喫茶鉄血   作:いろいろ

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昨日ちらっと寄った映画館で、貞子が4Dで上映されると知りました・・・いやいや誰か倒れるだろ・・・

あ、私はゴジラが見に行きたいです。


第四十八話:暑い夜の過ごし方

それは喫茶 鉄血の改築工事が終わった、次の金曜日の夜。

以前まで金曜日の夜はバーとして営業していたのだが、二階席もできたのでより本格的なバーへと進化した。

一階は今まで通りのカラオケバーで、二階は貸切会場になっている。その貸切部屋は今、白いスクリーンとプロジェクターが設置され、照明をいつもの八割減まで落としている。

この『特別上映会』に集まったのはある意味いつものメンツ・・・AR小隊に404小隊、それと保護者枠で代理人、ハンター、ペルシカの計十二名。

 

 

「よし、じゃあ始めるぞ。」

 

「ねぇM16、上映会としか聞いてないんだけど何見るのよ?」

 

 

今回の発案者であるM16がDVD片手に宣言するも、この場で何を上映するのかを知っているのは彼女と代理人とペルシカだけ。他は皆首を傾げており、呼ばれたハンターに至ってはいかにも不機嫌ですといった表情だ。

 

 

「・・・前にニホンの旅館に行ったのは覚えてるな?」

 

「えぇ・・・それが?」

 

「そしてその晩、何があったかも。」

 

「・・・・・・忘れかけてたのに思い出させないでよ。」

 

「その時私は身が凍るような思いをしたんだが・・・ふと思ったんだ、暑くて寝苦しいなら冷やせばいいと。」

 

「OKよM16、あとはあんただけで楽しみなさい。」

 

「怖がった拍子にハンターにくっついてもいいんだぞ?」ボソッ

 

「っと思ったけど今日は付き合ってあげるわ。」

 

 

どうでもいい茶番に白い目を向けるその他。まぁつまるところ、日本でジャパニーズホラーを体験したM16が、ホラーにはまってしまったのだ。とはいえ常日頃からドンパチやってる彼女からすれば所謂パニックホラーにはさほど驚くことはなく、そこで目をつけたのがとある一本のDVD。なんでも、かの国では伝説的な人気を誇る有名ホラー映画らしい。

ちなみにAR小隊の作戦資料映像名義での経費購入であり、バレたら問題なのだ。

 

 

「じゃあ見るぞ・・・席は自由で構わないか、代理人?」

 

「えぇ・・・席と言っても、ただカーペットを敷いているだけですが。」

 

 

その合図でのそのそと動き出す人形たち。

AR-15はハンターの隣へ行き、SOPはペルシカの膝の間にすっぽりと収まり、9と416は可能な限り身を寄せ合う。

あとは独り身集団だが、この手に話に耐性のあるG11の周りには45とROが集まり、M4は代理人のそばに寄っている。

言い出しっぺのM16は、結局どのグループにも入れなかった。

 

 

「・・・へぇ、雰囲気出てるわね・・・。」

 

 

映画が始まり、西洋ホラーにはない雰囲気に感嘆の声をあげる45だが、誰の目にも強がっているのがわかる。この手のホラーは、いつ出てくるかがわからずに常に身構えていなければならないことが多く、誰一人ピクリとも動かない。

 

 

(・・・暑い・・・)

 

 

ROと45にサンドされている11はそう思う。ぶっちゃけ断っても良かったこの上映会だが、彼女が参加した理由はただ一つ。

 

 

・・・ギュッ

「っ!? ・・・9、脅かさないで」

 

「ご、ごめん・・・」

 

(ププッ 416、ビビってるのが丸わかりだよ。)

 

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

(意外だね、AR-15はともかくハンターも結構怖がるんだ・・・っていうかちょっと涙目かな?)

 

 

彼女の目的は、ただビビっている同僚を見たいがためである。うまくいけば今後もこれをネタになにかを要求できるし、割と恩恵があるのだ。

 

 

 

 

11が内心黒い笑みを浮かべている頃、別の意味で危ないヤツがここにいた。

 

 

「〜〜〜〜〜〜!」

 

「SOP、目を閉じたら余計に怖いよ?」

 

「だ、だって『ジリリリリリリ』ひぁあ!?」

 

(か、可愛すぎるわよSOP・・・ヤバイ、理性が・・・)

 

 

ここ最近は研究室にこもり、たまの休日はSOPが任務で全く過ごす時間がなかったペルシカは、加虐心をくすぐられるSOPのビビリように当てられていた。

もしこの場にいるのが二人っきりだったら、間違いなく襲っていただろう。ガリガリと削られる理性の裏で、わずかに冷静な部分がそう考えていた。

 

 

「う、うぅ・・・・ペルシカぁ・・・」

 

(っ!?)

 

 

涙目のSOPが、振り向きながら見上げてくる。上目遣いのその破壊力に持っていかれそうになるが、ここで襲ってしまえば確実にあの変態どもの仲間入り(アーキテクトと17lab)になってしまうと考え思いとどまる。

ペルシカ自身はホラーに強いわけではないが正直、映画どころではなかった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「・・・ねぇお母さん。」

 

「? なんですかM4。」

 

 

映画もいよいよ終盤というところ、どうやら少し慣れてきたM4が代理人に呼びかける。呼びかけながら何かを確かめるように腕を握ってくるのは、以前の怪談話の影響だろうか。

 

 

「前に・・・お母さんみたいな霊?の話、しましたよね?」

 

「えぇ・・・ダネルさんの話では、悪い霊ではなかったようですが。」

 

「・・・なんで、あの霊はお母さんの姿を真似たんでしょうか?」

 

 

思わずくすりと笑ってしまう代理人。普段から可愛らしい一面があるM4だが、今回も随分と可愛い疑問だ。

残念ながら代理人はその霊に会っていないし、あの旅館で何があったのかも知らない。だから、おそらくこうだろうとしか言えないのだ。

 

 

「そうですね・・・その霊は子守唄を歌ってくれたそうですが。」

 

「えぇ。」

 

「ふふっ、だとすれば・・・きっとお世話好きな幽霊さんだったのかもしれませんね。 あっちからすれば、私たちなんて赤ん坊のようなものでしょう。」

 

 

我ながら随分とメルヘンな考えだが、M4も妙に納得がいったようで、釣られて笑ってくれた。

そんな時、背中に何かがしがみついてくる感触が。振り向くと、身を極限まで縮こまらせたM16が引っ付いていた。

代理人とM4は顔を見合わせると、やれやれといった感じで苦笑し、二人でM16を挟むように座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜〜〜〜〜〜終わったぁ〜〜〜〜〜」

 

「ぺ、ペルシカ! なんかあっちで動いてる!」

 

「大丈夫よ、ただカーテンが揺れてるだけだから。」

(一番近くのホテルに連れてって・・・あ、先に替えの下着とか買っとくかなっていやいや何この流れで連れ込もうとしてるのよ自制しろ私!)

 

「よしよし・・・ハンターがホラー苦手なのは予想外ね。」

 

「グスッ・・・もう絶対観ない」

 

「9・・・しばらくこのままでいて・・・」

 

「うん・・・・・」

 

「「—————————」」

 

「うわぁ!? RO! 45! 大丈夫!?」

 

 

上映会終了後、ようやく全てから解放された人形たちは安堵のため息を吐く。

クライマックスを終えてホッとしたのも束の間、実はまだ終わっていないというオチに再び顔面蒼白となり、ROと45に至っては緊張が途切れた途端に意識を手放した。

AR-15は珍しく弱気になるハンターをなだめ、9と416は抱き合ったまま震えている。ペルシカとSOPも似たようなものだが、ペルシカの目が怪しく光っては正気に戻るということを繰り返している。

 

 

「Oちゃん、店じまいしたよ。」

 

「あらD、ありがとうございます。」

 

 

時計を見ると、もう日が変わって一時間以上経つ。彼女らは外泊申請しているので無理に帰す必要はないが・・・ホテルでもとっているのだろうか?

 

 

「あの・・・お母さん、言いづらいんですけど・・・」

 

「その・・・ここに泊めてくれないかなぁって・・・」

 

「も、もちろん明日お店は手伝うし、迷惑はかけないから!」

 

「・・・・・ダメだといったらどうするつもりだったんですか・・・」

 

 

呆れた顔でため息をつく代理人。ちなみにペルシカはこの後ラボに帰る予定だし、ハンターは遅くなることを見越してホテルをとっている。

SOPとAR-15はそれぞれの相方に乗っかる形になるので、残りがお泊まり組となる。

 

 

「お願い代理人! あんなの観た後でホテルなんて泊まれないのよ!」

 

「布団なしでもいい! なんなら雑魚寝でもいいからいさせて!」

 

「今回ばかりはお願いするわ代理人。」

 

「・・・もう眠いからいいよね?」

 

 

必死の形相(一名除く)で訴えかける404小隊に結局代理人は折れ、七人の人形たちは震えながら一夜を過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペルシカ? 研究所には戻らないの?」

 

「近くのホテルに泊まるのよ・・・ほら、あれ。」

 

「あれ・・・ってえぇ!? ぺ、ペルシカ!?」

 

「今日は寝かさないわよ。」

 

 

end




きっと来る〜、きっと来る〜〜〜

ちなみにAR-15とハンターも同じホテルに泊まりました。


ではキャラ解説

M16
今回の元凶。割と普通にビビる。
ホラーに強いわけでもないのに見たがるのは怖いもの見たさからだろう。経費を使ったのはもちろんバレた。

M4
みんなの癒しにしてこの作品の良心。
こんな娘と付き合いたい。

SOPとペルシカ
昨夜はお楽しみでしたね
SOPは身長も低いのでイケナイことをしているようにも見える。

AR-15とハンター
昨夜はry
どっちかが明確に受けと攻めに分かれているわけではなく、その時の空気で変わる。今回はAR-15が攻め。

45姉
みんな大好きポンコツ姉さん。
こんなんでも昔はカリスマ溢れていたが、今は見る影もない。
このままいけばヘリアンコースなんじゃないかと思いちょっと焦る。

G11
時々毒を吐くマスコット。
こいつが本気で泣き喚いたのはあの緊急任務(番外編11)だけ。
愉悦部になりつつある。

9と416
おっぱいのでかい俺得カップル。
基本は416が攻めだが、まれに入れ替わる。
学園モノならおっぱいのついたイケメンとそれを慕う後輩みたいな感じ。

代理人
この人が出ないと喫茶 鉄血要素がない、それだけの理由で出場。
ホラーもGもドッキリも平気であり、こういうイベントの引率に呼ばれる。

D
ちょい役のはずが準レギュラーになってしまったダミー。
代理人の本音や感情がストレートに出る・・・はずだったがいつのまにか独自のメンタルモデルを持ち始めた。
ホラーは平気だがGはダメ。


もうすぐ本編が五十話になるのでアンケートもやってみます。
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本編第五十話の内容アンケート

  • フライング海回
  • ハンターとAR-15の出会い
  • 流れ着いた組のその後
  • いつも通り
  • IFストーリー(学園モノ)

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