喫茶鉄血   作:いろいろ

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うちの春田さんに足りないのはこんな感じの色気だと思う。あと自制心。


第五十四話:大人な女性

カランカラン・・・

喫茶 鉄血の入り口にかけてあるベルが鳴り、新たな客の訪れを知らせる。現れたのは、見慣れないライフルを担いだ人形だった。

ちなみに喫茶 鉄血では銃の持ち込み等は規制していない。人形たちが利用するため、緊急の要件が入ることを考慮しているからだ。

 

 

「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」

 

「えぇ。 ・・・ところで、喫茶 鉄血というのはここでいいのよね?」

 

「はい、そうです。 何か要件が?」

 

 

この見慣れない人形は、どうやらフラッと訪れたというわけではなさそうだが・・・となると目的はなんだろうか?

 

 

「はじめまして。 この度S09地区に配属となりました『Gd DSR-50』です。」

 

「あらどうも。 喫茶 鉄血の店長をしております代理人です。」

 

 

きちんとした挨拶から入る、よくよく考えればそんな人形はほとんどいないだろう。

新規に配属された人形がやってくる、しかも丁寧な物腰で名乗るということは、やはり何かあるのだろうか。

 

 

「では、アイスコーヒーを頂けますか?」

 

「え? あ、はい、かしこまりました。」

 

「ふふっ、もしかして何かあると思っていましたか?」

 

 

クスクスと笑うDSRに、どうやら代理人の早とちりだったと察する。しかしまぁ言葉足らずというか思わせぶりというか、誤解されそうな人形である。

 

 

「まぁご挨拶に伺った、というのが要件です。 この地区の人形は何かしらここでお世話になることがあると聞きましたので。」

 

「・・・お世話、ですか?」

 

「はい、本部でも有名な話ですよ。」

 

 

再び笑うDSRとは対称に、なんとも微妙な顔になる代理人。本人としてはひっそりとやっているつもりだったし、世話をしたというよりも話を聞いただけだったりするのだが・・・

なんて思っているのは代理人くらいで、S09地区の人形はもちろんのこと本部の人形やIoPも代理人には感謝しており、不定期だが社内報にものってたりする。

つまり、違法製造とかでもなければ喫茶 鉄血のことを知らぬ人形などいないのである。

 

 

「ふふっ、そのご様子ですと知らなかったようですね?」

 

「えぇ、全く。 そんなに目立つようなことはしていないはずですが・・・」

 

(((いやいやいや)))

 

 

キョトンと首をかしげる代理人に陰から総ツッコミを入れる人形たち。常識的で頼れると思われがちな代理人だが、微妙なところで抜けていた。

当の本人がそのことに気がつくはずもなく、注文のアイスコーヒーを淹れに奥へと消えたのだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

さて、この喫茶 鉄血では多くの人形が世話になったりアドバイスを受けたりしている。それはつまり、それだけ問題を抱えた人形が多いということだ・・・というよりそれは、人間に限りなく似せるという開発指針にしたIoPに責任があるのだが。

とにかく、人形の訪れはイコール問題の訪れ。それはこのDSRも例外ではなかった。

 

 

「・・・・・。」

 

「・・・・・ゴクッ」

 

「・・・・・・・・ふふっ。」

 

「「っ!」」

 

 

DSRの微笑みに、一斉に目をそらす男性客たち。何が行われているかというと、DSRはコーヒーを飲みながら頻繁に足を組み替えては目が合いそうな客を流し目で見ているのだ。

スタイル抜群、やたら胸元の強調された服、露わになった手足、艶かしい瞳・・・それらが合わさり、男たちはまるで男子中学生のように落ち着きなく視線を動かしている。

そんな男性陣を楽しそうに見つめるあたり、完全にわかってやっているようだ。

 

 

「・・・ほどほどにしてあげてくださいよ。」

 

「あら? なんのことかしら?」

 

 

さも可笑しそうに笑うDSR。ひとしきり笑ったあとで、今度はDSRの方から代理人に声をかける。

 

 

「まぁ他の客に手を出すことはないわ。 向こうから来ない限り、ね。」

 

「・・・向こう?」

 

「ほら、あれよ。」

 

 

DSRが視線を向けた先、それは客席ではなくカウンターの奥。せっせと働きながらも時々こちらに視線を送るゲッコーだった。その視線が完全に獲物を見る目だったが、なるほど同類だったか。

 

 

(・・・反省してアレ、なんですよね。)

 

 

先日の一件でナンパ癖がやや落ち着いたかに見えるゲッコーだが、あくまで人の女に手を出さなくなったというだけ。本人曰く『美しい人に美しいといって何が悪い?』らしい。

そして今、完全に互いの視線が合った。そのままニヤリと笑いあうと、ゲッコーが奥から出てくる。

 

 

「・・・ふふっ、随分と熱い視線のようだが?」

 

「あら、それはお互い様でしょう?」

 

(・・・あぁ、始まった。)

 

 

近くの椅子を動かし、ナチュラルにDSRの隣に座るゲッコー。まるで恋人のような距離感だが、そんな甘い空気は微塵もない。

 

 

「あなたからは私と同じ匂いがするわ・・・可愛いものは食べちゃいたくなるような。」

 

「奇遇だな、私もそう感じていたよ。 これは運命の出会い、というやつなのだろう。」

 

「うふふ、それで? あなたと私、どっちがどっちを()()のかしら?」

 

「あなたのように情熱的な女性は初めてだ・・・是非とも味わってみたいよ。」

 

(・・・・・明日の分のケーキでも作っておきましょうか。)

 

 

肝心なのは諦めだ、そんな何処かの誰かが言っていた言葉を思い出した代理人は、二人でやりあっている分には被害もなさそうだと判断して放っておくことにした。

 

 

 

後日、DSRがS09地区にやってきた理由がこの誘惑癖であることを知り、また上層部が『きっと向こうの指揮官か代理人がなんとかしてくれる』という思いつきで送ってきたことを知り、代理人は頭を抱えたという。

 

 

 

end




DSRのイラストがエロすぎると思ったのは私だけではないはず。
どこぞのおっぱい指揮官歓喜の巨乳である。


そんなわけでキャラ解説

Gd DSR-50
新型にライフル人形・・・なのだが開発陣が何をトチ狂ったのか、色気というステータスに力を注いだ結果こんなことになってしまった。
本部の指揮官および候補生が全員食われるのも時間の問題であると判断され、超鈍感で有名なS09地区の指揮官の元に送られた。
ゲッコーとは波長があう模様。

ゲッコー
あの後彼女持ちにこってり絞られたためちょっと大人しくなった。
とはいえ欲には忠実なので今でも独り身相手には口説く。
喫茶 鉄血での服装は執事服だったり燕尾服だったりの男装がメイン。

代理人
最近諦めることを覚えた。



今回は短くてスマンね。
梅雨の前ってことで気温が不安定だけど、体調管理はしっかりとね!(風邪気味)

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