとドリーマーの手を引き、代理人に一言謝罪して店を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 

喫茶 鉄血からそこそこ近い小さな公園、そのベンチに並んで座るアルケミストとドリーマーだが、互いにまだ一言も話していない。

冷静ではあるが、ドリーマーの予想外の反応にどうすればいいかわからなくなるアルケミスト。

ようやく泣き止んだものの、ぶったことに負い目を感じているのか俯いたままのドリーマー。

いつもの減らず口の応酬が、なぜか一言も出てこなかった。

 

 

「・・・なぁ。」

「・・・ねぇ。」

 

『・・・・・・・・。』

 

 

意を決して話しかけるも、全く同じタイミングになりますます気まずくなる。そしてまた黙り込んでしまうわけだが、アルケミストが再び話しかける。

 

 

「・・・・・その・・・すまなかった、心配をかけていると知らずに。」

 

「・・・私も・・・その・・ぶって、ごめん。」

 

 

ポツリポツリ、といった感じではあるが、ようやく会話が始まった。互いに遠慮しながら、それでもゆっくり話し合う。

 

 

「・・・私ね・・・あんたが羨ましいなって思ってたのよ。 怖いもの知らずでみんなを鼓舞できて。」

 

「私だって同じだ。 あれだけの部隊と火力型のハイエンドを指揮できる能力は、私にはない。」

 

「ふふっ、ありがと。 でも結局、私はただ臆病だっただけよ。 ・・・ただ死にたくない、傷つきたくないって思ってただけ。」

 

「・・・・・・。」

 

「そのくせ戦場じゃ高みの見物決め込んでるんだから、もうどうしようもないわよ。」

 

「・・・・・真逆だな。」

 

「でしょ? あんたと私とじゃ「違う。」・・・え?」

 

「私は・・・仲間を傷つけられることが怖かったんだ。 だから私が倒してしまえばいい、そう思っていた。」

 

 

そう言って笑うアルケミストだが、ドリーマーにはその顔がいまにも泣きそうなものに見えた。

 

 

「・・・でも、結局それで皆に心配をかけてしまったわけだ。 ははっ、何をやってるんだろうな私は。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・どうしたドリーマー? うおっ!?」

 

 

じっと見つめるドリーマーを不審に思ったアルケミストだったが、次の瞬間には思いっきり抱きつかれていた。

 

 

「ど、ドリーマー?」

 

「・・・・ごめん、ちょっとこのままでいて。」

 

「え?」

 

「死にたがりなんて言って、ごめん。 みんなのことを考えていてくれてたのに・・・私・・・」

 

「ドリーマー・・・・」

 

「・・・ごめん・・・・・ごめんなさい・・・・」

 

「私も・・・すまなかった・・・・」

 

 

アルケミストはしっかりとドリーマーを抱きしめ返すと、今まで溜まっていたものを吐き出すように二人とも泣き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・心配いらなかったかもしれませんね。」

 

「・・・そうだね。」

 

 

公園の二人を遠目に見る代理人とD。二人が心配で後を追ってきたが、どうやら余計なお世話だったようだ。

 

 

「・・・さて、戻ってコーヒーを淹れましょうか。」

 

「二人分、だね!」

 

 

にこりと笑うDを連れて店に戻る代理人は、最後に一度だけ振り向き、満足そうに微笑みながら公園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ウロボロス宅に書き置きが残され、そこにはアルケミストについていく旨と二人の写真が添えられていたという。

 

 

end




鉄血回、それだけで説明ができるくらいのお話。
リアルで忙しくなって更新が遅れ気味ですが、たとえ牛歩とか亀の歩みであっても書き続けます(宣言)


てな訳でキャラ紹介と過去話

アルケミスト
割と久しぶりの登場。働いてはいるのだが何をしているかは一切不明。忙しいのか忙しくないのかも不明だが、代理人に呼ばれればすぐにやってくる。
前線に出て部下と共に戦うリーダータイプ。

ドリーマー
こっちも相当久しぶりの登場。正真正銘のニートでウロボロスのヒモ。本人にその気がないだけで働こうと思えばどこでも働けるくらいに適応力が高い。
戦況を見ながら部下を的確に動かすボスタイプ。
そしてようやく脱ニート。

D
オリキャラにしてほぼレギュラーの位置に落ち着き始めた代理人のダミー。
アルケミストのことをアルちゃん、ドリーマーのことをユメちゃんと呼ぶ。

鉄血時代の上下関係
鉄血工造の役員が決定を下し、人形たちの最高責任者である代理人が統括。前線指揮者のアルケミストとドリーマーが作戦を遂行するという流れ。
アルケミストの配下に処刑人とハンター、ドリーマーの配下にデストロイヤーとウロボロス、両者の合同管轄でスケアクロウとイントゥルーダー。当時設計段階だったアーキテクトとゲーガーは、ドリーマーの管轄予定だった。
同じ地位にいたアルケミストとドリーマーは親友でありライバルでもあった。




鉄血工造時代
軍用の指揮タイプとして開発されたハイエンドたちは、多かれ少なかれ殺し合いを経験している。クーデター後は軍が鉄血人形の採用を中止した為、戦う必要がなくなった。







ほんとはギャグのはずだったのになんでこうなったんだろう?
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