でもUMP40は欲しいのでE1-1と3をを周回中です。
「・・・そういうわけだから・・・お願いね。」
「それは構いませんが・・・大丈夫ですか? FALさん。」
「これが大丈夫に見える?」
よく晴れた春空の下、今日もそこそこの客で賑わう喫茶 鉄血の一角に、まるでそこだけ雨雲がかかっているかのようにどんよりムードが漂っている。
そこにあるのは丸いテーブルと椅子が二つ、座っているのは代理人とFALだが、この重たい空気は項垂れるFALから漂っている。彼女の悩みにして胃痛の種、それはこのテーブルの上に置かれた紙・・・部屋の貸し切り申請用紙に書かれた利用目的だ。
そこには、『シスコン倶楽部』と書かれている。
「胃薬、持ってきますね。」
「ありがとう代理人、でも自前のが山ほどあるから大丈夫よ。」
「・・・その、断ろうとは思わないんですか?」
「・・・・・以前断ったことがあったのよ。 そしたらアイツら、私の部屋で始めちゃったのよ・・・お願い代理人、私の安眠のために協力して(泣)」
そう言って泣く泣くペンを差し出すFAL。彼女としても代理人に、喫茶 鉄血に迷惑はかけたくないのだろうが、最後の安息地には変えられないのである。
もともと承諾するつもりではいたが、流石にこれ以上この話題を続けるべきではないと考えて早急にサインする。
そこで一気に緊張の糸?が切れたのか、FALは盛大なため息とともに机に突っ伏す。そのまま呻くように泣き始め、彼女の相棒であるフェレットが頭を撫でる。
流石に可哀想になったので、その日の代金はタダにしてあげた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数日後
貸し切られた二階の部屋では、例の四人がテーブルを囲んで議論を白熱させていた。
「絶対に連れて行くべきだ!」
「いいえ認められません、危険すぎます!」
「でも9たちも楽しみにしてるわ。」
「45さんこそ分かってるんですか!? 海にはナンパ男しかいないんですよ!」
「・・・それは偏見よMG34。」
今回の議題は『海』。内陸にあるここS09地区に所属する人形の中にはまだ海に行くどころか見たこともないという人形もおり、今夏最大のイベントになると思われる。
さて、ではなぜそんなお楽しみイベントに反対意見が出るのか。その理由は単純で、予定されているビーチが一般開放されているごく普通のビーチだからだ。
もちろん例え暴漢野郎が出ようとも戦術人形の敵ではないのだが、彼女らが危惧する点は他にある。
ナンパだ。
「奴らはあの手この手で可愛い妹たちに迫ってくるわ。 ワザとらしくビーチボールを飛ばしてきたりサンオイル片手に『塗らないとお肌が傷ついちゃいますよ?』とか!」
「いや、そんなのほとんど居ないから・・・」
「・・・M4にサンオイルを・・・だと・・・?」
「待って? 何でもう被害済みになってるの?」
「9に邪念を持っていいのは416だけよ・・・特に男なんか認めないわ!」
「あ、416は大丈夫なのねってあんたは父親か何かなの?」
ひたすらトリップするシスコンどもに辟易としながらも、そういう性格なのかはたまた義務感に駆られてなのかツッコミを連発するFAL。
FALとて分かっているのだ、いくらツッコんだところで意味などないということは。だがそれでもやはりツッコミを入れてしまう・・・悲しきかな苦労人の性である。
こんなんだが、最初期に比べれば幾分かマシになった方だ。あの頃であれば場所をプライベートビーチにした上で周囲数キロ以内に誰一人近づけようとはしなかっただろう。
別に人間不信とかではない、ただ妹が可愛いだけなのだ。
「そんなに言うなら、あなたたちが塗ってあげればいいじゃない・・・」
「そうは言うがなFAL、そこに我々は大きな問題を抱えている。」
「・・・なによ?」
「「理性を抑えられる自信が無い。」」
(メンドクせぇええええ)
さも当然のように言い放つシスコン。というか身内に欲情するこいつらの方が遥かに危険なんじゃなかろうか・・・。
だがそれよりも意外なことがある。
あのシスコン筆頭のUMP45が大人しいのだ。
「え? だって416が塗るでしょ。 そしてそのまま9とイチャついて・・・・・うぅ・・・」
あ、変な方向で面倒になったわねと思うFAL。
9と416が正式に付き合いだして以降はシスコン度は下がったものの、9を盗られたショックと9の幸せを思う気持ちに挟まれて情緒不安定気味になってしまったのだ。まぁFALとしては面倒なだけで胃には優しくなったので良しとしている。
だが、そんな45の姿を同志たちが見て見ぬ振りをするわけが無いのだ。
「グスッ、9が・・・妹が遠くにいった気がする・・・。」
「それは違うぞ45。」
「えぇ・・・
「いやいやいやそれは飛躍しすg「その発想はなかったわ! 流石は同じ道を志す同志ね!」っておいいいいい!!!」
さっきまでの死んだ魚のような目から一転、活力と欲望にまみれた瞳を取り返した45に、FALはいよいよ頭を抱えた。
完全復活を遂げた45は改めて海水浴に賛成、予定されているビーチやその周辺のスポットで妹たちとより親密になろうと提案する。
愛する妹と一日中一緒に居られる上に邪魔者を排除できる素晴らしい計画だ。それぞれ妹とのムフフなイベントを想像したM16とMG34もこの案に乗っかり、あとは流れるように話を進めて解散する。
そして残されたのは、ただ真っ白に燃え尽きたFALだけだった。
「・・・あの・・・・FALさん?」
「もうヤダ解体されてくる」
「落ち着いてくださいというか逃げないでください。」
「生まれ変わるのなら貝になりたい」
「FALさん? FALさん!?」
「この際戦車の中にいてもいいわ・・・今よりきっとマシよ」
「・・・あ、ペルシカさん? 理由は聞かずにすぐ来てくださいとにかく急ぎでお願いします!」
数分後、駆けつけたペルシカによって簡単な記憶処理がなされたFALだが、夜な夜な悪夢にうなされるようになったという。
頑張れFAL!グリフィンの明日は君にかかっている!!
なお、彼女への正式な配給品として胃薬と睡眠剤が導入された。
end
ま・た・せ・た・な!!!
なんとかE3-3まではクリアしましたが、3-4をクリアするメリットが薄いので断念します。
あとはひたすら物資箱の周回だ!
では今回のキャラ解説
FAL
今作でも屈指の苦労人。FAL推しの皆さんごめんなさい!
シスコン会最後の砦にして良心、暴走人形鎮圧のスペシャリスト。胃薬を手放せないどころか日に日に服用数が増えている。
作中セリフの「戦車の中に〜」はとある作品のリスペクト。あっちはあっちで地獄だが胃には優しいはず。
UMP45
(斜め)45(度チョップを当てても治らないくらいネジが飛んだ)姉。
こんなんでも戦闘では頼れる・・・がそんな描写はおそらく無い。
9と416の件で大人しくなったが、同志二人の余計な一言で再暴走。
45「416が妹ってことはその同型も妹ってことよね?」
F416「What's!?」
M16
AR-15がハンターと、SOPがペルシカとくっついたので残る二人に全愛情を注ぐシスコン。
最近M4が代理人とベッタリなのでそのうちROに傾くかも。
三人の中ではまともな方だが、酒が入ると確実に手が出るという点では最も危険。
MG34
妹の脅威を物理的に排除しにかかるシスコン。
自分をまともな妹スキーだと思っている点では八十神高校のシスコン番長に通じるものがある。
こんなんだがMG部隊の教官を務めるほどのベテランにして猛者。
代理人
時々シスコン会に部屋を貸している。
基本的に面倒と言わない代理人だが、シスコン会の話し合いだけはその限りではなくなった。
FALを不憫に思う一方、防波堤として頑張ってもらいたいとも思う。
妹ができたら多分すごく過保護になると思う。
本話投稿時点でアンケートを締め切りました。
多数の応募ありがとうございます!
次回は投票結果の通り、AR-15とハンターのお話です!
本編第五十話の内容アンケート
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