暑くなってきたので薄手の服を用意しましたが、まだ五月始まってちょっとしか経ってないのに・・・・・・夏、生きてられるかなぁ。
・・・代理人のことか? あぁ、知ってる。
話せば長い・・・古い話だ(大嘘)
知ってるか?代理人の魅力は三つある。
クールな表情、透き通るような肌、綺麗なうなじ・・・この三つだ。
「・・・くだらないことを言ってないで本題に入ってくださいダネルさん。」
「アッハイ」
さてまだ五月だというのに暑くなり始めた頃、喫茶 鉄血の一角にはちょっと珍しい組み合わせの一行が座っていた。
一息ついたところで意味不明なことを語り出したNTW、それをイイ笑顔で黙らせるM4、徹夜明けなのか目の下に深い隈をつくっているアーキテクトの三人だ。
「コホンッ・・・まぁ一応本題に関わることでもあったんだが。」
「これ以上くだらないことを言うつもりなら覚悟しておいてくださいね。」
「・・・あれぇ〜M4ってこんな娘だったっけぇ・・・・」
かつてのオドオド隊長はどこへやら、今では怒らせるとやばい人形トップクラスになってしまったM4に遠い目をするアーキテクト。だがこのままでは一向に話が進まないので、NTWが大事そうに持っていた書類を奪い取る。
「あぁっ!? そんな乱暴に!?」
「破れてないから大丈夫っしょ・・・・・で、なにこれ?」
「・・・『喫茶 鉄血・夏服プロジェクト(仮)』、ですか?」
ホッチキス留めで十枚ほどに綴られたそれは、代理人始め喫茶 鉄血の従業員の夏服案が書かれたものだった。
代理人は製造時のデフォルトであるメイド服で、ローエンドたちはそれをベースにしたウエイトレス姿、代理人のダミーやDもオリジナルと同じ格好で、腕こそ出しているが流石に見てると暑そうな格好ではある。
「へぇ〜・・・結構まともな案が多いですね。」
「お前は私を何だと・・・まぁいい、ともかく日頃の感謝の意も込めて、これをプレゼントしようと思ってな。」
「ん? 私が呼ばれた理由は?」
「お前に頼めば早いだろ?」
「いやまぁそうだけど・・・・・」
「・・・実はニッポンに行った時に買ったコスプレカタログがここに」
「私を頼るなんてイイ目をしてるじゃないか、任されたよ!」
ガシッと固い握手を交わす二人をジト目で見つつ、M4は手元の資料に目を落とす。全十枚・・・そのうち代理人だけで八枚になる資料は、思ったよりもはるかにまともだった。
スカート丈を膝くらいまで切り詰め、ロングブーツから短めのもの(コメントに『生足』と書かれている)にする案や、逆に服の通気性を限界まで上げる案などなど。
(・・・あ、これ可愛い。)
中でもM4が目を止めたのは、メイド服と言うよりは給仕のような格好のもの。質素な色合いと頭に巻いた三角巾がM4の好みと一致したのだ。
(・・・・・というより、これ全部ダネルさんが書いたのでしょうか?)
?)
何気なく見ていたが、スケッチ画にしても結構うまい。まるで本人を前にして書いたかのようだが・・・これも愛のなせる技なのだろうか。
「ん? 結構ちゃんと読んでくれているようだな。」
「えぇ、思っていたよりもしっかりしていたので、つい。」
「そうか・・・ちなみに私の一押しは最後のページだ。」
「最後のページ・・・・・・・・・ってなんですかこれ!?」
「メイド服(海の家風)だ!」
「メイド要素ほぼ皆無じゃないですか!」
完全に油断した・・・こいつがまともに終わるはずがなかったと後悔するM4。
最後のページに載っていたのは水着の上にメイド服、それも膝上の極短スカートのみというもはやメイド関係ないじゃんと言いたくなるイラスト。しかも水着は黒のビキニタイプで、足もサンダル状のもの。
極め付けは・・・・・この妙に恥じらっているように描かれているイラストだ。
「我ながら会心の出来だと思っへブゥ!?」
「こ、こんなの却下ですっ! 絶対に認めませんっ!」
「なっ!? 考えても見ろM4! 慣れない格好でちょっと恥ずかしそうにしながら『ご、ご注文は?』とか言われたくはないのか!? 私は言われたい!」
「発想がオッサンのそれじゃないですか! そんな邪な目で見るなんて最低です!」
「だが間違いなく集客効果は上がる! これは代理人のため、喫茶 鉄血のためでもあるんだぞ! っていうかこっちの方が絶対涼しい!」
「そ、それはそうですが・・・でも、いくらなんでもこんな格好は!」
「二人とも?」ゴゴゴゴゴ
「「・・・・・あ。」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・まったく、二人して騒いでは他のお客様に迷惑でしょう。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
「・・・悪かった。」
「・・・なんで私もこっち側なんだろ・・・」
散々騒ぎ倒した二人を待っていたのは、羞恥と怒りで赤くなった代理人の、割とガチな説教だった。
ちなみにアーキテクトは二人を止めなかったと言うことで同罪扱いである。
「・・・で、これがその騒動の原因ですか?」
「だ、代理人はどう思う!?アリじゃないか!?」
「なっ!? まだ言うんですかこのスットコライフル!」
「お前段々口悪くなってないか!? 姉が泣くぞ!」
「もうすでに泣かれてますよ!」
「M16ゥ・・・・」
再び再燃しだした二人は放っておき、ペラペラと企画書をめくる代理人。しかもただ流し読みしているわけではなく、割とちゃんと読んでいるようだ。
で、出た結論が・・・・・
「・・・アリかナシかで言えば、アリですね。」
「えっ!? お母さん!?」
「! だろ! そう思うだろ!」
まさかのYESに崩れ落ちるM4と、かつてないほどの喜びをあらわにしたNTW。
しかし、
「まぁ私ではなく、Dが着るならですが。」
「「えっ?」」
NTWと、奥で様子を伺っていたDから間の抜けた声が出る。
NTWにしてみれば代理人が着るからいいのであって、ダミーが着てもそこまで嬉しくはない。Dに至っては完全にとばっちりである。
「いやいや! Oちゃんが着ればいいじゃない!」
「本体の命令は絶対ですよ。」
「ぱ、パワハラだー!」
Dは忘れることはないだろう。その時の代理人の、妙に勝ち誇った目をした顔を。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数日後
「・・・い、いらっしゃいませ・・・」
「・・・・・Dちゃんこれからおじさんとイイコトしnグハァ!?」
「お客様、当店ではそのようなサービスはございません。」
快晴無風の今日、いつも以上の賑わいを見せる喫茶 鉄血。その原因は、例の企画から採用された水着メイドを着せられたDの存在である。
下に着ているものは下着ではなく水着なのだが、それでも恥ずかしいのか短いスカートを目一杯まで下に引っ張って隠そうとする。
熟れたトマトのように真っ赤になり、目に涙を浮かべてプルプル震えるDに、Sっ気が刺激される客が後を絶たない。
「・・・意外だな、Dならノリノリで着ると思ったが。」
「Dさんって確かお母さんをより素直にしたものだって聞いたんですけど・・・」
「まぁつまり・・・・・代理人も相当恥ずかしいんだろうねアレ。」
「・・・ん? じゃあDが喜ぶものって実は代理人も嬉しいのか?」
「「・・・・・なるほど。」」
「うぅ〜、Oちゃん覚えててよね!」
「本体に向かって随分生意気な態度ですね・・・そう言えば今日はかなり暑くなると聞きました。 テラス席も設置しましょう。」
「えっ!? ちょっ!?」
「ちゃんと注文を聞きに行ってくださいね・・・その格好で。」
「鬼! 悪魔!! スカート上げなきゃ撃てない露出魔!!!」
「・・・・・なんならそのスカートも外しますか?」
「・・・・・誰か止めろよアレ。」
「あの服の提案者が行ってください。」
「・・・これ、私のとこに来るのかなぁ・・・」
end
夏まで待てなかったのでフライング水着回!!!
集客効果アップだよやったねDちゃん!
では、解説です。
・・・・ほとんど言うことないけど。
夏服案
NTWが徹夜で考えた案。
なので最初こそ真面目に考えていたが、ローエンド組のあたりで睡魔に襲われ、それを乗り切って深夜テンションで書き上げたのが最後の一枚。
ちなみにこの代理人の姿は、人形用の高性能シミュレーティングシステムの応用で書いたもの。
コスプレカタログ
いつぞやに温泉旅館に行った時に買ったやつ。
ナースやメイドなどのよくあるコスプレからアニメや漫画のコスプレまで幅広く掲載された分厚い一冊。
お値段一諭吉。
代理人とD
代理人の感情をより表面化したのがD。
なので一見なんでもない風な代理人が何を考えてるか、Dに同じことをすればだいたいわかるのである。
ちなみに最近Dが小生意気になってきたのでそろそろ上下関係を再確認させることにしたらしい。