喫茶鉄血   作:いろいろ

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先日、貞子の4Dを見ました。
その晩ちょっと眠れなくなったのは秘密だぞ☆


今回もキャラのリクエストをいただきました!
オリキャラが増えるとできることも増えますね!


第五十二話:全自動修羅場人形

「はぁ・・・素敵な出会いでも落ちてないものかしら。」

 

「そろそろ現実をみてくださいよ姉さん。」

 

「うぅ、いつからそんなに冷たくなったの36C?」

 

 

夕暮れのS09地区を歩く人形二人、G36とG36Cは買い物袋を片手に帰路についていた。

姉の残念思考に辛辣な言葉を投げつける妹に、G36はますます落ち込む。もっとも、買い出しの間ずっと彼氏が欲しいだの出会いが欲しいだの寿退社したいだのと言い続けていれば自業自得なわけだが。

そんな姉に対する妹の評価は、『黙っていればいい女』、だ。

 

 

「まったく・・・あ、買い忘れたものがありました。 姉さんはここで待っててください。」

 

「えぇ、わかったわ。」

 

 

それだけ言うと急ぎ足で店に戻る36C。

G36は近くの公園のベンチに座ると、ぼんやりと眺め始めた。平日ではあるが仕事終わりなのか、カップルと思しき二人組がいくつも見られ、見かけるたびにG36の顔に影がさす。

 

 

(どうしよ・・・泣きそう・・・)

 

「・・・どうしたんだ? 美しい顔が台無しだぞ。」

 

「・・・え?」

 

 

突然声をかけられ、しかも妙にキザなセリフにG36は顔を上げる。そこにいたのは綺麗な白髪とオッドアイの女性、中性的な顔立ちで黒を基調とした服を身につけ・・・・・

 

 

「・・・って、鉄血の方ですか?」

 

「ん? あぁ、『元』な。」

 

 

よく見れば尻尾のような長いユニットが背後で揺れている。こんな人形いただろうか、と疑問に思う中、その鉄血人形?は突然立ち上がり、G36に向き合う。

 

 

「実は私はアマチュアながらダンサーをしていてね。 よければ見てもらえないだろうか?」

 

「え? 私がですか? でもダンスなんて・・・」

 

「構わないよ、正直な感想が欲しいんだ。」

 

 

そう言うと端末から音楽を流し、踊り始める。ダンスに詳しくないG36だが、どうやらブレイクダンスというやつだということはわかる。そして上手い。両手両足は当然だが尻尾も器用に使い、まるで重力なんてないかのように踊る。

思わず見とれてしまったG36は、終わった後もしばらくポカンとしたままだった。

 

 

「ふぅ・・・さて、どうだったかな?」

 

「え、あ・・・・すごい、です。」

 

「そうかそうか、そう言ってもらえて何よりだ。 君のために踊ったのだからな。」

 

「へ?」

 

「だが、君の笑顔が見られないところを見ると、どうやら失敗したようだ。」

 

 

そう言ってわざとらしく泣き真似をする女性に、G36は思わず笑ってしまう。キザな話し方といい突然踊ることといいコロコロと表情が変わることといい、なかなか面白い人形だ。

 

 

「ようやく笑ってくれたな。」

 

「え、あら本当ですね。」

 

「ふふっ、やはり笑っている顔がよく似合う。 美しい顔だ。」

 

「ふぇ!?」

 

 

唐突な一言で顔がボッと熱くなる。ナンパじみていることはわかっているが、なぜか嫌な感じはしない。それがまた、彼女を混乱させていた。

 

 

「どうやら何かお悩みのようだが・・・恋愛について、かな?」

 

「へ!? なぜそれを!?」

 

「おや、当たりだったか。 しかしそれは残念だ、もし私が男だったら、あなたのような美しい女性を放ってはおかないだろう。」

 

「そ、そんな、美しいだなんて・・・」

 

 

顔を赤くして俯く。しかし女性はG36の手を取り、まっすぐ見つめる。綺麗なマゼンタとシアンの瞳は見る者を引き込むように透き通っており、彼女もまた、引き込まれた一人だった。

 

 

「・・・おや、君の連れが戻ってきたようだな。 では私も帰るとしよう。」

 

「え? あ、あの!」

 

「ん?」

 

「・・・お、お名前を伺っても?」

 

「名前か・・・あいにくと今の私は名無しだ。 が、以前は『ゲッコー』と呼ばれていたよ。」

 

 

それだけ言うと、公園の奥へと消えていくゲッコー。G36はそれをただただ熱がこもった瞳で見送る。

妹が傍にきたことにも気がつかず、その日一日はどこかぼぉっとしていた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「「「「「さぁ! キリキリ吐いてもらおうか!」」」」」

 

「隠し事はなしだよアーキテクトちゃん!」

 

「な、何事!?」

 

 

数日後、鉄血工造の研究室にいたアーキテクトの元に、それはそれは怒りに燃えた形相の人形・人間が訪れていた。

G36CにM16にHK416にペルシカにハンター・・・そしてサクヤだ。

流石にこの面子に暴れられては身がもたない、そう考えたアーキテクトは・・・・・

 

 

「なんか知らないけどすみませんでしたぁー!!!」

 

 

渾身のDO☆GE☆ZAで危機回避を図る。ぶっちゃけ怒られる覚えなど数えきれにほどあるが、この面子にまとめて怒られるようなことはしていない・・・はず・・・・・多分。

 

 

「・・・アーキテクト、こいつに見覚えはあるかしら?」

 

 

416がポケットから取り出したのは一枚の写真。そこに写るのはいかにも鉄血人形といったデザインの人形・・・G36に甘い言葉をつぶやいた彼女である。

 

 

「あぁ! ゲッコーのことね。 いやぁどこにいったかと思ったけどそんなとこにいたんだ。」

 

 

機体名:ゲッコー。アーキテクトが『秘密裏』に開発した『新型の』鉄血人形であり、固有武装ではなく汎用性の高い『パワフルな』テールアームによる高機動、超馬力人形として作られた『戦術人形』である。

 

 

「・・・ねぇアーキテクトちゃん、鉄血工造は戦術人形を作っちゃいけないって知ってるよね?」

 

「・・・・・え? でもマヌちゃんは・・・」

 

「あれは非武装の人形として作ったし、いろんなとこから許可ももらってるの。 ・・・まさか黙って作ったの?」

 

「・・・・・テヘペロ!」

 

 

ゴチーーーーーン!!!!!

 

鈍い音が響き渡り、脳天を抑えて転げ回るアーキテクト。強烈なげんこつをお見舞いしたサクヤは、なんでもないかのように被害者に向き直り、頭を下げる。

 

 

「ごめんなさい、私たちの不始末よ。」

 

「いや、サクヤさんが悪いわけじゃなくて。」

 

「・・・まぁ不快だったのは変わらないんだけど。」

 

「・・・・・ところで、一体何があったんですか?」

 

 

サクヤのもっともな疑問に、被害者一同は口々に語り出した。

状況や被害の程度はまちまちだが共通して言えるのは・・・なんか美形の人形が、人形たちを口説き、風のように去っていったということ。

G36もROもすっかり虜になってしまい、9とSOPはちょっとでもなびいてしまった自分に自己嫌悪中、AR-15はキッパリと断ったがどこからか聞きつけたハンターが怒り心頭で探しているところだ。

おまけにその後の調査で、すでに『食べられた』人形や人間がいることも発覚、巷では「王子様」と言われているらしい。

 

 

「・・・アーキテクトちゃん?」

 

「待って待って確かに作ったのは私だけどそんなAIにした覚えは・・・・・あ。」

 

「なにか心当たりでも?」

 

「・・・・・マヌちゃんの作品(薄い本)を読ませたことがあるような・・・。」

 

 

ゴッチーーーーーーーン!!!!!!!

 

二度目の、今度は助走をつけたげんこつに完全に伸びるアーキテクト。

ともかく、このまま放置していては大変なことになることは想像に難くない。グリフィン上層部や軍にバレたら鉄血は物理的に終わるだろうし、なにより世の女性の敵を放置しておくわけにはいかないのだ。

 

 

「すぐに情報を集めて探し出すわよ。 できれば今日中に『ppppppp 』・・・はい、鉄血工造のサクヤです。」

 

『あ、サクヤさんですか? その、確認したいことがありまして・・・』

 

「なにかな代理人ちゃん。」

 

『そちらでまた新たに一体、作りませんでしたか? なにやらそれっぽい方がいらっしゃってるのですが。』

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

喫茶 鉄血にて。

 

 

「見つけたぞゲッコー・・・ってRO!?」

 

「え、M16!?」

 

「おや、君のお姉さんか。 はじめまして、名前がなく一応ゲッコーを名乗っているものだ。」

 

「あ、どうもM16です・・・じゃなくてだな!」

 

 

ちなみに今の状況は、向かい合って座るROの顎に手を添えたゲッコーが、ちょっと顔を寄せている所だ。顔を真っ赤にしながら一切拒絶しなかったところを見ると、ROも完全に飲まれてしまったのだろう。

M16始め怒りに燃える被害者一同が向かおうとしたその時、喫茶 鉄血の扉が勢いよく開け放たれ、メイド服に身を包んだ人形がズカズカと歩み寄る。

 

 

「この泥棒猫!!!」

 

「なっ!? 泥棒猫はどっちですか! ゲッコー様が愛を囁いてくださったのは私の方ですよ!」

 

「うるさい! あなたじゃゲッコー様に釣り合わないでしょ! 譲りなさいよ!!!」

 

 

出会って秒で取っ組み合いを始めるROとG36。もちろん互いに武器は持っていないのだが、戦闘モードのフルパワーで取っ組み合う様はまさに怪獣映画であり、近くの客は慎重に席を移動した。

やってきた一同も目の前で展開される修羅場に唖然とし、36Cは姉の姿に顔を覆ってしまった。

 

 

「こらこら君達、美しい顔に傷がついてしまうだろ?」

 

「で、でもこいつが・・・」

 

「君が美しいのは内面もじゃないか、黒く汚れた心は君らしくないよ。」

 

「・・・それでも、納得いきませんわ。」

 

「君の気持ちもわかる、でも汚れた心は君から笑顔を奪ってしまうよ。 私は君の笑顔が見たいんだ。」

 

「ゲッコー様・・・」

 

 

やたらとかゆくなるようなセリフを吐きながら、あっという間に喧嘩を止めてしまったゲッコーに再び呆然となる一同。

今回は完全に蚊帳の外な代理人は、新たな面倒ごとの予感に大きくため息をついた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「おや、また来てくれたんだねレディ。 ご注文はなにかな?」

 

「あ、アイスコーヒーを・・・。」

 

「ふふっ、ありがとう。 これは私からのサービスだ。」投げキッス

 

「はぅ!」

 

 

後日、完全中立地帯である喫茶 鉄血に引き取られたゲッコーは、17labとアーキテクトによる燕尾服をまとい、今日も客に愛を囁くのだった。

 

 

 

 

「ほどほどにしてくださいよゲッコー。」

 

「やれやれ手厳しいな代理人は。 一体いつになったら私の思いが届くのか。」

 

「一生ありえませんのでご安心ください。」

 

 

 

end




キタロー「手当たり次第口説くのは感心しないね。」
ハム子「見境なさすぎない?」
番長「まったくだ。」
ジョーカー「改心させてやる。」
ツッコミはコメントにてお願いします。


今回もマヌスクリプト同様、キャラのリクエストから生まれた話です。
やったねG36、彼女ができたよ!



というわけでキャラ紹介

ゲッコー
オリジナルのリクエスト人形。
マゼンタとシアンのオッドアイに尻尾状のユニットが特徴。ユニットの先には五本のマニピュレータがついており、またかなりの馬力があるため本体の支えが万全であれば戦車でも振り回せる。またマニピュレータの先には吸盤があり、天井に張り付くことも可能。
アーキテクトによって造られ、その後人知れず世に出た。節操がなく誰でも口説くし、その自覚もあるためたちが悪い。
左腕と尻尾で優しく包み、右手で顎クイされたら大体堕ちる。

G36
ヘリアン予備軍。
それゆえこんな単純なナンパにも引っかかってしまった。
本人は嬉しいようだ。

RO
別に恋には飢えていないが憧れている一方、自分には縁がないものと思い込んでいたため引っかかった。
他に目を向けられるのは嫌だが優しいので最終的には許す。

G36C
姉のストッパー。
姉の恋愛に口出すつもりはなかったが、今回は何が何でも阻止したい模様。

M16
シスコン。
ROをナンパしたという罪は大きく、彼女の中ではA級戦犯である。

HK416
ちょっと別々になっていた間に9を口説かれたのでブチ切れる。

ペルシカ
SOPを口説かれたのでry

9
416一筋なのだが、はっきり断れなかったことから罪悪感で倒れてしまう。

SOP
ペルシカ一筋なのだがry

ハンター
AR-15が口説かれた現場にはいなかったが、たまたま近くにいた仕事仲間からのタレコミで激怒する。

AR-15
一切なびかなかった。
本人曰く「当然のこと。」

サクヤ
アーキテクトの保護者。
人形とはいえ金属製の頭部をぶん殴っておいて手を傷めない。
最近アグレッシブになったと思う。



この泥棒猫! でファ◯タのCMを思い出した人はファン◯を買いに行きましょう。

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