とりあえず出るであろうUMP40を目標にします!
話が逸れましたが今回は
・夏に向けて
・拡大改装
・緊急ミッション
の三本です。
番外11-1:夏に向けて
「こんにちはマリーさん!」
「あらDちゃん、代理人さんもいますね。」
「・・・D、ここは?」
S09地区の一角、寂れてはいないが繁盛もしていない雑貨屋。
そこに訪れた代理人とD、そしてマヌスクリプトの三人は、若い女店主に迎えられていた。
Dがマリーと呼んだその女性はどうやらDの知り合いのようであり、今日は彼女に用事があったようだ。
「ここは私のお気に入りのお店で、可愛い雑貨とか服が置いてあるの! しかも安い!」
「いや、それは見ればわかるんだけど・・・。」
自信満々に答えるDに首をかしげるマヌスクリプト。実際見渡せば小物からサーフボードのような大きなもの、服もカジュアルなものからフリフリのついたものまで、とにかく沢山あるといった感じだ。
一行はマリーに案内されるがままに店の奥へと進む。
店内を抜け、レジ奥の扉を抜け、従業員用の通路を通りたどり着いた先にあったのは・・・
「「・・・・・水着?」」
「そ、水着!」
従業員用の会議室だろうか、本来何もなさそうな部屋にはハンガーにかけられた水着がずらりと並んでいる。おそらくもう少しすれば表に並ぶのだろうが、なぜこんな場所に連れてこられたのか。
「Dちゃんから、夏は海に行くと聞きまして。 彼女はよく来てくれますから、特別にいち早く選んで頂こうかと。」
もちろん特別価格で、と付け加えて見事な営業スマイルを浮かべるマリー。だが、代理人といては聞き逃せないことがあった。
「・・・海?」
「あれ? 言ってなかったけ?」
「聞いてませんし、店はどうするんですか?」
「え、閉めちゃダメなの?」
キョトンとするDに頭痛を覚える代理人。D的には以前の温泉旅行のようなノリだろうが、そう何度も臨時休業にするわけにもいかないのだ。それにここでまた休んでしまったら、一年間に何度も店を閉めることになる。
「あのですねD、年間に休みは決ま「私は賛成よD!」・・・マヌスクリプト?」
代理人が怪訝な顔で振り返ると、鼻息を荒くしたマヌスクリプトがいい笑顔でサムズアップしていた。しかも片方の手にはいつのまにか水着が握られ、今まさに試着室に行こうかという勢いである。
「これで二対一だねOちゃん!」
「・・・。」
「みんなも誘ったら喜ぶと思うよ、ダネルとかM4とか。」
「・・・・・。」
「「ねーねー行こうよー」」
「・・・はぁ、わかりました。」
「「やったぁ!!!」」
最近このダミーが独立しているのではないかと思い始める代理人は深くため息を吐く。それをよそにDとマヌスクリプトは水着を選んでは試着室に向かい、出てきてはまた選んで戻るを繰り返す。
その光景をあきれた様子で見ていた代理人だが、やれやれといった感じで自分の水着を探し始める。
ちなみにこういうことに疎い代理人がDやマヌスクリプト、その他の店員によって文字通り着せ替え人形になったのは言うまでもない。
end
番外11-2:拡大改装
それはある晴れた日の早朝。
まだ開店前の喫茶 鉄血に集まったのは、代理人をはじめとした店員と妖精、鉄血工造から派遣された土木作業部隊の、総勢二十名ちょっとの人形たちだ。
「・・・揃いましたね、では始めましょう。」
『了解!』
作業のリーダーを務める代理人の合図で、一斉に動き出す。皆あらかじめ決められた道具を手に取り、所定の場所へと移動する。
そして次の瞬間、玄関周りと二階の壁一面を破壊した。
「おや? 今日は工事かい?」
「あら、おはようございます。 ちょっとした改築工事ですね。」
散歩の途中で立ち寄った老人にそう話す。
順調に客が増え、ダミーたちやマヌスクリプトや妖精といった従業員も増えてやや手狭になった喫茶 鉄血は、思い切って拡張工事に踏み切ったのだ。具体的には、二階も店といて開いてバルコニーも増築、その下にも屋外席を設ける予定だ。
喫茶 鉄血の隣には誰が管理しているのかわからなかった空き地があり、地区行政の許可で譲り受けたことで工事が可能になった。
「うーん、じゃあ今日は一日閉店かのぉ。」
「いえ、午後までには間に合わせる予定です。 テーブルなどの調度品はすでに用意していますから。」
そう、朝一番に工事を始めた理由はこのためである。必要な部分だけ解体し、塗装済みの建築資材で組み上げていけば人形の効率作業をもってすれば半日と経たない。
本音を言えば夜間にやっておきたかったが、近隣への迷惑を考えてこの時間になった。
「おぉ! 話しとる間にほぼ出来上がっとるぞ!」
「あとは中を掃除して内装を整えるだけですね。」
あれよあれよと組み上がり、すでにほとんどの人形が工事から掃除へと作業を変えている。それに合わせてテーブルや椅子が運び込まれ、もうほとんど工事が終わったと言っていいほどだった。
すると、その作業も終えた人形が今度は屋根の方へと登っていく。
「ん? まさか三階も作るのか?」
「まぁ簡単にですが。 今日の業務が終わる頃までには、私たちの部屋も完成しているでしょう。」
開いた口が塞がらない、と思いながら呆然と見上げる老人。長く生きてきたがこれほど短時間で工事を終えた例が他にあっただろうか。
恐るべし鉄血工造。流石は技術的変態集団である。
「さて、そろそろ開店の準備をしましょうか。 ではお爺さん、また後ほど。」
「お、おぉ・・・」
そう言って、三階以外ほぼ完成した店へと入っていく代理人。
のちにこの超短時間工事は一躍話題となり、鉄血工造には注文が殺到したという。
end
番外11-3:緊急ミッション
マガジンを確認して、ホルダーにしまう。
隣を見れば、久しく見なくなった真面目な顔つきの45姉が同じように武器のチェックを終えている。
そう、今の私たちは404小隊・・・決して表に出せない仕事を請け負う特殊部隊だ。
「・・・こちらUMP45。 ヘリアン、着いたわよ。」
『ご苦労だ45。 ターゲットはその扉の先に閉じ込めている。』
目の前には何重にも電子ロックがかけられた金属の扉。
今私たちがいるのは鉄血工造の『特別演習場』と書かれた部屋の前。
・・・そう、あの問題児がまたやらかしたのだ。
「・・・で、中に何がいるのかはまだわからないの?」
『すまない、アーキテクトはまだ気を失ったままだ。』
「・・・よっぽど勢いよく殴ったのね、ゲーガーは。」
45姉はため息をつくと、後ろを振り返る。そこには当然416や11もいて、当然ながら準備は万全だ。
二人とも手で簡単に合図して、いつでも行けることを伝えてきた。
『繰り返すが、今回のターゲットは決して世に出してはいけないものらしい。 ゲーガーも詳しいことを話す前に過労で倒れた。』
「・・・終わったらお見舞いに行くわ。」
『よし、では始めてくれ。』
45姉が通信を切り、扉とつながった端末を操作する。ロックが全て外れた扉はゆっくりと開き、私たちは素早く中に入って扉を閉める。
「・・・この先ね。」
「機密保持のために処分するなんて・・・今度は何を作ったのかしら。」
「あいつのことだからロクなものじゃなさそうだけどね。」
「11、結構辛辣だね。」
この実験場は三つに区画が分かれていて、それぞれが八角形の部屋になっている。今いるところから奥に行けば行くほど部屋は広くなり、また部屋同士の通路には扉はない。
「・・・静かに。 何か聞こえる。」
45姉の言葉で止まり、耳をそばだてる。
かすかに、本当にかすかにだが、何かが歩く音がする。這うような、何かを引っ掻くような・・・それでいて聞いているだけで不快感が増してくる不思議な音だ。
「・・・・一番奥の部屋ね。」
「うわ〜、なんであそこだけ電気消えてるのかなぁ。」
奥に行けば行くほど聞こえてくるその音に、私たちは警戒を強める。最奥の部屋はなぜか電気が消えていて、奥の方までは見えない。
45姉が416に指示を出す。416が取り出したのは、照明弾だ。
「・・・撃って。」
「了解。」
416がランチャーの引き金を引く。放物線を描いたソレは奥へと飛んでいき、そして光を放った。
・・・・・そして私たちは理解した。外に出しては行けない理由を。
カサカサカサカサカサカサカサカサカサ………
「「「「いやぁあああああああああ!!!!!!」」」」
見間違いであって欲しかったが、現実は非情だ。
光に照らされて浮かび上がったのは地面いっぱいの黒い点・・・パッと見ただけでも百は下らないであろう、Gによく似た小型ロボットだった。
そして今のを攻撃だと認識したのか、そいつらが一斉にこっちに向かってくる。
「きゃああああ!!! 来ないで! 来ないでぇ!!!」
「ひいいい!? こんなの聞いてないよっ!?」
「どうすんのよ45ってうひぃ!? まだいるの!?」
「と、とにかく撤退! 撃ちながら下がって!」
迫り来る黒い波に銃弾を叩き込み、グレネードで吹き飛ばす。確実に数は減っているがそれでも多い、というより一匹たりとも触れたくない!
え? ロボットってわかってるんだから触っても平気? リアリティ溢れるコイツらを見てもそう言えるなら代わってほしいかな!?
「ってうわぁっ!?」
「11!?」
「新手!? 上・・・え?」
突然11が宙を舞う。それは跳んだというよりも、文字通り浮き上がったような感じだった。その先に銃を向けた私は、自分でも間抜けだと思う声が出た。
そこにいたのは、まるで蜘蛛のように天井や壁に張り付き、ワイヤーで11を絡め取っているマンティコアだった。
ワイヤーには粘着質なのか、11はもがけばもがくほど糸に絡まっていく。そして次の瞬間、無情にもワイヤーが切り離された。
「ぐぇ!」
「11っ! 逃げて!」
「え? ・・・ひぃ!?」
全身ぐるぐる巻きの11に迫るのは、ようやく追いついてきたG部隊。床に倒れる11には、その絶望感は半端じゃないだろう。
「なっ!? うわぁあああ!!!」
「このっ! 離しなさいよ!」
45と416の声に振り向くと、なんと二人も糸に絡みとられていた。マンティコアは全部で三体もいたのだ。
そして11と同じく雁字搦めで床に捨てられ、身を捩りながら黒い波から逃げようとする。
救助は間に合わない、敵を倒しきる武器はない、あの糸に捕まれば負ける、打つ手のない私はただ愛銃を握りしめることしかできなかった。
やがて三体のマンティコアに囲まれ、私は目の前が真っ白になった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふぇええええ怖かったよおおおお!!!!」
「ガタガタガタガタ・・・・・・」
「あれはGじゃないあれはGじゃないあれはGじゃない」
「・・・・・・・・・。」
「・・・あー、ご苦労だった四人とも。」
連絡が途絶えて数時間後、彼女たちから送られてきたデータから部隊を編成し、無事鎮圧と同時に救助することができた。
どうやらあのGもどきは非武装のようで、45たちの周りを囲むように動き回っていただけだという。またマンティコアについても鎮圧が目的であったためかワイヤー以外の武装は使っていなかったようだ。
結果、完全な敗北であったにもかかわらず45たちを五体満足で回収できた・・・・・メンタルに多大なダメージを与えたが。
「・・・で、何か申し開きはあるか? 貴様ら。」
「「申し訳ございませんでしたっ!!!」」
深々と土下座するのは今回の主犯、アーキテクトとマヌスクリプト。この二人によって立案された悪魔の兵器が、あの鬼畜コンボである。
延べ三時間に渡る説教が堪えたのか、大人しく謝罪してはくれた。
・・・まぁ
「随分と迷惑をかけたようですね、二人とも?」
「うちの子を泣かせてくれるなんて、いい度胸じゃない。」
「私言ってるよね? 人に迷惑をかけちゃダメだって。」
代理人、ペルシカ、サクヤ、三人揃っていい笑顔を浮かべている。笑顔というものは本来攻撃的なものだと聞くが、どうやらそれは正しいようだ。件の二人はすっかり真っ青になっている。
その日、鉄血工造からは怪音波とも言えるほどの悲鳴が響き渡り、翌日にはモノクロのごとく真っ白になった二人が見られたという。
end
みんな喜べ! 戦闘描写のあるドルフロ小説だぞ!(白目
ちなみに作者はGも蜘蛛もムカデもダメです。
というわけで各話解説
11-1
四十四話の後、なんだかんだで水着が着たくなったDが代理人を巻き込む話。
久しぶりのオリキャラとして、雑貨屋のマリーさん登場。
ここまでやったから海回は確定だな。
11-2
四十六話の続き。
一夜城のごとき早業で行われる改装作業、鉄血驚異のメカニズム。
余談だが、11とトンプソンの定位置が一階から二階に変わった。
11-3
四十五話・四十七話から続くおはなし。
珍しく喫茶 鉄血が出てこない上、この作品では貴重な戦闘シーン。
今回登場した兵器はリクエストからで、設定は以下の通り。
*土蜘蛛
・マンティコアの隠密作戦仕様。全身のワイヤー射出機と脚部の吸盤で立体的な機動が可能。走行を削って関節部にも特殊加工を加えてステルス化した。粘着ワイヤーによって捕縛も可能。
*ザ・ネスト
・見た目はGそのものの昆虫型小型ロボ。生産性を極限まで高めた結果、このリアリティ溢れる見た目になった。武装はないが、メンタルにダイレクトアタックをかますことができる。飛ぶ(ここ重要)。